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連載Cocotame Series

ヒットの裏方

伊藤万理華主演『サマーフィルムにのって』が見せたミニシアター映画の可能性【前編】

2021.10.19

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ヒットした作品、ブレイクするアーティスト。その裏では、さまざまな人がそれぞれのやり方で導き、支えている。この連載では、そんな“裏方”に焦点を当て、どのように作品やアーティストと向き合ってきたのかを浮き彫りにする。

2021年8月6日より、新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国公開され、ロングランとなった映画『サマーフィルムにのって』。女優として目覚ましい活躍を見せる元乃木坂46の伊藤万理華が主演し、初長編となる松本壮史がメガホンを取った本作は、公開時にミニシアター動員ランキングで2週連続1位を獲得するなど、ヒットを記録している。

本作の製作幹事業務を担ったソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のスタッフとして作品に携わった、ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)の静陽子、SMEの小林亜理、乃木坂46合同会社の曺梨恵の3名に、成功までの道のりを聞く。

前編では、本作に込められた製作陣の思いや、主演を務めた伊藤万理華の本作への意気込みを語る。

  • 静 陽子

    Shizuka Yoko

    ソニー・ミュージックアーティスツ

  • 小林亜理

    Kobayashi Ari

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 曺 梨恵

    So Rie

    乃木坂46合同会社

『サマーフィルムにのって』

 
勝新太郎が大好きな時代劇オタクの高校生、ハダシ(伊藤万理華)。映画部に所属する彼女が、ずっと温めてきたオリジナル時代劇の主役にピッタリな凛太郎(金子大地)に出会ったことから、高校最後の夏をかけた映画製作が始まる。第13回TAMA映画賞新進監督賞(松本壮史)、最優秀新進女優賞(伊藤万理華)、最優秀新進男優賞(金子大地)受賞。
監督:松本壮史 脚本:三浦直之(ロロ) 出演:伊藤万理華、金子大地、河合優実、祷キララ ほか
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ 製作:「サマーフィルムにのって」製作委員会

若手クリエイターの手助けができたら良いなという思いがあった

――まず、それぞれの普段の業務と映画『サマーフィルムにのって』への関わり方について聞かせてください。

静:私はSMA事業開発部に所属しています。俳優のキャスティングなど、ソニーミュージックグループの案件をコーディネートする業務や企画開発、さまざまな映像ビジネスに関わる仕事をしている部署になります。この作品には、主にプロデューサーとして、今回製作幹事業務を担当したSMEの制作窓口的なところを担いました。

小林:私はSMEのマーケティンググループという、新規ビジネスの開発や、ソニーミュージックグループ内のカンパニーの事業を後押しする役割を担うセクションの所属で、そのなかのI&Pという部門も兼務しています。そこはSMEが出資する作品に携わるセクションで、映画製作には10年くらい関わってきました。

今回の作品に関しては、アソシエイトプロデューサーとして、基本的に委員会各社との連携や社内調整、それから、映画の2次利用のプランニングおよびその展開というところを主に担当しています。

曺:乃木坂46の卒業生が所属しているA&T部という部署で、タレントのマネジメント業務に就いております。今回の映画には、伊藤万理華のマネジメントとして関わらせていただきました。

――本作の立ち上がりの経緯はどのようなものでしたか?

静:以前から、若手クリエイターの手助けができたら良いなという思いがあったなかで、新進監督の松本壮史さんと脚本家の三浦直之さん(劇団ロロ主宰)とお会いする機会があって。おふたりから企画を提案したいというお話がありました。そこでいただいた企画の内容が素晴らしく、彼らから「ぜひ、伊藤万理華さんで撮りたい」という話をもらったのが、本作の成り立ちですね。

伊藤万理華/1996年2月20日生まれ。神奈川県出身。血液型O型。2017年に乃木坂46を卒業。

松本壮史/1988年生まれ。埼玉県出身。CM、MV、ドラマなどを手掛ける映像監督。2021年『サマーフィルムにのって』で長編デビュー。2021年はWebドラマの劇場版映画『青葉家のテーブル』も公開された。主な作品はドラマ『お耳に合いましたら。』、江本祐介「ライトブルー」MVなど。

――劇場用パンフレットに記載のプロダクションノーツには、松本監督が長編映画を撮りたいということで、盟友の三浦さんと脚本の執筆に入り、主役は、乃木坂46所属時代の映像『はじまりか、』を見て伊藤万理華しかいないとなり、担当者に企画書を読んでもらったところGOが出た、と書かれていました。この“担当者”というのは……。

静:私がそのひとりですね(笑)。そこからプロットや脚本を書いていただいて、事業化できるように徐々に進めていった感じです。

伊藤万理華『はじまりか、』

クリエイティブにこだわりたかったので、ミニシアターが合っていた

――最初からミニシアター系の映画にしようという想定でスタートしたんでしょうか。

静:松本監督は本作が商業映画デビュー作なんです。脚本も、原作のない完全オリジナルで、主演の伊藤万理華も一般的にはまだそれほど知られていないというところなので、必然的に公開の規模は決まってきましたね。また、何よりもクリエイティブにこだわりたかったので、しっかりと作家性の強いものを届けるという意味でも、ミニシアターが作品のサイズ感にも合っているということで進めました。

小林:2017年にSMEが出資した映画『勝手にふるえてろ』(監督:大九明子、主演:松岡茉優)が、ミニシアター系の作品として大ヒットしたんですね。『サマーフィルムにのって』が走り出したときは、それをビジネスモデルにしていけると良いよねという話を何度かしていました。

――撮影がスタートしてからは、現場はどのような雰囲気でしたか?

静:学園もので、ほぼほぼ合宿状態で撮影をしたので、俳優部のマネージャーは一切、現場にはいない状態だったんですね。キャストは、皆さんリハーサルでは探り探りだったんですけど、撮影現場に入ってからは主演の伊藤万理華さんが座長としてみんなを引っ張ってくれて。全員が納得の主演というか、キャストもスタッフもみんなで彼女を支えたいと思わせるような強さがありました。

撮影が進むにつれてみんなが仲良くなって、一丸となっていきました。現場の雰囲気はとても良かったんですけど、やっぱり新型コロナの影響で大変なことはありましたね。緊急事態宣言発出を受けて、撮影が一度、中断してしまって。キャストが公開時の舞台挨拶でも言ってましたが、この作品を大事に思ってくれていたからこそ、中断ということにかなりショックを受けていたようで……。でも、なんとか撮影を再開することができて、各所の協力のもと、撮り終えることができました。スケジュールがずれたため、当初の予定にはなかった夏にも撮れたので、コロナ禍で大変ではありましたけど、結果的には、良い方向に転がったというところですかね。

東京国際映画祭に滑り込みで出品

曺:私は、コロナ禍で撮影が中断した期間中に伊藤(万理華)の担当になりました。ハダシという役柄が自分の見た目を気にするような子ではない高校生ということで、眉毛の手入れをせずに演じていたそうで、初めて会ったときもそのままの状態でした。後日、インタビューなどで、撮影中断中も本人が意識的にハダシのままでいたということを知りました。

初めて会ったときに、これからのことを話しながら、「今後はどんなことをしていきたいですか?」「どういう俳優さんが好きですか?」といったような質問をした記憶があるのですが、「まずは『サマーフィルムにのって』をやりきりたい。来年の夏はこれにかけている」と言っていたことが印象的でした。撮影が中断している間も、『サマーフィルムにのって』のことしか頭になかったようです。「本当に素晴らしい作品なんです。早く見てもらいたい」と力説していて、完成したものを見る前なのに、そこまで熱を入れて、これにかけてると言えるのは、すごいことだと思いました。すごく独特な空気を放っているのを感じて、伊藤万理華を担当できることがうれしくて、ワクワクしたことを覚えています。

――映画が完成後、第34回東京国際映画祭(2020年)に出品されましたね。

静:当初から、配給・宣伝のハピネットファントム・スタジオのお力も借りて、国内外の映画祭に出していきたいという狙いがありましたし、撮影の段階から東京国際映画祭に出すことは目標にしていました。撮影中断があったので、ギリギリ間に合うかどうかっていうところに滑り込みで出したんですけど、招待作品としてワールドプレミア上映をしてくださって。映画祭はほぼリモートでの開催だったので、少し残念ではあったんですけど、海外の方々からも良いコメントがいただけて、監督ともども手応えを感じていました。

小林:そうですね。この映画はすごく前評判が良かったです。世界各国の映画祭での上映が決まりましたし、今後はアジアを中心に劇場公開なども展開していく形になると思います。

曺:取材の際も、伊藤万理華本人の目の前なので悪いことを言う人はいないと思うんですけど、記者の皆さんが、すごい熱量を持って褒めてくださって。そこに嘘はないんじゃないかなという手応えは感じていました。

後編につづく

文・取材:永堀アツオ

関連サイト

『サマーフィルムにのって』公式サイト
https://phantom-film.com/summerfilm/(新しいタブで開く)
 
公式Twitter
https://twitter.com/summerfilm_2020(新しいタブで開く)
 
公式Instagram
https://www.instagram.com/summer_film2021/(新しいタブで開く)
 
伊藤万理華 公式サイト
https://itomarika.com/s/m03/?ima=1542(新しいタブで開く)
 
伊藤万理華 Twitter
https://twitter.com/marikaito_staff(新しいタブで開く)
 
伊藤万理華 Instagram
https://www.instagram.com/marikaito_official/(新しいタブで開く)

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