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ヒットの裏方

伊藤万理華主演『サマーフィルムにのって』が見せたミニシアター映画の可能性【後編】

2021.10.20

ヒットした作品、ブレイクするアーティスト。その裏では、さまざまな人がそれぞれのやり方で導き、支えている。この連載では、そんな“裏方”に焦点を当て、どのように作品やアーティストと向き合ってきたのかを浮き彫りにする。

2021年8月6日より、新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほかにて全国公開され、ロングランとなった映画『サマーフィルムにのって』。女優として目覚ましい活躍を見せる元乃木坂46の伊藤万理華が主演し、初長編となる松本壮史がメガホンを取った本作は、公開時にミニシアター動員ランキングで2週連続1位を獲得するなど、ヒットを記録している。

本作の製作幹事業務を担ったソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のスタッフとして作品に携わった、ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)の静陽子、SMEの小林亜理、乃木坂46合同会社の曺梨恵の3名に、成功までの道のりを聞く。

後編では、公開されてからの状況を振り返りつつ、ミニシアター映画のヒット作となった要因を探る。

  • 静 陽子

    Shizuka Yoko

    ソニー・ミュージックアーティスツ

  • 小林亜理

    Kobayashi Ari

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 曺 梨恵

    So Rie

    乃木坂46合同会社

『サマーフィルムにのって』

 
勝新太郎が大好きな時代劇オタクの高校生、ハダシ(伊藤万理華)。映画部に所属する彼女が、ずっと温めてきたオリジナル時代劇の主役にピッタリな凛太郎(金子大地)に出会ったことから、高校最後の夏をかけた映画製作が始まる。第13回TAMA映画賞新進監督賞(松本壮史)、最優秀新進女優賞(伊藤万理華)、最優秀新進男優賞(金子大地)受賞。
監督:松本壮史 脚本:三浦直之(ロロ) 出演:伊藤万理華、金子大地、河合優実、祷キララ ほか
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ 製作:「サマーフィルムにのって」製作委員会

劇場で見てくださった方々がSNSなどで口コミを拡散

――クランクアップから約1年後の2021年8月6日に、新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントを中心に全国公開がスタートしました。

静:宣伝にそこまで予算をかけられる作品ではなかったんですが、劇場で見てくださった方々がSNSなどで口コミを拡散してくださって。監督や俳優といった映画業界の方たちからも作品に対する高い評価をいただき、ほんとにありがたいなと思っております。

小林:手応えをとても感じる作品でしたね。公開後、しばらくご無沙汰していた映画関係者からも連絡をいただいたりしましたし、「見終わったあとに清々しい気持ちになる」と、皆さん共通の評価が口コミで広がっていって、興行が伸びている実感もありました。素晴らしい作品になっているのを感じましたね。

曺:同じく、手応えを感じずにはいられないくらい、社内外から高い評価のお言葉をたくさんいただきました。伊藤は公開当時、テレビ東京の主演ドラマ『お耳に合いましたら。』を撮っていたのですが、そちらのプロデューサーの方から、「このタイミングでドラマにキャスティングできてほんとに良かった。あの映画を見て心からそう思った」と言っていただけて、すごく励みになりました。

――公開週から2週連続で“週末ミニシアターランキング動員数1位”を獲得しましたが、予想を上回る反響でしたか?

小林:はい。しかも緊急事態宣言下で、映画館の座席数を半分に制限していた時期が長いんですね。そうじゃなかったら、もっといったんじゃなかろうかとも思いますが、公開から1カ月以上過ぎてのロングランヒットになって、劇場の館数も増えていって。

静:予想を上回る評価をいただけましたが、何より完成したものを見たときに、キャストたちが本当に喜んでくれましたね。主演の伊藤万理華はじめ、この映画を絶対に世に広めるんだっていう思いが、そこでさらに強くなったというか。それを試写で確信できて、世に出て、本当に多くの皆さんが劇場に足を運んでくださっているというところで、ヒットに繋がったと思います。

素晴らしい企画を実現したいという思いで引っ張ってきた作品

――今作は、SMEが製作幹事の業務を担当しましたが、本作のヒットを経て、今後も自社での映画製作に積極的に取り組んでいくんでしょうか。

静:今回は、たまたま若手クリエイターの方の企画が素晴らしく、グループ内の協力もあって事業化できたんですが、自社製作というところが念頭にあったわけではないんですね。クリエイターありきの企画を実現したいという思いを大事にして引っ張ってきた作品であり、あくまでも若手クリエイターと新人俳優が世に出ていくための作品でした。

小林:作品を作るときはクリエイティブが一番大事で、そこがしっかりしてないと、どう宣伝しても売れなかったりします。だから、“自社製作”ということだけに縛られたり、グループ内で完結したりしようとすると、良い作品が生まれる可能性を狭めるのではないかなと思う部分もあるんですね。もちろん、そういうことにチャレンジしていきたい気持ちもありますが、そこだけにこだわると機を逃すこともあるんじゃないかなと。

静:そうですね。チャレンジはしていきたいですし、若手クリエイターの方や新人俳優が世に出るきっかけとして、我々が何か会社としてできることがあれば良いなと思います。

――伊藤万理華さんは本作を経て、今後の出演作品についてはどう考えていますか。

曺:伊藤は、“なんでもやります、どんな役でもやります”っていうタイプの役者ではないと思うんです。脚本、役柄、衣装や美術、ロケ地など、いろんなところに目がいく演者なので、与えられた役柄だけをこなす、という環境は合わないんだろうなと感じています。難しい部分があるとは思いますが、またガッツリと伊藤万理華にハマるようなクリエイターやプロデューサーの方たちと出会えるようにしていきたいと思っています。“こういうジャンルで活動していく俳優です”とひと言では言えないのが、彼女の面白さ、魅力でもあると。

静:そもそも乃木坂46所属時代からクリエイターたちからの評価は高かった存在ですもんね。脚本の三浦さんと松本監督も、彼女の抜群のセンスにいち早く気付いていた。そこは彼女の元々の魅力で、クリエイターに刺さるものがあると思うので、それが本作を見た方にも伝わって、さらに活躍していってくれるのではないかと期待しています。

キャスト、スタッフ全員の映画に対する純粋さが観客に刺さった

――改めて、『サマーフィルムにのって』がヒットした理由を総括してください。

静:松本監督と三浦さんというクリエイターおふたりのピュアな思いと世界観に、ぴったりのキャストが揃って、みんなのエネルギーが集結した結果だと思うんですよね。

小林:本当にそうですね。みんなの思いで素晴らしいものができて、みんなの思いで一生懸命に宣伝して。キャスト、スタッフ全員の映画に対する純粋なところが観客の皆さんにも刺さったという。

静:何より、伊藤万理華さんが期待以上に爆発力のある芝居を見せてくれて。みんながそこに引っ張られましたね。彼女の力は大きかったと思います。

――主演俳優の熱演が、ヒットの核になったと言っても良いでしょうか。

曺:ありがたいんですけど、そういう褒め方だけを聞くとこそばゆくなります(笑)。それこそ、私はマネジメント側なので、こんなにも伊藤万理華を輝かせてくださったキャスティングに感謝しています。近しいプロデューサーの方から、「金子(大地)さんがいたから伊藤万理華が光ってる」と言われたこともありますし、河合優実さんや祷キララさんはじめ、たくさんの方の『サマーフィルムにのって』にかける気持ちが集結した作品だと思います。

もちろん、主演の伊藤万理華が愛を持って熱演したからということは間違いなくありますが、伊藤万理華がすごかったからという理由だけではないのは、この作品に関わった方たちならわかると思います。スタッフィング含め、本当に素晴らしい座組みでした。

――映画の興行では、クリエイターや演者のピュアな情熱が集まった良い映画が成績に直結しないこともあります。でも、本作はしっかりと結果につながりました。その違いはどこにあると思いますか。

静:そうですよね。でも、ほんとに、金子さん、河合さん、祷さんをはじめとするキャスティングが奇跡的でしたし、三浦さんの脚本が何より素晴らしかったんですね。作品の設計図と言われているくらい大事なところなので、この脚本と監督、このキャストだったら、絶対に良いものが撮れるだろうという思いで制作して……。

小林:見たあとに、誰かにその良さを伝えたくなるっていうところがあるかないか。それが、映画のヒットの裏側にはあるんじゃないかなと思いますね。「良かったよ」って誰かに言いたくなるような作品に仕上がっていて、だからこそ、クチコミで広がっていった実感があったんですけど、どうですか?

静:主役は時代劇オタクの女子高生で、彼女以外の登場人物もそれぞれに好きなものがあって。それぞれが好きなものをすべて肯定していくという作品ですし、クライマックスのシーンにエネルギーが集結していた。あのシーンを、撮影後半の山場に持って来れたのも、すごく良かったなと思います。撮影を再開してから撮ったシーンで、作品のキモではあったんですけど、スタッフ総出で、いろんな力が集結して。

伊藤万理華さんも、撮影中断中の数カ月で相当、仕上げてきてくれていて。みんな、彼女の演技のクオリティにびっくりしましたし、撮影現場ではエキストラの方含め全員が彼女に魅せられて、一体となっている雰囲気がありました。あのシーンの撮影が成功したことで、そのエネルギーが画面を通して見てくれた方にそのまま伝わって、そのエネルギーがまたクチコミで広がっていったんじゃないでしょうか。やはり、見た方が広げてくださった口コミの力で、ヒットに導かれた映画だと感じています。

 

文・取材:永堀アツオ

関連サイト

『サマーフィルムにのって』公式サイト
https://phantom-film.com/summerfilm/
 
公式Twitter
https://twitter.com/summerfilm_2020
 
公式Instagram
https://www.instagram.com/summer_film2021/
 
伊藤万理華 公式サイト
https://itomarika.com/s/m03/?ima=1542
 
伊藤万理華 Twitter
https://twitter.com/marikaito_staff
 
伊藤万理華 Instagram
https://www.instagram.com/marikaito_official/

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