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連載Cocotame Series

音楽カルチャーを紡ぐ

マイルス・デイビスらの名作ジャズアルバムをアナログ盤で聴く喜び【前編】

2021.06.21

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音楽を愛し、音楽を育む人々によって脈々と受け継がれ、“文化”として現代にも価値を残す音楽的財産に焦点を当てる連載「音楽カルチャーを紡ぐ」。

今回は、昨年発売された第1弾につづき、6月23日に第2弾が発売される『ジャズ・アナログ・レジェンダリー・コレクション』をピックアップ。今年生誕95周年を迎えるジャズの巨人、マイルス・デイビス作品をはじめとする名盤の味わい方を、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(以下、SMJI)片野正健と、本作の監修を手掛けた塙耕記が解説する。

前編では、本シリーズと第1弾のラインナップの意図、国内でのジャズアナログ盤市場について聞く。

  • 片野正健

    Katano Masatake

    ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

  • 塙 耕記

    Hanawa Koki

    ディスクユニオン
    CRAFTMAN RECORDS主宰

『ジャズ・アナログ・レジェンダリー・コレクション』【完全生産限定盤】

 
ソニーミュージックのカタログから、名ジャズ作品のアナログレコードを復刻するシリーズ。オリジナル盤仕様(可能な限り忠実に再現)、12インチ・180gの重量盤、ソニー・ミュージックスタジオでの国内カッティング、国内プレスでの日本独自企画盤となっている。監修:岡崎正道、塙耕記
 
<第1弾(発売中)>『カインド・オブ・ブルー』(MONO)/マイルス・デイビス、『カインド・オブ・ブルー』(STEREO)/マイルス・デイビス、『サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム』(MONO)/マイルス・デイビス、『タイム・アウト』(STEREO)/デイヴ・ブルーベック、『ライヴ・イン・トーキョー』(STEREO)/ビル・エヴァンス
 
<第2弾(2021年6月23日発売)>『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』(MONO)/マイルス・デイビス、『ブルー・バートン』(STEREO)/アン・バートン、『ウォーム・ウッズ』(MONO)/フィル・ウッズ・カルテット

ソニーミュージックには魅力的な作品を作ってきたレーベルがある

――昨年スタートした『ジャズ・アナログ・レジェンダリー・コレクション』。このタイミングでシリーズを始めた意図から聞かせてください。

片野:ここ最近は世界的にアナログレコードが脚光を浴びています。例えば、アメリカだとCDとレコードの売り上げが逆転していまして、ストリーミングの次にレコードが売れている状況なんです。

――欧米では新譜を発表する際に、CD、レコード、カセットテープ、配信のオールフォーマットでリリースする傾向になってますね。

片野:そうですね。日本ではまだアメリカほどアナログレコードの売り上げが高いわけではないですが、盛り上がっている状況ではあります。そのようなアナログブームの需要に乗って、各社、ジャズのアナログ盤を再発していますが、ソニーミュージックのカタログにもジャズの名盤がたくさんありますし、特にマイルス・デイビスのアナログは久しく出していないということもあって、この機会にやりましょうと、自分が手を挙げて始めたのがいきさつです。

――塙さんは、第1弾、第2弾ともに監修をされています。

塙:僕は今、ディスクユニオンでの業務のひとつとして、16年ほど前から制作も担当していて、社内で自分のレーベル(CRAFTMAN RECORDS)を持っています。ジャズの歴史的な名盤の原盤を借りてきて復刻するようなことをしたり(昭和ジャズ復刻シリーズ)、ユニバーサル(ユニバーサル ミュージック合同会社:ブルーノート、プレスティッジ、リヴァーサイドなど)やワーナー(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン:アトランティックやワーナー・ブラザーズなど)から出す復刻盤を監修したり、貴重なオリジナル盤を探してきたりしていて。

ずいぶん多くの作品を手掛けてきたんですけど、ソニーミュージックには、コロムビアやRCA、エピックなど、魅力的な作品をたくさん作ってきたレーベルがあって、そこにはまったく手をつけられてなかったので、私のほうからもぜひやらせてくださいと、協力させていただきました。

――始めるにあたっては、どのようなシリーズにしたいと考えてましたか。

塙:ジャズのファンにもいろんな方がいるんですけど、基本的にはアナログ盤を中心に聴かれる方が多いんですね。そういう方々に加え、オーディオファンをメインのターゲットに想定しました。あとは、第1弾、第2弾ともにマイルス・デイビスの作品が入ってますけども、歴史的な名盤を若年層のファンにも、アナログ盤で楽しんでもらいたいなという啓蒙活動的意味合いも考えていました。

アナログは聴くのに手間がかかるのが魅力

――啓蒙の意味で、興味はあるけど、まだ一度も聴いたことがないという方々に向けて、アナログ盤ならではの良さを教えていただけますか。

片野:特にここ最近は、コロナ禍で家にいることが多くなって、オーディオも売れているという話も聞きます。良いオーディオで高音質を味わうというのがアナログの楽しみ方のひとつではあるんですが、僕は、いわゆるストリーミングや配信で音楽が手軽に聴けるなかで、聴くのに非常に手間がかかることが魅力だと思っています。

ご存知の通り、アナログ盤はA面とB面があって、片面が大体20分くらいしかないんですね。配信は際限なく音楽が聴けますが、アナログの場合は、ターンテーブルの上に盤を乗せて、針を落として、20分後にはまたひっくり返さないといけない。A面が終わって、B面はまた1曲目から聴くわけですよね。A面とB面にそれぞれの物語があって、当時の作り手もそれを意識していたと思うんです。そうやって手間はかかるけれども、在宅中にゆったりと楽しんで聴けますし、同時に、30cm四方のジャケットを堪能できることも魅力的だなと思いますね。

塙:片野さんとほぼ同じ意見ですね。音に関して言えば、普段、サブスクで聴き慣れてる方は、きちんとしたオーディオで聴くと、音が全然違うんだなっていうことがすぐにわかると思います。

特にジャズは、音の温もりという部分でアナログと相性が良いので、サブスクで聴いていたジャズを、きちんとしたオーディオを使ってレコードで聴いてみると、きっと、それまで聴こえなかった音も感じると思うんですね。

またジャケットについて言うと、もともとは30cmの正方形のレコードのジャケット用にデザインされたものです。ですからCDやサブスクのビジュアルより大きいサイズのアナログ盤で見れば、細かい部分のこだわりなどもわかります。

ジャズのアルバムにはものすごく良いデザインがたくさんあるので、ジャケットを立てかけて、アートワークを眺めながら聴いたり、CDやサブスクで聴くのとはまた違った楽しみができます。巣ごもり中にそういう余裕を持った時間を楽しめるんじゃないかと思いますね。

本シリーズの商品は、ライナーノーツの入ったアルバムジャケット(帯付き)と、別途厚紙に封入されたビニールカバー入りのレコード盤がパッケージされた、コレクター仕様となっている。

ファンの間でも特に人気の大名盤をセレクト

――では、実際に『ジャズ・アナログ・レジェンダリー・コレクション』がスタートすることになって、第1弾のラインナップはどのように考えましたか。

片野:シリーズを継続化させるためには、成功させていかなければいけないということで、まずは、ソニーミュージックが持っているジャズのカタログのなかでも大名盤と言われているマイルス・デイビス『カインド・オブ・ブルー』(1960年)とデイヴ・ブルーベック『タイム・アウト』(1959年)から始めようと思いました。ジャズファンの間でも特に人気のある大名盤をセレクトしました。

マイルス・デイビス『カインド・オブ・ブルー』(MONO)

デイヴ・ブルーベック『タイム・アウト』

塙:歴史的名作や重要作品がたくさんありますので、それらを中心に、ジャズファンやオーディオファンに楽しんでもらえるもの、というのが大前提にありました。でも、そのなかでも少しひねりを加えたというか。マニアックなジャズファンも「お!」と思うようなところも演出したいなと思いまして、『カインド・オブ・ブルー』もただ出すのではなく、モノラル盤とステレオ盤の同時発売を提案しました。日本のレコード会社が手掛けた復刻盤としては、おそらく初めての試みだと思うんですけど。

片野:そうですね。それも、ジャズ界で最大のヒット作と言われる『カインド・オブ・ブルー』だからできたことですね。

マイルス・デイビス『カインド・オブ・ブルー』(STEREO)

塙:ジャケットもモノラル盤とステレオ盤で若干、写真の配置が違ったりするので、音の違いはもちろん、ジャケットの違いも楽しんでもらえればなと思いました。

そのほか、ジャズ界の重要なミュージシャンであるビル・エヴァンスやデイヴ・ブルーベックをラインナップに加えています。多くの人に手に取ってもらえるよう、少し有名どころに寄せてセレクトしています。

――第1弾を2020年9月23日にリリースして、その際に手応えはありましたか。

片野:通常のアナログ盤を再発する場合は、“完全生産限定盤”がほとんどだということもありまして、発売して2、3カ月で在庫自体がなくなってしまうんですね。でもこのシリーズでは、営業担当や工場の製造部門にもお願いして、初回のオーダーよりちょっと多めに在庫を持ってもらいました。余ってしまったらどうしようかという恐怖感もあったんですけども(笑)、結果を見てみますと、半年以上経った現在も売れつづけております。トータルで、初回オーダーの4倍近く出ていますね。

やはり、塙さんのアイデアだった、『カインド・オブ・ブルー』のモノラル盤とステレオ盤を同時に出したことが奏功しまして、特にこの2枚が一番人気です。CDもどんどん売れなくなっている時代に、今回のシリーズは予想以上に売れていて、大成功を収めているんじゃないかと思います。

塙:私は実際にショップをよく覗きに行くんですが、ディスクユニオン各店の担当者やお客さまには概ね好評です。「こだわりを感じる」と言っていただいてますね。

ビル・エヴァンス『ライヴ・イン・トーキョー』は、オリジナル同様の上部の帯も再現した。

今回、通常の復刻と違って、ジャケットもオリジナル盤に近いアートワークで、可能な限り再現したんです。時代が変わって記載が必要になった規定文などは、帯などできるだけ目立たない場所に逃したりと工夫して、オリジナル盤と比べても遜色のないアートワークにこだわりました。

ジャズのアナログのファンは、とってもオリジナル盤に憧れてるんですね。例えば、『カインド・オブ・ブルー』のオリジナル盤が市場に出ますと、状態が良ければ5万~8万円といった高値がつきますので、なかなか買うことはできない。そういった面でも、この再発シリーズには満足の声をいただいていますね。

後編につづく

文・取材:永堀アツオ
撮影:荻原大志

商品情報

『ジャズ・アナログ・レジェンダリー・コレクション』第2弾
2021年6月23日発売
予約・購入はこちら(新しいタブで開く)
 
■マイルス・デイビス『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』(MONO)

 
■アン・バートン『ブルー・バートン』(STEREO)

 
■フィル・ウッズ・カルテット『ウォーム・ウッズ』(MONO)

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