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エンタメビジネスのタネ

タイ国政府観光庁と「アジドラ」が仕掛けるファン投票企画『タイ俳優“推し”アワード』とは?【後編】

2021.11.17

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最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

日本における海外エンタメコンテンツのなかでも近年、女性層を中心に注目を集め、ブームを起こしているのが、タイの若手俳優の登竜門として現地でも人気の高い「タイBL(ボーイズラブ)ドラマ」。その熱気から生まれたのが、10月からスタートしている『タイ俳優“推し”アワード~♡(ハート)を届けよう!~(以下、「タイ俳優“推し”アワード」)』というファン投票企画だ。

タイ国政府観光庁大阪事務所と、アジアのテレビ番組、映画を厳選して放送するCSチャンネル「アジアドラマチックTV(以下、アジドラ)」を運営するソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)が共同主催する本企画。「タイBLドラマ」の出演俳優、作品などに対するファン投票を行ない、日本のドラマ視聴者の熱い思いとメッセージを、タイ国政府観光庁の協力のもと、本国の俳優たちに届けるというプロジェクトだ。

タイ国の魅力を日本に伝える政府機関とSMSとの希有なコラボレーションは、いかにして実現したのか。その経緯と「タイBLドラマ」の人気の理由、『タイ俳優“推し”アワード』開催が目指すものを、3名のキーパーソンに語ってもらった。

後編では、タイ本国でBLコンテンツがどのように受け止められているか。さらに、『タイ俳優“推し”アワード』でつながった、タイ国政府観光庁とSMSの今後の展望について聞いた。

  • 村井茉耶氏

    Murai Maya

    タイ国政府観光庁 大阪事務所
    マーケティングオフィサー

  • 毛利文香

    Mouri Fumika

    ソニー・ミュージックソリューションズ

  • 深澤拓郎

    Fukazawa Takuro

    ソニー・ミュージックソリューションズ

タイBLコンテンツで紐解くタイと日本の文化的接点

――(前編からつづく)男子大学生の先輩、後輩の恋愛を描いた『SOTUS(ソータス)』で初めて、タイの大学には“SOTUS”と呼ばれる先輩が新入生を厳しく躾ける伝統的な教育制度があることを知った方も多いと思います。

村井:まさにそうですね。タイの大学では美男美女を決めるコンテストが普通に行なわれていたり、日本にはない文化を見付けてみるのも楽しみ方のひとつかもしれません。

毛利:私は、「タイBLドラマ」のエンタテインメント性の高さも、非常に魅力だと感じています。タイのBLはストーリーの描かれ方が、とても明るいんですね。もちろん、同性の恋愛を親世代に反対されるとか障害はあるんですが、周りの友人が応援してくれたり、女子が男子同士の恋愛を応援するなど、わちゃわちゃと楽しい雰囲気で物語が進んでいく作品が多いんです。

また、日本で「タイBLドラマ」のブームが起こったきっかけは、コロナ禍による巣ごもり需要でした。世の中の不安な空気のなかで、イケメンがたくさん登場する明るい恋愛ドラマの楽しさが、日本の視聴者のニーズにもマッチしたのではないかと考えています。さらには、熱心な「タイBLドラマ」ファンによるTwitterを通じた拡散が、それを後押ししましたね。

深澤:また近年は、イギリスドラマの『SHERLOCK(シャーロック)』に代表されるような男同士の熱い友情や絆を描くブロマンス作品も流行しています。男性アイドルグループの仲良し感を愛でる楽しさも日本には定着していますから、より「タイBLドラマ」へのアプローチがしやすい状況があったのではないかと思います。

村井:そもそもタイでは、BLコンテンツを“Y(ワイ)シリーズ”と呼んでいるのですが、その“Y”は、30年ほど前に日本から伝わった、“やおい”という言葉の頭文字が由来なんですね。

――BL=ボーイズラブという言葉が広まる前、1970年代後半から日本では、男性同士の恋愛作品を“やおい”と呼んでいましたね。

村井:ですから、タイのBLカルチャーは日本のBLコンテンツとも関わりがあります。そういった背景をベースに、2010年代からBLドラマが盛んになったこともありますので、日本のファンの方たちが「タイBLドラマ」で盛り上がってくださるのにもご縁を感じますね。

――そういうつながりもあるんですね。ところで、性の多様性については、タイでは実際どのように受け入れられているのでしょうか。

村井:直接的な差別意識が少ない、性に対する多様性が認められているというのは、事実としてあると思います。LGBTQ+に関しても、国のなかではしっかり受け入れられていますから、観光庁としてもそういった方々に向けたプロモーションも行なっています。

毛利:タイの現地でリサーチしたわけではないので、私たちもタイと日本でどれくらい性の多様性に対する考え方に違いがあるのかはわかりませんが、先ほども少しお話したように、「アジドラ」ユーザーの方のなかには、「タイBLドラマ」をBLコンテンツと知らずに視聴していて、こういう世界もあるんだと、フィルターのない目線からファンになってくださる方もいました。

「アジドラ」でBLドラマを放送することで、偏見や差別がなくなる、LGBTQ+の認知が拡大できるなどとは考えていませんが、それでも「同性の恋愛の世界観がわからない」「BLは見たことがない」というような方々に、関心を持ってもらうきっかけになれたら良いなとは思いますよね。もちろん、極上のエンタテインメントであることが大前提なので、純粋に作品としても楽しんでいただけると思います。

深澤:男性から見ても、カッコ良く、見目麗しい男性同士が仲良くしている姿は微笑ましいと思います。肩に力の入った特別なLGBTQ+の意識でなくても、同性同士の恋愛が自然なものとして受け入れられる状況が、「タイBLドラマ」などのエンタテインメント作品を通じて、さらにナチュラルに広がっていったらうれしいですね。放送局という立場としても、世界には性に関しても多様性に満ちたいろいろなドラマ作品があるということを、「アジドラ」を通して広げていけたらと考えています。

イチ押しの「タイBLドラマ」作品は?

――先ほど、「タイBLドラマ」の総括的な魅力をお話しいただきましたが、今回の『タイ俳優“推し”アワード』企画を新たなキッカケとして、さらに多くの方に「タイBLドラマ」とタイの若手俳優の魅力、そしてタイ国自体の魅力を知っていただきたいですね。改めて、オススメの作品を教えていただけますか?

村井:世界的に今、最も人気が高いと感じるのは、偽装恋愛から本当のカップルになっていく大学生たちを描いたピュアなラブコメディ『2gether(トゥゲザー)』です。主演のBrightさんとWinさんのおふたりも大変人気があり、ストーリーもとても可愛らしいので、「タイBLドラマ」への第一歩としてはとてもオススメな作品です。

加えて、「タイBLドラマ」のブレイクのきっかけを生んだ『SOTUS』も見逃せない作品ですね。個人的にも一番好きなドラマで、タイの大学生の日常や若者文化も改めて知ることができます。登場するキャラクターも全員が魅力的です。

毛利:『SOTUS』は「タイBLドラマ」界の“実家”と称されている、誰からも長く愛されている作品ですね。

村井:今挙げた2作品は愛情表現も基本的には軽い感じなので、馴染みやすいと思います。もっと大人のリアルな恋愛ドラマを楽しみたい方には、『TharnType/ターン×タイプ』もオススメです。愛情表現はかなり激しめなのですが、こちらも非常に人気のある作品です。

毛利:『TharnType/ターン×タイプ』を「アジドラ」で日本初放送した際のことも印象的です。普通は初回放送が最も視聴率が良いのですが、『TharnType/ターン×タイプ』は過激なシーンが話題となり、口コミでリピート放送に火がつきました。

深澤:現在「アジドラ」では『2gether』のみが放送中ですが、3作品とも「アジドラ」で放送したなかでは「タイBLドラマ」人気ベスト3に数えられますね。

――今後の注目作を挙げていただくとすると?

毛利:昨年、タイで大ブレイクした『I Told Sunset About You ~僕の愛を君の心で訳して~』ですね。主演のBillkin(ビウキン)さん、PPさんも非常に人気な俳優さんです。

村井:『I Told Sunset About You』は映像の美しさも話題ですよね。ロケ地もタイの美しい観光地がたくさん登場するので、日本のドラマファンの皆さんにもぜひ観ていただいて、タイの良さを映像からも味わっていただきたいです。

アナタの1票と思いが本国の俳優たちに届く

――そして『タイ俳優“推し”アワード』は現在、最終ノミネートを決定する第1次投票が終わり、11月18日~12月6日まで行なわれるファイナルの第2次投票がスタートします。その結果、最も得票数の高かった作品、俳優、俳優カップルには、2021年12月下旬~2022年1月予定で、投票に参加してくださったファンのメッセージと感謝状、花束の贈呈を、タイ本国で予定しているそうですね。

村井:はい、私ども大阪事務所の所長が代表として本国に戻り、授賞式を開催して俳優さんに直接、日本のファンの思いをお伝えする予定です。俳優さんたちも、日本に熱狂的なファンがいることはよくご存じなので、きっと喜んでいただけると思います。

――ちなみに大阪事務の所長さんはタイのご出身で、「タイBLに恋したい!」Twitterにもよく登場されていますよね。

村井:はい、所長にはタイの現地での生活を日本の皆さんに知ってもらえるよう、タイグルメの料理レシピ動画を公開したり、タイでの写真を掲載してもらったり、全面的に協力してもらっています。最近では、所長関連の投稿が楽しみという所長のファンの方も増えてきました(笑)。アワード授賞式の模様も、たくさんレポートしてもらえると思います。

――今年が初回となる『タイ俳優“推し”アワード』ですが、SMSとタイ国政府環境庁とのコラボレーションは今後どのような展開になりそうですか?

毛利:『タイ俳優“推し”アワード』は、ぜひ今後もつづけていきたいですね。

村井:もちろんそうですね。それに今年はコロナ禍ということもあって叶いませんでしたが、日本の「タイBLドラマ」ファンの方たちには、ぜひ、実際にタイを訪れていただいてイベントにも参加していただくようなものにしたいですね。そのために、これからもSMSの皆さんにはご協力いただきたいと考えています。

深澤:今回のコラボレーションの最大のポイントは、タイ国政府観光庁が共同主催ということで、俳優の方々にも安心して協力していただけるということがあります。また、今回は大賞の俳優、カップル、作品のみの表彰となっていますが、できればすべての俳優の方にファンの熱いメッセージを届けたいと思っています。ファンの方々からすれば推し俳優はオンリーワンなので。ただ現実的には難しく、その点は投票してくださった皆さんにもご理解をお願いしている状況です。

毛利:村井さんたちタイ国政府観光庁の皆さんとは、アワードにとどまらず、グッズの展開やイベントなど、さらなるファンの拡大、そして実際にタイに足を運んでもらえるような企画を考えていきたいですね。

――さらにSMSでは、特定のスポットに行くと音声や音楽が流れるスマホアプリ『Locatone(ロケトーン)』という聖地巡礼アプリの開発、運営にも携わっています。今後は、そういったソニーグループのテクノロジーの活用にも期待したいです。

深澤:はい。グループシナジーも有効に活用しながら、タイ国政府観光庁の皆さんとドラマファンを増やせる良い企画を実現していきたいですね。

村井:ファンの皆さんに喜んでいただける企画が一番ですし、私どもとしてはタイの観光地を皆さんに知ってもらうこと、そして実際にタイを訪れていただくことが最大の目的です。これからもBLドラマのロケ地情報を含めた現地の新鮮な情報を、政府機関ならではのアプローチで皆さんにお伝えしていきたいと思います。

毛利:村井さんたちが実施されている斬新な取り組みは、エンタテインメント業界が常に模索しているファンエンゲージメントを高める手法としても新鮮でした。エンタテインメント業界にいる我々が、村井さんたちから学ぶことも非常に多いです。『タイ俳優“推し”アワード』をきっかけに、タイのドラマの普及はもちろん、エンタメの力が何かを少しでも良い方向に向かわせるエネルギーになる、そんな新しい企画をこれからもお届けできればと思います。

 

文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

©Sony Music Solutions Inc. All rights reserved.

関連情報

2gether(トゥゲザー)
アジアドラマチックTV(アジドラ)にて11/12(金)より一挙放送中
公式サイト:https://www.c7-2gether.com/(新しいタブを開く)
 
TharnType/ターン×タイプ
Blu-ray BOX 発売中
公式Twitter:https://twitter.com/TharnTypeJP/
 
I Told Sunset About You ~僕の愛を君の心で訳して~
WOWOWにて11月19日(金)一挙放送スタート

関連サイト

タイ俳優“推し”アワード ~タイ俳優へ♡を届けよう!~
https://www.asiadramatictv.com/award/(新しいタブを開く)
 
アジアドラマチックTV 公式サイト
https://www.asiadramatictv.com/(新しいタブを開く)
 
タイBLに恋したい! 公式Twitter
https://twitter.com/ThaiBLLovers(新しいタブを開く)
 
タイ国政府観光庁 公式Twitter
https://twitter.com/AmazingThaiJP(新しいタブを開く)

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