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連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

タイ国政府観光庁と「アジドラ」が仕掛けるファン投票企画『タイ俳優“推し”アワード』とは?【前編】

2021.11.16

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最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

日本における海外エンタメコンテンツのなかでも近年、女性層を中心に注目を集め、ブームを起こしているのが、タイの若手俳優の登竜門として現地でも人気の高い「タイBL(ボーイズラブ)ドラマ」。その熱気から生まれたのが、10月からスタートしている『タイ俳優“推し”アワード~♡(ハート)を届けよう!~(以下、「タイ俳優“推し”アワード」)』というファン投票企画だ。

タイ国政府観光庁大阪事務所と、アジアのテレビ番組、映画を厳選して放送するCSチャンネル「アジアドラマチックTV(以下、アジドラ)」を運営するソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)が共同主催する本企画。「タイBLドラマ」の出演俳優、作品などに対するファン投票を行ない、日本のドラマ視聴者の熱い思いとメッセージを、タイ国政府観光庁の協力のもと、本国の俳優たちに届けるというプロジェクトだ。

タイ国の魅力を日本に伝える政府機関とSMSとの希有なコラボレーションは、いかにして実現したのか。その経緯と「タイBLドラマ」の人気の理由、『タイ俳優“推し”アワード』開催が目指すものを、3名のキーパーソンに語ってもらった。

前編では、『タイ俳優“推し”アワード』というユニークな企画がスタートした経緯から、今、「タイBLドラマ」が注目を集める理由を聞いた。

  • 村井茉耶氏

    Murai Maya

    タイ国政府観光庁 大阪事務所
    マーケティングオフィサー

  • 毛利文香

    Mouri Fumika

    ソニー・ミュージックソリューションズ

  • 深澤拓郎

    Fukazawa Takuro

    ソニー・ミュージックソリューションズ

タイ俳優“推し”アワード ~♡(ハート)を届けよう!~

 
タイのドラマに出演する俳優に対して、ファンとしての熱量や感謝を伝えるアワード企画。思いを伝えたい俳優やドラマ内のカップル、好きな作品や自分がおすすめしたい作品に対して“推し”投票を行ない、ハートの数が最も多かったカップル1組、俳優1名、1作品に対して、タイ国政府観光庁が代表して、感謝状と集まったメッセージ、花束の贈呈を予定している。

「タイBLドラマ」のファン投票企画が立ち上がったきっかけ

――まずは、今回初めて実現した『タイ俳優“推し”アワード』企画のコンセプトから教えてください。

深澤:ここ数年、私どもSMSが運営しているCS放送チャンネルの「アジドラ」を筆頭に、多くのタイドラマが日本の放送局や有料配信サイトで放送されるようになりました。なかでも女性層のファンを中心に熱狂的なブームを巻き起こしているのが、新鮮なラブストーリー体験をもたらしてくれるタイのBLドラマです。

ご存じの方も多いと思われますが、BL=ボーイズラブのドラマは男性同士の恋愛を描いていくお話です。若手イケメン俳優がたくさん出演している「タイBLドラマ」は、タイ俳優の方々のファンも急増させています。

毛利:そこで、タイで活躍する俳優の皆さんに、ぜひ日本の「タイBLドラマ」ファンの熱い思いを伝えるとともに、より多くの方にタイのドラマの魅力を普及したく、立ちあげたのがこのファン投票企画でした。

 

アジアドラマチックTV

 
SMSが運営するCS放送チャンネル。1998年のチャンネル開設以降、韓国、中国大陸および台湾を中心に、アジア諸外国、地域のドラマや映画、バラエティ番組などを放送してきた。近年は、韓国ドラマ、中国ドラマが中心の番組表だったが、2019年にタイのBLドラマ『SOTUS(ソータス)』を放送したのが好評を博し、以降、多くのタイドラマも放送している。

――そもそも「アジドラ」では、いつごろから「タイBLドラマ」の放送を始めていたのでしょうか。

毛利:タイ本国で2016年に大ヒットした『SOTUS(ソータス)』を、2019年に放送したのが最初ですね。日本の放送局で「タイBLドラマ」の人気作を放送したのは、それが初めてで。そこをキッカケに日本のBLファン、海外俳優ファンのなかで注目が高まり、ほかの放送局、海外番組の配信サイトなどでも「タイBLドラマ」が積極的に扱われるようになっていきました。

――まさに「アジドラ」が「タイBLドラマ」の火つけ役になったわけですか。

深澤:実際に火をつけたのはファンの方たちで、私たちはそれを盛り上げる役割ですね。やっぱりそれぐらいファンの方々のエンゲージメントは高いと感じます。また、「タイBLドラマ」のヒットが拡大したのには、ほかにも理由があって。「アジドラ」では、『魔道祖師』という小説を原作にしている『陳情令』など、中国制作の実写ドラマも放送しているのですが、こちらも同じようにファンの方々から熱い支持を受けてきました。

毛利:『陳情令』は、ファンタジー作品であり「タイBLドラマ」とは異なるジャンルではありますが、イケメン俳優の方たちによって描かれる群像劇が好評で、ヒットコンテンツになっています。

中国で制作されたドラマはBL作品ではなく、男性同士の熱い友情を描くブロマンス作品と位置づけられることが多いですが、「タイBLドラマ」の人気とまさしく相乗効果で市場を広げていってくれたという印象ですね。実際に『SOTUS』と『陳情令』は、放送後に同じような反響と手応えがあり、これはどちらにも注目していかなければいけないと感じました。

■『陳情令』に関連する記事はこちら
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政府機関がタイBLコンテンツをサポートする理由

――そういった背景が出発点となった『タイ俳優“推し”アワード』ですが、共同主催としてタイ国政府観光庁大阪事務所が名を連ねられていることにも驚きがありました。このようにポップな企画に協賛されることになったのは、どのような経緯があったのでしょうか。

村井:私自身もタイのBLドラマの大ファンだったので、去年の初めごろから日本で急速に「タイBLドラマ」の認知が拡がっているのは知っていました。また、ファンの皆さんの熱量の高さもわかっていたので、昨年秋ごろからタイのBLコンテンツが好きな方に向けた、タイ観光のPR活動を始めることにしたんです。

その一環で、日本のファンの方たちに向けた観光小冊子「タイBLに恋したい!ロケ地ガイドブック」を制作することになったんですが、その際、『SOTUS』の国内の放映権をお持ちだったSMSの皆さんに場面写真などのご提供をお願いすることになって、ご連絡させていただいたのが最初のコンタクトでしたね。

深澤:はい。ちょうど、ご連絡いただいたタイミングに「アジドラ」では、「タイBLドラマ」の人気作『TharnType/ターン×タイプ』を日本で初めて放送することが決定していたんです。そこで、タイ国政府観光庁の取り組みを「アジドラ」でも宣伝しませんか? というご提案をさせていただいたところ、スポンサードを快諾していただき、そのご縁があって今回のコラボレーションが実現しました。

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村井:親日国でもあるタイ本国の観光庁でも、ソニーミュージックグループの方々とご一緒させていただけるというのは大きなニュースになりました。実は観光庁として、エンタテインメント企業と何かを共同主催するのは初めての試みだったのですが、そのことを懸念する声も一切なく、スムーズに話が進みました。

毛利:そのご対応が、とてもありがたかったです。「アジドラ」は長年、韓国、中国大陸および台湾のドラマや番組を中心に放送してきましたが、当然、それ以外のアジア諸国、地域で生まれる良質なコンテンツにも力を入れていきたいと考えていました。

そのなかには、当然タイのコンテンツも日本のマーケットにどんどん紹介していきたいという思いがあって。人気急上昇中の「タイBLドラマ」をフィーチャーするのは非常に効果的だと考えたんです。そこで、村井さんにもご相談に乗っていただきながら、一緒に何か面白いことができないか? とアイデアを出し合い、生まれたのが『タイ俳優“推し”アワード』の企画でした。

――ちなみに村井さんは、タイ国政府観光庁公式Twitterアカウントとして、「タイBLドラマ」専用アカウント「タイBLに恋したい!」も運用されていると伺いました。こちらも実にユニークな取り組みですね。

村井:タイBLコンテンツのファンの方々は、インターネットでの情報収集やファンコミュニティの拡大にTwitterを利用されている人が多いんですね。そこでタイ国政府観光庁がBL専用Twitterを開設したら、そういった皆さんとうまくリレーションが図れるのではないかと思って、昨年の10月から独自に運用を始めたんです。

最初は、おっしゃる通りで政府機関の取り組みとしては前例がないものだったので不安もありましたが、つづけるうちにフォロワーの方もどんどん増えていき、『タイ俳優“推し”アワード』の認知拡大にも一役買えて良かったと思っています。

■タイ国政府観光庁公式Twitterアカウント「タイBLに恋したい!」はこちら

――今では1万7,000人以上のフォロワーが、応援してくださっていますね。

村井:はい。まさかここまで注目していただけるとは思っていなかったので、私自身も驚いています(笑)。ちなみに、「タイBLに恋したい!」のツイートでこだわっているのは、タイ国政府観光庁だからこそ出せる情報ですね。

「タイBLドラマ」ファンの皆さんは、タイの文化そのものにも強い興味を示してくださるので、皆さんから質問をいただいたときは、それにお答えしつつ、タイの最新情報をご紹介したり、ファンエンゲージメントを高めることは強く意識しています。また日本国内だけでなく、フィリピン、インド、韓国、中国などアジア全域からのフォロワーさんも増えているので、少しずつではありますが、英語での投稿も行なうようにしています。

――タイ政府の反応はいかがですか?

村井:Twitterの取り組みや『タイ俳優“推し”アワード』の実施も含め、日本の「タイBLドラマ」を軸としたPR活動のフィードバックの良さは、タイ政府にも高く評価してもらっています。本国でも中国や韓国などをはじめ、アジア諸国、地域に向けて、「タイBLドラマ」を活用した観光プロモーションができないか? という検討が始まっているとも聞いているので、日本での活動がその先駆けになれたのはうれしいことですね。

「タイBLドラマ」の魅力とは?

――日本での「タイBLドラマ」人気は、「アジドラ」での『SOTUS』の放送から拡大したというお話でしたが、タイ本国でBLドラマはどのような受け止められ方をしているのでしょうか?

村井:世界のドラマファンからも支持されている大人気作『2gether(トゥゲザー)』や『SOTUS』などが王道作品として注目を集めていて、そこは日本とあまり変わらないかもしれません。ファン層は、若手俳優が好きな10代から大学生ぐらいまでの若い世代の支持がとても厚く、メジャーな作品は、若手イケメン俳優の登竜門的な存在と言えると思います。

タイでは、地上波での放送とLINE TVがメジャーメディアと言われますが、タイのドラマはYouTubeでも無料で視聴できるため、若者層はYouTubeで見ていることが多いようですね。

提供:コンテンツセブン/©GMMTV COMPANY LIMITED, All rights reserved

毛利:ファン層は日本のほうが幅広いと思います。「アジドラ」では10代の若い方から、ご年配の方にも見ていただいているというデータが出ていて。最近では、韓国ドラマファンのミドルエイジの女性が、「タイBLドラマ」にも注目されているという状況もできつつあります。「アジドラ」で初めてBLドラマを体験して、意識が変わったとおっしゃる方もいらっしゃいました。

深澤:最高齢は80代の方なのですが、「『タイBLドラマ』を好きになって、新しい人生を見付けることができました」という熱いメッセージをいただいたこともありましたね。

毛利:「タイBLドラマ」ファン層が拡大したおかげで、女性誌が「タイBLドラマ」特集を組んだり、テレビ誌から「タイBLドラマ」専門ムックが創刊されるなど、ファン層はますます広がっています。

――そこまで熱を持って愛されてる、「タイBLドラマ」の一番の魅力は何だと思われますか?

村井:ルックス、演技力を含めて、やはり俳優さんの魅力が一番だと思います。あとは、タイの文化がドラマを通してすごく伝えられているところですね。「タイBLドラマ」は学園を舞台にした物語が多いのですが、大学生は学生食堂で朝食を食べる習慣があるとか、親日国という背景もあって日本料理や日本のものが結構ドラマに登場するとか、日本の皆さんに興味を持っていただける要素が散りばめられているのもポイントかもしれません。

 
後編につづく

文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

©Sony Music Solutions Inc. All rights reserved.

関連情報

2gether(トゥゲザー)
アジアドラマチックTV(アジドラ)にて11/12(金)より一挙放送中
公式サイト:https://www.c7-2gether.com/(新しいタブで開く)
 
TharnType/ターン×タイプ
Blu-ray BOX 発売中
公式Twitter:https://twitter.com/TharnTypeJP/

関連サイト

タイ俳優“推し”アワード ~タイ俳優へ♡を届けよう!~
https://www.asiadramatictv.com/award/(新しいタブで開く)
 
アジアドラマチックTV 公式サイト
https://www.asiadramatictv.com/(新しいタブで開く)
 
タイBLに恋したい! 公式Twitter
https://twitter.com/ThaiBLLovers(新しいタブで開く)
 
タイ国政府観光庁 公式Twitter
https://twitter.com/AmazingThaiJP(新しいタブで開く)

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