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連載Cocotame Series

担当者が語る! 洋楽レジェンドのココだけの話

オアシス【前編】普段着のジャージでステージに上がるのすらカッコ良い

2021.11.18

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世界中で聴かれている音楽に多くの影響を与えてきたソニーミュージック所属の洋楽レジェンドアーティストたち。彼らと間近で向き合ってきた担当者の証言から、その実像に迫る。

今回のレジェンドは、今年、結成30周年およびネブワース公演25周年を迎え、映画『オアシス:ネブワース1996』で再び注目を集めるオアシス。ノエルとリアムのギャラガー兄弟率いるイギリスのロックバンドとソニーミュージックとの深い関係とは。長年にわたり彼らとのプロジェクトを手掛けてきたソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)の小沢暁子と、現在、ノエル・ギャラガーのソロプロジェクト、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズを担当する、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(以下、SMJI)の仲田彰恵に話を聞く。

前編では、『オアシス:ネブワース1996』でも見られるオアシスというバンドの本質的な魅力、そして、直に接したノエル・ギャラガーの人柄を語る。

オアシス Oasis

(ネブワース公演時のメンバー/写真左より)ポール“ボーンヘッド”アーサーズ(ギター、キーボード)、ノエル・ギャラガー(ギター、ボーカル)、リアム・ギャラガー(リードボーカル)、ポール“ギグジー”マッギーガン(ベース)、アラン・ホワイト(ドラム)。1991年に、メイン・ソングライターのノエル・ギャラガーと、その実弟であるボーカル、リアム・ギャラガーを中心に結成されたイギリスのロックバンド。1994年、シングル「スーパーソニック」でデビュー。同年9月に発表した1stアルバム『オアシス』が英国チャートで初登場1位を獲得し、一躍時代の寵児となる。以降、兄弟以外のメンバーチェンジを繰り返しながら全7枚のオリジナルアルバムを発表し、全世界で7,500万枚以上のセールスを記録。キャッチーでストレートな音楽性で人気と評価を得るいっぽうで、ギャラガー兄弟のいさかいが度々メディアで取り上げられ、最終的に、2009年の活動休止の一因にもなったという経緯もあり、“世界一兄弟仲の悪いバンド”とも言われる。
今年劇場公開され、11月19日に音源と映像が発売される『オアシス:ネブワース1996』には、1996年8月10日と11日の2日間で延べ25万人を動員した、イギリス・ネブワースでの野外コンサートの模様を収録。ステージのみならず、ライブチケットを求めるファンの様子などからも、オアシスの絶頂期を知ることができるドキュメンタリーとなっている。

  • 小沢暁子

    Ozawa Akiko

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 仲田彰恵

    Nakada Akie

    ソニー・ミュージックレーベルズ

デビューから一度もレーベルが変わってないのは日本だけ

──まずはおふたりのオアシスとの関わりから聞かせてください。

仲田:私は、SMJI のフロントライン・マーケティングを担当している部署に在籍しています。2012年からSMJIにいるんですが、最初は宣伝部で、ノエル・ギャラガーのソロデビューアルバム『ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ』(2011年)のリリースのときは、ラジオなどのプロモーションをしていました。

2019年からノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズの担当になり、その5月にツアーで来日したときにノエルと初めて対面しています。作品としては配信限定EP、パッケージとしては今年リリースしたベスト盤『バック・ザ・ウェイ・ウィー・ケイム:Vol.1(2011 - 2021)』を担当しました。

ノエル・ギャラガー

小沢:現在は、ソニーミュージックグループのヘッドクオーターであるSMEに在籍しています。1990年代の洋楽セクションは、SMEインターナショナルとEPICインターナショナルにレーベルが分かれていて、私はSMEインターナショナル側でパール・ジャムやフィオナ・アップルといったアーティストを担当していました。2001年に洋楽レーベルが今のSMJIに統合され、私はオアシスの6枚目のアルバム『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』(2005年)から担当になりました。その後も、新譜リリース時の作業は現場の若手ディレクターに任せながら、オアシス関連業務全般は引きつづき担当しています。

アルバム『ドント・ビリーヴ・ザ・トゥルース』(2005年)

オアシスは、本国ではソニーミュージックを離れてビッグブラザーという自分たちのレーベルからリリースするようになったりと変化しているんですが、日本でのレーベルはずっとソニーミュージックなんです。デビューから一度もレーベルが変わってないのって、世界中で日本だけなんですよ。それくらい長いお付き合いですね。

──日本だけ、デビュー時からレーベルが変わってないというのは珍しいですね。

仲田:そうなんです。今、ノエルもオアシスもSMJIから出せてるのは、本当に小沢さんのおかげなんですよ。

小沢:いやいや(笑)。私は、2008年にソニー・ミュージックパブリッシングとの兼務という形で、SMEのマーケティングルームに異動したんですが、そこでの最初の仕事が、イギリスのソニーミュージックから離れることになったオアシスを、日本では直接契約してもらえるよう、つなぎとめることでした。

マーケティングルームではレーベルの機能とは違うトライアルもしていて、展覧会の開催やファンクラブ、マーチャンダイズビジネスのサポートなども行なっています。洋楽アーティストの場合、本国のマネジメントやアーティストと直接ビジネスをすることが多く、今でもあらゆる取り組みを一緒につづけているのがオアシスなんです。

──なるほど。結成30周年、ネブワース公演25周年を迎えた今年、ドキュメンタリー映画『オアシス:ネブワース1996』が公開され、11月19日にその音源と映像がリリースになります。長年関わっているおふたりは、この作品についてどんな感想を持ちましたか?

『オアシス:ネブワース1996』 日本版予告編映像

小沢:当時オアシスは、デビューからたった2年でしたが、イギリスでは既に圧倒的な人気があった状況ですよね。あのころのバンドとファンの熱がいかにすごかったかをわかりやすく見せていると思いました。SNSやサブスクリプションがない時代だったということもありますが、それ以上にバンドとファンの濃密な関わり、関係値がすごくリアルだということが描かれていると思います。

──バンドとファンの距離の近さが見えますよね。

小沢:オアシスって、スターなんだけど一般の人との線引きがあまりないというか。初期のころなど、ステージに上がるときも普段着のジャージ姿で(笑)。なのに、それがオアシスだとカッコ良い。なんなら、ネブワースのライブで着ているセーターも、なんかダサいけど、もはやカッコ良く見えちゃう、そんな存在だったんですね。

ノエルとリアムの兄弟ゲンカをメディアが面白がって報じるのも、普通のアーティストならもう少し怒ると思うんですよ。だけどあの人たちはそんなに怒らない。

(左より)ノエルとリアムのギャラガー兄弟。

そもそも、そういった報道のせいで、オアシスは兄弟ゲンカばっかりしてるように見えるかもしれないですが、常にケンカしかしていないということではなくて。特にリアムはノエルが大好きなんです。ふたりは年齢が5つ離れていて、中学生と小学生みたいなもんだから、アニキのノエルにしたら、リアムはうるさい弟なわけですよ。でもノエルのほうも、決して嫌いじゃないっていうのが根底にあったと思います。

以前ノエルが、「オアシスを構成する3つの要素は?」という質問に、「オアシスは、オレとオレの曲とリアムの声」って答えてたんです。ボーカリストとしてのリアムの声が秀逸でずば抜けてるっていうのは、ノエルもはっきり公言していますね。

──兄弟だからこその仲違いはあっても、お互いの才能はずっと認めていますよね。

小沢:キャラクター的にも面白いバンドでありつづけ、素晴らしい曲を世に出しつづけてきた奇跡のマッチングだと思いますね。ひとつ言いたいのは、この映画が公開されてから世間的に“ネブワースこそがオアシスのキャリアの頂点”のような感じになっていますが、あそこだけがキャリアのピークではないと思います。たくさんある山のひとつだった。ただ、彼らにとっては、心に刻まれた特別な瞬間になったということなんですよ。

ファンのハンパないバンドへの愛情と、強い繋がり

リアム・ギャラガー(『オアシス:ネブワース1996』より)

──オアシスは、この“ネブワース”後、世界的なバンドになっていきました。

小沢:はい。そのあと彼らは、イギリスのウェンブリー・スタジアムでライブをやり、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでも、2度ライブを行ないました。私はマジソン・スクエア・ガーデンでのイギリスのバンドのライブをいっぱい観てきましたが、大体上のほうの席がうっすら空いてることが多いんです。でもオアシスは、2008年の2回目のマジソン・スクエア・ガーデン公演も超満員でびっくりしました。ニューヨーク、ニュージャージー、ひょっとしたらペンシルバニアあたりからもイギリス人が全員来てる(笑)? と思うくらい、ほんとに「オレたちのオアシス!」って感じで会場が大合唱だったんです。イギリスのバンドがニューヨークのど真ん中で1万2,000席を埋めるっていうのは簡単なことじゃない。でも、オアシスにはそれができたんですよ。

──本当にファンの気持ちを掴んでるということの表われだと。

小沢:しかも、ニューヨークなのに、客層が全然おしゃれな層じゃないんです。庶民的なパブでビールを飲むような人たちばかりで。彼らのハンパないバンドへの愛情を感じるし、その繋がりがすごく強いなってことは、そのころから感じてましたね。『オアシス:ネブワース1996』で改めて、オアシスは数字的な記録よりも、ファンとの絆が別次元で強いバンドだということを思い知りました。

「リヴ・フォーエヴァー」 ライヴ・パフォーマンス映像(『オアシス:ネブワース1996』より)

──仲田さんは『オアシス:ネブワース1996』を見てどんなことを感じましたか。

仲田:“ネブワース”は、ビッグステージでの2日間のお祭りって感じで、本人たちもすごく楽しかったんだなっていうのが伝わってきました。コロナ禍で以前ほどライブに行けない状況で見たので、ライブを体験する映画として心躍るものがありました。この興奮をまた味わいたいと思いましたね。

なかでも私がすごく感動したのが、ファンがライブのチケットを取るために必死に電話をかけまくるシーンで。昔は自分もやってたし、その、チケット発売日の開始時間に電話を握りしめる感じって懐かしいんですよね。私も友達と一緒に電話をかけまくってました。

──ネットサービスが主流になる前からの音楽ファンなら、おそらくみんな経験がありますよね。

仲田:そうだと思うんですよ。それくらい、当時の自分にとってライブに行くということが超ビッグイベントだったんです。開場して、みんながわーっと走って最前列を確保するシーンとか、「わかる! 好きなアーティストの待ちに待ったライブのときって、こうだった!」って共感しますよね。

今は、良くも悪くもライブがお手軽なものになった感覚もあると思うんです。ただ、コロナ禍になってライブのありがたみを感じて、そういうなかで見たので、より響くものがありましたね。

「シャンペン・スーパーノヴァ」 ライヴ・パフォーマンス映像(『オアシス:ネブワース1996』より)

あと、私は日本のバンドマン全員にこの映画を見てほしいなって思いました。ファンもこれだけの気持ちでライブに来てるんだということが再認識できるし、人をそれくらいの気持ちにさせられるアーティストというのは偉大だなと感じました。きっとアーティスト側としても、とてつもなく大きなやりがいを感じられる瞬間ですよね。

実際に本人たちと会っても印象が変わらない

ノエル・ギャラガー(『オアシス:ネブワース1996』より)

──おふたりはメンバーとも直接関わっていますが、実際の彼らも映画で見るような感じなんでしょうか。

小沢:映画のなかでファンの人が、「あいつらはオレたちだ、オレたちはオアシスだ」って言ってるんです。それはやっぱり、オアシスがファンとの間に線を引こうとしてなかったからで、そういうバンドって珍しいんですよね。カメラの前でリップサービスで言う人たちはいるけど、オアシスはリアルに線引きをしないバンドだったと思うんです。実際に本人たちと会っても、その印象が変わらないんですよ。

仲田:そうなんですよ、本当にメディアで見る姿と変わらない印象があります。私みたいなロックファンからすれば、ノエル・ギャラガーは神、レジェンドなんです。雑誌などでインタビューを読んでいたころから、辛辣なコメントをしていたり、皮肉たっぷりなところもすごくあるけど、決して性格が悪い人じゃないだろうなっていうのはわかってはいました。とは言えロックスターですから(笑)、会ってみたら全然違うかもしれないじゃないですか。なので、最初に対面したときはドキドキでしたけど、本当にイメージのまんまの人で。まさしく裏表がまったくない人でした。

──これまでオアシスに関わってきた方は、皆さん、「彼らには裏がない」って言います。

仲田:私は比較的若いアーティストと関わることが多いんですけど、やっぱり、なかにはひと癖ある人もいるんです。アーティストなので、こちらが計り知れないストレスもあるとは思いますが、彼らの言動で周りのスタッフがバタバタすることも時にはあります。

でもノエルの場合は、取材を組んだりといったプロモーション活動をするなかで、アーティスト本人からも、周りのスタッフからも、ストレスを感じることがまったくないんです。もちろん、良い緊張感はあるんですが、すごく良い意味で普通の人、めちゃ良い大人って感じなんです。それでつい、こちらも接しているときにどんどんリラックスしちゃうんですが、ライブを観ると急に、「うわ、あのノエル・ギャラガーだ!」って我に返るんですよ(笑)。ビョークもそういうタイプでしたね。彼らは普段は普通の人なんだけど、でも実は超スーパースターなんですよね。

 
後編につづく

文・取材:土屋恵介

最新情報

『オアシス:ネブワース1996』
2021年11月19日発売 (国内盤4形態)
 
■2CD <スタンダード・エディション>【通常盤】
ジュエルケース仕様
 

 
DISC1&DISC2:ネブワース2公演音源より、フルセットリストを構成【高品質Blu-Spec CD2仕様】
 
■2CD + Blu-ray <デラックス・エディション> 【完全生産限定盤】
24Pハードカヴァー・ブック仕様
 

 
DISC1 & DISC2:ネブワース2公演音源より、フルセットリストを構成【高品質Blu-Spec CD2仕様】 、DISC3:劇場版 『オアシス:ネブワース1996』(日本語字幕付)【ブルーレイ】
 
■3DVD
 

 
DISC1:劇場版 『オアシス:ネブワース1996』(日本語字幕付)、 DISC2:1996ネブワース公演初日フルライヴ (MC部分日本語字幕付) 、DISC3:1996ネブワース公演2日目フルライヴ (MC部分日本語字幕付)
 
■Blu-ray(映像全部入り1DISC)
 

 
PART1:劇場版 『オアシス:ネブワース1996』(日本語字幕付)
PART2:1996ネブワース公演初日フルライヴ (MC部分日本語字幕付)
PART3:1996ネブワース公演2日目フルライヴ (MC部分日本語字幕付)
 
詳細はこちら(新しいタブで開く)
 
 
『バック・ザ・ウェイ・ウィー・ケイム:Vol.1(2011 - 2021)』ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ
発売中
 

 
詳細はこちら(新しいタブで開く)

関連サイト

オアシス 公式サイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/Oasis/ (新しいタブで開く)
 
オアシス 日本公式Twitter
https://twitter.com/Oasis19931997 (新しいタブで開く)
 
オアシス 日本公式オンラインショップ
https://www.rocket-exp.com/Oasis/(新しいタブで開く)
 
Official Knebworth HP(海外)
http://www.oasisknebworth1996.com(新しいタブで開く)
 
ノエル・ギャラガー 日本公式サイト
http://www.sonymusic.co.jp/noel(新しいタブで開く)
 
ノエル・ギャラガー 日本公式Twitter
http://twitter.com/#!/NoelGallagherJp(新しいタブで開く)

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