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連載Cocotame Series

THEN & NOW 時を超えるアーティスト

郷ひろみインタビュー:「順応しつつオリジナリティを出す。その“ファインライン”を探っている」【前編】

2022.03.24

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日本の音楽シーンで存在感を放ち、時代を超えて支持されつづけるレジェンドアーティストをクローズアップ。本人へのインタビューで、過去と現在の活動を辿る連載「THEN & NOW 時を超えるアーティスト」。

今回は、今年8月に歌手デビュー50周年を迎える郷ひろみ。昨年より“50周年イヤー”と銘打ってさまざまなプロジェクトを展開し、4月からは、その山場のひとつである全国ツアーがスタート。第一線で活躍をつづける唯一無二のシンガーが、これまでの道のりと時代との向き合い方を語る。

前編では、コンサートツアーへの思いや、106枚目のシングル「100GO!回の確信犯/狐火」など、現在の活動について聞く。

  • 郷 ひろみ

    Go Hiromi

    1955年10月18日生まれ。福岡県出身。血液型A型。1972年8月1日、シングル「男の子女の子」でCBS・ソニーより歌手デビュー。「よろしく哀愁」(1974年)「お嫁サンバ」(1981年)、「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」(1984年)ほか、ヒット曲多数。

“50”は、ただ通り過ぎるだけにしておけない数字

2021年10月18日“HIROMI GO CONCERT TOUR 2021 “Beside The Life” ~More Than The Golden Hits~”より

――2022年8月1日にデビュー50周年を迎えるにあたり、昨年から“50周年イヤー”と銘打って、さまざまなプロジェクトを展開していらっしゃいます。その一環で、4月17日からは、60本以上に及ぶ全国ツアー“Hiromi Go 50th Anniversary Celebration Tour 2022~Keep Singing~”が始まります。

全国ツアーは、一昨年も、去年も、コロナ禍のガイドラインに則りながらやってきてはいたんですね。客席を半分にしてでもやりたいと言うイベンターさんも多かったですし、それを観たいと言ってくださる方もたくさんいらっしゃった。

というのも、歌手としてのデューは1972年の8月なんですけど、ファンクラブの発足は、その前の1971年なんです。そこからの50年。ま、基本、僕はあまり数字にこだわるタイプではないんですけど、それにしても“50”という数字は大きいじゃないですか。ただ通り過ぎるだけにしておくことはできないですし、ましてや、ここまで来られたのは、自分ひとりの力ではなく、ファンクラブの方たちがいてくれたからこそでもある。その感謝の気持ちを込めて、去年、今年、そして来年までを、“50周年イヤー”という大事な括りとして捉えているんです。

2021年10月18日“HIROMI GO CONCERT TOUR 2021 “Beside The Life” ~More Than The Golden Hits~”より

もちろん、ずっとショウを作ってきているので、その感謝の気持ちをどうステージとして見せるかという部分では、一昨年、昨年のツアーとの比較ということにも当然なってきます。

――2021年のツアー映像を拝見し、とても緻密に組み立てられたショウという印象を持ちました。

ありがとうございます。“ショウ=SHOW”ってもともと「見せる」という意味ですから、僕自身の動きも含めたビジュアル、そして、サウンド、そのすべてがシンクロしたものを考えていくわけですけど、照明にしても音響にしても、日進月歩で技術が進化しているので、それをどう取り入れて、いかしていくかということは毎回課題になります。今回は、これまでやってきたなかでも超ド派手で楽しいものを作りたいというふうには思ってます。

――50周年ならではの特別感がありそうですね。

それと、長くやってきて曲のバリエーションは豊富にあるので、「わー、懐かしい」という曲はもちろん、「こんなナンバーもあったんだ?」というところも楽しんでいただけたらなと。さらに、皆さんが聴きたいと思われる曲が、どんなふうにカタチを変えて出てくるのか、あるいは変えないで出てくるのか、その辺も見どころになってくると思います。もちろん、観てくださる方たちの目線も大事にしていきますが、それ以前にまず、60本以上に及ぶステージを自分が飽きることなく臨めるものにしなきゃいけない。ひと言で言うと、観客も自分も「毎回めちゃくちゃ楽しいよな」と思えるショウにしたいということですね。

――今回のツアーでひとつの山場を迎える“50周年イヤー”プロジェクトですが、スタート時の昨年8月4日に「100GO!回の確信犯/狐火」という106枚目のシングルを発表されています。「100GO!回の確信犯」のほうは、10代のトラックメイカー・SASUKEとのコラボも話題になりました。

[official] 郷ひろみ 「100GO!回の確信犯」 Music Video

SASUKEくんは、本当に素晴らしい才能の持ち主。そういう人と一緒にできるのは幸せなことですね。そして、そういう人と出会えるというのも、きっと僕自身が普段生活するなかで、「あ、これは面白い」、「これは真似すべきだな」と常に意識して物事を見聞きしているからかもしれないなと思ったりします。

心を閉ざしていたら新しい発見はできないと思うので、そこは心掛けています。それと、ソニー・ミュージックレーベルズの制作サイドをはじめ、各方面のスタッフからさまざまな提案が上がってくるので、自分なりに検証して「なるほど。これは良いよな」と思ったものは積極的に取り込んでいるということもあります。

――来るものに対して、常にオープンで、柔軟でいらっしゃるんですね。

今日もトレーニング帰りなんですけど、身体の柔軟性と同じく心の柔軟性も大事ですよね。特にこの世界では、本当の意味で心が常に開かれていることが要求される。僕はそう思っているんです。

――それが、「100GO!回の確信犯」での世代を越えたコラボにつながった。

新しいことは次々とやってきます。でも、大事なのは、それを自分がどんなふうに受け入れるのかということ。そして、「これは受け入れたほう良いな」と思ったときに、ちゃんと受け入れられる自分であるのかということなんです。放っておけば身体も心も硬くなっていきますから。

「100GO!回の確信犯」ミュージックビデオより

――いっぽう、もう1曲の「狐火」は、バート・バカラックが2020年にリリースした新作のカバーです。「THE FIRST TAKE」で歌われているのを見てとても感動しました。SASUKEさんは頼もしい下の世代、バカラックは現役で活躍する上の世代。対照的だとも。

郷ひろみ - 狐火 / THE FIRST TAKE

確かに、年齢幅はものすごくありますね。「狐火」を歌うことに僕自身が首を縦に振ったのは、そのギャップの面白さもあったと思います。それと単純に、「これは素晴らしい曲だ!」と思ったことも大きいんです。バート・バカラックはもう90歳を超えていらっしゃいますよね。それでもなお現役で、こんなに素晴らしい新しいものを作られていることに、大いに触発されました。僕自身もそうならなきゃいけないなと思いましたね。何事も年齢のせいにしないということは常日ごろから心掛けてはいるんですけど。

――「狐火」の元歌である「Bells of St.Augustine」には、御年93歳のバート・バカラックのオリジナリティや年輪といったものが凝縮されています。

年を重ねていくことには良い部分もたくさんある、というふうに思わせてくれましたね。バカラックの今の年齢だからこそあの曲は生まれた。そこを感じることができるのであれば、僕もあの歌を歌って良いのかもしれないと思えたんです。今の自分の表現力を信じて自分のものにしていこうと、そういう思いで取り組みました。

キャリアを重ねるほど、見極めが必要になってくる

2021年“HIROMI GO CONCERT TOUR 2021 “Beside The Life” ~More Than The Golden Hits~”より

――さて、先ほどはライブ演出の技術の進化という話も出ましたが、郷さんは今、TikTok、配信ライブ、サブスクリプションの解禁など、音楽の届け方でも最新の取り組みをたくさんされています。音楽業界の変化というものを、どのように見ていらっしゃいますか?

僕が音楽を聴き始めたころは、レコード盤に針を落とすのが当たり前でした。それがCDとなり、今や物自体もなくなって、配信で聴くのが主流となっていますよね。レコーディングにしたって、昔は分厚いテープだったのが、今はパソコンを使ったシステムに取って代わられてる。僕はその変遷をずっと真っ只中で見てきたわけですけど、これからどうなっていくかは、皆目見当がつかないです(笑)。ただ、これはもう順応していかなきゃいけないんだろうなとは思います。

――そこもオープンな気持ちでいたいということでしょうか?

いや、そこが難しくて、順応していくばかりでは僕はダメだと思うんですよ。順応しつつ自分のオリジナリティをいかに保つか。それが大事で、かつ、難しいところだなと。だから、一生懸命進化にしがみつきながらも、自分を見失わないようにしているんです。

なかには、自分を見失わないために世の中の動きに絶対迎合しないという人もいます。それもひとつの考え方。でも、僕は、それだとただ取り残されていくような気がするんですね。いっぽうで、自分のオリジナリティも忘れちゃうくらい順応に必死になる人もいます。でも、それも、端から見たら「無理があるよね」ということになってしまうのかなと。

例えばですが、料理の世界でもそうだと思うんです。「すごく前衛的だよね」というものと「ちょっとコンサバすぎない?」というものの間に、“ファインライン”と呼ばれる微妙な範囲があって、シェフの皆さんはなんとかそこを見付けようとするわけです。ただ、そこに入るものを作るのは本当に至難の技。僕にとってのその“ファインライン”は、進化に順応しつついかにオリジナリティを出すかということで、そこをいつも探っています。行きすぎてない、かつ、行かなさすぎていないっていう微妙なラインですよね。

――料理と同じく、まさに匙加減。

はい。そこを理解しているだけでもきっと大きいんだろうなというふうには思っています。正解かどうかはわからないんですけど、そういう取り組みはこれからも変わらずやっていきたいです。キャリアを重ねるほどに、そういう見極めが必要になってくるんだろうなというふうにも思います。「じゃあ実際、どこが“ファインライン”なの?」と聞かれても、僕のなかでも本当に感覚的で抽象的なものなので、言葉にするのは難しいんですけど。

――でも、郷さんのなかにはあるんですね?

確固たるものがあります。だからこそ、自分らしさという部分は昔から変わらないんだと思うんです。あるいは変わっていったとしても、端的にいうと、自分の色みたいなものは残る。残しつつ、新しいものをいかに取り入れるか。その気持ちの表われが、SASUKEくんという若い世代、そして、バカラックという遥か上の世代とのコラボだったんじゃないかなと思います。

コンサートをつづけていくということが今まで以上に大事

2021年“HIROMI GO CONCERT TOUR 2021 “Beside The Life” ~More Than The Golden Hits~”より

――多くの人が音楽をサブスクで聴く今、曲が本当に届いているかどうかを、アーティスト側が実感しづらくなっているんじゃないかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

アーティストはきっと皆同じ思いのような気がします。というか、もう数字で見えるようなものに重きを置かなくなってきてると思うんですよ。

――届いているかどうかを数字で計って一喜一憂するのではなく、ご自身が何に取り組むかということのほうを重視するという?

そう、大事なのかなと思います。自分のクリエイティビティと向き合って音楽を作っていくことももちろん重要なんですけど、僕はやっぱりコンサートをつづけていくということが、今まで以上に大事になっている気がするんです。

――コンサート会場でリアルに感じたいという人々の欲求も、距離のある時代だからこそ強くなっているとも言えます。

コンサートには、そこに立つ人のすべてが出ますからね。僕はそこに重きを置いています。でも、だからこそ、コンサートをするための音楽制作も大事なんですよ。つまり、常に良いもの、新しいものに触れていることが重要になってくるんでしょうね。

――循環を更新しつづけるということなんですね。生の一発録りを見るという「THE FIRST TAKE」に若い世代が惹かれるのも、逆説的ですが、今という時代をすごく象徴している気がします。実際に、「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」と「狐火」をやられてみて、いかがでしたか?

郷ひろみ - 2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン- / THE FIRST TAKE

“生”に心を動かされるということが、どんな時代になってもあるんでしょうね。僕は、生放送の歌番組など、“生”が当たり前の時代に育ってきたので、臨むにあたっての躊躇や恐怖心はまったくなかったです。自分がどこまで楽しめるか、どこまでできるかということに集中しました。「THE FIRST TAKE」の現場のスタッフには、「郷さん、どんどん動いてもらって大丈夫です」って言われたんですよ。「そんなに動いて良いんですか? だって録るんですよね?」というやりとりをしつつ(笑)。

――「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」では、けっこう派手なジャケットプレイをされていましたよね。

あれでも普段のパフォーマンスの1割ぐらいしか動いてないんですよ。「ヘッドホンのコードが絡まるから、回るのは無理だよなぁ」なんて考えたりして。だから、右回りした瞬間に左回りして……いやいや、そんなことは絶対無理だな、とか(笑)。

後編につづく

文・取材:藤井美保

最新情報

“Hiromi Go 50th Anniversary Celebration Tour 2022~Keep Singing~”
日程:4月17日~10月28日
詳細はこちら(新しいタブで開く)

 

関連サイト

公式サイト
https://www.hiromi-go.net/(新しいタブで開く)
 
オフィシャルミュージックサイト
http://www.hiromigo.com/(新しいタブで開く)
 
Twitter
https://twitter.com/hiromigostaff(新しいタブで開く)
 
Instagram
https://www.instagram.com/hiromigo_official/?hl=ja(新しいタブで開く)
 
YouTubeチャンネル Hiromi Go Official YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCNqlZCafj9fqb9lEChEvDhA/featured(新しいタブで開く)

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