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サステナビリティ ~私たちにできること~

子どもたちに質の高い音楽を――ソニー音楽財団が『こども音楽フェスティバル』で伝えたいこと【前編】

2022.04.28

ソニーミュージックグループでは、持続可能な社会の発展を目指して、環境に配慮した活動や社会貢献活動、多様な社会に向けた活動など、エンタテインメントを通じたさまざまな取り組みを行なっている。連載企画「サステナビリティ ~私たちにできること~」では、そんなサステナビリティ活動に取り組む人たちに話を聞いていく。

今回スポットを当てるのは、公益財団法人ソニー音楽財団(以下、ソニー音楽財団)の取り組み。1984年の設立以来、同財団では“子どもたちに良質な音楽を届ける”という理念を活動の柱のひとつに掲げ、教育格差の解消、子育てをめぐる環境改善、コロナ禍における情操教育の提供など、音楽を通してさまざまな活動を展開している。

そんなソニー音楽財団が、サントリー芸術財団とのパートナーシップにより5月4日~7日に開催するのが、子どもをメインターゲットにしたクラシック音楽の祭典としては世界最大級の『こども音楽フェスティバル』だ。このフェスでは、『サントリーホール』とその周辺施設を会場として、子どもたちの年齢に応じたコンサートやイベントなどを気軽に楽しむことができる。プロジェクトに携わるソニー音楽財団の担当者に、フェスの開催意義や、子どもたちに質の高い音楽を届けつづける、サステナブルな取り組みについて話を聞いた。

前編では、『こども音楽フェスティバル』の企画意図、趣向を凝らしたプログラムについて語ってもらう。

  • 戸上眞一

    Togami Shinichi

    公益財団法人ソニー音楽財団
    企画事業部長

  • 野口雅裕

    Noguchi Masahiro

    公益財団法人ソニー音楽財団

公益財団法人ソニー音楽財団とは


初代理事長である故・大賀典雄により、1984年10月に財団法人ソニー音楽芸術振興会の名称で設立。2012年4月より公益財団法人ソニー音楽財団となり、以下の4つを軸とした活動を行なっている。
 
■子どもたちへの良質な音楽の提供
■誰もが気軽にクラシックを楽しめる環境づくり
■若いアーティストの育成・支援
■子どもへの音楽を通した教育活動に対する助成
 
1985年には、“妊婦の方にやさしいコンサート”をテーマにしたマタニティコンサートの先駆けとして、第1回『0才まえのコンサート® ~ママのおなかは特等席~』を開催。1999年からは未就学児を対象にした『Concert for KIDS ~0才からのクラシック®~』をスタートさせ、現在でも数多く開催される人気のコンサートとなっている。

マタニティコンサートのパイオニア

──まずはじめに、公益財団法人ソニー音楽財団とソニーミュージックグループの関わりについて教えてください。

戸上:ソニー音楽財団は、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のファウンダーであり、当時はソニー株式会社の社長を務められていた、大賀典雄さんにより設立されました。ソニーグループとSME、2社からの支援を中心に成り立っており、どちらともつながりの深い間柄です。

野口:ただ、ソニーグループ、ソニーミュージックグループ、どちらにも属さず独立した組織となります。クラシック音楽を通して、CSR活動、社会貢献活動を行なう公益財団法人という位置付けです。

──これまでの活動について、紹介していただけますか?

野口:まず1985年から開催しているのが、妊婦さんとおなかの赤ちゃんに向けた『0才まえのコンサート® ~ママのおなかは特等席~』です。ソニーのファウンダーである井深大さんは、“赤ちゃんが生まれる前から知能、情操が育まれることの重要性”を提唱されていて、このコンサートもその提言を具現化する形で始まりました。

現在は、同様のコンサートがたくさん開催されていますが、当時は前例がなかったそうです。マタニティコンサートのパイオニア的なシリーズになっています。

戸上:その後、1999年に誕生したのが『Concert for KIDS ~0才からのクラシック®~』です。当時は、未就学児が入場できるクラシックコンサートはほとんどなく、小さなお子さんと一緒にクラシック音楽を楽しみたいというニーズに応えるために、このシリーズが生まれました。こちらも、今なおつづく人気のコンサートシリーズとなります。

──どちらも、ソニー音楽財団の看板と言えるシリーズですね。

野口:はい。我々にとって、とても大事な企画です。ニーズはありつつも、今まで世の中になかったものをご提供したコンサートとして、多くの方から評価していただいています。

戸上:そのほかの活動でも、年齢に合わせたプログラムを幅広く展開してきました。『Concert for KIDS』は、「赤ちゃんが生まれたあとも楽しめるコンサートを作ってほしい」というお母さん方の声から生まれたコンサートですが、その後「子どもがもう少し大きくなってからも楽しめるコンサートも作ってほしい」という声をいただいて、『10代のためのプレミアム・コンサート』などが生まれました。今も時代のニーズを考慮して、プログラムをアップグレードしたり、新しいシリーズを生み出す活動をつづけています。

子どもたちが泣いても、席を立っても大丈夫

──小さなお子さん、それこそ乳幼児は、コンサート会場で泣いて大きな声が出てしまったり、じっとして音楽を聴いているのが難しいのではないかと思います。そのようなお子さん連れの方々が来場しやすいよう、どんな工夫をされているのでしょうか。

野口:親御さんは「子どもがコンサート中に泣いてしまうんじゃないか」「周囲に迷惑をかけてしまうんじゃないか」と心配されますよね。なので、『Concert for KIDS』シリーズでは、お子さんの状況に合わせて、会場の出入りを気軽に行なっていただくようお伝えしています。周りのお客さまも、同じように小さなお子さんといらっしゃっているので、遠慮していただく必要はありません。

そして、それが当たり前のコンサートだから、会場はとてもあたたかい空気に包まれています。そういった環境で、くつろいで音楽を楽しんでいただけるということをずっとお伝えしてきました。

また、会場に来たものの、授乳室やおむつ交換スペース、ベビーカー置き場がなければ困ってしまいますよね。そういった設備がないホールで開催する場合は、基本的に我々の方でそれらのスペースをご用意します。お子さん連れの方々が不安を感じる点を可能な限り減らし、安心してコンサートに足を運んでいただけるよう対策を練っています。
※現在は感染症対策のため設置できない場合もあります。

戸上:あとは1~3歳ぐらいのお子さんの場合、長時間、音楽に集中することが難しいので、長尺の曲は短く編曲したり、曲間に身体を動かすようなコーナーを設けるなどして、お子さんを飽きさせない工夫にも取り組んでいます。

──そういった工夫も、回を重ねるごとにアップデートしていったのでしょうか。

野口:私たちが在籍する前の話なので伝聞になってしまいますが、『Concert for KIDS』を立ち上げる際には、お試しのモニターコンサートが行なわれたそうです。そこでアンケートを取り、いただいたご意見を参考にコンサートは作り込まれていきました。

また、現役スタッフである我々も公演後のアンケートはとても大切にしていて、いただいたご意見、ご要望をもとに新しい工夫を取り入れるようにしています。さらに昨今のコロナ禍においては、感染症予防対策を日々状況に応じてアップデートさせながらコンサートを制作してきました。

戸上:加えて、リピーターのお客様に対する工夫も行なっています。子ども向けコンサートは、フォーマットや内容が決まっていることも多く、「リピーターになったのに前回と同じ内容だった」というケースも少なくないようです。

しかし、ソニー音楽財団の場合は、基本フォーマットは設けつつ、曲目やアーティスト、楽器構成などは毎回変えています。各地域のホールが主催し、我々がコンサート制作を担当するケースでも、その地域のお客さまの特性、年齢層について入念な打ち合わせをした上で、プログラムを構成。次回、再度ご来場いただいたときにも、フレッシュな気分で楽しんでいただけるように努めています。

──人気シリーズとして定着した裏には、そうした取り組みがあったんですね。

戸上:おかげさまで認知度が高まり、全国から「ぜひ開催してください」とお声が掛かるようになりました。チケットを発売すると、すぐに売り切れることも多くなっています。

また、近年ではマタニティコンサートの開催意義が浸透してきて、ソニー音楽財団以外でもたくさんのマタニティコンサートが開催されていますし、各都道府県の自治体が無料でコンサートを開催するようなケースも増えてきました。

我々のコンサートや取り組みを見て、ステークホルダーの方々が好意的に捉えてくださり、自分たちでも主催してみようとチャレンジされる、この状況を生み出せたことに、我々の活動が少しでも貢献できているのであれば、うれしい限りです。

──利益よりもマタニティコンサートというものが世の中に浸透することの方が大事ということですね。

戸上:はい。妊婦の方とおなかの赤ちゃんが、上質な音楽に触れられる機会を作ることが最も大切だという考えで取り組んでいます。

ふたつの財団のシナジーから生まれた多彩なプログラム

──そんなソニー音楽財団ですが、今年のゴールデンウィークにサントリー芸術財団とパートナーシップを結び『こども音楽フェスティバル』を初めて開催されます。この企画の発端について聞かせてください。

野口:ソニー音楽財団は、35年以上活動をつづけてきました。そうしたなかで、自然発生的に「我々の活動の象徴、集大成になるようなイベントを開催できないだろうか」という話がスタッフから挙がってきました。そこで喧々諤々しながら、どんなことができるかを話し合い、子どものためのクラシック音楽フェスティバルを開催することを目標にして動き始めたんです。それが6~7年ぐらい前のことですね。

戸上:規模の大きなフェスとなると、当然、資金も必要です。予算を積み立てたり、寄付や協賛を募ったりするところも含めて、時間を掛けて進めていきました。

『こども音楽フェスティバル』のタイムテーブル。

──当初から、2022年に開催する予定だったのでしょうか。

野口:もともとは2020年7月に開催する予定でしたが、コロナ禍の影響で泣く泣く延期することになりました。ただ、そのときも中止するという選択肢は我々にはなく、どうしても実現させたいという思いで再度トライして、今年開催することになったんです。

──『こども音楽フェスティバル』は、“フェス”というだけあって総勢300名以上のアーティストが出演する一大イベントになります。最初から、この規模での開催を予定していたのでしょうか。

野口:最初に、できること、やりたいことについて、夢物語も含めてアイデアを列挙していくブレストがありました。そこから現実的に内容を詰めていくなかで、会場については『サントリーホール』を貸していただけないかと、ホールを運営しているサントリー芸術財団にご相談に行ったんです。

せっかく子どもたちに上質な音楽を届けるなら、最高のホールで聴いてほしい。そんな思いで企画をお話したところ、趣旨に賛同してくださり「それなら、ぜひ一緒にやりましょう」とご提案をいただきました。おかげさまで、当初我々が夢物語としていた規模で、フェスを実現できることになりました。

戸上:我々にはコンサート制作のノウハウはありますが、幅広い年齢層のお子さんやご家族に向けたフェス形式のイベントは初めてで、自分たちだけでどこまでできるのか未知数な部分がありました。

そこに我々とは異なるやり方、切り口で日ごろから子ども向けのコンサートを多数手掛けていらっしゃるサントリー芸術財団が共催として参加してくださったのは、大きな力になりました。両財団のノウハウを融合させることで、プログラムも充実させることができています。

『こども音楽フェスティバル』の会場となる『サントリーホール』。

──サントリー芸術財団との共催になったことで、具体的にはどのようなシナジーが生まれたのでしょうか。

野口:お互いの人気コンテンツを『こども音楽フェスティバル』で展開するのはもちろん、共同で制作したプログラムもあります。例えば『はじめてのオペラ「ヘンゼルとグレーテル」~おかしな森とお菓子な魔女~』が代表例です。こちらは両財団で一から考えた企画で、客席の皆さんにも一部参加していただく参加型オペラになっています。

また、『サントリーホール』だけでなく、周辺のホテルやアークヒルズの中心にあるアーク・カラヤン広場といった施設にもご協力いただき、エリア全体がフェスの会場となり、フェスを盛り上げる企画も実施します。

いっぽう、ソニーが開発したテクノロジーで手軽に本格的な立体音響を体験できる『360 Reality Audio』の試聴スペースを設けたり、ソニー・ミュージックソリューションズとライブエグザムに運営のサポートをいただくなど、それぞれのコネクションをフル活用することで、シナジーを生み出せていると思います。

──当日は、ソニー音楽財団の公式YouTubeチャンネルやサントリーホールのオンライン配信プラットフォーム「デジタルサントリーホール」で無料のライブ配信もされるんですよね。これも両財団ならではの取り組みだと感じました。

戸上:やはりコロナ禍を心配されている方や遠方で来場できない方もいらっしゃるので、かねてからライブ配信は検討していました。ただ、有料にしてしまうとクラシック音楽を日常的に聴く習慣がない方にとってはハードルが高くなってしまいます。

フェスの公式アンバサダーを務めるピアニストの清塚信也さんから、クラシック音楽はホールで生の音を浴びてもらうのが最大の音楽体験なので、配信は門戸を開くことと、この取り組みを広く知っていただくためにも無料にすべきではないかとご提案いただき、すべて無料で配信することになりました。また、公演の合間にはパーソナリティやゲストのトークも挟んだりと、従来のクラシックコンサートの配信とは一味違う内容になりそうです。

『こども音楽フェスティバル』公式アンバサダーの清塚信也。

──アニメをスクリーンで流してオーケストラの生演奏を楽しむ『名作アニメ×スクリーン!』や、絵本と音楽を組み合わせた『えほんだいすき! アンダーソンだいすき!!』、プラネタリウムも楽しめる『ほしぞら音楽会~プラネタリウム・コンサート~』なども、ただクラシック音楽を聴くだけでなく、子どもたちがより親しみやすいように工夫されたプログラムになりそうですね。

野口:それぞれの財団がつづけてきた取り組みのノウハウが、しっかりいかされていると思います。プラネタリウムは我々が考えたアイデアで、絵本はサントリー芸術財団のアイデア。おすすめの年齢を設定しているのですが、なぜおすすめなのか、どこが見どころなのか、ポイントを考えた上でプログラムを構成しました。

一過性のフェスティバルではなく、継続させることが重要

──子どもをメインターゲットにしたものでは、世界最大級と言っても過言ではないクラシック音楽の祭典になりそうですが、こうしたフェスが一過性ではなく継続されることが持続可能な社会の発展、サステナブルな取り組みにつながるのではないかと思います。このスケールの子ども向けクラシック音楽フェスティバルを、今後もつづけていく考えはありますか?

戸上:具体的なことは何も決まってはいませんが、サントリー芸術財団とも企画を立ち上げた当初から、一発の大きな花火で終わらせないようにしたいというお話をしています。

とは言え、この規模のものを開催するのは、人手的にも予算的にも大変ハードルが高いというのが実情。まずは、今回のフェスの反響を受け、それぞれの財団が開催する子ども向けコンサートにフィードバックし、その集大成としてまた次のフェスにつなげていけたらと考えています。

──クラシック音楽のフェスということでは、他社、他財団が主催するものもあります。競合イベントとの棲み分けについては、どのように考えていますか?

野口:繰り返しになりますが、我々の一番の目的は“より多くのお子さんに良い音楽に触れていただくこと”です。もし同時期に子ども向けの音楽フェスティバルが開催されるのであれば、一緒に盛り上げていきたいですね。ソニー音楽財団としては、音楽とのタッチポイントが増えるのは純粋に喜ばしいこと。その上で、「やっぱりソニー音楽財団のイベントは楽しいよね」と感じていただけたら一番うれしいです。

後編へつづく

文・取材:野本由起
撮影:篠田麦也

こども音楽フェスティバル

開催日:2022年5月4日(水・祝)~5月7日(土)
場所:サントリーホール、およびアーク・カラヤン広場等 周辺施設
 
プログラムの詳細、チケットの購入方法はこちら
 
■『こども音楽フェスティバル』無料ライブ配信
ソニー音楽財団YouTube公式チャンネル『こどものためのクラシック』
https://www.youtube.com/channel/UCjtxBdsKe5RBSgcqTj_SL0A
 
『デジタルサントリーホール』
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/dsh/

関連サイト

公益財団法人ソニー音楽財団
https://www.smf.or.jp/
 
こども音楽フェスティバル
https://www.kofes.jp/

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