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担当者が語る! 洋楽レジェンドのココだけの話

ジョー・ストラマー【後編】心に訴えかけるジョーの言葉は愛されつづけていく

2022.06.07

世界中で聴かれている音楽に多くの影響を与えてきたソニーミュージック所属の洋楽レジェンドアーティストたち。彼らと間近で向き合ってきた担当者の証言から、その実像に迫る。

今回のレジェンドは、不世出のパンクロッカー、ジョー・ストラマー。没後20年である今年は、彼がフロントを務めたザ・クラッシュのデビュー45周年でもあり、大ヒットアルバム『コンバット・ロック』の40周年記念盤もリリースされた。ジョー・ストラマーとザ・クラッシュの歴史と功績を、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルの担当者に聞く。

後編では、徐々に崩壊していくザ・クラッシュと、日本を愛したジョー・ストラマーのエピソードを明かす。

ジョー・ストラマー Joe Strummer

1952年8月21日生まれ、2002年12月22日没。イギリス出身。1977年、ザ・クラッシュのボーカル兼ギタリストとしてレコードデビュー。1999年、ジョー・ストラマー&ザ・メスカレロスを結成。また俳優として、『ストレート・トゥ・ヘル』(1987年)、『ミステリー・トレイン』(1989年)などのアート系映画にも出演した。

  • 白木哲也

    Shiroki Tetsuya

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 栗原憲雄

    Kurihara Norio

    ソニー・ミュージックレーベルズ

『コンバット・ロック』の大ヒットは有終の美

前編からつづく)──アメリカで大成功したクラッシュでしたが、そこからバンドは崩壊していきましたね。

ザ・クラッシュ

白木:『コンバット・ロック』(1982年)は大ヒットしたものの、その発売直前にトッパー・ヒードンが脱退し、プロモーションとライブをバンバンやるなかでバンドがギスギスしていって、1983年にはミック・ジョーンズまでもが解雇されてしまうという。売り上げや存在感は大きくなったアルバムですけど、それとは逆に、バンドとしてはバラバラになっていくきっかけになってしまったアルバムなので、ちょっと複雑な思いはありますね。まさに光と影、最後の花火的な作品だと思います。

──ジョー・ストラマーの相棒的存在だったミック・ジョーンズを欠いたザ・クラッシュの存続は難しく、1985年のアルバム『カット・ザ・クラップ』を最後に解散となりました。

白木:ジョーも新しいことをしようとしたんでしょうけど、やっぱりミックが抜けたのは大きかったですね。ミックが一番ザ・クラッシュのポップな部分を担っていて、メロディアスでわかりやすい楽曲を書いていたとも言えます。ジョーとミックというのがバンドの両輪であったにもかかわらずミックを解雇してしまったわけで、そこで終わっちゃった感じがしますね。

栗原:ジョーとミックが作品を作っていく上でのバランスが一番よくまとまったのが『コンバット・ロック』だったのかなと思います。ミックの脱退だけを切り取ると残念ですけど、できあがった作品を聴く限りにおいては、やっぱりふたりの関係性の最後にきっちり売れるものを作ってくれたっていう気はすごくします。

確かに、ザ・クラッシュの名盤となると『ロンドン・コーリング』(1979年)を挙げる人もいますし、デビュー作の『白い暴動』(1977年)はパンクの名盤だと思っていますが、『コンバット・ロック』という大ヒット作を作って、有終の美を飾ってくれたって感覚はありますね。

──そのあとミック・ジョーンズはビッグ・オーディオ・ダイナマイト(BAD)を結成して良い作品を残しました。ザ・クラッシュ解散後のジョー・ストラマーは俳優をやったりもしましたよね。ジム・ジャームッシュ監督の映画などで、イメージと違うコミカルな役をやったりして、意外な感じもありました。

白木:正直、違和感はありましたけどね(笑)。でも、ジョーが脚本を読んだり、監督と話して納得したからこそやったんでしょう。やらされるってことは絶対ないでしょうから。常に新しいこと、違うことをやろうとしていた人だから、もしかしたら映画では今までの自分と違うイメージを出そうとしていたのかもしれないですね。ザ・クラッシュがなくなって、いろいろ迷っていた時期だったとは思うんですよ。

──ザ・クラッシュ解散後は、ザ・ポーグスなどほかのアーティストの作品に参加したりしていましたね。

白木:その後しばらくして、若いミュージシャンとメスカレロスというバンドを組んで、そこで変わった。自分でラジオDJを始めたりもして、自分が影響を受けてきたルーツミュージックや新しいアーティストを紹介したりするといった活動をすることで、新たな発見や、自分自身を見つめなおす機会ができたんだと思います。

ジョー・ストラマー&メスカレロス

メスカレロスのサウンドは決して商業的な音楽ではなかったですけど、本人的にはひとつ道が開けた感じはあったと思います。ミックはBADで、ジョーはメスカレロスでそれぞれ新しいことを体現していこうとしたんでしょうね。それがセールス的にどうだったかは別にして、それぞれの道を良い形で歩んでいたと思います。自分のイメージはこうだ、こういう自分をみんなに見せなきゃいけないっていう縛りから、解き放たれたということもあったと思いますけどね。

──ザ・クラッシュで体現したパンクスピリット、貫く姿勢というのも、行き過ぎると自由さを狭めてしまうことになりますよね。

白木:それはジョーだけでなくミックにもあったと思います。2011年にミックがBADの再結成で『フジロック』に出たとき、インタビュー現場で会ったんですが、そのとき7月の終わりでめちゃくちゃ暑いなか、ミックが冬物の長いコートを着て出てきたんです。“え、大丈夫?”ってびっくりしましたね(笑)。それくらい自分の見せ方、かっこつけ方を考えてたんですよね。汗だくで、途中で脱いではいましたけど(笑)、それくらいのこだわりを感じました。

ロックスターというより、導いてくれるような人

──1990年代後半から2000年代頭のジョー・ストラマーも、『フジロック』の人という印象が強いです。

白木:ジョーは『フジロック』に行くと、豪華なホテルに泊まるんじゃなく、テントでみんなで一緒に焚き火を囲んで語り合うみたいなことをしていたっていう逸話があるんですよ。有名になったロックバンドの人で、そんなことする人、ほかにいないですよね。

ジョーに会った人はみんな感動するんですが、飾らない姿もそうですし、一つひとつの言葉が心に突き刺さるんでしょう。ロックスターらしくないというか、良い先生というか、導いてくれるような人みたいな感じがあるのかもしれないですね。

栗原:ジョーが来日したときにいろんな人と会ってるんですけど、会った人たちみんなから出てくるのが良い話ばかりなんです。例えば、泊まる場所がないスタッフに自らホテルを手配したとか、そうした良い人エピソードが次々出てくる。みんなの心に、ジョーはとにかく良い人だっていう残り方をしてますよね。本当、義理人情の人だなって感じはすごくします。ザ・クラッシュは、ワールドワイドで見たときに日本は結構売れたマーケットですが、ジョーの義理人情に厚いキャラクターが、日本のファン層にしっかり届いたというのもあると思いますね。

──ジョー・ストラマーのそういった話は本当に良く聞きますよね。1997年の嵐の『フジロック』で遭難しかけた人が、命からがら転がり込んだテントで外国人の方に介抱されたんだけど、それがジョー・ストラマーだったってあとから気付いたというエピソードを聞いたことがあります。

白木:そういうことなんですよ。“それホント?”っていう話がいっぱいあるんです。ジョーはそういうことをなんの損得も考えずにやっちゃう人なんだと思います。それはいろんな人たちの話を聞くたびに、いろんなインタビューを読むたびに感じますね。ひとりの人間として、素晴らしい人だったんだろうなって思います。

──そもそも、自分の出番のない日本の音楽フェスに海外のアーティストが観客として参加してキャンプしてるなんて、普通あり得ないじゃないですか。

白木:まずないですよね。ザ・クラッシュでは1回しか日本に来てないけど、ジョーは日本が好きだったんでしょうね。業務的な話になりますが、先述のディレクター、野中さんの代から脈々とつづく関係性のなかで、何かプロダクトを出すときも、ザ・クラッシュ側は意外と許してくれるんです。1979年に、全面帯仕様の『パール・ハーバー'79』という日本独自の企画盤を出したり、ポール・シムノンがアートワークを手掛けた7インチシングル・ボックス『シングルズ’77~’79』も日本のみでリリースしました。

『パール・ハーバー'79』(1979年)

『シングルズ’77~’79』(1979年)

LP時代の『ロンドン・コーリング』は、日本盤だけ見開きジャケットだったりもしますし、2019年に『ロンドン・コーリング』の40周年記念盤をアナログで出したときは、日本だけクリアヴァイナルで出させてくれて。今回の『コンバット・ロック 40周年記念盤』も、日本だけがクリアヴァイナル仕様なんです。

『ロンドン・コーリング』の40周年のとき、アナログのテストプレスをチェックしてもらうために、イギリスに送ったんです。そのとき、偶然ミックがSony Music UKにいて、我々が送ったテストプレスを聴いて即オッケーしてくれたっていう、僕らとしてもすごくうれしいこともありました。そうやって、日本の企画や音作りをザ・クラッシュ側が信頼してくれている。なおかつジョーは、『フジロック』のあの雰囲気が大好きだった。ジョーに直接お会いしたことはないですけど、親近感を覚えますし、彼らも日本に親しみを持ってくれていたように思いますね。

──ちなみに、ミック・ジョーンズはどんな感じの人でした?

白木:以前の担当者から、「取材を全部キャンセルされて、物を投げつけられた……」なんて怖い話も聞いていたので、2011年の『フジロック』で来日したときに取材のリクエストをしたものの、果たして本当に取材エリアに現われるのか? と、ドキドキもんだったのですが、本当に時間きっかりに来てくれました。会うまでは、すごく怖い人なのかな? とビビッてたんですが(笑)、めちゃくちゃ良い人でしたね。真夏にコートで出てきたり、しゃべったり、ただずんだりする姿、ライブで演奏する姿、すべてがカッコ良かったです。そのときはもう、全然、何かを投げつけられるような雰囲気はなく(笑)、ジェントルマンで非常に優しい感じでした。インタビューにも真面目に答えてくれましたし、ジョーとのことも話してくれて。「ジョーに、日本に行ったほうが良いよってずっと言われてて、ようやく来ることができたんだ。ありがとう」って言ってました。ジョーが亡くなる前の最後のライブに、ミックが飛び入り参加したんですよね。そのときのことも振り返って、「仲直りできて良かった」と言ってましたね。

心に訴えかけるジョーの言葉は愛されつづけていく

──ジョー・ストラマーは2002年12月22日に、50歳という若さで亡くなりましたが、彼の作った音楽は今も輝いています。最後に、ジョー・ストラマー、ザ・クラッシュが残してくれたものへの思い、今に与える影響を聞かせてください。

栗原:やっぱり1970年代のロックの流れだと、パンク以前のバンドは、テクニックを身につけて曲も狙いを絞ってという、マーケティング色が強くなっていたと思うんです。そういう時代にジョーは、演奏が下手でも良い、オレはこれを伝えたいんだ! という魂の叫び、人間の根源的なものを音楽で訴えたと思うんです。そういうものが、彼の歌、ザ・クラッシュの曲からはストレートに伝わってきますよね。英語がわからない自分にもニュアンスで伝わってくる感じがすごくありますし、心に訴えかけてくるジョーの言葉は、今もこれからも愛されていくんだろうなと思います。

白木:ザ・クラッシュはひとつのイメージに縛られていないと思うから、もちろんアルバム順で聴いても良いし、もしかしたら一番なじみやすい『コンバット・ロック』から聴くのも良いと思いますね。それに、音楽を聴くだけじゃなく、インタビューやライナーノーツを読むと、また違う発見があると思います。

曲を聴いて素直にカッコ良いと思えるだけでなく、人間が人間に惚れる、憧れるという気持ちを感じられる存在だと思います。僕はいまだにブルース・スプリングスティーンが好きだし、栗原さんもずっと好きなボブ・ディランを担当していますが、そういう「一生ついていきます!」という経験ができることが、ロックの素晴らしい部分でもあったりするじゃないですか。そういうのって素敵なことだと思うんです。そういう経験をしたことがないのであれば、ジョー・ストラマー、ザ・クラッシュは、惚れるに値する最高のバンドだなって気はしますね。

──ドキュメント映像もいくつかありますし、1978年のイギリスの音楽フェスを撮ったドキュメント映画『白い暴動』(2019年)にも出演しています。ザ・クラッシュのファンを描いたハーフドキュメンタリー映画『ルード・ボーイ』(1980年)など、当時の彼らの姿が見られるさまざまな映像が残っています。

白木:ジョーの死後にもいろんな映像が出てきてどれもカッコ良いので、そういうところからザ・クラッシュに触れるのも良いかもしれないですね。一番有名なジョーの言葉、「Punk is attitude.not style」っていう、パンクはスタイルじゃない、姿勢だって言葉や、「やるしかないのに、そんな簡単なことがわからない人間が多すぎる」っていう言葉も良いですよね。「友がいてこそ人生、オレはそう思う」も痺れます。もう、ひと言ひと言がカッコ良いんですよ。

今年は、ザ・クラッシュのデビュー45周年、初来日公演と『コンバット・ロック』発売40周年、そしてジョー没後20年。いろいろな節目の年ですし、これを機に、これまで知らなった人たちにも、ジョー・ストラマー、ザ・クラッシュの魅力に触れていただけたらと思います。

文・取材:土屋恵介

リリース情報

『コンバット・ロック+ザ・ピープルズ・ホール(40周年記念盤)』
試聴・購入はこちら

 

『コンバット・ロック(40周年記念Clear Vinyl)』
試聴・購入はこちら

関連サイト

公式サイト:
https://www.sonymusic.co.jp/artist/TheClash/

 

『コンバット・ロック』40周年特設サイト
https://www.110107.com/clash_combat_rock

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