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連載Cocotame Series

THEN & NOW 時を超えるアーティスト

野宮真貴インタビュー:「歌とおしゃれ。私のテーマはずっと変わらない」【後編】

2022.07.15

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日本の音楽シーンで存在感を放ち、時代を超えて支持されつづけるレジェンドアーティストをクローズアップ。本人へのインタビューで、過去と現在の活動を辿る連載「THEN & NOW 時を超えるアーティスト」。

今回登場するのは、1981年にシングル「女ともだち」でデビューし、歌手活動40周年イヤーをさまざまな活動で彩っている野宮真貴。2001年に解散したピチカート・ファイヴ最後のボーカリストであり“渋谷系の女王”と言われる野宮真貴にとっての40年間とは。これまでの出来事を振り返りつつ、現在の想いを聞く。

後編では、ピチカート・ファイヴ解散後の自身の音楽活動と、音楽だけにとどまらない現在の活動についても語る。

  • 野宮真貴

    Nomiya Maki

    1960年3月12日生まれ。北海道出身。1981年9月、シングル「女ともだち」でソロシンガーとしてCDデビュー。1982年、音楽ユニット、ポータブル・ロック結成。その後、1990年に3代目ボーカリストとしてピチカート・ファイヴに加入。「東京は夜の七時」などのヒット曲で、“渋谷系”と呼ばれた音楽ムーブメントを牽引した。2011年よりソニー・ミュージックアーティスツ所属。2022年4月にデビュー40周年記念アルバム『New Beautiful』をリリース。

渋谷系の名曲を歌い継いでいくという使命

前編からつづく)――ピチカート・ファイヴ楽曲のセルフカバーにつづき、2014年には“渋谷系を歌う”というカバーシリーズをスタートさせました。“渋谷系の女王”の帰還を祝福するように渋谷系ブームが再燃し、90sカルチャーが注目されました。

『野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。~Wonderful Summer~』トレイラー映像

『野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う。』アルバム・ダイジェスト・ムービー

野宮真貴「SUMMER BEAUTY 1990」~Miss Maki Nomiya sings “Shibuya-kei Standards” 2014~【official video】

少しでもきっかけになっていたらうれしいですね。1990年代にヒットした渋谷系の音楽はおしゃれなだけって思われがちですが、実は名曲揃いですし、渋谷系のミュージシャンたちがリスペクトする、元ネタになっている音楽も素晴らしい楽曲がたくさんあるということを伝えていけたら良いなと思って。“渋谷系”と言われた時代から25年以上経って、そのころの楽曲をスタンダードナンバーとして歌っていけるんじゃないかっていう気付きがありました。

“渋谷系を歌うシリーズは、いわば、“渋谷系スタンダード化計画”でもあったんです。“元祖・渋谷系の女王”という称号もいただいているし、事務所もずっと渋谷にあるし、恩返しの気持ちもあって、シンガーとして、渋谷系の名曲とそのルーツをスタンダードナンバーとして歌い継いでいくのが使命なのかもしれないと感じていました。ライブでも共演している大先輩の鈴木雅之さんが、“ラブソングの帝王”と自らおっしゃっているのを見て、私も堂々と「渋谷系の女王です」って名乗りながら渋谷系を歌うシリーズをやっていこうかと。渋谷系とそのルーツの曲は名曲ばかりですし、渋谷系も、最近再注目されているシティポップのひとつとも言われていますので、やりがいを感じています。

――ピチカート・ファイヴのセルフカバーからの流れ以外にも、何かきっかけはあったんですか?

ちょうどその時期に、渋谷系の大ルーツである音楽家、バート・バカラックが来日して。彼のライブを観に行って、やっぱり素晴らしいなあと思って。そのときに、バート・バカラック研究家で、今、私の音楽プロデューサーをやってくださっている坂口修さんのことがパッと思い浮かんで、しばらく連絡をとってなかったんですけど久しぶりに電話してみたんですよ。「もしかして今、ライブ会場にいらっしゃいます?」って。もちろん、いらっしゃっていて、ライブが終わったあとにお茶をする約束をして。ちょうどアルバム『30 ~Greatest Self Covers & More!!!~』が出たあとだったので、さて、次はどうしようかなって考えていたときだったんですね。

そこで、坂口さんと「バート・バカラックは素晴らしかった。やっぱり渋谷系のルーツだよね、神様だよね」みたいな話から、「バート・バカラックの曲をカバーして歌うのも楽しいかもね」という話になって。そこから、バカラックだけじゃなくて、渋谷系をスタンダードナンバーとして歌っていくというアイデアが生まれたんです。これは、“渋谷系の女王”と呼ばれている野宮真貴にしかできないことだと。こうして私の新しいプロデューサーに出会って、やっぱり偶然と言いますか、縁と言いますか、出会うべくして出会うみたいなことが、この40年間にはたびたび起きてますね。

今の野宮真貴に歌ってほしい新曲

――2020年代に突入し、デビュー40周年のアニバーサリーイヤーとなった2021年末からは“World Tour Mix”が始まりました。

SNS界隈で話題になっている海外の若手アーティストに私の代表曲、ピチカート・ファイヴの曲をリアレンジしてもらうプロジェクトを、“World Tour Mix”と名付けました。その第1弾が、Night Tempoさんと組んだ「東京は夜の七時」で。

野宮真貴「東京は夜の七時 (feat. Night Tempo )」/ Maki Nomiya ”The Night is Still Young (feat. Night Tempo) "

――現在の海外発のシティポップブームを牽引する韓国人DJ/プロデューサーのNight Tempoは、まさにその代表ですよね。日本の1980年代のシティポップや昭和歌謡をリエディットして、最新のフューチャーディスコやファンクにしています。

Night Tempoさんは、最初、彼からオファーがあったんです。ちょうど“World Tour Mix”の計画を立てていたところだったんですが、私からお願いする前に彼からお話がきて、彼のアルバム『Ladies In The City』に歌と歌詞で参加したんですね。それで彼に「ピチカート・ファイヴで私のことを知ったんでしょう?」と聞いたら、「いや、『女ともだち』です」って言われて。彼は80sのオタクだからね。「自分のアルバムで、1980年代と1990年代をつなぐ重要な人物として、どうしても参加してもらいたい」って。「断られても、何回でもオファーします」って言われたけど、私はふたつ返事でOK(笑)。彼は私のことを「おしゃれ音楽の総理大臣」って言うんです(笑)。なんかそれは新しいなあと思って、結構気に入ってるんですけど。

――また新しい称号ですね(笑)。そして2022年4月に、40周年記念アルバムとして、新作『New Beautiful』を発表されました。

アルバム『New Beautiful』(初回盤)

“渋谷系を歌う”シリーズでカバーを歌ってきたので、40周年のアルバムではオリジナル曲を歌いたかったんですね。だから、デビュー時のプロデューサーである鈴木慶一さんと、ピチカート・ファイヴ「トゥイギー・トゥイギー」の作詞作曲を手掛けた佐藤奈々子さんに一緒に組んでもらいました。さらに、ポータブル・ロックも「まだ解散してなかったよね」っていうことで(笑)、私の40周年アルバム用に新曲を書いてもらって。それからピチカート・ファイヴの元メンバーの高浪敬太郎君と、ここ10年ぐらい仲の良い“最後の渋谷系”、カジヒデキ君にも組んでもらって。あとは同い年で、デビューも同じ年で、20年以上の付き合いのあるクレイジーケンバンドの横山剣さんに、「おないどし」っていうデュエットソングを40周年のお祝いにプレゼントしてもらいました。

野宮真貴&横山剣「おないどし」LIVE MOVIE-Maki Nomiya & Ken Yokoyama (CRAZY KEN BAND)"Onaidoshi" LIVE MOVIE

加えて、やっぱり若い世代の方にも作ってほしいなあと思って。GLIM SPANKYの松尾レミさんは、幼いころからご両親が渋谷系が好きで、渋谷系を聴いて育った方なので、音楽性は違えどもリスペクトもあるし、若い彼女が今の私にどんな歌を歌ってほしいかっていうのも楽しみで、とても素敵な曲を書いてもらいました。私の40年間の音楽キャリアのなかで関わってくださったアーティストの方に、“今の野宮真貴に歌ってほしい新曲”を書いてもらうということをテーマに制作しました。

野宮真貴「CANDY MOON」duet with 松尾レミ(GLIM SPANKY) ライブ・ムービー/ Maki Nomiya "CANDY MOON" Official Live Movie

自分の好きなことを40年間貫けた

――“ニューウェーブ少女” から“渋谷系の女王”、“東洋のバービードール”、そして“おしゃれ音楽の総理大臣”を経て、『New Beautiful』のライナーノーツでは、“オルタナティブポップスの女王”と称されています。

渋谷系も内包した形で、“オルタナティブポップスの女王”と言ってもらえたことはとてもうれしかったですね。私の40年間ってこれだったのかなと思っています。デビュー当時からメインストリームじゃない、ちょっとエッジーなところからスタートして。ピチカート・ファイヴもブレイクしたとは言え、やっぱり当時は小室ファミリーがメインストリームだったし。そういうなかでずっとやってきたからこそ、歌いたくない歌を歌ったこともないし、着たくない衣装を着せられたこともない。一貫して自分の好きなことを40年間、ずっと貫けたっていうのは、ひとつの達成と言っても良いくらい、素敵なことだったと思います。

そして、同時に思うのは、やっぱり私はシンガーで、ひとりじゃ何もできなかったわけです。いろんなプロデューサー、作詞作曲家、レコード会社の方やマネジメントやビジュアル制作のスタッフ、そして、ファンの方々の支えがあって、こうして40年歌ってるんだなっていう感謝の気持ちを、とても強く持っています。だから私のためだけでなくて、私を支えてくれた人のためにも、“素敵な服を着て素敵に歌を歌う”ことをつづけているのだと思いますね。

――アルバム『New Beautiful』リリース後は、アルバムに参加したミュージシャンを大勢ゲストに迎えた“野宮真貴 40th Anniversary Live~New Beautiful~”も開催し、40 周年を盛大に祝いました。

40周年は、ひとつの節目、ひとつのゴールかなぁと思っていたんですけど、アルバムとライブを経て、実はスタートなんだなあっていうふうに感じています。素晴らしい新曲を書いてもらって歌ったこと、そして、若い方々の手によって、ピチカート・ファイヴの曲を新しい解釈で歌っていけるようになったこと。

『New Beautiful』というタイトルは、響きや直感でつけたんですけれども、実は自分のことを表しているようにも思えてきて。“新しい美しさ”とか“新しい音楽”という意味で最初つけたんだけど、それはつまり、“新しい自分”だったっていう。これから、このアルバムを機に、またスタートに立ったような……。集大成なんだけど、新しくフレッシュなものにもなっているし、ここからスタートなのかなっていう思いに今、なっています。

――2020年代の10年間はどうなっていきそうですか。

“歌とおしゃれ”は今後もまだまだ追求していきたいと思ってます。あと、このアルバムを作って、本当に歌うことが楽しくなったっていう気付きがあって。長年歌ってると、やっぱり自分なりの癖みたいなものが出てきて、正確に歌おうとか、ピッチを気にしたりする傾向が少しあったんです。でも、「美しい鏡」という新曲を作っていただいた鈴木慶一さんにボーカルディレクションをしていただいたときに、「歌で大事なことはピッチじゃないから。ニュアンスを大事にしたほうが良いし、もっと自由に、楽しく歌って」って言われて。それは当たり前のことだったんだけど、ちょっと忘れかけていたことでもあったんですね。そこで、ハッと気付かされて。40年も歌っててね、まだそういう気付きがあるんですよね。それで、すごく解放されたっていうか、歌うのが楽しく、自由になりました。

まだまだ歌えるような気がしてきたので、これから先はそんなに決めつけないで、またそのときどきで出会うべくして出会う人が現われるかもしれないし、そういう偶然みたいなことも大事にしたい。例えば“World Tour Mix”の進化系だったりとか、まだまだいろんな方と組んでみたいですね。そういう、歌ってみたい、やりたいことがある限りはきっと歌っていくんだと思います。

還暦の前まではライブでよく「還暦までは歌います」と言ってたんですけど、還暦ライブをやってみたら「あれ、まだ全然歌えるなぁ」と思って、それから2年経って、40周年ライブではつい、「古希まで歌えるかな」って発言しちゃったので(笑)、一日一日を楽しく自由に歌っていって、気付いたら古希になってたというのが理想かなと思います。

――これからも、楽しく自由に歌いつづけていくということですね。

そうですね。ただ、還暦を過ぎて、ステージに立ちつづけるためには、少しやり方を変えないといけない部分もあって。やっぱり、歌手・野宮真貴としては、ハイヒールを履いて、ミニスカートを履いて、カッコ良く歌える人でありたい。そのためには、ハイヒール筋を鍛えたり、これまでは一切したことがなかったボイストレーニングをやったり、ピッチじゃなくてニュアンスで楽しく歌うことを心がけたり、若い方たちの力を借りて、身を委ねてみたり……。そういうことが今後、楽しく歌っていくためのキーポイントになるのかなと思っています。

――“歌とおしゃれ”の“おしゃれ”のほうの活動はいかがでしょう。

コロナ禍になって、ライブができなくなったときに、もっとファンの方と繋がりたいという気持ちが高まって、ソニーミュージックで初めてのファンクラブを立ち上げました。“音楽とおしゃれでファンの方と繋がるモバイル・ファンサロン”その名も『おしゃれ御殿』!

Mobile Fan Club『おしゃれ御殿』

このサロンでは、“あの時、私が着ていた服”の思い出を語ったり、ちょっと秘密のレアなコレクションを紹介したり、音楽やおしゃれを楽しむヒントになるようないろんなコンテンツを考えて発信しています。もちろん、ライブの先行チケット発売などもあります。それと、同じソニー・ミュージックアーティスツ所属の渡辺満里奈さんと松本孝美さんと、5歳ずつ違う女子3人で、“大人の女史会”(新しいタブで開く)というものもやってまして。「ひとりで悩んでいないでみんなで解決!」を合言葉に、更年期や女性の年齢の悩み、美容や健康について『文春ウーマン』で連載しているんですが、そういった活動を歌と並行してやっているのも楽しいですね。今後はその3人で、50代以降の女性のためのおしゃれで便利なアイテムや、お悩みにお答えする商品をプロデュースしたりもしていきたいと思っています。楽しみにしていてください。

文・取材:永堀アツオ

ライブ情報

JCB MUSIC LOUNGE Vol.35
JCB Presents 野宮真貴 Live in BLUE NOTE TOKYO

 
日時:2022年9月8日(木)
会場:ブルーノート東京
チケットはこちら(新しいタブで開く)
 
ポータブル・ロック40周年記念ライブ
PAST & FUTURE ~My Favorite Portable Rock

 
日時:2022年8月28日(日)
会場:京都メトロ
チケットはこちら(新しいタブで開く)
 

リリース情報


『New Beautiful』
発売中
試聴・購入はこちら(新しいタブで開く)
 

『PAST & FUTURE ~My Favorite Portable Rock』
詳細はこちら(新しいタブで開く)

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