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連載Cocotame Series

Eyes on

九条林檎:魔界から来た間口の広いVTuber

2022.07.21

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今、注目すべき旬のアーティストにスポットを当て、最新インタビューとプライベートショットで素顔に迫る連載「Eyes on」。

第25回は、バーチャルタレントとしてYouTubeを中心に活動する、吸血鬼と人間のハイブリッドレディ、九条林檎が登場。今年5月にソニー・ミュージックエンタテインメントのバーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト『VEE』の所属となり、幅広いテーマでコンテンツ配信を展開している彼女。この世界に入ったきっかけやVTuberとしての今後の目標などを語るとともに、貴重なプライベートショットも披露する。

  • 九条林檎

    Kujo Ringo

    吸血鬼と人間のハイブリッドレディで、魔界の名門、九条家の長女。バーチャルタレント/VTuberとして、歌やダンス、ゲーム、悩み相談と、多岐にわたるテーマでコンテンツを配信中。2022年5月より、ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営するバーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト『VEE』に所属。

歌ったり踊ったりを大好きな機械でできる天職

インタビューに答える九条林檎。

――吸血鬼と人間のハイブリッドレディの九条林檎さんですが、幼少期はどんな子どもでしたか?

外で体を動かすよりおままごと派という感じで、仮想の世界で何かをやるのが好きでした。豆を料理の具材に見立ててグツグツ煮込んでいるふりをしながら“自分はお料理教室の先生で、今豆を煮込むさまをテレビで放送している”なんて空想したりしていましたね。

しかも一緒に遊んでくれた叔母上が、我のことを“フローラ九条先生”なんていかにもそれらしい名前で呼んでくれたので、さらに深みにハマっていきました(笑)。ただ、そのときは自分のなかで空想を膨らませていくのがメインで、みんなの前で披露するような感じではなかったです。

――今はその想像力の豊かさをいかしてバーチャルタレントをされています。この仕事を始めた時期やきっかけは?

pixiv、TWIN PLANET、SHOWROOMによる共同プロジェクトが2018年にありまして、そちらのオーディションでデビューさせていただきました。1年くらいそこに所属したあとに個人で活動するようになり、そこから紆余曲折を経て現在に至ります。きっかけという部分で言うと、機材や機械などのガジェットが好きというのが大きいですね。皆さまの前で何かをとうとうと話したり、新しいものを紹介したり、歌ったり、踊ったりということも好きなんですが、それを大好きな機械を使ってできるあたりが、天職だと感じています。

やはり、バーチャルは自由度が高いのが魅力です。もし、画面に牛を出したかったら牛の3Dモデルを持ってくれば良いわけですし、その牛が浮いてても上から落ちてきても良いし、もうなんなら地面からモリモリと出てきても良い。そういうことができるのは、バーチャルならではの醍醐味かなと思います。

「渋谷スクランブルスクエアに観光に行った際の写真です。高いところは好きで、東京スカイツリーにも昇りましたし、VR空間でも紐なしバンジーをやったりしています」

――個性的なバーチャルタレントがたくさんいるなかで、ご自身をどんな存在だと定義していますか?

現在、約2万人いると言われているバーチャルタレントのなかで、我をひと言で言うとしたら、古風でちょっとひねくれているという感じでしょうか。例えばこの姿は360°ポリゴンでできている3DCGで、我がバーチャルタレントを始めたころに流行ったスタイルです。立ち絵が動いている状態のLive2Dが主流になっている今、結構化石みたいな存在になっているんですが(笑)、これが好きでやっております。

あと最近は、とにかく元気で大声でリアクションも大きいキャラが流行しているなかで、淡々と言葉を紡ぐというスタイルも珍しいかもしれません。比較的若い市場で、時代に逆行している変わり種だと思います。

――九条林檎さんは声や話のトーンが落ち着いていて、VTuberに馴染みのない人でも入りやすいと感じました。

入りやすさについては意識している部分ではあります。あまりネットスラングを使わないとか、使ったとしても説明を加えるなどして、特に気を付けるようにしていますね。例えば我は吸血鬼なので人間のことを「ディナー」と呼んだりするんですが、それを言ったあとはある程度補足を入れるようにしております。なるべく誰も置いてきぼりにしたくありませんから。

辛い思いをしている人に寄り添いたい

――配信では、意外に渋い話題も扱っていますよね。

はい。梅シロップを作るだとか窓辺にすだれを下げてみるとか、生活周りのこまごまとしたことが好きなんです。そういうギャップを面白がって、快く受け止めてくれる人も少なくありません。Twitterに投稿しているショートトーク動画がバージョン6くらいまであるんですが、そちらを見ていただければ、非日常の存在である九条林檎が日常じみたことを話しているところが、手っ取り早くわかってもらえると思います。

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――ショートトーク動画では、ユーモラスな言葉遊びも特徴的です。

言葉の持つ面白さみたいなものがすごく好きで、文章を読んでいると勝手に頭のなかで世界に入っていってしまうんです。以前、イタリアンレストランのメニューに“パルミジャーノレッジャーノ”と書いてあったのを見て、なんか双子の兄弟みたいだなと。そう思ったところから空想が膨らんで、ネタになったりしますね。

――そういった思考や発想は、何かから影響を受けているんですか?

昔見ていたテレビ番組でしょうか。NHK BSプレミアムでやっていた『小林賢太郎テレビ』は、特によく見ていました。辞書を開きながらラップバトルをするような日本語の展開の仕方がすごく面白くて、そこで創造の力みたいなものが育まれた気がします。NHK の番組だと『ピタゴラスイッチ』の言葉遊びも印象的で「防虫剤(ぼうちゅうざい)という字面のなかには“宇宙”という言葉が含まれている」とか言って、防虫剤のなかに宇宙があるような絵が描かれていたりするんです。「本当だ!」なんて衝撃を受けたのを覚えてますね。ほかにも『デザインあ』だとか『にほんごであそぼ』だとかも本当に面白くて、1日中NHKに張り付いていた時期がありました。

「バーチャル空間は、現実世界のカメラのようなレンズが存在しないので、本来はピンボケは起きないんです。これは、歌配信のサムネイルを撮影したときに、最後にわざと狙ってボケボケの写真を撮ってみたものです。そういう“見立ての文化”が好きです」

――トークや歌など、エンタメ系のコンテンツが充実しているいっぽう、ユーザーからのお悩み相談に真摯に答えるものもあります。

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我自身、今はすごく幸福で毎日やりがいを感じていますが、かつては辛い時期を過ごしていたことがありました。気持ちの辛さは同じ思いを経験した人しか共有ができないと思いますし、わかってもらえるだけで心が軽くなったりするものです。そういうふうに、辛い思いをしている人に寄り添ってあげたいというのが、バーチャルタレントを志した大きな理由でもあります。どん底から回復していく過程をしっかり覚えているからこそ、一つひとつの悩みに対して「希望は持てるぞ」と伝えてあげたくなります。

――人が抱えるさまざまな悩みにひとつずつ答えるのは簡単ではないですが、手応えはありますか?

もちろんです。以前、学校での悩みを抱えていた方が、いつの間にか就職して結婚して、なんならお子さんも生まれましたみたいなお便りをくださったことがあります。「仕事が始まってからもいろいろな悩みがあったけれども、林檎さまのお陰で気分をあげて対峙できました」なんて言ってもらえたりして、本当にうれしかったですね。

あとは「ゲームを買いたいけど、どうやったら親を説得できるか」みたいな相談をしていた高校生が、大学生になって恋愛関係の悩みを送ってくれたこともあって。毎回ちゃんと寄り添えていたからこそ心を開いてくれて、それぞれの方が自分の人生を見せてくるのかなと思ったりすると、すごく感慨深くなりますね、ええ。

「“九条林檎の朝”という、我がプロデュースしたアロマミストがあって、これはその調合中のものです。アトリエにお邪魔して作らせていただいた際の写真です」

『VEE』という箱を大きくしていきたい

――今年5月から『VEE』の所属になりました。事務所に入ってみて何か変化はありますか?

デビュー当時からの仲間が少なくなってきたなか、また誰かと何かを作っていけることに、すごくワクワクしています。『VEE』には現在、我を含めて11名のバーチャルタレントが所属していますが、メンバー内のどんな組み合わせで、どんな化学反応が起きるんだろう? なんてこともすごく楽しみですね。当事者としてもそうだし、いちオタクとしてもかなり気になっています(笑)。

――“VEE Dev-a”として5月に所属になった同期の4人(音門るき、秋雪こはく、トゥルシー・ナイトメア、雛星あいる)とは一緒に配信などもしていますが、普段はどんな関係性なんですか?

【Minecraft】巨大ブインナーくん作る。【VEEデビュー1か月記念】

一緒にご飯を食べに行ったり毎日のように通話をしたりして、すごく仲が良いです。そのなかで「そう言えば1対1でコラボしたことなかったね。毎日話してるのに」みたいな気付きがあったりするんですが(笑)、話しているうちに「それ面白いね。その企画やろう」ってことが毎日何かしらあるんですよ。だから、本当に仲の良い友人でもあるし、戦友でもあるし、これからも切磋琢磨していけたらなぁというふうに思っています。あとほかの変化としては、マネージャーさんが付いてくれたことも大きいですね。

「動画撮影時のスタジオが散らかっているさまです。バーチャル空間なので、そのまま宙に置いておけるので、鍋や釣り竿など、いろんなものが出しっぱなしで。すぐわちゃわちゃになってしまいます」

――個人で活動されていたときは、なんでもひとりでこなしていたんですよね。

そうです。お仕事の窓口も事務作業も動画の制作も全部ひとりでさばいていたので、そこを助けていただける方ができたのは、本当にありがたいです。あとは、自分のなかで迷ってしまったとき……この表現で良いのかとか、この素材が間に合わないが良い解決方法はないかなどを相談できるようになったという点でも、すごく助けていただいてます。これまでは自分ひとりで抱え込んでしまっていたところを、大きい夢に向かって一緒に歩いてくれる人ができたっていうのが、心からうれしくてありがたいです。

「初音ミクさんの公式VRテーマパーク“MIKULAND”で、バーチャルタレントがグッズを販売するという企画に参加させていただいた際の自撮りです。この花束みたいなものが商品で、手を開いたり閉じたりすると花が次々出てくるという商品でした」

――大きい夢とは何でしょうか。

バーチャルタレントとして大成したと言われる目安というのが、登録者数100万人とか東京ドームでのイベント開催とかいろいろあるんですけど、我自身はこの『VEE』という箱を大きくしていきたいというのが最近の目標です。そのなかでさまざまな企画などもやっていきたいんですが、今ひとつ考えているのが、バラエティ色豊かな歌番組ですね。

これもまたNHKなんですけど、星野源さんが『おげんさんといっしょ』という番組のなかで、「昔のバラエティ番組は、歌があって踊りがあってトークの時間もあった。それってすごく豊かなことだ」とおっしゃっていて、本当にその通りだと思ったんです。最近のスピード感のある番組も大好きだけど、ちょっとひと息ついて、ゆっくり芸術やカルチャーを楽しむようなイベント的な配信があっても良いかなと。そういうことが、『VEE』のみんなはもちろん、いろんな方を巻き込んで実現できたら、かなり有意義だろうなと思っております。

――そういうときは、九条さんはどんなポジションになるんですか?

発案者ということもありますので、司会進行役でしょうか。と言っても、「絶対に自分がまとめたいし、中心にいたい」みたいなこだわりはまったくありません。ほかの方が司会でも構いませんし、逆に誰かが持ってきてくれた企画でしたら、全力で乗っかりにいきたいです。どんな形であれ我の力を発揮させていただけて、見ている方が楽しんでくれれば、それで良いですね。誰かの人生を豊かにしたい。新しい世界を知ってもっと楽しく過ごしてほしい。その思いを届けることが、我の一番の目標です。

文・取材:諏訪圭伊子

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