イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

アーティスト・プロファイル

そしてPIGGSへ。アイドル界のイノベーター、プー・ルイの航海【後編】

2023.01.28

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「アーティスト・プロファイル」。

今回登場するのは、2010年代にアイドルグループBiSのメンバーとして名を馳せ、その後も数々の話題を振りまいてきたプー・ルイ。長きにわたって活動をつづけてきたアイドル界のリビングレジェンドの道のりとはどのようなものだったのか。今年、自身が運営を手掛けるPIGGSのメンバーとしてメジャーデビューを果たし、新しい地平に踏み出した彼女に聞く。

後編では、BiS解散後の活動から、会社を立ちあげ、自らPIGGSを始動させた現在に至るまでの出来事と心境を語る。

プー・ルイプロフィール画像

プー・ルイ Pour Lui

1990年8月20日生まれ。埼玉県出身。2009年11月4日、配信シングル「限られた時間の中で☆」で歌手デビュー。2010年9月にソロ活動を休止し、アイドルグループ、BiSとして始動。体を張った活動で注目を浴びるとともに、「nerve」などの名曲を残す。2020年、会社社長に就任し、自身も参加する新グループPIGGSを結成。2023年1月11日、「負けんなBABY」でメジャーデビュー。1月29日に、日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ『焼豚大解放』を開催する。

中途半端な自分をかっこ悪いと思った

インタビュー画像1

前編からつづく)BiS解散後のプー・ルイは、2013年から始動したロックバンドLUI FRONTiC 赤羽JAPAN、略称・ルイフロのボーカルを務めたが、のめり込めずにいた。その活動もやがて行き詰まり、先行きが見えなくなったとき、盟友・渡辺淳之介から連絡が入る。

「ルイフロが行き詰まって、これからどうしようかなっていう状態のときに、急に渡辺さんが『もう1回BiSをやろうと思うんだけど一緒にやらない?』って言ってくれて。私からしたら、助けてもらったような感覚がありましたね。すごくうれしくて、『やります!』って答えました」

プー・ルイは、オーディションで選ばれたメンバーとともに、新しい顔ぶれの第2期BiSを2016年9月4日からスタートさせる。第1期BiSの解散から2年での再結成は、研究員(BiSのファンネーム)はもちろんのこと、解散後にBiSファンになった人たちからも迎え入れられた。

「めっちゃワクワクしました。ライブしたときに、“あ、これだ!”と思いましたね。ただ、私がすごいとかじゃないんですけど、横アリ以降の2年間でBiSが勝手に神格化されちゃってた部分がすごいあったんです。プー・ルイがBiSの曲を歌う=最高! みたいな方程式ができあがってたというか。それは私の自信にはなったけど、ほかのメンバーのモチベーションを低下させちゃったんじゃないかと思うんです」

第2期BiSは活動をつづけていくうちに、当初のプー・ルイの想いとはズレが生じるようになり、彼女もグループも、どこか煮え切らない状態となっていった。

「私は、前と同じBiSが始まると思ってたけど、いざ始まってみたら、名前は同じだけど全然違うものだってことに気付いてしまったんです。私は全部やることが2回目で、ほかのメンバーは初めてじゃないですか。それで、メンバーとの温度差をすごく感じてしまって。本気で楽しいと思えてないけど、なんとなくお客さんもいるしっていう、中途半端な思考になってたんです。そんな自分に気付いたときに、かっこ悪いと思いましたね」

インタビュー画像2

無我夢中で必死に挑むのがBiSでありプー・ルイであるはずが、惰性でやってしまっている。そんな彼女が第2期BiSから離れるのは自然な流れだった。プー・ルイは、2018年3月4日に両国国技館で行なわれたワンマンライブ『BiS 2nd BEGiNNiNG TOUR FiNAL WHO KiLLED IDOL??』をもってBiSから卒業する。

「なんか、すっきりしちゃいました。そこで第1期BiSの生霊が落ち(笑)、ようやくBiSから卒業できたんです。なので、第1期BiSのメンバーだった(テン)テンコ、ういぽん(ファーストサマーウイカ)、(カミヤ)サキちゃん、コショージ(メグミ)、のんちゃん(ヒラノノゾミ)は、2014年から新しい自分を探し始めたけど、私はスタートが遅れちゃったんです」

楽しいことだったらまだ自分は頑張れる

第2期BiSを卒業したプー・ルイは、ファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミという第1期BiSのメンバーが所属するBILLIE IDLE®に2018年5月に加入する。

「BILLIE IDLE®は、お誘いいただいて入らせてもらったんです。でも実は、ふざけてるように見えてたBYSのほうが、自分のなかですごい大きい出来事だったんです」

BYSとは、プー・ルイが第1期BiSのメンバーと始めた、YouTubeチャンネル『新生YouTuber研究会BYS』だ。

「そのころ、YouTuberの東海オンエアさんにすっごいハマってたんです。それで私もYouTubeやろうと思って、パソコンができないのに自力で学んで、メンバーのスケジュールを合わせて企画も考えてと、全部自分ひとりでやったんです。そんなふうに毎日投稿をガンガンしているうちに、楽しいことだったらまだ自分は頑張れるんだってことに気付けたんですよ。第2期BiSが終わるころは、“私はもう何も頑張れないのかも……”っていう気持ちだったのに、寝ないで編集するのとか、苦しいどころか“めっちゃ楽しい!”ってなれたんです。BYSで企画をすることの楽しさを知れたし、自分が考えたものに対してファンがコメントをくれるうれしさを初めて経験できました」

インタビュー画像3

YouTubeでの活動が、燃え尽きたかのように見えた彼女のマインドに再び火をつけたのだった。

「ただBYSの失敗は、みんな所属グループが違ったから、グループよりも各メンバーのほうに注目が行っちゃったってこと。納得はしてたけど、これを自分のグループでやれたら一番良いのになっていう気持ちはありました。そこから、アイドルとYouTubeを合体したものをやれたら良いのにっていう思いは、今もずっとあります」

実践して学びを繰り返し、そして進んでいくのがプー・ルイの生き方と言っていいだろう。

「そうなんですよ。失敗しないと学ばないから、とにかく歩みが遅いんです(笑)」

BILLIE IDLE®は、プロデューサーのNIGO®の意向により2019年12月28日に解散。そして2020年に入り、プー・ルイは自身の会社である株式会社プープーランドを立ちあげ、PIGGSとして活動していくこととなった。

「BILLIE IDLE®が解散になって、ほんとに自分のやりたいことを今一度考えてみて、やっぱり私がやりたいことは、グループで、歌で、女の子で、アイドルなんだって再認識して。ただ、自分はもう頑張れないんじゃないかという心配もあって。自分が進めていくプロジェクトで、自分がそんなじゃ誰もついてこないじゃないですか。なので、どうしたら自分が頑張れるのかをまず考えたんです。それには、私は逆境に立たないと、と。

第1期BiSを成功例だとして、第2期BiSとルイフロは何が違ったかって考えたら、自分にかかる負荷が違ったんだと気付いて、まず自分を追い詰めようと思ったんです。それで、当時お付き合いしていた人にお別れを告げて、一緒に住んでた家も出て、ひとりになったんです。それが、自分のなかでPIGGSを始める最低条件だったんですよ」

一般論的な話をすると、もうすぐ30歳を迎えようとしている女性が、恋人と別れ、会社を立ちあげ、またアイドルとして活動するというのは、理解しがたいかもしれない。でも、彼女はアイドル界で数々の常識を覆してきたプー・ルイなのだ。アイドルに賭ける想いは尋常ではない。

「あるとき渡辺さんに、もう1回アイドルをやりたい気持ちがあるという話をしたら、『WACKにはもうアイドルはいらないけど、サポートはするから、好きなことやりなよ』って言っていただけたんです。渡辺さんには第2期BiSで迷惑をかけてしまった気持ちがあったので、今度サポートしてもらえるのであれば本気でやんなきゃと思ったんです。私はつい甘えてしまうので、自発的に自分を追い込もうと思ってプライベートを精算しました」

インタビュー画像4

そうして彼女は、今度は演者だけではなく事務所社長になるという選択をした。経験のないことへの新たな挑戦は、プー・ルイを奮い立たせた。

「まずアイドルをやるための会社としてプープーランドを立ちあげたんです。そこから制作チームを探すことを始めて、サウンドプロデューサーはRyan.B、衣装とアートデザインはMETTY、振り付けはサキちゃんとか、友だちに声を掛けていきました。そのあとにオーディションをやって、メンバーを決めたという流れです。

その時点で、自分を追い込むことと、自分にとっての初めてをいっぱい作ることが私の頑張れる方程式だっていうことはわかっていました。PIGGSではプロデューサーと社長業が初めてで、わからないことだらけで超大変でしたけど、それがすごく楽しかったんですよ。CDを出そうにも、“流通って何?”っていう状態で。なんとかリリースしたのが1stアルバムの『HALLO PIGGS』です」

PIGGS - PIGGS-モナ・リザ-【MUSIC VIDEO】

2020年7月1日に1stアルバム『HALLO PIGGS』を発売後、7月25日のTSUTAYA O-nest(現:Spotify O-nest)でお披露目ライブ『はじめましてPIGGSです!!~東京編~』を開催し、ステージデビューを飾ったPIGGS。その後はライブとリリースを重ね、2021年9月、新メンバーのKINCHANが加入。プー・ルイ、CHIYO-P、SHELLME、BAN-BAN、KINCHANという現在のメンバーで活動を行ない、今年1月11日に遂にメジャーデビュー、というのがこれまでの大まかな歩みである。プー・ルイは、PIGGSをゼロから作っていくなかで、新たな面白さを得たという。

「私からするとPIGGSは、アイドルとしての4人のメンバーと、運営側としての制作チームのRyan.Bとかのメンバーっていう、2個のメンバーがいるっていう感覚なんです。2本の柱でやれてるのが良いなって思いますね。運営は初めてだから、興味深い体験がいっぱいできてるし、グループのメンバーとは単純にアイドルとしての楽しさやうれしさを共有できてる。それが自分には合ってましたね。一時期はほんと、死にそうで殺気立ってましたけど(笑)」

プロデューサーとしての視点から、「これならPIGGSイケる!」と思えた瞬間というのは……。

「いやいや、常にイケないなと思ってます(笑)。『PIGGS、イイ感じじゃん』とか言ってもらえたりもするんですけど、自分では1ミリも思ったことないですね。逆に思ったらヤバいと思ってます」

BiSHを超えたいっていう気持ちはあります

インタビュー画像5

彼女の発言を聞いていて感じることだが、プー・ルイは自身のことを控えめに話す。自分を大きく見せるよりも、リアルな現状をまっすぐ見つめて、それを言葉にしているという印象だ。トライアンドエラーを繰り返し、さまざまな経験をしてきたからこそ、彼女から出る言葉には誠実さと説得力を感じる。流行り廃りの激しいアイドル界の荒波を現役でサバイブしている存在は、彼女以外見当たらない。まさにプー・ルイは、アイドル界のイノベーターと言ってもおかしくないのだ。

「いやいやいや、どっちかというと『私はオワコンだよな~』って本気で思ってるんで(笑)。そもそも人気になったことなんてないと思ってます。今、アイドルフェスとかに出させてもらっても、共演者の子たちは私のことなんて知らないですよ。第1期BiSのころは、フェスでアイドルの子たちに「プー・ルイさん、写真撮ってください」とかすごい言われて、そういうのってやっぱりうれしいんですよね。それをPIGGSのメンバーにも味わってほしいし、自分も味わいたい。なので、もう1回そういう状況をPIGGSで作りたいっていう気持ちはあります」

インタビュー画像6

人気ということでいうと、現在、テレビでブレイクしている元同僚のファーストサマーウイカや、絶大な人気を誇る後輩のBiSHについてはどう思っているのだろうか。

「ビリーで同じグループにいたとき、ういぽんがブレイクしたんですよ。悔しい気持ちというよりも“仲間が売れた!”“良かったね!”みたいな気持ちのほうが強かったですね。どっちかというと、BiSHが売れたときのほうがムカつく感じはありました(笑)。やっぱり“BiSをもう1回始めます”っていって始まったのがBiSHだったから、どうしても、良いとこ取られちゃったなって気持ちは芽生えちゃいましたね。それはメンバーが嫌いってことじゃないですよ。ブレイクの経緯に対してのヤキモチって感じです。あとは、渡辺さんや松隈さんたちが私がいないところで楽しいことやってるのがズルい! っていう感覚もありました(笑)。今は、いろいろ経てきてそういう気持ちは全然ないですね。ただ、BiSHを超えたいっていう気持ちはありますよ。それは、応援してきてくれた人たちのためにもやんなきゃなって思います。BiSHも解散を発表したし、“やるならここだろ、PIGGS頑張んなきゃ!”って思ってます」

闘志を燃やすプー・ルイが率いるPIGGSは、1月29日に日比谷野音でワンマンライブ『焼豚大解放』を開催する。メジャーデビューを経てのPIGGSにとって最大規模のワンマンで、彼女たちはインパクト絶大なライブを見せてくれるはずだ。

「まずは野音を絶対成功させます。今年はコロナ禍の自粛から、状況が戻り始めているので、ちゃんと地に足つけて頑張っていかなきゃっていう気持ちですね。数字的な目標としては、2022年に完売できなかったZepp Hanedaをフルキャパで埋めたいです。今までは、先に目標を言ったりっていうことをあまりやってこなかったんですけど、これからは、年始に目標をバーンと掲げて、ファンの人と共有して、着実にクリアしていくっていうことをやりたいと思うようになりました。プープーランドは社員がいないんで、ぶーちゃんズ(PIGGSのファンネーム)に社員になったつもりで一緒にやってもらいたいなと思ってます(笑)。今はSNSの時代なので、お客さんが楽しそうにしてることが最大のプロモーションだと思うんですよ。いろんな現場を見てて思うけど、みんな“ここ盛りあがってるな”ってとこに行くじゃないですか。なので、盛りあがってる現場を作るっていうのをファンの方と一緒に頑張りたいですね。PIGGSを知らない人たちに、“PIGGSこんなに楽しいんだよ”って伝えていくことを、今年はちゃんとやっていきたいです」

文・取材:土屋恵介
撮影:荻原大志

ライブ情報

『焼豚大解放』
2023年1月29日(日)
日比谷野外大音楽堂
詳細はこちら(新しいタブで開く)

リリース情報

「負けんなBABY」ジャケット写真
 
「負けんなBABY」
発売中
詳細はこちら(新しいタブで開く)

連載アーティスト・プロファイル

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!