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連載Cocotame Series

アーティスト・プロファイル

メンバー4人で開くBLUE ENCOUNTの新たな扉【前編】

2023.02.07

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気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「アーティスト・プロファイル」。

今回は、新作ミニアルバム『Journey through the new door』を発表するBLUE ENCOUNTへのインタビュー。今年春からの日米2拠点活動を宣言し、新たな地平へと向かう彼らの想いを聞く。

前編では、ベースの辻村勇太が渡米を告げてからの、メンバーの気持ちの変遷を率直に語る。

BLUE ENCOUNプロフィール画像

BLUE ENCOUNT ブルーエンカウント

(写真左から)田邊駿一(Vo、G)、江口雄也(G)、高村佳秀(Dr)、辻村勇太(B)。熊本発、都内在住4人組。2014年9月、EP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。ドラマ『ボイス 110緊急指令室』主題歌「バッドパラドックス」、アニメ『僕のヒーローアカデミア』オープニングテーマ「ポラリス」などのヒット曲多数。2月8日、ミニアルバム『Journey through the new door』をリリース。2月11日には、日本武道館公演『BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023 ~knockin' on the new door~ THE FINAL』を開催。また、3月31日公開の映画『映画刀剣乱舞-黎明-』主題歌に、新曲「DESTINY」が起用されることが発表された。

芯を食った会話ができない日々がつづいていた

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エモーショナルロックの急先鋒として2014年にメジャーデビューして以来、常にシーンの先頭をガムシャラに走りつづけてきたブルエンことBLUE ENCOUNT。ソリッドなバンドサウンドに乗せて放つメッセージ、カッコ悪さも情けなさも包み隠すことなくすべてを音楽に変換して、聴く者に真正面から対峙する愚直なまでの姿勢は、10~20代のロックファンを中心に広く支持され、今なおその熱量は衰えることを知らない。

そんな彼らがまもなくブルエン史上、もっとも大きな転機を迎えようとしている。既に公表されているが、この春よりメンバーの辻村勇太が活動拠点をアメリカに移し、日本で活動をつづける3人と、2拠点でバンド活動を継続していくことになったのだ。おそらくシーン全体を見わたしても例のない、この大胆な決断に踏み切るまでには、当然ながら、それ相応の逡巡を日々繰り返したと4人は振り返る。

「切り出したのは2019年の夏ごろでした。アメリカに行きたいというのは、もう音楽を始めたときからの夢で。それこそ日本武道館に立ちたい、たくさんの声援を浴びたいっていうのと同じくらい、当たり前のように僕のなかにあったんですよね。もちろん、バンドが目指しているところはそこではないのもわかっていたから、ずっとひとりで抱えていたんですけど。だからメンバーにどう伝えるかはやっぱり悩みました。自分なりによくよく考えて話したつもりでしたけど、特に田邊には最初、すごい怒られましたね(笑)」(辻村勇太)

「そりゃ寝耳に水だったからな(笑)。寝耳に水になってしまったのは自分のせいってところもあるんですけどね。僕自身、もともと楽曲制作に没頭するタイプではあるんですけど……特に2016年に初めて日本武道館でワンマンをやらせてもらって以降は、いろんなタイアップのお話をいただいたり、フェスにもたくさん声を掛けてもらえるようになって、目の前のことで精一杯になってしまっていたんですよ。

そういう自分にメンバーが黙ってついてきてくれているっていう状況をまったく客観視できず、仲が良いことに甘えて、お互いに芯を食った会話ができない日々がつづいていたんです。なので、辻村からその話を聞いたときは戸惑いもあって、一方的に激昂してしまって。今思えばめちゃくちゃガキっぽいですけど」(田邊駿一)

「僕も田邊と同じでしたね。でも、本人の意志が固いことは伝わってきたので。よっちゃん(高村)だけは最初からちゃんと受け止めてましたね」(江口雄也)

「ツジ(辻村)とはツアー先で一緒に飲んだりすることも多かったし、何年も前からアメリカに行きたいことをポロッと口にするのを聞いていたりもしたんですよ。それぐらい変わらない強い気持ちなんだってわかったから、だったら背中を思い切り押してやろう、と。人生一回きりなわけで、そこで何をしたいか明確に持っている人にストップをかけるなんてできないなと思ったんです」(高村佳秀)

みんなで一丸となってサバイブしてる感じ

2019年のBLUE ENCOUNTと言えば、6月にメジャーでは初となるミニアルバム『SICK(S)』をリリースし、それに伴って、初のホールツアー“BLUE ENCOUNT HALL TOUR 2019 apartment of SICK(S)”を開催。さらにはドラマ『ボイス 110緊急指令室』主題歌の「バッドパラドックス」、アニメ『僕のヒーローアカデミア』オープニングテーマの「ポラリス」という新たな境地を開いた2作のシングルを発表するなど、バンドとしてさらなる飛躍を遂げた1年だった。

だからこそ辻村の意志表明は、メンバーのみならずスタッフら関係者にも衝撃を与えたことだろう。それでも最終的には彼の固い決意を尊重し、辻村を快く送り出す方向でチームは動き始める。2020年のツアーが既に発表されていたことと、2021年には辻村の地元である神奈川県の横浜アリーナにてライブを開催する目処が立っていたことを踏まえ、当初は2021年秋の卒業が予定されていたのだという。だが、その矢先に想定外の事態が起こった。新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延だ。

「一変しましたよね。マジで映画『アウトブレイク』の世界みたいな感覚でしたから、あのころは。スタジオにさえ集まれなくなって、当然、ツアーも最初は延期って言ってたのが結局中止になってしまいましたし、それこそ明日がどうなるかもわからない状態で。もしかしたら、1年後なんて、音楽自体つづけられてないんじゃないか? みたいな。でも、そんなことを言ってても仕方がないし、だったらなんとかしてアルバムを1枚作ろうという話になったんです。2019年にリリースした曲もあるし、幸いってわけじゃないけど、じっくり考える時間もできたから。ただ、スタジオには入れないので“じゃあDTMという形でみんなでデータをやり取りし合おう”ということになって。とりあえず仮音源を作ろうと、見よう見まねでDTMを使ってのプリプロを始めたのが2020年の春先でした」(田邊駿一)

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世界中に猛威を振るった新型コロナは辻村の行く先にも例外なく影響を及ぼし、渡米は延期を余儀なくされた。しかし、先の見えない状況ではありながらも、バンド内のムードは意外にも明るかったと彼らは口を揃える。

「変な話、僕が渡米を切り出す前のほうが空気は良くなかったかもしれない(笑)。コロナ禍になってからはオンラインミーティングで4人で話す機会も多くなりましたし。だから“(渡米を)延ばしても良い?”ってお願いするのもわりと気楽に言えたというか」(辻村勇太)

「たしか俺は移動の車のなかでツジからその相談をされた記憶があります。結構、ラフな感じだったよね(笑)」(江口雄也)

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「俺なんて何もまだ聞いてないのに、ツジはもう伝えたもんだと錯覚してて、いきなりその話をしてきたから“え、まだいられるの?”みたいな(笑)。急いで事務所にチームのみんなを招集して、誰がどこまで知ってるのか確認を取って。そういうことも作用して、2020年の後半はかなり前向きでしたね。みんなで一丸となってサバイブしてる感じもありましたし、海外情勢にも目を配りながら、音楽業界はどんな状況だとかいろいろ注視するようになって。そうやって周りを冷静に見られるようになったことで、今すぐ何かをしようとしても難しいんだったら、1年先の未来をなんとか確定させるように動こうと腹をくくることができたんですよ」(田邊駿一)

“やっぱりこの4人が良い!”

その取っ掛かりとして、2020年7月、初となる横浜アリーナ公演を翌年に開催すると発表したBLUE ENCOUNT。着手していた4作目のアルバム『Q.E.D』も11月18日にリリースした。さらに、横浜アリーナ公演初日の直後、これを起点とする全国ツアー“BLUE ENCOUNT tour 2021 ~Q.E.D : INITIALIZE~”の開催を告知して、ファンを歓喜させた。「ツアーをやるからには御涙頂戴ムードには一切したくない」(田邊駿一)と、辻村の脱退は全公演を終えるまで明かさずにおくと決めてスタートしたBLUE ENCOUNTの“卒業旅行”は、それにより、彼ら自身の未来を大きく転換させることとなる。

「だって(脱退を)発表したら、どうしてもMCとかで触れざるを得ないじゃないですか。それは『Q.E.D』というアルバムのカラーにもそぐわないし、だとしたらツアーは、アルバムが持っているパワーを純粋に伝えて最終日まで走り切りたい。そう思って初日の横浜アリーナを迎えたんですけど……そのライブで僕、“やっぱりこの4人が良い!”って痛感しちゃったんですよね。僕以外はみんな卒業に向けて心づもりをしていたと思うんですけど、その日から僕のなかでは、密かに“辻村を卒業させない旅行”が始まったんです(笑)」(田邊駿一)

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とはいえ、策はまったくなかった、と田邊は笑う。ほかのふたりにはもちろん、辻村にもその想いは伝えずにいた。

「まだ自分でも具体的にどうしたら良いのかが見えていなかったので、それまで言いたくなかったんですよ。具体的なものがないまま話しても、ツジの断固たる決意で絶対に突っぱねられると思っていたし、引き留めるならみんなが一番納得できるところに着地させなきゃいけない。そう考えたときに、“俺はこの4人でどういうふうにありつづけたいのかな”っていう自問に行き着いたんです」(田邊駿一)

まっ先に頭に浮かんだのは、やはりライブだ。自身のツアーはさることながら、フェスやイベントにも引っ張りだこ。屈指のライブバンドとして、コロナ禍前は年間50本以上にも及ぶステージに立ってきたBLUE ENCOUNTにとって、ライブとは何にも代えがたい場所であることは間違いない。

「“ライブをしつづけたいから、僕はこの4人でいたいと思ってるのかな?”って最初は思ったんですよ。でも、結成した高校生のころに立ち返ってみると、ライブをやりたいから曲を作っていたわけじゃないんですよね。BLUE ENCOUNTっていうバンドをカッコ良くしたいから曲を作っていたんです、僕は。そのカッコ良いブルエンを披露できる場所がライブだったというだけで。もちろんライブは楽しいし、大好きですけど、そのためにもまずは、すごく良い音楽を作らなきゃいけないんですよ。そして、それはこの4人でしかできないって、今、僕は強く感じているんです。新しいベーシストを迎えてそれができるのかって考えたら正直……どうしても4人以外が浮かばなくて」(田邊駿一)

やはりブルエンのベースは辻村しかいない、その確信は日に日に田邊のなかで色濃く、大きく膨らんでいく。

「じゃあ辻村はこの4人でいることに対してどんな気持ちなんだろう? と思ったんです。もし4人でいるのがイヤだと言うなら、もうブルエンは解散しよう、と」(田邊駿一)

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だが、もしそうではないとしたら、提案したいアイデアがあった。それこそがアメリカと日本、並行する2拠点での活動継続だ。そのアイデアの後押しとなったのが、『Q.E.D』のプリプロで試してみたDTMの導入だったこともどこか運命的で、仮音源とはいえ形にできた経験は、彼らにとって大きな糧となったらしい。

物理的に遠く離れていようともオンラインミーティングで普通に会話もできるし、インターネットを駆使すればデータのやり取りだって容易にできる。辻村がアメリカに行くまでにシステムを整えて、向こうにいても制作できる環境を作れば良い。田邊にとってこの4人でありつづけたいと思う一番の理由は「これで思い残すことはない」と言えるだけの最高の作品を、まだ作りあげていないことだった。

「『Q.E.D』も、もちろん満足のいくアルバムになりましたけど、バンドとしてこれですべて満足かと聞かれたら、正直、まだまだだなって。たしかにこの4人でのライブは簡単にはできなくなってしまうかもしれないけど、コロナ禍によって、ライブというもの自体が世間から簡単に弾かれてしまうことも思い知らされたわけで、またいつ、こういう世界線に直面してもおかしくないって考えるようにもなったんです。

だったら、どうやったら永遠に音楽をやれるだろうと考えたら、制作は今まで以上に大事になってきますし、もしもまた同じようにライブができなくなったとしても、しっかり曲が作れてさえいれば俺たちはきっと動きつづけられるだろうし、それもまた強みになると思ったんですよね。これは一種の、新しいバンドのあり方を提示できるんじゃないかなって」(田邊駿一)

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「僕も渡米の準備をしている間に、チーム以外の信頼している方から“別に両方選べないわけじゃないんだよ?”と言われたりもしていたんです。ただ、切り出す側の覚悟として、やっぱり脱退と引き換えにしないといけないと考えていたところも大きくて。

当然、バンドがイヤでやめたいわけじゃないけど、アメリカに行くならここを去らなきゃいけないんじゃないか、ケジメとして片方を選ぶなら片方は手放さなきゃって考えた上での脱退という選択だったんですよね。ただ、もしどっちも選べるんだったら……? って考えないわけではなくて。

そのあと、田邊とふたりで話したときに、僕もまだまだBLUE ENCOUNTとしての曲を作り足りない、田邊の頭のなかにある音楽を具現化しきれてないって思ったんですよね。田邊の提案に対してもすごくやりがいがあるなと思えましたし。ただ、既に動き始めているいろんな事情を考えたらやっぱり現実的ではないんじゃないかと思ったので、それは正直に田邊に伝えました」(辻村勇太)

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現実的じゃないことを現実にできたら最高だよね、とそこからの流れは実にドラスティックだった。メンバー間で想いを共有したのち、チームのスタッフたちにも新しく描き直した未来図をプレゼン。予想に反して彼らの意向は即座に受け入れられ、すぐに前向きな軌道修正が始まった。「前例がない」「想像できない」という声も少なからずあがったというが、面白がってくれる味方もまた多かった。誰もがこの4人のBLUE ENCOUNTを心から愛していたのだ。

「“なんで脱退じゃないの?”“そんなどっちつかずで良いの?”って言う人もいましたけど、夢と引き換えに脱退するってことが変に美談っぽくなるのにもちょっと違和感があって。僕らがやるべきは、そんなことを言う人たちも納得する音楽をこれからも作りつづけていくっていうことだけ。何が良いか悪いか、答えなんてないじゃないですか。

僕らってライブバンドというイメージが先行してますけど、意外と自分たちがときめかないと新しいものが生めない4人でもあるんですよね。よりドキドキする楽曲をメンバーそれぞれドキドキできる場所で作りつづけていくっていうのは、実は音楽の本質なんじゃないかなとも思いますし、BLUE ENCOUNTという拠点を持ちながら、同じくらいの熱量で頑張れるものがあっても良いじゃないですか。どれもがメインワークな人生ってめっちゃ大変ですけど、ずっと刺激的でもいられるわけです」(田邊駿一)

後編につづく

文・取材:本間夕子

リリース情報

『Journey through the new door』ジャケット写真
(通常版)

『Journey through the new door』
2023年2月8日(水)リリース
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