DEENインタビュー:「ずっとDEENの背中を追いかけていた」【前編】
2023.03.07
ソニー・ミュージックレーベルズ
日本の音楽シーンで存在感を放ち、時代を超えて支持されつづけるレジェンドアーティストをクローズアップ。本人へのインタビューで、過去と現在の活動を辿る連載「THEN&NOW 時を超えるアーティスト」。
今回は、3月10日に、デビュー30周年を迎えるDEENのふたりへのインタビュー。デビュー当時のことから、3月8日にリリースされるベストアルバムに込められた想いまでを聞く。
後編では、30年の間に変遷していったDEENの音楽性にスポットを当てる。
目次
DEEN
ディーン
(写真左より)山根公路(キーボード)、池森秀一(ボーカル)。1993年3月10日、シングル「このまま君だけを奪い去りたい」でデビュー。約160万枚のセールスを記録する。そのほか「瞳そらさないで」「Memories」「翼を広げて」といったヒット曲がある。2018年、ギターの田川伸治の脱退でふたり体制となる。2023年1月に、昨年行なわれた全国47都道府県ツアーのライブ映像を収録する『The Last Journey 47 ~扉~ -tour documentary film-』を発売。3月8日にはベストアルバム『DEEN The Best DX ~Basic to Respect~』をリリースする。
(前編からつづく)――ここからは、現在に繋がるDEENの音楽的変遷を紐解いていきたいと思います。
池森:DEENはこれまで、周年近辺でリリースするベストアルバムで一区切りして、次に出すオリジナルアルバムで、毎回明確なコンセプトを掲げて進んできたところがあるんです。特に大きかったのは、2001年に『Ballade in Blue~The greatest hits of DEEN~』、2002年に『和音~songs for children~』というカバーアルバムを出したあとのオリジナルアルバム『pray』です。ここで、とことんAOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)なアルバムを作ろうと意識したことで、それ以前とは違う音楽性を提示することができました。
アルバム『pray』(2002年)
――今、いわゆるシティポップと呼ばれている音楽の方向ですか?
池森:そうですね。そのころはまだシティポップなんていう言葉では呼ばれてなかったけど(笑)。ヒットを狙うとかではなく、あくまで純粋な音楽的発想として、自分たちの大好きだった音楽とか、自分たちの底流にあるミュージシャンシップを、J-POPにちゃんと落とし込んでみようと思いました。一流のスタジオミュージシャンの方たちの胸を借りて。
山根:そのやりとりがすごく刺激になりました。知らず知らずに凝り固まっていた部分が、パッと開けたんですよ。
池森:ミスターAORであるドラマーの沼澤尚さんを中心としたリズムセクションと一緒に、『pray』『UTOPIA』『ROAD CRUISIN'』と、3年にわたって同じ方向性のアルバムを3枚作りました。今、「何? 今はAORじゃなくてシティポップっていうんだ?」と、若い人たちのブームを面白がれたり、「じゃあ、シティポップをカバーしてみようかな」と素直に思えたり、「僕らにはAORだけど、シティポップのほうがわかりやすいんなら、その言葉を入り口にアルバムを作ろう」と思えるのは、たぶん、あの三部作があったからなんですよね。今に繋がる大事なターニングポイントだったと思います。
――おふたりのもともと好きだった音楽が、若い世代に求められる時代になったというのは喜ばしいことですね。
池森:山下達郎さんや竹内まりやさんをはじめとしたシンガーソングライターの皆さんも、ご自分たちが好きで影響を受けていた音楽を、日本のポップスとして落とし込まれてきた。それが今、シティポップとして再燃して、海外でもその数々のリメイクがバズり始めてるっていうのは、面白い現象だと思いますね。
――25周年の翌年に発表した2019年の『NEWJOURNEY』も、DEENがふたり体制になって最初のアルバムということで、今に繋がる大事な作品になると思うんですが、そのあとすぐにコロナ禍に突入しました。その影響は少なからずありましたか?
アルバム『NEWJOURNEY』(2019年)
山根:家で音を作って、スタジオに入らずにデータを送り合って作業を進めるという形態が、より進んでいきましたよね。まぁでも、音楽の仕事は、もともとそういうリモートワーク的な部分が多かったので、外に出られないぶん、自分の作業に集中できたところはあった気がします。
池森:そう。もともと籠りたい人たちですからね(笑)。
山根:ただ、DEENはライブを飛ばすということはそれまで一度もなかったんですけど、コロナ禍では1回だけ、ビルボードライブ横浜での公演がキャンセルになりました。振替公演ができたので良かったですけど。
――2022年には、30周年に向けた47都道府県ツアーも無事完走されました。
DEEN The Last Journey 47~扉~ tour documentary film ダイジェスト映像 Part 1
池森:47都道府県ツアーは、「ファンの方たちともっとコミュニケーションをとりたいね」ということで15周年のときに始めて、今回が4度目でした。ライブよりトークがメインなくらいの構成で、最後は僕らが出口に並んで皆さんをハイタッチで送り出すということを定番にしてきたんです。そこに意味があるから、あえて小さなキャパの会場を選んでね。今回はアクリル板越しのグータッチにはなりましたけど、30周年の“ありがとう”はちゃんと伝えられたと思いますし、ファンの方たちとの絆をよりいっそう強く感じることもできました。
――おふたりとサポートギターの3人だけで、シンプルに奏でられているのがまた素敵だなと思いました。
山根:通常のツアーでは、皆さんのほうから開催される各都市に来てくれるわけですけど、47都道府県ツアーは、こちらから皆さんの元に出向いて感謝を伝えるものなので、本当に近い距離で、お客さんとアイコンタクトをしながらの演奏を心掛けているんです。マスク越しでも笑顔になってくれているのが手に取るようにわかるから、僕らも「ああ、良かった」って思いました。
――そして、3月8日には、30周年記念の『DEEN The Best DX~Basic to Respect~』が発売されます。DISC-1の「DEEN The Best Studio Live 30th」では、代表曲の数々を新たにレコーディングしています。
『DEEN The Best DX~Basic to Respect~』(完全生産限定盤)
池森:ベストは散々出してきてるので、今、何をやるとファンの皆さんは喜んでくれるかということを、レーベルの制作担当とずっと話していたんですよ。そのなかで提案されたのが、ヒット曲の数々を当時のオリジナルアレンジで、今のメンバーで新たに奏でたらどうかということだったんです。それで一気に僕自身のイメージも広がりました。
山根:当時とは使っている楽器も違えば、キーボード類の音色自体も違う。また、エンジニアも違うので、同じフレーズを踏襲していても、やっぱり今の音になっているんですよね。面白い試みだと思います。
――そのなかに収録されている新曲「RUN RUN RUN」は、春畑道哉さんがギターで参加されていて、勢いのある攻めの1曲になっています。
池森:30周年だからと言ってベテランという言葉にあぐらをかく気もないし、落ち着くわけでもない。そんな思いを歌詞に込めました。ファンの方たちとひとつになれる曲になったら良いなと思って。
――『~Basic to Respect~』という副題にはどんな想いが込められているんでしょうか?
池森:実はその昔、BSで放送されていた『DEEN BASIC TO RESPECT』という番組があったんです。30周年ということを考えたときに、DEENチームとファンの皆さんにはリスペクトが尽きないですし、ベーシック=初心を忘れちゃいかんなとも思ったんですね。それを表わすのにちょうど良いタイトルだなと。チーム一同、「いいね、いいね」となってつけました。
――今後の展望というところでは、次のオリジナルアルバムがひとつの指針となりそうですね。
池森:先ほど挙げた三部作以降は、ずっといわゆるシティポップのフレイバーで作ってきているので、当然その流れがベースになっていくのかなという気はしています。シティポップが再評価されて、若い世代のミュージシャンはその世代なりのカッコ良い音楽を作っていますけど、僕らも僕らなりに、リアルタイムで影響を受けたAORをちゃんと噛み砕いたスタイルで、何か新しい世界観を提示していけたらなと。今だからこそなのか、今ようやくなのか、その方向性がDEENにすごくしっくりきてる感じがしています。
僕たちのことを全然知らない人たちが、『DEEN The Best DX~Basic to Respect~』の3つのディスクを聴いたら、「この人たち何がやりたいの?」って思うくらい(笑)、多ジャンルに聴こえるかもしれない。でも、今の僕らなら、もともと自分たちが持っていた音楽性と、30年の模索と経験を味方にして、デビュー当時のDEENのムードもシティポップという要素も、両方うまく消化できるんじゃないかなと思っているんです。
山根:もともと洋楽から入った僕らは、アマチュア時代、参加ミュージシャンの演奏のカッコ良さにばかり耳がいって、J-POPにおけるサビの重要性みたいなものをあまり意識したことがなかったんですね。DEENをやることによって、そこに気付き、磨くことができたのは、今にして思うと僕らの強みかなと。実践で勉強してきたことを、次の作品にもいかしていきたいです。
――最後に、30年という長い年月を、ミュージシャンとしてやってこれた秘訣は何でしょうか?
池森:メンバー同士、近すぎず、遠すぎず、お互いちゃんとリスペクトしてやれる環境があったということですかね。DEENというのはある意味、象徴みたいなもので、その船に乗っかっているスタッフを含めたみんなが、ちゃんとチームとしての意識を持っているんですよ。僕はそのチームのボーカル担当です、みたいな感覚。だから秘訣は、良い意味で我を出さないということかもしれませんね。
「このまま君だけを奪い去りたい」でDEENのすべてが始まったということにリスペクトがあるので、それを愛してくれたファンの方たちにどう寄り添うかを、チーム全体でずっと考えてきました。それが僕らのDEEN愛。ファンの方たちもそこにコネクトしてくれているんじゃないかなと思います。
――デビュー当時は「背中を追いかけていた」とおっしゃっていたDEENとは、30年経った今、どのような距離感ですか?
池森:今は、ホント、親友ですよ。「オマエ、先に行きすぎー。やっと追い付いたよ」みたいな(笑)。
山根:「いろんな面でDEENに育てられました」と言える大人になりました。
文・取材:藤井美保
『スマホケ Presents 「30th Anniversary DEEN LIVE JOY Special 日本武道館 2023」』
公演日時:2023年3月12日(日)
会場:日本武道館
詳細はこちら
30周年特別サイト
https://deen30th.com/
公式サイト
https://www.deen.gr.jp/
https://www.sonymusic.co.jp/artist/deen/
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