スヌーピーが青いサンタクロースに!――ピーナッツ・ギャングと『ブルーサンタ』から学ぶ海の環境問題
2023.07.10
2023.03.24
ソニーミュージックグループでは、持続可能な社会の発展を目指して、環境に配慮した活動や社会貢献活動、多様な社会に向けた活動など、エンタテインメントを通じたさまざまな取り組みを行なっている。連載企画「サステナビリティ ~私たちにできること~」では、そんなサステナビリティ活動に取り組む人たちに話を聞いていく。
今回スポットを当てるのは、子どもに大人気のキャラクター『きかんしゃトーマス』を活用したSTEAM教育。この分野の研究をつづけてきた「特定非営利活動法人 東京学芸大こども未来研究所」(以下、こども未来研究所)と、『きかんしゃトーマス』のマスターライセンスを有するソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の取り組みとして、未就学児向けのSTEAM体験イベントや、ロッテのお菓子とのコラボレーション事例を紹介しつつ、子どもたちへの教育効果に迫っていく。
後編では、株式会社ロッテ(以下、ロッテ)×こども未来研究所×『きかんしゃトーマス』の相乗効果による、サステナブルなSTEAM教育について話を聞いていく。
原口るみ氏
Haraguchi Rumi
特定非営利活動法人 東京学芸大こども未来研究所
STEAM教育プロジェクト専門研究員
田中若葉氏
Tanaka Wakaba
特定非営利活動法人 東京学芸大こども未来研究所
STEAM教育プロジェクト専門研究員
内田沙織氏
Uchida Saori
株式会社ロッテ
マーケティング本部 ブランド戦略部 焼き菓子企画課
朝倉精吾
Asakura Shogo
ソニー・クリエイティブプロダクツ
──(前編からつづく)ここからは、ロッテ×STEAM教育×『きかんしゃトーマス』の取り組みについて伺っていきます。内田さんは焼き菓子企画課に所属していらっしゃいますが、こちらはどんなお仕事をされる部署でしょうか。
内田:「トッポ」「パイの実」「コアラのマーチ」など、ロッテの看板商品、しかもお子さんとの接点が多いブランドを担当しているチームです。そのなかで、私は焼き菓子だけでなく、キャラクター商品、ノベルティと言われるおまけ付き商品、キッズ向け商品全般を担当しています。
──そこに『きかんしゃトーマス』のお菓子も含まれるんですね。内田さんは『きかんしゃトーマス』をご覧になっていましたか?
内田:『ポンキッキーズ』世代なので、子どものころによく『きかんしゃトーマス』を見ていました。トーマスは身近な存在でしたし、仲間の大切さを学ぶきっかけのひとつにもなっていました。
──ロッテのロングセラー商品「チューイングキャンディ」は、パッケージや包み紙に『きかんしゃトーマス』のキャラクターがプリントされています。包み紙を使って機関車やオリジナルの線路を組み立てることができますが、最近は「レッツSTEAMチャレンジ」という問題が書かれた包み紙も登場しました。「チューイングキャンディ」の包み紙で、STEAM教育を行なおうというアイデアを思い付かれた経緯をお聞かせください。
内田:もともとロッテのキッズ向け商品は、“考える力”をテーマにおまけを企画していました。そんななか、SCPの朝倉さんから『きかんしゃトーマスとなかまたち STEAMアドベンチャー ~今日からキミもエンジニア~』(以下、STEAMアドベンチャー)をはじめとするSTEAM教育の取り組みについてお話を伺ったんです。その内容がロッテの“考える力”ともマッチしますし、ぜひSTEAM教育に関する取り組みをご一緒できないかと考えご相談しました。
朝倉:我々としても、ちょうど『STEAMアドベンチャー』が立ちあがったころだったので、この展開をもっと広げていきたいと考えていました。タイミングがちょうど良かったんですよね。
──ロッテの皆さんが掲げる理念とSTEAM教育、『きかんしゃトーマス』というIPがぴったりマッチしたわけですね。
内田:はい。ロッテのキッズ向け商品やノベルティ付きのお菓子は、ロッテとの最初のタッチポイントになる商品「マイファーストロッテ」として企画しています。親子のコミュニケーションが生まれる企画にもチャレンジしたいと考えていたので、まさにうってつけだと思いました。
──ロッテでは、食の安全・安心や食育といったサステナブルな取り組みを長年行なわれています。サステナビリティに対する企業としての基本姿勢、理念についてお聞かせください。
内田:ロッテではサステナビリティレポートを毎年発行し、取り組みや目標を明示しています。例えば、2023年の目標は食育体験者を年間10万人以上、2028年には15万人以上にするといった数値目標も社員に浸透しているので、こうした目標を意識しながら、各社員が担当商品やブランドで何ができるかを考え、それを実現するために日々取り組んでいます。私が担当しているキッズ向け商品は、親子の食を通じた学びの領域で貢献できるのではないかと考えています。
──包み紙に掲載する「レッツSTEAMチャレンジ」の問題は、「こども未来研究所」の原口先生、田中先生も監修されているとのことですが、「チューイングキャンディ」の包み紙を通して、どのようなSTEAM教育を行なっているのでしょうか。
田中:「チューイングキャンディ」のターゲットに幼児も含まれているので、計算や実験課題はまだ難しいと考えました。そこで、「もうダメかもしれない…」というフレーズを掲げ、トーマスたちが直面したトラブルをどうやって解決するかを考えてもらうようにしたんです。
内田:「もうダメかもしれない…」というワードが素晴らしいですよね。まず問題の投げ掛けがあり、「トラブルに見舞われたトーマスたちを助けてあげよう」というストーリーになっています。
田中:「トーマスたちを助けたい」という思いが、考える動機付けであり出発点。そこから「じゃあ、どうやって助けようか?」という文脈で、お子さんに解決策を考えてもらうという流れになっています。包み紙は10種類あり、4つのトラブルに対して、それぞれ複数のヒントを用意しています。
──例えば「線路の上にドラム缶があってトーマスが進めない」というトラブルにも、ヒントが何パターンか用意されているのが面白いですね。
田中:それが今回の大きなテーマなんです。包み紙の右上部を見ると、STEAMというロゴがあります。Sに色が付いていたら科学、Tに色が付いていたらテクノロジーのヒントを使って考えてみようというヒントになっています。同じ「線路の上にドラム缶があってトーマスが進めない」というトラブルでも、新たに線路を作って迂回するというTの解決策もあれば、ドラム缶を横に倒して転がすという缶の形に着目したM(数学)の解決策も考えられます。そういったヒントをイラストとロゴで示しているんです。
同じ問題でも、人によって考え方が違うし、解決策も違います。それは、STEAM教育が重視する、“答えのない問いについて考える”というところにもつながっています。トーマスを助けたいという動機から、自分なりの力、自分なりの考えで解決策を導き出してほしいですね。
──ヒントは出すものの、あえて包み紙には答えを載せていませんね。それも、自分なりに考えてほしいからでしょうか。
原口:そうです。ただ、まったく答えがないと、どこから手を付けたらよいか困ってしまう方もいらっしゃるかもしれないので、そこはロッテのブランドサイトに誘導しています。模範回答ではなく、「こんなやり方もあるかもね」という回答例をご紹介しています。
内田:この回答例をご覧いただき、親子で「あ、こうすれば良いんだね」とコミュニケーションしながら、考えたり学んだりしていただきたいと思います。また、ブランドサイトではドラム缶や水たまりなどのスペシャルレッテル(包み紙)をダウンロードできます。「チューイングキャンディ」の包み紙は全部で50種類あり、「レッツSTEAMチャレンジ」以外にも、線路やトーマスの車両を組み立てられるものもあります。そういった包み紙と組み合わせて、実際にトーマスが直面するトラブルを再現するといった楽しみ方もできます。手先を動かしてジオラマを作ることは、STEAM教育で言うE(エンジニアリング)にもつながるので、実際に作るところまでできるようにしました。
──『きかんしゃトーマス』のグッズ、おもちゃなどはたくさんありますが、こうした仕掛けのあるお菓子は珍しいですよね。朝倉さんはこの取り組みをどのように受け止めていますか?
朝倉:「チューイングキャンディ」は50年近い歴史があるお菓子ですし、50円くらいで買えます。まさに、内田さんがおっしゃっていた「マイファーストロッテ」の入り口となる商品ですよね。「チューイングキャンディ」のほかには、『きかんしゃトーマス』のラムネも販売されています。ラムネの入った容器がトーマスたちの形をしていて、6種類のキャラクターの顔が付いているんです。つなげて遊ぶこともできて、とても面白い商品だなと思います。
原口:「チューイングキャンディ」もそうですが、このラムネも私の息子の大のお気に入りです。「今日は何粒食べて良いの?」と毎日聞かれますね(笑)。
内田:ありがとうございます! こちらの商品もSCPの皆さんにご協力いただき、容器をトーマスたちそっくりにできる巻紙のダウンロードも始めました。切り取って、容器の周りに貼り付けて、より再現性を高めて楽しんでいただけたらと思います。
巻紙のダウンロードはこちら
──ラムネの容器を使った遊びも、STEAM教育の一環になるのでしょうか。
原口:S(科学)の学びにつながる可能性がありそうだと思います。幼児の段階で、ものをじっくり観察するのはとても大切なことです。実を言うと、私は当初、トーマスとエドワードの見分けがつかなかったんです。でも、うちの子どもはじっと見つづけて、「眉毛の形が違う」「車輪の数が違う」と区別がつくようになりました。好きなものであれば子どもはじっくり見ますし、新たに気付きも得る。そういった観察が、仕組みの違いを見出すことにもつながっていくのではないかと思います。
──ロッテ×STEAM教育×『きかんしゃトーマス』の取り組みは、まだまだ発展性がありそうですね。
内田:テクノロジーが進化し、AIも今後さらに進化していくなかで、考える力を養うSTEAM教育の必要性はますます高まっていくと思います。そういった力を身に付けることで、AIの時代でも活躍できる人材になり、より大きな成長を遂げるきっかけ作りが、私たちの商品でできたらこんなにうれしいことはありません。これからもロッテのさまざまな商品を通じて、お子さんたちに考える力、STEAMの力を身に付けていただけるよう、商品を企画していきたいと思います。
──今や多くの企業が、SDGsやサステナブルな取り組みを展開しています。こうした持続可能な社会の発展に向けた取り組みについて、STEAM教育に携わる原田先生、田中先生はどのようにお考えですか?
田中:STEAM教育では、実社会において問題を発見、解決することを重視しています。その際、いきなり大きな視点で物事を考えるのは難しいですから、自分に一番近いところから取り組みを始めるのが良いと思っています。自分にできるちょっとしたことを積み重ねていき、それを多くの人が少しずつ行なえば、持続の可能性をさらに高めていけるのではないでしょうか。
また、私はSTEAM教育における性別比も研究しています。私の専門分野は技術ですが、大学では男性の比率が高かったんですね。そういったなかで、より多くの人たちが幸せになれる持続可能な取り組みを行なうには、性別など問わず、誰もが活躍できる社会を作ることが重要です。STEM教育からSTEAM教育に変わり、A(アート・リベラルアーツ)が入ったことで、その課題意識がより重視されるようになってきました。
『きかんしゃトーマス』もアニメのビジュアルが新しくなり、性別やキャラクターたちの出身地域もより大きく広がりましたよね。そういったコンテンツ側からのアプローチが、性別を問わずに活躍できる持続可能な社会につながっていくと思います。私自身も、常に問題を発見する姿勢を忘れず、これからも活動に取り組んでいきたいですね。
原口:STEAM教育プロジェクトの研究成果をまとめた報告書『STEAM教育のすすめ』のなかに、“より良い社会とは、自分や他者の犠牲の上に成り立つものであってはならず、自己の幸せとの両立において目指されなければならない”という私が大好きな一文があるんです。STEAM教育のAにあたる教養とは、どれだけ物事を知っているかではありません。そうではなく、自分がどれだけかけがえのない存在なのかを受け容れ、「それはつまり、すべての人がかけがえのない存在なんだ」と気付くことが、Aにつながるのだと私は思っています。
地球の裏側の人も、自分と同じく大切な人。とは言え、他者を優先しすぎて、自分を大事にできなくなってしまうのも問題です。幼いころからSTEAM教育を体験し、「自分にもできることがあるんだ。社会を変えられるんだ」という経験をたくさん味わうことが、自分も他者も大切にする社会につながっていくと思っています。
今日も学生たちと話していたのですが、エネルギーの消費量をセーブするには、ふたつのアプローチの仕方があるんです。ひとつは、暑くても寒くても、我慢をして今まで使っていたエネルギーをいっさい使わないようにする。もうひとつは、より少ないエネルギーで同じことができるものを開発する。これってどちらも正しいし、どちらもアリですよね。
その上で、エネルギーの消費を完全にゼロにすることは、今の社会では不可能に近いです。であれば、今まであったものを工夫してより良くすることで、ハッピーな解決策を打ち出せる人が増えていけば、サステナビリティな視点で世の中を作り変えていくことができるのではないでしょうか。
身近なことでも、ちょっとモヤッとすることってたくさんありますよね。そこに、変化するためのヒントがあるはずです。何か気になったときに諦めずに考え、どうしたらより良くなるのか、試行錯誤を繰り返すことが大事ではないかと思います。
──内田さんはいかがでしょう。日々お菓子を購入するお子さんの笑顔や未来を思い描いて、商品企画をされているのではないでしょうか。
内田:私の目標は、商品企画を通してロッテの“ファン”を作ることです。この場合の“ファン”は、楽しい気持ちを意味する“Fun”と、愛好家を意味する“Fan”の両方を掛けています。お菓子を通じてワクワクし、楽しい気持ちになってもらいたい。そして、ゆくゆくはロッテという企業を好きになっていただきたい。そういった気持ちで、日々の仕事に取り組んでいます。
──食もエンタテインメントのひとつですし、作り手側の熱量が高くないとお客様にも伝わりませんよね。
内田:そうですね。お菓子は、人が生きて行く上では、必需品というより嗜好品に近い位置付けです。でも、日々の楽しみや喜びとして皆さんの身近な存在でもありますよね。甘いお菓子やアイスを食べて幸せな気持ちになる、そういった原体験を子どものうちに作ることで、その子どもたちが親になったときに「子どものころに食べていた『きかんしゃトーマス』のお菓子を、自分の子どもにも食べさせてあげたいな」と思っていただき、そうやって、子ども世代にロッテのお菓子が受け継がれていく。「こども未来研究所」やSCPの皆さんとの取り組みによって、そのような循環につなげられたらと思います。
──「こども未来研究所」のSTEAM教育とロッテのお菓子は、普通に考えると、なかなかマッチングしないと思います。そのハブになっているのがIPであり、キャラクターですよね。朝倉さんは、今のお話を受けてどうお感じになりましたか?
朝倉:おっしゃる通り『きかんしゃトーマス』のようなIPやエンタテインメントが、社会課題に気付きを与える役割を果たしているのではないかと思いました。そもそも「チューイングキャンディ」も、ただお菓子を味わうだけなら白い包み紙でも構わないはず。むしろそのほうがコスト面では安く仕上げられるわけです。
でも、『きかんしゃトーマス』の絵柄が付くことで作品好きのお客様へのタッチポイントになりますし、さらに今回のように包み紙で学びを得られるコンテンツも作ることができる。これがIPの力だと思います。それが、ロッテの企業理念、サステナビリティの方針と合致しているのもうれしいことですね。
――原口先生たちがSTEAM教育の学会でロッテのお菓子の取り組みを紹介し、大きな反響があったとも伺いました。
原口:そうなんです。STEAM教育に取り組む研究者の海外での学会でしたが、「日本ではお菓子の包み紙にSTEAM教育を取り入れているのか。しかも幼児が遊びながら学んでいるとは!」と、大変驚かれました。世界的に見ても、独自の取り組みなんだろうなと思います。
よく“産官学連携”と言いますが、学術機関が“産”とつながる機会はなかなかありません。多くの大学では、先生方が個人的につながりのある企業と取り組むしかないんです。そういう意味で、「こども未来研究所」というハブになる組織を持っていることは、東京学芸大学の強みと言えるかもしれません。
内田:こうした産学の取り組みを、『きかんしゃトーマス』というIPがつないでくれることで、発信力、影響力も高まるんでしょうね。ロッテのお菓子とSTEAM教育がコラボするだけでは、なかなかお客様に気付いていただけません。トーマスというキャラクターがいるからこそ、お子さんも興味を持って手に取ってくださる。「こども未来研究所」、SCPそれぞれのお力を借りることで、ロッテの取り組みを世の中に伝えることができるのだと思います。今後も、一緒にコラボレーションしながらお互いを高め合っていけたらうれしいです。
文・取材:野本由起
撮影:篠田麦也
© 2023 Gullane (Thomas) Limited.
© 2023 HIT Entertainment Limited.
きかんしゃトーマス公式サイト
https://www.thomasandfriends.jp/
 
東京学芸大こども未来研究所
https://seed.codomode.org/
 
ロッテ きかんしゃトーマスのキャンディで遊ぼう
https://www.lotte.co.jp/products/brand/thomas/
 
YouTube きかんしゃトーマスチャンネル
https://www.youtube.com/thomasandfriendsjp
 
Twitter きかんしゃトーマス【公式】
https://twitter.com/ThomasNo1_JP
 
映画『きかんしゃトーマス めざせ!夢のチャンピオンシップ』
https://movie2023.thomasandfriends.jp/
 
ソニー・クリエイティブプロダクツ
https://www.scp.co.jp/
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