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連載Cocotame Series

ザ・プロデューサーズ~感動を作る方程式

みんなが楽しめる居場所として作った『VEE』という箱【前編】

2023.04.21

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エンタテインメントの分野で、さまざまな作品やプロジェクトの原動力を担う制作担当者に、ユーザーの元に届くまでの道のりや指針にしている思いを聞き、クリエイティブの方式を解く連載。

今回は、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が手掛けるVTuberプロジェクト『VEE』の発起人である、プロデューサーの渡辺タスクに話を聞く。第1弾タレントのデビューから約1年。SMEでVTuberプロジェクトを手掛ける彼の狙いと現在地、そしてこの先のビジョンとは。

前編では、『VEE』を運営する目的と所属VTuberとの関係性などを語る。

  • 渡辺タスクプロフィール写真

    渡辺タスク

    Watanabe Task

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

『VEE』

『VEE』ロゴ

SMEが手掛けるVTuberプロジェクト。バーチャルタレント育成&マネジメント事業として2021年にオーディションを開催。2022年5月に『VEE』所属バーチャルタレントの第1弾“Dev-a”として5人のデビューを発表したのを皮切りに、2023年4月には“Dev-e”の3人がデビューし、現在、全20名のバーチャルタレントが所属している。“Dev”は“Development=開発・発展”の意。

バーチャルで活躍するタレントの事務所を作りたい

――2021年に渡辺さんが『VEE』を立ちあげたきっかけから教えてください。

自分はこの会社に入る前、ニコニコ動画というプラットフォームでクリエイター活動をしていたんです。今はYouTubeやTikTokなど、さまざまなプラットフォームがありますが、10年前は個人が表現できる場所が限られていて、クリエイターたちがニコニコ動画に集まっていろんな作品を生み出していました。

渡辺タスクインタビュー写真1

そんな場所で過ごした経験があるので、今もインターネットを主戦場としている人や、自分のお客さんに向けて自分で発信する、自己プロデュースができる人たちと仕事をするのが得意だし、そういう人たちが好きなんですね。彼ら彼女らと、いつか大きな仕事がしたいと思っていたことがきっかけの半分。

もう半分は、VTuberをやりたい人って近年すごく増えたなと感じたことです。VTuberは5年くらい前にカルチャーとして定着しましたが、活躍して有名になってる人もたくさんいるし、憧れる人も当然増えています。だったら、その受け入れ先を自分たちで作れば良いんじゃないかと思ったんですね。これまで培ってきた知見をいかせるのではないかと。

インターネットで活動している人たちと、SMEという会社の力を使って、新たなエンタテインメントが作れるかもしれない。それがこの会社での自分のミッションにも感じられて「バーチャルで活躍するタレントのマネジメントをやりたい」と会社に提案しました。

――2021年に行なったオーディションには1万8,000人以上の応募がありました。

既に人気のあるアイドルグループのオーディションなどは別ですが、新規のプロジェクトに1万を超える応募が来るというのは結構異例なことらしくて、VTuberをやりたい人はやっぱりいっぱいいるんだなと改めて実感しました。

ただ、たくさんの応募があったのは本当にうれしかったんですけど、選考は相当難しかったです。16歳以上という年齢制限はありましたが、それ以上だったら何歳でもOKだし、当然、国籍、性別も不問なので、とにかく多種多様で。最終的にはバーチャルで表現したいことや成し遂げたいことの明確なビジョンを持っていること、そのビジョンを『VEE』で叶える必要があること、そしてセルフプロデュース的なことができるかどうかで判断しました。

やはりライブ配信を1日何時間もこなしてSNSも自分で運営するという活動に対して、我々がトータルプロデュースをするのは難しいですし、こちらから強制したら本人としては面白味がなくなってしまうと思うので。オーディションを通過したメンバーは2022年5月から段階的にデビューさせていって、今月、第5弾“Dev-e”として3人がデビューしました。

Dev-e/黒燿リラ、雨庭やえ、月白累画像

Dev-e/(左から)黒燿リラ、雨庭やえ、月白累

自分の役職はプロデューサーなんだから出るしかない

――プロジェクト発足から約2年が経過しましたが、運営する上で難しいと感じている部分はありますか?

種を蒔いて花を咲かせるにはまず地を耕すところから始まりますが、SMEはバーチャルに関してはまだ土地が整備されていない状態だったので、そこの調整が大変でしたね。これまでのレギュレーションがまったく適用できないことがすごくあるので、特にこの1年は、インターネットの活動におけるレギュレーションみたいなものを調整する必要がありました。

例えば、インターネットで創作活動をする人たちのスピード感ってめちゃくちゃ速いんですよ。1曲作るのに半年かけるというような感覚だと、ネット上に生まれたその瞬間の流行を逃してしまうので、そういうスピード感のギャップみたいなものにめちゃくちゃ悩まされたり。

あと、インターネットでバズることってある種のリスクをはらんでいて、 チャレンジしなきゃ結果が出ないけど、会社としてはリスクについて時間をかけて検討しなければならないときがあります。その辺のバランスを探りながら新しいルールを制定していくわけです。

――ときには会社とタレントの板挟みになることもあったり?

ありますね。タレントの「これをやりたい」という純粋な気持ちは尊重したいけど、会社としての考えや権利的にできないことはやっぱりあって。そういうときは理由を丁寧に説明するし、実現するために別の方法を一緒に考えたりします。この1年間は、タレントからやりたいことの相談が来て、どうしたらクリアできるかを返すっていう事務作業をひたすらやりつづけた日々でした。もちろん組織の運営には必要なものなんですが。

渡辺タスクインタビュー写真2

ただいっぽうで、多くの人間がいる会社だと、話を聞いてくれる人、知見を持っている人が誰かしらいるんですよ。メタバースとかプラットフォームビジネスとかオンラインライブを手掛けている人とか、みんなそれぞれのポジションでいろんな構想を持っていて、「自分はこういうことがやりたい!」と叫んでいると、割と共感してくれる人がいたりするんです。そういう会社であるがゆえのメリットはしっかりいかしていきたいなと。会社のなかを走り回ってなるべくいろんな人たちとつながって、『VEE』を楽しい方向に引っ張っていけたらと思っています。

――渡辺さんは立ちあげ当時「プロデューサーはあくまでも裏方で表に出るべきではない」というスタンスだったそうですが、今回、前面に出て話をされることになったのはどういう心境の変化だったんでしょうか?

企業としてアーティストやタレントのマネジメントを行なう際、多くの場合が人格を消しますよね。ただ、「この度、弊社のタレントが〇〇をすることになりました」というようなフォーマットに則った発信ばかりしていると、バーチャルタレントの業界ではファンの方々に真意が伝わらなかったり、距離を感じてしまわれたりすることがあります。

そういう状況を作らないためには、マネジメントは誰がやっていて、こういうふうに運営していくということをしっかり発信しないといけないなと思ったんです。アイドルやミュージシャンのプロデューサーも顔を出すし、だったら自分の役職はプロデューサーなんだから出るしかないなと。

本当はVTuberと同じようにアバターで出たかったんですけど、やっぱり生身で出たほうが皆さんからの信頼を得られるのではないかと思って、今日は美顔器で肌を30分整えてから取材に臨みました(笑)。

――その信頼というのは、ファンからの信頼ということですか?

ファンとタレントどちらもですね。VTuberってめちゃめちゃファンとの距離が近いんですよ。ライブ配信ではコメントが来るので、僕たちがフィルタリングできない領域で、ファンの皆さんからの言葉をダイレクトに受け止めている。そして、その言葉のなかには応援に交じって攻撃的なものも来ちゃうので、そこは精神的にすごく負荷がかかるんです。

片や運営の人間は人格を持たないので、何か言われてもそこまで傷つくことはない。でもそれじゃアンフェアだから、自分も顔を出して矢面に立つという選択をしました。あとは、バーチャルタレント界隈で社長やプロデューサーが顔を出すっていうのがカルチャー的にはあるんですよ。そういうのを求めてくれる人もなかにはいるので、僕ができることであれば力になろうと思った次第です。

なんでもダメって言ってくる頑固オヤジ

――VTuberという存在はまだ謎めいている印象です。近くで接している渡辺さんから見て、タレントさんたちの素顔というのはどんな感じなんでしょうか。

皆さんが想像している以上に、タレントとしての顔とオフの顔は表裏一体化してる感じですね。僕らも仕事や学校に行くときはよそ行きの顔をして、家に帰ると気を抜いてダラっとしたりしますが、VTuberのオンオフもそれくらいの違いです。楽しければ笑うし、酷いことを言われたら泣くし、美味しいものを食べたらちょっとやる気になるし、昼まで寝ると罪悪感を覚える。それは皆さんとまったく一緒で、そんなに特殊な存在ではないですよ。

渡辺タスクインタビュー写真3

――渡辺さんとタレントの距離感というのはどうでしょう。クリエイター出身ということで、お互いに親近感を持っているのでは?

だと良いんですけど、タレント側は案外“なんでもダメって言ってくる頑固オヤジ”とか思ってるかもしれません(笑)。クリエイター目線で見ると、言いたいことや気持ちはすごくわかるし、親近感も勝手に抱いてるし、VTuberという文化自体も好きです。

そもそも僕は、コンプレックスを内包している人間が好きなんですね。10年前のインターネットって、ライブハウスのステージに立つなんてことができないような、コンプレックスを持った人たちの自己表現の場だったんです。僕もそのひとりで、そこが自分の居場所になっていたし、居心地が良くて楽しかった。

今のインターネットは10年前のシーンとはちょっと違っているけど、VTuberが好きとかVTuberになりたいという特性の人たちには、あのときの感覚をまだ持ってる人もいるなぁと感じます。もちろん、そういうものがない人もいるんですけどね。

僕はそんなふうに、なりたい姿と自分との乖離にコンプレックスがあるけど、自分の理想に近付こうとする行為みたいなものが好きなんです。僕も10年前の自分だったらVTuberになっていたと思いますね。今はこういう形でこういう仕事をしているので、なるべくみんなが幸せであってほしいというか、一緒に成功したいという想いがあります。

後編につづく

文・取材:諏訪圭伊子
撮影:荻原大志

関連サイト

『VEE』公式サイト
https://vee-official.jp/(新しいタブで開く)
 
『VEE』公式Twitter
https://twitter.com/_vee_official_(新しいタブで開く)
 
『VEE』YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCXWiGKfAXjHUsxa_GNLgv-A(新しいタブで開く)
 
『VEE』Instagram
https://www.instagram.com/_vee_official_/(新しいタブで開く)

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