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連載Cocotame Series
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ザ・プロデューサーズ~感動を作る方程式

みんなが楽しめる居場所として作った『VEE』という箱【後編】

2023.04.22

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エンタテインメントの分野で、さまざまな作品やプロジェクトの原動力を担う制作担当者に、ユーザーの元に届くまでの道のりや指針にしている思いを聞き、クリエイティブの方式を解く連載。

今回は、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)が手掛けるVTuberプロジェクト『VEE』の発起人である、プロデューサーの渡辺タスクに話を聞く。第1弾タレントのデビューから約1年。SMEでVTuberプロジェクトを手掛ける彼の狙いと現在地、そしてこの先のビジョンとは。

後編では、『VEE』の具体的な活動内容や今後の展望を語る。

  • 渡辺タスクプロフィール写真

    渡辺タスク

    Watanabe Task

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

『VEE』

『VEE』ロゴ

SMEが手掛けるVTuberプロジェクト。バーチャルタレント育成&マネジメント事業として2021年にオーディションを開催。2022年5月に『VEE』所属バーチャルタレントの第1弾“Dev-a”として5人のデビューを発表したのを皮切りに、2023年4月には“Dev-e”の3人がデビューし、現在、全20名のバーチャルタレントが所属している。“Dev”は“Development=開発・発展”の意。

「プロデューサーってこれだよな」

渡辺タスクインタビュー写真1

――『VEE』の第1弾タレント“Dev-a”のデビューから約1年が経ちますが、活動のなかで印象的だったことは?

デビューから半年経ったくらいのときに、カフェでファンミーティングを開いたことです。僕らの仕事は、基本的にインターネット上ですべてのことが行なわれています。日中はパソコンに向かって、Slackを見つづけて、夜はタレントの配信を見るみたいな。タレントもスタッフもそういう状況のなかで、一度『VEE』を応援してくれているファンを中心にフィジカルな場を設けてみようと、秋葉原のマンガ喫茶とコラボしてファンミーティングを開催したんです。

ファンミーティング画像

キャパが40~50人の会場だったんですが、現場全体がすごくワクワクしていて、タレントのみんなの前で「今回はこういう想いで皆さんに集まっていただきました。みんなで頑張りましょう」みたいな挨拶をしたときは「プロデューサーってこれだよな」ってエモさを感じました。VTuberのマネジメントをやりたいと会社に掛け合って企画を通して、立ちあげのために駆けずり回って、大変な思いもしながら運営していましたが、ファンの人たちの顔を間近で見るとこんな気持ちになるんだなって。

インターネットを主戦場にしている我々が「オフラインってやっぱイイよね」っていうのはどうなんだって感じもありますが(笑)、レアな機会だからこそ心に残ったし、やっぱり熱量が直接伝わる瞬間というのは強いなと感じましたね。

――2022年12月から放映されていたTV番組『ぷみぷみVEE』も注目されました。

ソニー・ミュージックアーティスツ所属のピン芸人、マツモトクラブさんがMCを務め、『VEE』のタレント数人が出演する30分のバラエティ番組で、TOKYO MXでTV 放送すると同時に無料動画配信サービス“エムキャス”にて配信していました。

エムキャス配信画像1

エムキャス配信画像2

よくアイドルグループと芸人さんが一緒に番組をやったりしますが、『ぷみぷみVEE』もそういった構成の番組でした。ファンに楽しんでもらう、いろんな人に知ってもらうという目的はもちろんありつつ、タレントの育成的な要素も大きかったです。

というのも、VTuberは1時間でも3時間でもひとりでしゃべりつづけるのは得意なんですが、集団のトーク番組で求められるスキルは身に付いていなかったりするんです。場の流れを読んでいかに短い言葉で切り込んでインパクトを残すか、その技術を磨くには場数を踏むほかないんですよね。この先、ひとりでトーク番組に呼ばれて「VEEの看板背負って頑張って」みたいなことも出てくると思うので、タレントにとっても良い経験になったと思います。

もっとVTuberのことを知ってほしい

――テレビのバラエティ番組のほかに、VTuberが活躍するカテゴリとしてどんなものを想定していますか?

なんでも良いですよね。例えば雑誌の表紙とかでも良いんですが、人間がやってきたことをバーチャルタレントがやるっていうのは面白いかなと。人間からしたら当たり前の日常的な行為も、VTuberがやると新鮮に見えたりしますから。VTuberも食べて寝て普通に暮らしているし、エンタテインメントを享受して泣くことだってあるので、商品レビューも食レポも外ロケも当然できるんです。

そこにピンときていない人もいるかもしれませんが、その部分の認識がもっと広まれば、「VTuberを起用してみようか」みたいな選択肢がどんどん出てくるでしょうね。

――以前Cocotameでは、九条林檎さんが京都を訪ねて『アンディ・ウォーホル・キョウト / ANDY WARHOL KYOTO』のリポートをするという記事がありました。

九条林檎アーティスト写真

九条林檎

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まさにあのイメージです。あれは、すごく面白かったですよね。吸血鬼が現実世界を旅しながらポップアートの歴史に名を刻んだアーティストについて語ってるんですよ。寿命が何年あるかわからない吸血鬼がアートについて語るって、なんか良くないですか?

そして、その内容が真っ当であればあるほど不思議な違和感があるんです。そういうズレみたいなものを、僕は面白いと思っちゃう。そもそもみんな違う人間だから感想が違うのは当たり前で、なんかそれで良くないですかっていうのもあります。もっとVTuberのことを知ってほしいなと僕は思っているし、多様性の世の中でもあるので、 さまざまな形のものが同じものを見てしゃべっているというのが、今後もっと当たり前になっていくんじゃないかと思いますね。

――まだVTuberの面白がり方の認知が足りないということでしょうか?

いや、相当受け入れられてますよ。特に若い世代の人たちには。アメリカでは、小学生のクリスマスプレゼントの定番がずっとブロックの玩具だったのが、今はロブロックスというゲーム内で使う通貨がトップになっているらしいんです。ロブロックスはメタバース上で、オンラインによって友達と遊ぶことができるゲームですが、アバターの着飾った姿を友達に見せるために、通貨が欲しいというんですね。これまで現実世界にあった自己顕示欲の場が、今の子どもたちはインターネット上に移行しつつあるということです。

バーチャルというものが、そこまで身近になっている。そこにはエンタテイメントとか経済とかが絶対に乗っかってくるし、バーチャルタレントも当然増えますよね。そのためにまずは人間を集めてその人たちをサポートする基盤を作り、万全な体制でバーチャル領域のエンタテインメントに仕掛けていこうというのが僕らの目指していることです。スポーツでもゲームでも祭りでも、VTuberのタレントがいれば何でも適応できるので。

渡辺タスクインタビュー写真2

みんなでバーチャルで盛りあがりたい

――では、この先仕掛けたいこと、注力したいこととして、どんな構想があるか教えてください。

1期生のデビューがまだつづいている途中なので、全員が出揃ったころには、みんなでひとつのコンテンツを作ってみたいですね。音楽なのか物語なのか漫画なのかわからないけど、それぞれのキャラクターや世界観をいかした作品を合同で作ってみたいです。

あと、それぞれの相性や特性を見て、グループを作ってユニット化してみるのも面白いだろうし、ファンの人たちとのコミュニケーションももっと深めていけたら良いなと思います。YouTubeのチャットでやり取りするだけでなく、ネットだからこそできる交流とかワクワクしますね。可能性がいっぱいあるじゃないですか。

――具体的には、どんなコミュニケーションが考えられますか?

あくまでもひとつの例ですけど、ネット上に『VEE』のタレントが集まる場所を作って、ファンがそこに自由に入ってこれたりしたら楽しいですよね。ファンも犬や猫とかモモンガとか好きなものに姿を変えて、好きなように過ごせるんです。ファン同士で遊んでも良いし、タレントともコミュニケーションが取れる。そういうことができたら面白いなって思います。

10年前の僕にとってインターネットが自分の第2の居場所、セカンドプレイスだったように、場所が作りたくて箱を作った。そのなかで、とにかくみんなで面白いことがやりたいなって。夏祭りみたいに、みんなでヤグラを組んで、着飾って盆踊りして、最後はキャンプファイヤーで全部燃やしちゃう。無茶苦茶楽しいじゃないですか。僕がやりたいのはそういうことなんだと思います。ファンが生放送や生配信を見るだけじゃなく交流ができる場所があって、 タレントも参加してみんなで盛りあがるっていうのをいつかバーチャルでやりたくて、この仕事をやっているようなところがあります。

――今後『VEE』で、どんな展開を見せていきたいと考えていますか?

この1年は日ごろのマネジメントやタレントのサポートをしつつ、いっぽうで種蒔きもやっていたので、皆さんには芽が出始めるところを見て楽しんでいただければ。ほかにも仕込んでいるものがいくつかあって、来年あたりにはそれらが融合した、面白いものをお見せできるのかなと予想してます。そちらも期待してほしいですね。

そして当面の目標として、今は『VEE』というと「ソニーミュージックがやってるあれでしょ?」と言われがちですが、いずれは「『VEE』ってソニーミュージックだったんだ」と言われるようになりたいな、と。そのために『VEE』にアイデンティティみたいなものを付加していくのがプロデューサーの僕の務めだと思っているので、『VEE』に身を捧げる覚悟で頑張っていきたいです。

渡辺タスク写真

文・取材:諏訪圭伊子
撮影:荻原大志

関連サイト

『VEE』公式サイト
https://vee-official.jp/(新しいタブを開く)
 
『VEE』公式Twitter
https://twitter.com/_vee_official_(新しいタブを開く)
 
『VEE』YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCXWiGKfAXjHUsxa_GNLgv-A(新しいタブを開く)
 
『VEE』Instagram
https://www.instagram.com/_vee_official_/(新しいタブを開く)

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