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連載Cocotame Series

アーティスト・プロファイル

ラーメンと交差するトミタ栞の10周年での挑戦【後編】

2023.07.20

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気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「アーティスト・プロファイル」。

今回登場するのは、シングル「ラーメンウォーアイニー」をリリースし、今年でアーティストデビュー10周年を迎えたトミタ栞。記念的ワンマンライブ『トミタ栞 デビュー10周年ライブ~トミタ祭~』を終えた彼女に、改めてこの10年を振り返りながら、デビューまでの経緯や、新たなステージへと向かう現在の心境を聞く。

後編では、切り離すことのできないラーメンへの想いと、YouTube企画“30歳までにしたい10のこと”を軸に今後の目標を語る。

トミタ栞プロフィール画像

トミタ栞 Tomita Shiori

1994年2月1日生まれ。岐阜県出身。血液型AB型。2012年から2015年まで、音楽情報バラエティ番組『saku saku』(テレビ神奈川)の5代目MCを務める。2013年にミニアルバム『トミタ栞』でエピックレコードジャパンからCDデビュー。4thシングル「だめだめだ」は、TVアニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』のエンディングテーマとして起用された。新曲「ラーメンウォーアイニー」配信中。10月18日より、対バンライブ『トミタイバン vol.3』を開催。

ラーメンはトミタ家を繋いでいる核

前編からつづく)TikTokで連日のようにラーメン愛を発信しつづける彼女は、新曲として「ラーメンウォーアイニー」を制作した。家業というレールから自分の意思で離れ、自ら作り上げた線路を突き進んできた彼女だが、10年目にして、両親の道と交わることとなった。

トミタ栞1

「10年の活動を経た今、家業と自分の歌手活動が重なった感じがします。家業のことは、リスペクトも込めて私のなかで重くとらえていたんですが、今、ようやく家族の線路と自分の仕事の線路が繋がって来たのかなって思います。これまでは、あまりにもやっていることが違いすぎて、ちょっと距離を置いていたところもあったかもしれない。でも、今ならラーメンのことを声を大にして語りたいと思えるし、ある意味ビジネスパートナーにもなれるなって感じています」

楽曲を手掛けたのは、“イヌクワチャンネル”を配信している作曲系YouTuberの西川サスケとマンモーニ拓磨。物心がついたころから毎日のように食べてきたラーメンへの愛と感謝を込めた歌詞は、トミタ栞との共作になっている。

「実は、ラーメンの曲を出すことを両親にずっと言えなくて。おそらく、ラジオのオンエアで初めて聴いたと思うんですね。でも、自分からなかなか『聴いた?』とは聞けなくて。親がずっと向き合ってきたラーメンをこんなポップに歌い上げちゃって、もちろん真剣に歌ってるけど、親にどこまで伝わるのか不安でした。『お前、あんなふざけた感じで、ラーメン業界に足を突っ込むな!』って叱られそうな気がして、怖かったんです。

トミタ栞2

でも、先日、実家に帰ったときに、ふわっと会話に出してみたら、『あれ、伸びると良いよね』って返ってきて。そこで初めて、聴いてくれてるんだってわかったんですけど、親は親でラーメン業界の友達にたくさん宣伝してくれているみたいなんですよ。ただ難点は、にぎやかな曲なので、食事中にちょっと合わない(笑)。でも、わかりやすくて楽しい曲なので、面白い曲だなってSNSなどで使ってくれる人がいるかもしれないし。私の実家がラーメン屋であることを知ってくれてる人が聴いて、家族って良いなって思ってもらっても良いし。いろんな受け取り方ができる1曲なので、たくさん広がってほしいなと思ってます」

改めてトミタ栞にとって、ラーメンとはどんな存在なのだろうか。

「トミタ家を繋いでる核なんだなと思います。これまでは、核はサザンオールスターズだと思ってたんです。でも、サザンは、家族にとってのイベントで、楽しむところで繋いでくれてるものだった。いっぽうラーメンには、やっぱり楽しいだけじゃない、家族で戦ってきた歴史があるんですよね。

だから、これまでは一概に好きとは言えなかった部分もあったんです。私にとってラーメンは、サザンみたいに楽しいエンタメではなくて、厳しいものだし、触れづらいものとしてもありました。ラーメンを食べるのは大好きだけど、ほかのお店のラーメンとかは、『お父さんがあまり好きそうじゃないから食べちゃダメかな』とか、勝手にいろんなことを考えたりしちゃって。

でも、これからは、自分で発見したものを両親に教えたり、両親から教わったものを自分で体験したりしてみたい。今回、ラーメンの歌を歌ったことによって、自分の人生と家族が繋がりやすくなったから。……ま、自分が思ってた線路とは違うんですけど、とても濃厚で、すごく見通しが良くて、進みやすい。楽しいセンサーがめちゃくちゃ働いてるから、とてもエネルギーが湧いてきます」

トミタ栞3

また、幼少期から家業であるラーメン店を無給で手伝ってきた経験は、現在の活動にも十分にいかされているという。

「やっぱりサービス業じゃないですか。接客業としても、お客さんと密に関わる商売だと思っていて。しかも、1組のお客さんに相対する時間がすごい少ないんですよ。細麺なので40秒ぐらいで茹で上がるんで、席に着いたら、1分ぐらいでお出しする。スピード勝負のお店だし、最初の印象が笑顔じゃなかったら、その1回で終わってしまう。だから、その短い時間で、お客さんにどれだけプラスアルファのサービスができるかに心血を注いでいる。

このことを具体的に両親と話したことはないんですけど、私が見ていた父と母はもっと深いところでずっと商売をしてたと思うんですね。サービス業ならではの細やかなコミュニケーション。1回の出会いでいかに距離を縮められるか、とか。そういうことを考えることが多かっただろうなと思うと、自分が活動している世界でもすごく役立ってるなってことはいっぱいありますね」

トミタ栞4

鏡に映るストレートヘアの新しい自分

ただ、両親の“お手伝い”を頑張っていた学生時代は“自分に自信が持てない子”でもあったそうだ。

「明るいキャラではあったけど、勉強ができないことへのコンプレックスがすごくあって。とにかく勉強に自信がなかったし、好きな男の子に告白をしても女の子として見られずに、ずっと振られてきた学生時代だったんですよ。家では家で、お父さんが家族を引っ張っていく役割だから、よく叱られたりしました。バイトでもないし、お金ももらってないし、友達と遊びたいところを我慢して店の手伝いをしてるのに怒られるっていう。いろんなモヤモヤがたまりつつ、でも、家族の大事な時間というか、家業だから、何か貢献はしないといけないなっていう義務感みたいなものもありました。

そんな自信がつくようなことがなかった学生時代ですけど、この仕事を始めて、デビュー10年を越えて一番大きく変わったのがそこでした。10っていうただの数字だと思ってたはずなのに、いざ迎えてみると、自分がつづけてきたっていうことが、はっきりとした数字に表われているんだなって思えて。10周年を目前にした1カ月ぐらい前から、ここまでできたのって何でだろうということを無意識のうちに分析していたんですが、そうしていった結果、今までにない自信と、新しい自分へのわくわく感っていうものが発生していることに気付きました」

トミタ栞5

トミタ栞が感じている新しい自分へのワクワクは、「ラーメンウォーアイニー」での1980年代アイドルのような歌唱法と、デビュー以来のチャームポイントであった癖毛のロングヘアをバッサリとカットしたことからも伝わってくる。

「実はここ1年くらい、歌との向き合い方も変わってきていて、歌い方を変えてみています。私の歌を『ストレートで良いね』とか、『力強さがあるね』って言ってもらってたことで、とにかくクセをつけず、まっすぐに歌うことが私の良さだと思ってそこを意識して歌ってたんです。でも実は私、スナックでカラオケするのが大好きで、カラオケだとすごく楽しく歌ってるんですね。それはきっと、自分の仕事やキャラクターを考えずに、自由に歌えるから。

じゃあなぜ、私は自分のステージでそれをやらないんだろうと思って、『ラーメンウォーアイニー』ではスナックで歌ってるような歌い方をしてみたんです。その歌い方をすると、すごく楽しい自分がいるから1回そっちをやってみよう、プライベートで楽しいことを仕事にちゃんと出してみようって。自分で良いと思えるところをちゃんと表現していこうという想いで向き合いました。

髪型を変えたのはミュージックビデオ(以下、MV)に合わせてっていうのがきっかけだったんです。逆に理由がないと切れなかった。親にもらった癖毛をやめるなんてことは絶対にできなかったんですけど、1980年代の歌い方にしちゃったから、MVも1980年代ふうにしたくて。

トミタ栞「ラーメンウォーアイニー」Music Video

この雰囲気に癖毛は絶対似合わないし、ウィッグも違うなって。美容院でカットして縮毛矯正をかけました。全然違うストレートヘアの自分を見て、夢が叶ってうれしかったんですけど、それと同時に、親からもらった宝物をなくしてしまったという想いにかられて1回泣きました(笑)。でも、親からは何も言われてないし、周りにも好評だし、ストレートヘアの夢がかなったことで今すごく気持ちも晴れやかなので、やって良かったなって思っています。これもある意味チャレンジのひとつですね」

電車や新幹線も使って良いんじゃないかって

10周年を機に自身のこれまでを振り返り、改めて自分と向き合い、さまざまな新しいことにチャレンジしているトミタ栞。10年という長い期間、この活動をつづけてこられた理由を聞くと、「ファンの皆さんの応援」と「スタッフさんが私の可能性をずっと信じてくださったから」という答えが返ってきた。文字面だけを見ると、定型の感謝の言葉のように感じるかもしれないが、目の前で話すトミタ栞の言葉には確かな実感がこもっていた。

トミタ栞6

「私自身、爆発的な知名度があるかって言ったら、そうではない。でも、そんな私に期待をしてくれてるスタッフさんたちの気持ちが何よりだと思っていて。今までもそう思ってたし、言葉でも言ってきたはずだけど、先日の10周年ライブでは、本当に心の底から、その気持ちをちゃんと伝えられた気がします。

ファンの方は、私に向上心を与えてくれる存在ですね。見守って“くれてる”とか、応援して“くれてる”とかじゃなくて、この人たちを楽しませたいっていうのが私の目標の根底にある。この人たちが存在しないと、楽しませたいっていう気持ちも生まれないし、自分が人生を楽しむためにもファンの方は本当に大事。この気持ちもサービス業を営む家に生まれたからなのかもしれないけど、そのふたつがあるから、私も夢を追いかけたいというか、楽しいことをいっぱいしていたいっていう素直な気持ちを軸にしてこれているのかなって思っています」

現在は、“ゆるミュージックほぼオールスターズ”のボーカルを務めるほか、7月26日からは舞台『アギト-ultionem finalem-』にヒロイン役で出演する。また、自身のYouTubeチャンネルでは、今年2月のバースデイライブで掲げた“30歳までにしたい10のこと”の経過を報告している。

【30歳までにしたい10のこと #1】前編/ スラムダンク読破!?目標体重40キロ!!

「デビューしたころのように、ただ有名になりたいっていう境地ではもうないんですよ。そこはずっと軸にはあるけど、“有名って何だろう?”っていうもっと細かい分析をした上で出てきたのが、“30歳までにしたい10のこと”でした。

もし、全部が実現したら、絶対にめちゃくちゃ売れてると思うんです、私。“飛騨高山の観光大使”で、“ラーメン屋で顔バレ”して、“体重も落ちて”スタイルも良くて、プライベートでも“『SLAM DUNK』の話”で盛り上がれる。自分の人生において、大事な目標が詰まっています。“股割り”もですが、これまでできないって諦めてたことを達成したい。自分は体が硬いのがネタだと思っているぐらい硬いけど、できないって決めつけることを1回やめてみようと思って。

自分をもっとアップデートしたくて、できなかったことをできるようにして自信をつけていきたいっていう気持ちが込められた10個なんです。だから、今はその実現に向けて全力でちゃんと臨んでいくことで、次なるステップ、次なるステージに上がれると思っていて。全然ジャンルは違う10個ですけど、ちゃんと1個ずつ努力して頑張っていきたいと思ってます」

トミタ栞7

新しい自分に期待している彼女の視線の先には明るい未来が開け、その線路はどこまでもつづいているようだ。

「今、何かが大きく変わっていく気がしています。これまでの自分は、いちいち疑問を持たなかったし、周りをあまり見ないようにしてきた。わからないことを理由にして、楽な道をとってきていたのかもしれないって、反省しました。これからは、全部しっかりと見た上で、そこを追求するのか、それとも気にしないのかを選びたい。見た目という親からもらった天然素材を生かしてやっていくだけではなく、トミタ栞という存在として、ちゃんと地に足がついた活動をしていくっていうのが、30歳、そして10周年以降の自分の形かなって思います。

トミタ栞8

ただひたすらに突き進むのではなくて、目的をしっかり見極めて、努力していける人になりたい。上に向かいたい気持ちは変わらないんですけど、確実に今までとはモチベーションというか、乗り物が変わってる気がします。今までは線路の上を足でひたすら走ることがすべてだと思ってたんですけど、もっと上を目指して進むためには、チャリとか、電動自転車、時には車、いやいや、それこそ電車や新幹線も使って良いんじゃないかって。それぐらい意識の変化があるので、ここから何かが変わっていきそうで、すごくワクワクしています」

文・取材:永堀アツオ
撮影:干川 修

リリース情報

トミタ栞「ラーメンウォーアイニー」ジャケット画像

「ラーメンウォーアイニー」
配信中
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ライブ情報

「武蔵野音楽祭蓮の音カーニバルプレミアム」
2023年9月9日(土)
会場:吉祥寺SHUFFLE
詳細はこちら(新しいタブで開く)
 
「MY POP TOWN」
2023年9月25日(月)
会場:CLUB CITTA'(神奈川)
詳細はこちら(新しいタブで開く)
 
「トミタイバン vol.3」
2023年10月18日(水)
会場:F.A.D YOKOHAMA(神奈川)
※詳細は後日発表

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