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連載Cocotame Series

サステナビリティ ~私たちにできること~

VTuber・九条林檎×玉川学園 サンゴ研究部――地球の未来を考えてみる座談会【前編】

2023.09.20

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ソニーミュージックグループでは、持続可能な社会の発展を目指して、環境に配慮した活動や社会貢献活動、多様な社会に向けた活動など、エンタテインメントを通じたさまざまな取り組みを行なっている。連載企画「サステナビリティ ~私たちにできること~」では、そんなサステナビリティ活動に取り組む人たちに話を聞いていく。

今回は、9月20日からスタートした動物愛護週間に合わせて、刺胞動物である“サンゴ”の記事をお届けする。中高生の部活動としては全国でも珍しい、玉川学園(東京都町田市)のサンゴ研究部に所属する生徒たちとVTuber・九条林檎との座談会を実施。沖縄県の伊江島でサンゴ移植のフィールドワークを終えたばかりの生徒たちと、彼らの活動を間近で見たVTuber・九条林檎が語り合った。海の豊かさを守るために、今、我々にできることとは。

前編では、サンゴの移植作業についての生徒たちの感想や、日ごろのサンゴ研究部の活動について語る。

  • 九条林檎プロフィール写真

    九条林檎

    Kujo Ringo

    吸血鬼と人間のハイブリッドレディで、魔界の名門、九条家の長女。バーチャルタレント/VTuberとして、歌やダンス、ゲーム、悩み相談と、多岐にわたるテーマでコンテンツを配信中。2022年5月より、ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営するバーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト『VEE』に所属。

  • 玉川学園 サンゴ研究部プロフィール写真

    玉川学園 サンゴ研究部

    Tamagawa Gakuen Sango Kenkyubu

    代表発言者(写真左から)カリンさん(中学2年生)、コウタロウさん(高校1年生)、アンナさん(高校2年生)、ユウミさん(高校3年生)、ナナミさん(高校1年生)、ミサキさん(中学1年生)

玉川学園 サンゴ研究部とは?

玉川学園 サンゴ研究部写真
 
理科の学習で海洋環境を学び、サンゴの白化現象※が海洋生物の生態系に大きな影響を及ぼしていることを知った玉川学園の生徒たちが、自分たちにも何かできることがないかと2011年に自由研究としてサンゴの飼育への取り組みを開始。
 
その後、サンゴ個体の研究はもちろんのこと、水質や海域の状況など多岐にわたる研究を行ない、文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の課題研究のひとつとして発展させる。2015年に初めてサンゴを大きく成長させることに成功し、海への返還に成功。その後もフィールドワークや学内外での研究など幅広く活動を展開しながら、サンゴの飼育と研究を10年以上継続している。
 
長期サンゴ養殖プロジェクトの一環として、玉川学園の中高生が、沖縄県の伊江島で毎年フィールドワークを実施。「海の豊かさを守ろう」という目標に対して具体的なアクションを展開している。
 
※サンゴが体のなかに住まわせ、栄養を分け合うなどして共生する“褐虫藻”と呼ばれる小さな植物が、海水温の上昇など複数の環境ストレスによって体内から追い出されてしまい、サンゴが真っ白になってしまうこと。白化を起こしたサンゴは、やがて栄養失調となり死んでしまう。
 
玉川学園 サンゴ研究部 ユウさん写真
今年8月にオーストラリアにて行なわれ、世界7カ国の中高生が参加した環境をテーマにした課題研究発表会“GLOBAL LINK 2023”では、部長を務めるユウさんがブロンズアワードを受賞した。

「これが自然の力なんだな」という感想を抱いた

水中写真1

沖縄県・伊江島の珊瑚礁

――今回は、玉川学園サンゴ研究部の皆さんに環境保全に関する活動についてお伺いしたく、VTuberの九条林檎さんとディスカッションの場を設けさせていただきました。ここ、沖縄県の伊江島で、部活動のフィールドワークとしてサンゴの移植を行なわれた皆さんに、自由な意見や、考えていること、普段のサンゴ研究部での活動を通して感じたことをストレートに語っていただきたいです。九条さんにも、今回の生徒さんたちのフィールドワークを見て、感じたことをお話しいただきたいので、よろしくお願いします。

九条:皆さま、ごきげんよう。吸血鬼と人間のハイブリッドレディ、九条林檎だ。玉川学園 サンゴ研究部の皆さん、本日はよろしくお願いいたします。

九条林檎写真1

生徒一同:よろしくお願いします。

九条:我は今22歳で、中学生、高校生の皆さんと環境問題に対して近い目線でお話しできるのではと思い、参加させていただいた。それと同時に、我のような存在でもどうやって自然と関わっていけば良いか、皆さんとお話ししていくなかで探っていけたらと思う。ちなみに皆さんは、生で動くVTuberを見るのは初めてかな?

生徒一同:初めてです。

九条:皆さんのことは我のほうからバッチリ見えてますよ。

――では最初の質問です。まずは、伊江島に来てみての感想を教えてください。サンゴ移植のフィールドワークは、2015年からコロナ禍を除いて毎年行なわれているとのことですが、去年との違いや気づいたことなどはありますか?

玉川学園 サンゴ研究部写真1

アンナさん:私は初めてこのフィールドワークに参加したんですが、やっぱり沖縄の海はケタ違いにきれいだなっていうのが第一印象でした。ダイビングも初めて体験したんですけど、海中の人工物にもサンゴが住んでいて、そこに魚が集まり、生態系が作られているのを見て感動しました。

ユウミさん:私は前回も参加したんですが、去年、自分たちで移植した場所を見てみたらサンゴが少し大きくなってるのを確認できてうれしかったです。

コウタロウさん:僕は関東の海でダイビングの経験があるんですが、今回は風が強く悪天候だったにもかかわらず海がきれいで、さすが沖縄だなと驚きました。沖合に行ってもサンゴがいっぱいあるのは沖縄の特徴だと思うので、この環境をこれからも守っていかなきゃいけないなと、改めて感じました。

カリンさん:私は沖縄に初めて来ました。フィールドワークでは、サンゴを移植するポイントまで船で移動したんですけど、残念ながら船酔いをしてしまって。だから、ダイビングはできなかったんですけど、シュノーケリングで海のなかを見ることはできて、沖縄の海にはサンゴがたくさんあって魚もたくさんいて、すごくきれいだなって思いました。

玉川学園 サンゴ研究部写真2

ミサキさん:沖縄には何回か来たことがあるけど伊江島は今回が初めてで、海のなかはサンゴ礁が色とりどりできれいという印象を受けました。でも近づいてよく見てみると、サンゴの先端が白化しているものもあって。改めて現場に来て、直接見ること、自分で体験することの重要性がわかって、それがとても良かったです。

ナナミさん:実際に海のなかにあるサンゴを初めて見て、学校の水槽内にあるサンゴと比べてすごく大きいなと感じたのと、昨年移植したサンゴが成長しているのを見ることができて「ああ、これが自然の力なんだな」という感想を抱きました。

九条:我も少しだけ海のなかを覗かせてもらったんだが、サンゴ礁がすごくきれいだった。そこに魚が一緒にいることで、海のなかの生き物たちが共生しているのだなということがよくわかった。まさに百聞は一見にしかずだな。そんななかで、今回皆さんが取り組んだサンゴの移植作業というのはどういうものか教えてもらえるかな?

アンナさん:玉川学園の水槽で育てたサンゴを東京から輸送して、それを環境に害のない、特殊な接着剤で植えつけます。学校ではジェルタイプの接着剤を使っていますが、今回は練って使うパテタイプのものを使いました。

玉川学園 サンゴ研究部フィールドワーク写真10

沖縄県・伊江島の海中で、生徒たちがサンゴを移植する様子

水中写真2

玉川学園で飼育され、東京から運ばれてきた約50株のサンゴ

ナナミさん:その接着剤を使って、粘土みたいなところにパイプをさして移植するという作業を行ないました。今まで学校でサンゴを育ててきた身としては、意外とあっさり作業が終わっちゃうんだなと思いつつも、スムーズにできて安心しました。

ユウミさん:私は波を受けたり、泳ぎながらの移植作業が難しかったと感じました。自分たちの育てたサンゴが、台風などで流されてしまったりすることもあるので、改めてサンゴを移植するというのは、簡単なことではないんだと思いました。

玉川学園 サンゴ研究部写真3

ミサキさん:今回輸送した約50株のサンゴは、水質検査や調整などもできるだけ毎日やって、部員全員で大切に育ててきたサンゴたちです。来年再来年とモニタリングしていって、どのように成長していくのかを見届けたいです。

それと、50という数は広い沖縄の海のなかでは、本当に微々たる数でしかないんですけど、これを100株200株と増やしていって、少しでも環境の改善につながる一助になればと思います。

九条:既にあるサンゴというのは、本当に長い年月をかけて、大自然のなかで育てられてきたもの。そのなかで、皆さんが手塩にかけて、たくさんの時間をかけて育てたサンゴは、確かに、沖縄の海のサンゴ礁のほんの一部にしかならないかもしれないし、それもまた流されてしまうようなことがあるかもしれない。

それでも、玉川学園の皆さんのように、毎年こうした行動を積み重ねていって、移植する数を増やしたりとか、経過観察を行なうことで、サンゴの養殖技術が上がったり、白化問題の解決の糸口を見つけるようなことができたら素晴らしいと思うぞ。

※この動画に音声はありません。

「なんかすごいことやってる」と思ってもらえたら

玉川学園 サンゴ研究部フィールドワーク写真11

――“サンゴ研究部”というのはなかなか聞かない部活動ですが、家族や友達からこの活動について何か言われますか?

ユウミさん:友達には「え? 何それ」ってよく驚かれます(笑)。私は海の近くに住んでいて、友達にも海に馴染みのある人が多いけど、それでも珍しがられます。そういうときは、「サンゴを研究して、移植したりしてるよ」って簡単な説明をして、もっと知りたそうだったらそれに対して答える感じです。

アンナさん:私も「サンゴ研究部って何?」「海のサンゴ礁を研究するの」みたいなやりとりがあって、ようやく理解してもらえます。活動内容については「海の環境保全につながることをやってるよ」って言っています。

玉川学園 サンゴ研究部写真4

コウタロウさん:友達に理解してもらうのはなかなか難しいけど、それでも自分たちのやってることはできるだけ伝えるようにしています。「なんかすごいことやってるんだね」って思ってもらえるだけでも良いかな、くらいの感覚で説明してますね。

カリンさん:私は親戚とかに聞かれたときは「水槽の掃除とか水質検査をしてるよ」って伝えてます。

ナナミさん:家族からは「ほかの学校じゃ滅多になくて珍しいし、沖縄の実習でサンゴの移植活動ができるなんて面白そうだね」と言われてます。自分も今年、サンゴ研究部に入ったばかりで詳しく説明できないので、友達も巻き込んで「一緒に調べてみようか」って言ったりしてます。サンゴ研究部の活動がもっと広まると良いなって思ってます。

玉川学園 サンゴ研究部写真5

九条:我々VTuberの役割のひとつとして、あまり知られていないことや一般的にはとっつきにくいことを、わかりやすく魅力的に翻訳してコンテンツを作るということがあります。サンゴ研究部の活動も広く知ってもらうことが難しいところがあるのだな。でも、皆さんこうやってメディアに取り上げられたり、既にいろんな成果を出しているので、このままたくさんの人に知られていって、最終的には全国の学校に同じような志を持つ仲間ができたら良いなと、我は思う。

やらない善よりやる偽善

玉川学園 サンゴ研究部フィールドワーク写真12

サンゴの移植のため、ダイビングに初挑戦した生徒も

――そもそもの話なんですが、皆さんはどうしてサンゴ研究部に入ったんでしょうか。沖縄実習に惹かれたという人も多いと聞きましたが、その通りという方は手を挙げてください。あ、ほとんどがそうですね(笑)。

玉川学園 サンゴ研究部写真6

生徒一同:(笑)

ユウミさん:沖縄実習も理由として大きいけど、それだけじゃないです。

――では、ほかのきっかけや動機を教えてください。

ユウミさん:私は海が近いところで育って海にずっと親しんできたので、サンゴ研究部の存在を知って「海に関われる部活なんて珍しいし、面白そう!」と思って決めました。それまで海は好きだったけど環境問題についてはちゃんと考えたことがなかったし、知識も少なかったので、そういう部分をもっと知りたいという思いもありました。

カリンさん:うちは環境が逆で、近くに海がないんです。だからちょっとでも海が身近になったらなと思って入部しました。サンゴの研究とか実習は滅多にできないことなので、家族にすすめられたのも理由です。

玉川学園 サンゴ研究部写真7

アンナさん:私はもともと環境保全や世界が抱える課題や問題に興味があったので、そういう分野を自分で研究してみたかったのと、サンゴ研究部という珍しさに惹かれて入りました。小中のころにやっていた野球部は週7の活動で大変だったんですが、サンゴ研究部は週2~3の活動ということで、ほかのこととも両立できそうなのも良かったです。

コウタロウさん:僕は小学校1年生くらいから、縁があって江ノ島でヨットをやっていて、それもあって海とか自然が好きなんです。小6のときの担任がちょうど(サンゴ研究部顧問の)市川先生だったこともきっかけのひとつで、すべて縁でつながってるのかなって。

玉川学園 サンゴ研究部写真8

ナナミさん:小学生のときに、横浜・八景島シーパラダイスで『シーパラこども海育塾』という、海や魚のことを学ぶプログラムに通っていて、ワカメとかを育てたことがありました。私の場合は、そのときの経験がきっかけのひとつです。あとはサンゴ研究部を見学に行ったとき、部の雰囲気がすごく良かったので、それが決め手になりました。

ミサキさん:幼馴染みで今も交流がある沖縄在住の友達がきっかけで、海洋系に興味を持ち始めました。小さいころから、その友達の家に遊びに行かせてもらって、沖縄の海でも遊んでいたんですが、そのころは海に潜るのが楽しいとかしか考えていなくて。でも、部に入ってからは海洋環境問題を知る機会を得ています。ニュースなどでもよく取り上げられますが、プラスチックゴミが砕けて、5㎜以下のマイクロプラスチックゴミになってしまい、簡単にはゴミ収集できず大きな問題になっているので、最近は海に行ったときにゴミを見つけたら拾って捨てるようになりました。

玉川学園 サンゴ研究部写真9

九条:どんな形でもきっかけって大事だな。“やらない善よりやる偽善”という言葉がございます。どんな利己的な理由でも、やることが善ならなんでも良いと、我は思う。

――つづいて、サンゴ研究部の日々の具体的な活動内容を教えてください。

ユウミさん:サンゴ研究部は大きく3つのグループに分かれて活動しています。ひとつ目は、サンゴを自分たちで育てて移植するフィールドワーク。ふたつ目がサンゴの研究。そして3つ目が広報活動で、私たちの活動を外に広めていくために学校外でセミナーを開いたり、伊江島の中学生にサンゴのことを教えたりといった活動も行なっています。

コウタロウさん:研究班については、それぞれ研究している内容が違います。僕はウニの研究をしていますが、水質を研究する人がいたり、各自が興味のあることの研究を進めています。あと、水槽の管理については、サンゴ研究部全体の仕事になっています。

――水槽のメンテナンスはすごく難しそうですね。

コウタロウさん:水槽にゴミが入ったりしてはいけないですし、部屋の温度とかの影響を受けたりもするので、こまめな管理が必要ですね。些細なミスでも一歩間違えば水槽内環境が一気に悪くなってしまうことがあるので、常に緊張感を持ってやらなきゃいけなくて、そこは難しいところです。

九条:サンゴについて、育てる、研究する、広めつつ移植もしていくっていうサイクルがしっかりできあがってることに非常に驚いたな。では、皆さんがさらにサンゴのためにできるんじゃないかと思ってること、チャレンジしたいと思うことはあるのだろうか? 代表の人以外でも、何か考えがあったら教えてほしい。

――それでは、後方で手を挙げてくれている方、お願いします。

マヒロさん:僕は、サンゴの人工産卵をしてみたいです。今、世界的にサンゴの数が減ってしまっているので、水槽のなかでも産卵できたら、移植できる数も増えるし、安定するのかなって。技術がさらに発展すればできると思います。

玉川学園 サンゴ研究部写真10

ユウミさん:今回、伊江島でサンゴの養殖に携わっている方にお会いして、サンゴの産卵をコントロールするのは、すごく難しいけど、一部では成功しているというお話を聞きました。

――なるほど。サンゴは海洋生物だから、人工産卵というのもありなんですね。

九条:今までサンゴに興味を持ってコツコツやってきたからこそ、見えてくる展望だな。素晴らしい。

後編につづく

文・取材:諏訪圭伊子
撮影:干川 修
水中撮影:中川西宏之
取材協力:伊江島ホテル&コテージ こころハウス
撮影協力:伊江漁業協同組合

関連サイト

玉川学園
https://www.tamagawa.jp/academy/(新しいタブで開く)
 
玉川学園 サンゴ研究部HP
https://www.tamagawa.jp/academy/lower_upper_d/life/sango.html(新しいタブで開く)
 
玉川学園 サンゴ研究部Instagram
https://www.instagram.com/tamagawa.35.35.35/(新しいタブで開く)
 
九条林檎 プロフィールページ(VEE公式サイト)
https://vee-official.jp/talent/kujo-ringo/(新しいタブで開く)
 
九条林檎 X(旧Twitter)
https://twitter.com/ringo_0_0_5(新しいタブで開く)
 
九条林檎 YouTube
https://www.youtube.com/@KujoRingo(新しいタブで開く)

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