VTuber・九条林檎が語る沖縄で得た“クオリア”【前編】
2023.09.22
ソニーミュージックグループでは、持続可能な社会の発展を目指して、環境に配慮した活動や社会貢献活動、多様な社会に向けた活動など、エンタテインメントを通じたさまざまな取り組みを行なっている。連載企画「サステナビリティ ~私たちにできること~」では、そんなサステナビリティ活動に取り組む人たちに話を聞いていく。
今回は、9月20日からスタートした動物愛護週間に合わせて、刺胞動物である“サンゴ”の記事をお届けする。中高生の部活動としては全国でも珍しい、玉川学園(東京都町田市)のサンゴ研究部に所属する生徒たちとVTuber・九条林檎との座談会を実施。沖縄県の伊江島でサンゴ移植のフィールドワークを終えたばかりの生徒たちと、彼らの活動を間近で見たVTuber・九条林檎が語り合った。海の豊かさを守るために、今、我々にできることとは。
後編では、サンゴ研究部の今後の課題や、九条林檎と生徒たちが交流する様子を届ける。
九条林檎
Kujo Ringo
吸血鬼と人間のハイブリッドレディで、魔界の名門、九条家の長女。バーチャルタレント/VTuberとして、歌やダンス、ゲーム、悩み相談と、多岐にわたるテーマでコンテンツを配信中。2022年5月より、ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営するバーチャルタレント育成&マネジメントプロジェクト『VEE』に所属。
玉川学園 サンゴ研究部
Tamagawa Gakuen Sango Kenkyubu
代表発言者(写真左から)カリンさん(中学2年生)、コウタロウさん(高校1年生)、アンナさん(高校2年生)、ユウミさん(高校3年生)、ナナミさん(高校1年生)、ミサキさん(中学1年生)
――(前編からつづく)皆さんが普段行なっているサンゴの飼育で大変なことや楽しいこと、また、サンゴ研究部に入って良かったことを教えてください。
ユウミさん:私はサンゴ研究部の広報を担当しているのですが、活動内容を具体的に説明するのが難しいです。珍しいから最初は興味を持ってもらえるけど、その先になかなか進めなくて。理解してもらうこと、相手の興味を持続させることって大変なんだなと感じています。
逆に楽しいのは、そこが理解されて、今回のように興味を持って取材してくださる方たちがいて、私たちの活動が広がったことを実感できた瞬間。あとは自分たちで育てたサンゴを移植するときに、サンゴの成長を想像するのも楽しいです。今年も「頑張って大きくなってね」って願いながら作業をしました。
アンナさん:大変なのは、水槽の水質状況が急に変わって、なかのサンゴが白化してしまうことです。あと、私も広報担当なので、部活動の内容を頑張って説明しても理解されにくいのが悩みどころです。でも珍しがられて興味を持ってもらって、思いがけず話が弾んだときは楽しいなって思います。
カリンさん:普段は飼育を中心にやってるんですけど、最初はまったくわからなかったことでも、徐々にできるようになっていくと楽しいですね。しかもそれが、みんなと一緒にできたりすると余計にうれしくなって、部活に入って良かったなって思います。
ナナミさん:私は、今日みたいに沖縄に来て珍しい体験をさせてもらったりとか、サンゴの飼育をするにあたって、自分自身が新しい知識を得て「少し理解が深まったな」と実感できたときが楽しいです。
ミサキさん:以前までは海に潜ったときに、キレイだなとか魚がたくさんいるなとかしか思ってなかったけど、部活動を通して海洋環境に関する知識を得ると、途端に見える世界が変わってきたときに楽しいと感じました。このサンゴはこういう種類だなとか、このサンゴは少し白化が始まってしまっているというのがわかるようになって、部に入って良かったなと思いました。
コウタロウさん:取材に来ていただいたり、サンゴ研究部の活動内容が世に広まるきっかけ作りができていると実感できたときに、やりがいを感じます。玉川学園の部活動のひとつで、少ない人数でやってることですけど、僕たちがなぜこういう活動をしているのか、その本質の部分がもっと世の中に伝わってほしいし、学校のなかでも誇りを持ってつづけていきたいですね。
――皆さんのお話のなかに「理解されづらい」「もっと広まってほしい」という言葉がよく出てきますね。
九条:我も活動を始めたばかりのころは、どうやって人に伝えるかが課題であったな。面白いコンテンツを作れたとしても、そこに置いてあるだけじゃ誰にも伝わらないので、どういうセンセーショナルな言葉を使うか、それでいてコンテンツのブランティングをいかに損ねないか。そのバランスをすごく考えていたので、試行錯誤しているときの気持ち、そしてそれが伝わったときのうれしいという感情、とてもよくわかるな。
広報担当のユウミさんとアンナさんにお聞きしたいのだが、今はいろんな広報や宣伝のやり方があると思う。例えばTikTokとかYouTubeのようなSNSがあって、自分たちの手で世界に向けて発信することができるし、今回のように外部のメディアとのコラボという方法もある。これから、どんな戦略で自分たちの活動をもっと知ってもらおうと考えているのか、何か展望などはあるかな?
ユウミさん:はい、SNSでいうとInstagramは既に運用していて、TikTokもやろうかという案も出ています。ただ、TikTokは映像の面白さ、一瞬で人の興味を惹きつけなくてはいけないメディアだから「サンゴ研究部の活動を伝えるには難しいね」という話をしています。面白おかしくという部分では、自分たちでも工夫すれば見てもらえるかもしれないけど、そこから海の環境問題をどう知ってもらうかというのが課題です。
九条:なるほど。何かを伝えるとき、ある程度センセーショナルにしないとものが伝わらない、人に興味を持ってもらうのが難しいというジレンマに陥ると本当に悔しいし、大変だと思う。そこをちゃんと理解しているからこそ、より正しい形で、あまりセンセーショナルになりすぎないように、サンゴの理解が広まっていくと良いな。
アンナさん:はい。サンゴ研究部に合ったSNSの利用の仕方をいろいろ研究して、活動の幅を広げられればと思います。
――ちょっと違う角度からの質問になりますが……サンゴ研究や環境問題に関連して、もしもどんな願いでも魔法で叶えられるとしたら、何を願いますか?
アンナさん:私は絶滅してしまった生物が魔法で蘇ってくれたらなぁと思います。恐竜とかマンモスとかひと目見てみたいし、もしかしたら生態系のバランスが整って、今の状況が好転するかもしれないから。
コウタロウさん:僕はサンゴの研究をやる上で、 サンゴの気持ちというか、心の声を聞いてみたいです。
生徒一同:おー! それは、めっちゃ良い!
コウタロウさん:みんながこれまで言ってた通り、サンゴは水槽内の環境が悪くなるとすぐに白化してしまうんですが、それが水温のせいなのか水質のせいなのか、原因を突き止めるのがすごく難しいんですね。だからそこをサンゴに直接聞いて、白化を食い止めたいです。
九条:サンゴの声が聞けたら、なかにいる褐虫藻の話も同時に聞こえてくるから、すごい量の話が一度に聞けて楽しそうだな。
――そうしたら、いろんな解決方法をみんなで考えられますね。ちなみに、サンゴ研究や環境問題とは別の部分で、個人的になんでも願いが叶うとしたらどんなことを願いますか?
九条:なんでも良いですよ。3兆円欲しいとか、二次元にいる推しが現実に出てきてほしいとか(笑)。
ケンエイさん:僕は弓道もやっていて、前回の大会では2位だったんですが、そこを突破して世界一になりたいです。あまり知られてないですが弓道には世界大会もあって、そこでの優勝を目指しています。
ユウミさん:お金のこととか学校のこととか勉強のこととか何も考えずに、世界一周を何回もしながら絶景だけを見て暮らしたいです。きれいな景色だけを見て生きていきたい。自然が生み出した、きれいな地球を見つづけたいですね。
アンナさん:つまらない答えかもしれないですけど、幸せになりたい。私だけじゃなく、世界中の人、それぞれが思い描く幸せが一人ひとりに訪れるような感じが良いです。
カリンさん:私は、宿題のない1年間を過ごしたいです。
――1年で良いんですか?
カリンさん:あ、じゃあ3年でお願いします(笑)。
生徒一同:(笑)
ミサキさん:私は世界中の言語を理解したいです。
ユウミさん:それ、すごい!
ミサキさん:私は、よく本を読むんですが、ニュアンスも含めて原作を忠実に読みたいタイプなんです。だから、世界中のあらゆる言語がわかるようになりたいです。
九条:わかるぞ。我も外国の映画は、なるべく元の言葉のニュアンスが乗った状態で見たいから、基本的に字幕版で見ている。原作を大事にしたい気持ち、うん、わかるわかる。
――そろそろお時間ですが、最後に九条林檎さんに聞きたいことはありますか?
マヒロさん:なんでVTuberになろうと思ったんですか?
九条:VTuberというのはすごいんだ。多くの人に向けておしゃべりすることも、歌うこともできるだろう? いろんな方法で人を魅了したり、楽しませることができるし、自分が興味関心を持ったこと、もっと多くの人に知ってもらいたいと思ったことを、自分の手で届けることもできる。
我は、他人に任せるのではなく、自分の手で届けたいし、より生活が豊かになる情報を届けることで、たくさんの人により良い人生を送ってほしいと願っているので、VTuberになることにしたのだ。
ヒナタさん:VTuberになるにあたって目標にした人はいますか?
九条:目指してる人ではないが、我はさまざまなエンタテインメントが詰まったテーマパークになりたいと思っている。テーマパークというのは、たくさんの人に楽しんでもらうのはもちろんだが、その土地や施設の由来を知ることができるミュージアム的な役割も果たしていることがあって、その土地ならではの風景であるとか、ときには歴史なんかも楽しむことができる。エンタメとして楽しく、それでいて知識も提供する。そんなVTuberに我はなりたいのだ。
ユウミさん:九条さんは人と人をつなげたり、人のことを魅了することができるVTuberだと思いますが、人に興味を持ってもらうコツはありますか?
九条:サンゴ研究部の広報担当者らしい、良い質問だな。それでは、我が普段コンテンツを作るときに意識していることをひとつ。淡々としていて面白いものもなかにはあるが、基本的に面白いものというのは、緩急がついてることが多い。
例えば我がこうやって話してるときに、突然誰かに質問をすると、質問された人は自分に話が回ってきたことにハッとして、瞬時にその物事が自分ごとになる。ただ一方的に話すだけでなく、そういうふうに緩急をつけていろんな人を巻き込んでいくというのは、テクニックとして知っておくと良いと思うぞ。
淡々としゃべっているうちに急に早口になっていって、最後には大声を出す! とか、そういう構造で、おしゃべりだけでなくコンテンツ全体に緩急や起承転結をつけてみることで、よりいろんな人の興味を引くというのが我なりのコツになるだろうか。基本的なことではありますが。
――では最後に、九条さんからひと言お願いします。
九条:皆さん、本日はたくさんお話を聞かせていただいて、本当にありがとうございました。我はサンゴのことをこれまで全然知らなかったのだが、今回、こういった機会をいただいてサンゴのことを勉強して、さらに実際に自分の目でサンゴ礁を見て、その後また皆さんからこうしてサンゴのことを教えていただいて、解像度が上がるばかりでした。
さっきおっしゃっていた方もいますが、サンゴの白化問題に紐づく環境問題であるとか、こういう知識を得たときに、自分のなかで気づきが得られたし、今まで観賞しかしてこなかったサンゴの生態を学んだことで、自分のなかに新しい知識が溜まっていく喜びというものも感じることができました。
沖縄で皆さんから学んだことを、我も機会を見つけて広めていきたいし、何かお手伝いできることがないかこれから探していけたらと思う。もちろん、自分自身もより環境に配慮できるよう生活を見直していきたいなと改めて思いました。皆さん、本当に有意義な時間をありがとう。これからも応援しております。
生徒一同:ありがとうございました。
文・取材:諏訪圭伊子
撮影:干川 修
水中撮影:中川西宏之
取材協力:伊江島ホテル&コテージ こころハウス
撮影協力:伊江漁業協同組合
玉川学園
https://www.tamagawa.jp/academy/
玉川学園 サンゴ研究部HP
https://www.tamagawa.jp/academy/lower_upper_d/life/sango.html
玉川学園 サンゴ研究部Instagram
https://www.instagram.com/tamagawa.35.35.35/
九条林檎 プロフィールページ(VEE公式サイト)
https://vee-official.jp/talent/kujo-ringo/
九条林檎 X(旧Twitter)
https://twitter.com/ringo_0_0_5
九条林檎 YouTube
https://www.youtube.com/@KujoRingo
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