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連載Cocotame Series

Love Say you -恋するVoice-

矢野妃菜喜:“とにかくやってみよう!”の精神からチャンスをつかむ【前編】

2024.03.28

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ソニーミュージックグループ所属の声優をクローズアップする連載「Love Say you -恋するVoice-」。インタビューにて彼らの言葉、写真で姿、そして録り下ろしのオリジナルメッセージでその声をお届けする。

連載3回目にその声を聴かせてくれたのは、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の高咲侑役、同じくTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー』シリーズのキタサンブラック役などを務める矢野妃菜喜。演技に歌にダンスにと、子役時代から培ったマルチな才能をいかして、2021年からはソロでの音楽活動もスタート。2024年3月2日には3rdシングル「ポヤポノポ!」をリリースし、ワンマンライブ「Hinaki Yano 3rd LIVE『POYA PONO PORTY』」では多くのファンに愛らしい歌声を届けた。声優としてもアーティストとしても、多彩な表現にチャレンジしつづける彼女に、これまでと今を聞く。

前編では、子役時代やアイドル時代を振り返りながら、声優として活動を始めたきっかけについて語ってもらった。

矢野妃菜喜プロフィール写真

矢野妃菜喜 Yano Hinaki

1997年3月5日生まれ。身長150㎝。趣味:ゲーム、アニメ鑑賞、美少女の写真集め。特技:ダンス。2010年~2011年まで、私立恵比寿中学のメンバーとして活動を開始。2020年よりTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』高咲侑役、2021年よりTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』でキタサンブラック役を務める。2021年からはソロでの音楽活動を開始し、2024年3月2日には3rdシングル「ポヤポノポ!」をリリースした。

気づいたら始まっていた芸能活動

キュートなボイスと愛らしいルックス、成長著しい演技力で人気を集める矢野妃菜喜。本格的に声優として歩み出してからは、キャリア10年に満たない、まだ“新人”という言葉が似合う彼女だが、芸能活動歴は約20年以上で、意外にも長い。

「芸能活動を始めたのは小学校1年生くらいからです。母がキッズモデル的なオーディションに応募して、子役モデルのお仕事をしたのが最初でした。雑誌のモデルをやらせていただいたり、マクドナルドのCMに出させていただいたこともありました。なので、自分から芸能活動をやりたい! と思ってこの世界に入ったというよりは、気づいたら始まっていた! という感じでしたね」

過去のインタビューなどでも、周りが大きなミュージカル作品への出演を目指してオーディションを頑張っている姿を見ても、自分は強いライバル心を燃やすわけでなく「みんなすごいな」と俯瞰した目線で感心していたと振り返っている矢野妃菜喜。

しかし10代になると、習っていたミュージカルのスキルをいかしてアイドルとしての活動をスタート。いくつかのユニット活動を経て、アイドルグループ・私立恵比寿中学のメンバーとして活動を開始した。

「といっても……アイドル活動をやっていた時期はリアルに中学生でしたし、自分がアイドルに憧れていたり、どうしてもアイドルになりたい! と思って始めたわけではなく、当時所属していた事務所のスタッフさんから薦められて、やってみたら楽しそうかな! と思って始めたことだったんです。子役を始めたときと変わらずで。だから……お仕事としてやっているというよりは、みんなと一緒に歌を歌ってダンスをして、というのがただ楽しかったですね」

顎に手を当てて話す矢野妃菜喜

アイドルグループ時代を振り返って、“楽しい部活に入れてもらった”という感覚のほうが当時は強かったと語る矢野妃菜喜。

「当時はまだ本当に子どもで、気持ちもすごくふわふわしてたんです。グループを辞めるという決断に至ったのも、今思うとすごく強い意思があったというわけではなくて、“女優さんのお仕事もやってみたいな”ぐらいの考えで。だから、声優として歌やダンスをやらせていただくようになってから、よく『アイドルやってたからね!』みたいにおっしゃっていただくんですけど……実はグループに在籍していた期間は、たったの1年。うれしいですが、心のなかで『そんなふうに言ってもらって……なんかごめんなさい』って、いつも申し訳なく思ってます(苦笑)」

壁に寄りかかりポーズをとる矢野妃菜喜

声優のお芝居で一番難しいのは、繊細な感情の表現

子役からキャリアをスタートして、人気アイドルグループへの加入、そして脱退と、紆余曲折あったここまでの矢野妃菜喜ヒストリー。10代半ば、ソニー・ミュージックアーティスツに移籍し、2013年からは“夢の世界と現実世界を往来しながら女の子の夢の世界を演じる”をコンセプトに、月影妃菜喜名義で陽光真里愛と組んだユニット・うたたねこ歌劇団としての音楽活動をスタート。そこからしばらくして、今に繋がる転機が訪れる。それが“声優”という道だった。

「声優に挑戦するというお話は、スタッフさんに声をかけていただいたことがきっかけでした。それまではアニメに夢中になったこともなかったので、声優という職業もしっかりと認識できていなかったのですが、せっかく声をかけていただいたことなので、精いっぱいやってみよう! と」

椅子に座りこちらに目線を向ける矢野妃菜喜

それまでもいろいろな芸能活動に、“とにかくやってみよう”の気持ちで挑戦してきた矢野妃菜喜。だが声優を目指した第一歩の経験では、想像以上の壁にぶち当たったという。

「事務所内で、声優の先輩方と一緒に大人数で声のテープ収録をすることになったんですけど……先輩の演技を見ながら、いざ自分もやってみるものの、もうびっくりするぐらい声のお芝居ができないんです。

今思うと当たり前なんですけど、それまで一応、子役時代からお芝居というものに触れてきていたはずなのに、こんなにもできないのか! と驚いてしまって、それがものすごく悔しかったんです。その経験から、もともとの負けず嫌いの性格が顔を出して、とにかくアニメや声優のことをもっと知らなければと思い、黙々と勉強をし始めました」

幼いころから「芸能ごとは身の回りにあったから、自然体でやってきた」と振り返る矢野妃菜喜は、おそらく器用な子どもだったのだろう。ほかの子が必死に努力しなければできなかったことも持ち前のおおらかでマイペースな性格から、それを困難と捉えず、ナチュラルに楽しみながら乗り越えられていたのだ。だからこそ、初めて経験した声の芝居の難しさ、イコール“声優になる”ことへの難しさに対して、持ち前の“頑張り屋さん”のエンジンに火がついた。

「まずは、アニメの声の演技というものを、自分のなかにインプットしなければならないと思って、たくさんアニメを見るようになりましたし、ワークショップにも通いました。先輩方とのテープ収録のレッスンでもすごく勉強させてもらいましたし、もちろん自主練もやりました」

マイクの前に立って微笑む矢野妃菜喜

舞台や映像での芝居もそれまで経験してきていた彼女だったが、「声だけでお芝居を完結させなきゃいけないのは、本当に難しい!」と痛感したという。

「今も感じていますが、声優のお芝居で一番難しいのは、繊細な感情の表現ですね。体が使えれば、表情や仕草でも演技ができますけど、声だけなので。しかも喜怒哀楽のなかでも、“怒る”とか“笑う”は、感情自体が激しいぶん、気持ちも飛び出させやすいですけど、微妙な気持ちを伝えるには、言い方だけじゃなく音量感なんかもすごく大切。

声優はマイクに向かって喋りますけど、アニメのキャラクターたちは人に向かって話している。相手との距離感がどのくらいあるのかとか、どういう場面でどういう状況で喋っているから、この台詞をこう言わなきゃいけないとか、想像力を働かせながらお芝居をすることには苦戦しました」

その感覚を掴むためにも、アニメ作品そのものにも真摯に向き合ったという。

「アニメをたくさん見ようと思っても、やっぱり自分が最終話までついて行けないような難しい作品から始めても身にならないので、最初のころは高校のアニメ好きの友達に、流行っているアニメを聞いたりしながら、自分に合いそうな作品を探していきました。

そこで出会ったのが、アニメ『ソードアート・オンライン』。今でこそゲームの世界に入り込むとか、現実とは違う世界に転生するお話はアニメでもたくさん放送されていますけど、私にとっては『ソードアート・オンライン』が初めての体験。すごく衝撃的だし、お話そのものも面白くて、一気にハマってシリーズを全部見ちゃいました」

笑顔で取材に答える矢野妃菜喜

『ソードアート・オンライン』を通じて、新しい音楽にも出会ったそうだ。

「私、これまで自分のワンマンライブを3回やらせてもらっていて、いろいろな楽曲のカバーもさせてもらっているんですけど、必ず歌わせていただいているのが、大好きなLiSAさんの楽曲で。LiSAさんのファンになったのも『ソードアート・オンライン』の主題歌がきっかけなんです」

『ソードアート・オンライン』以外にも多彩なアニメ作品に触れていくうちに、声優としての夢も膨らんでいった。

「リアルタイムで放送されていない作品も、遡って見るようになりました。遅れて見たもので特に印象的だったのは『けいおん!』ですね。アニメのなかに“日常系”というジャンルがあることを知って、その代表として見始めたんです。内容ももちろん面白かったのですが、『学校の軽音楽部って良いなぁ!』って、純粋に思いました(笑)。

『ソードアート・オンライン』のような壮大でドラマティックなお話も魅力的ですが、“日常系”もすごく素敵な世界。その『けいおん!』を入口に、“きらら系”っていうのかな? 『まんがタイムきらら』連載のアニメ化作品がたくさんあることを知って、そういう作品に出てみたい! という憧れも生まれました」

椅子に座りカメラから目線を外す矢野妃菜喜

新しい道を歩み出した矢野妃菜喜は、2017年以降、舞台作品やミュージカルなどへの出演を重ねつつ、ゲーム作品、海外ドラマの吹き替えなどをはじめとして、ワークショップなどのレッスンで声の芝居に試行錯誤しながら、声優としてのキャリアも積み始める。2019年には、Netflixオリジナルアニメ『キャノン・バスターズ』で初めてメインヒロインであるS.A.M(サム)役を射止めた。今回、矢野妃菜喜に印象的な出演作を聞いたとき、真っ先に名前が挙がったのがこのアニメだ。

「それまでいろいろなオーディションを受けさせていただきましたが、ずっと落ちつづけてきたので……『受かるんだ!』と、本当にうれしかったです」

初めてのアニメのヒロイン役、初めてのメインキャラ役でのレギュラー出演。初めてづくしが心に残ったのは当然として、ほかにも思い出深い出来事はあった。

「大好きだった『ソードアート・オンライン』の主人公・キリトを演じられていた松岡禎丞さんと初共演させていただけて、すごく勉強になりました。ゲストキャラとして、ベテランの方々もすごくたくさん出演された作品だったので、アフレコ現場で皆さんとのお芝居を生で体験できたのも貴重でした。収録が終わったあと、いつも通っていたワークショップに戻ったら、『なんでそんなに芝居が上手になったの?』と言われたくらいで(笑)」

笑顔で話す矢野妃菜喜

新人として多くを吸収できる時期にベテラン勢の見事な演技を現場で目の当たりし、一緒に掛け合いの芝居ができたことが、彼女の成長を促したのだろう。

「松岡さんはもちろん、皆さんのお芝居を見ることができただけでも大きかったです。私自身はただ一生懸命やっていただけでしたが、皆さんと一緒にお芝居ができたからこそ、目には見えない、いろんなものを吸収できたんだと思います」

高咲侑ちゃんは、全シリーズを通しても唯一無二の存在

矢野妃菜喜の名前を多くのアニメファンに知らしめた作品という意味では、学園を舞台にスクールアイドルたちの青春を描く大人気の『ラブライブ!』シリーズ第3弾作品『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』は、外すことができない。

ゲームやアニメでの展開だけでなく、劇中のμ’s、Aqours、Liella!といったスクールアイドルグループの担当声優が、リアルなライブ活動を繰り広げるなど、幅広いメディアミックスで知られるこのシリーズ。

矢野妃菜喜は、先駆けて展開されていたプレイヤー視点のゲーム版では、まだ名前も声もついていない主人公だった高咲侑役で、2020年にTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』から出演を果たした。

「『ラブライブ!』シリーズには、自分が関わるようになる前から、μ’sさん、Aqoursさんが登場していた『スクフェス』(ゲーム『ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル』)にハマっていたんです。なので、あの『ラブライブ!』という作品に出られるというだけでも、すごいことだな! という気持ちで。本当に光栄に思いました」

青い衣装でポーズをとる矢野妃菜喜

しかも彼女が演じている高咲侑は、『ラブライブ!』全シリーズのなかでも特異な存在。それゆえ、自分がキャラクターをどう演じ、どう作品に向き合うべきかは難しかったという。

「高咲侑ちゃんは、自分がスクールアイドルになるわけではなくて、仲間を応援してサポートするという、全シリーズを通しても唯一無二の存在なんです。ゲームではプレイヤーが高咲侑ちゃんの立場だったから、アニメだとそれは視聴者の皆さんに一番近い。お客さんといかに同じ目線で立っていられるかが、大事な役だと思いました。

そういう意味でも、それまでの『ラブライブ!』キャラクターには、お手本がいなくて。アニメではどんな立ち回りをしたら良いんだろう? を考えるために、『ラブライブ!』シリーズの過去のライブや配信イベントとか、見られるものは全部見て勉強しました」

先んじてスクールアイドル担当声優たちは、ライブ活動やメディアへの登場などを果たしていたため、シリーズに主人公として途中参加することへのプレッシャーもあったに違いない。

「でも、虹ヶ咲のメンバーのみんなも、ファンの皆さんもすごく温かく高咲侑ちゃんを受け入れてくれました。始めはやっぱり不安とかもあったんですけど、やって良かった! って今はすごく思ってます。ライブでも、普通なら立てないような大きな会場も経験させていただきました」

これまでのライブで特に印象に残っているのは、2021年に埼玉・メットライフドーム(現ベルーナドーム)で開催された『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd Live! School Idol Festival ~夢の始まり~』。ここでは、ほぼ未経験だったピアノの生演奏に挑戦した。

「ピアノは、本当に記憶もないくらい小さいころに、ちょっとだけ触ったことがあるくらいだったので、ひたすら練習しましたね。演出のシチュエーションも、アイドルのみんながメインステージにいて、私がその反対側のピアノだけがあるスペースにいるから、誰にも助けてもらえない。私のピアノソロから曲が始まってみんなが歌い始めるから絶対に失敗もできないし、コロナ禍での開催だったので、メットライフドームがシーンと静寂に包まれていて……もう本当に緊張して手が震えてました」

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 3rd Live! School Idol Festival ~夢の始まり~』について語る矢野妃菜喜

声優に転身する以前の芸能活動でも、ライブはたくさん経験してきた矢野妃菜喜でも、このステージは特別だったようだ。

「大舞台で自分が歌ったり踊ったりするぶんには、そんなに緊張はしないんです。自分が得意なものとしてステージに立っているので、ちょっとミスがあってもごまかし方を知っているといいますか(苦笑)。でもピアノは別。だからこそ、すごいプレッシャーで……よく頑張った私! って思いました」

『ラブライブ!』しかり、大ヒット中のシリーズ作品に参加し、それが代表作となることは『ウマ娘 プリティーダービー』シリーズでも経験した。2018年からTVアニメ化がスタートした本シリーズに、矢野妃菜喜は2021年の第2期『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』にキタサンブラック役で初参加。その後、ゲーム版にもキャラクターが実装され、2023年に放送されたTVアニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』では、主人公のひとりとして重役を担った。

「『ウマ娘』も作品がどんどん人気が出てきたなかでの途中参加だったので、プレッシャーはありました。作品への注目度も桁違いでしたし、私が演じさせていただいたキタサンブラックは、競馬界でものすごく有名なお馬さん。ファンの皆さんも1期、2期のメインキャラクターには、とても親しみを持たれていることがわかっていたので、『Season 3』でいきなり主役のひとりとして出ていくのは……という不安もありました」

階段に座り、左手を頬に当てる矢野妃菜喜

『Season 3』にはもうひとりの主人公、サトノダイヤモンド役として立花日菜がキャスティングされている。彼女とは思いを共有したようだ。

「出演が決まってからも、相方と会うたびに、私たちやっていけるかな……? と不安でズーンとしていて(苦笑)。でも、現場では先輩方にもすごく支えていただいて、大丈夫だよって言っていただけました。ほんとに、皆さん優しい方ばかりなんです!

『ウマ娘』のリアルライブも、2021年からほぼすべて出演させていただいていますが、たくさんの声優さんがいる真ん中にも立たせてもらえる機会もあって。アニソンのフェスでも『ANIMAX MUSIX』で、私たちがトリを担当させていただいたときに、心臓バクバクしながら締めのジャンプのかけ声をやらせてもらったり……本当にいろんな経験をさせてもらいました。『ウマ娘』のすごさを改めて感じましたね」

矢野妃菜喜 Love Say you -恋するVoice-

後編につづく

文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

リリース情報

矢野妃菜喜「ポヤポノポ!」ジャケット写真
 
「ポヤポノポ!」
発売日:3月2日(土)
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