花冷え。前編PCバナー画像
花冷え。前編SPバナー画像
連載Cocotame Series
story

アーティスト・プロファイル

花冷え。はなぜ世界に羽ばたいたのか?――完全新感覚ハイブリッドガールズバンドのこれまで

2024.08.30

  • Xでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

デスボイスが飛び交うヘヴィなラウドロックと“KAWAii”カルチャーを融合させた“HARAJUKU CORE”をコンセプトにしたガールズバンド“花冷え。”。メジャーデビューからわずか1年というキャリアながら、既に数多くのワールドツアーを完走し、世界中からもライブのオファーが殺到している彼女たちが、バンドのこれまでの歴史と今、そして未来を語る。

花冷え。プロフィール画像

花冷え。 HANABIE.

(写真左から)チカ(Dr.)、マツリ(Gt.&Vo.)、ユキナ(Vo.)、ヘッツ(Ba.&Cho.)。メタルコア、ハードコアを昇華させたオリジナルジャンル“HARAJUKU CORE”を核に、秋葉原カルチャーをも内包した、完全新感覚ハイブリッド4人組ガールズバンド。YouTubeやTikTokで海外ファンを中心に人気を集め、2023年7月26日にメジャーデビュー。翌月の8月から12月にかけて、EU、USA、オセアニア、アジアを巡るワールドツアーを完走し、2024年も国内外問わず数多くのライブに出演。楽曲「おいしいサバイバー」は、2025年1月より放送予定のTVアニメ『もめんたりー・リリィ』のオープニング主題歌に決定している。

記事の後編はこちら:花冷え。はなぜ世界に羽ばたいたのか?――完全新感覚ハイブリッドガールズバンドのこれから

「とにかく人と被りたくない!」バンドの始まり

花冷え。pre.『春の大解放祭 2024』にてパフォーマンスする花冷え。

Photo by Mei Okabe

花冷え。の歴史は、2015年。同じ学校で知り合ったユキナ(Vo.)、マツリ(Gt&Vo.)、ヘッツ(Ba.&Cho.)と初代ドラマーが軽音楽部でバンドを組んだところからスタートした。当時、バンドでの楽器経験があったのは、音楽好き一家に育ち、子どものころからギターをたしなんでいたマツリのみ。

ヘッツは小学生時代にクラブ活動で打楽器の経験はあったが、弦楽器経験は皆無。ユキナも歌を聴くのは好きだったが、自分で歌を歌いたいとは考えていなかった。そんな3人が、なぜバンドを組むようになったのか。そのきっかけは、ユキナだった。

緑と白の衣装を着た花冷え。ユキナ

「高校生になったらとにかくバンドを組みたい! と軽音楽部に入って、まずはメンバー集めから始めたんです。マツリはギターをもともとやっていたから、絶対に戦力。ヘッツとは中学生のころから一緒に軽音楽部に入りたいと話していて、弾いたことはないけどベースが気になるって言っていたから、ヘッツはベースで決まり。当時のドラムの子も、吹奏楽部で打楽器の経験があるから、ドラムも決まりだなとなったら……ボーカルがいないことに気づきまして(笑)。じゃあ、私がやろうかな? となりました」(ユキナ)

ライブにて両手を広げパフォーマンスする花冷え。ユキナ

Photo by Mei Okabe

“花冷え。”という個性的なバンド名もそこで決まった。ユキナが4月生まれで、ほかの3人は冬生まれなので、春に寒さが戻る俳句の季語“花冷え”がモチーフになった。

「バンドって英語の名前が多いけど、うちらは日本語で攻めたいよね! とみんなで話し合って、フライヤーに載ったときでも目立つ名前にしたんです」(ヘッツ)

黒とオレンジの衣装を着た、花冷え。ヘッツ

「今もそうなんですけど、私たちは『とにかく人と被りたくない!』という人間の集まりなんですよね。最後に“。”を付けたのは、私とヘッツが当時ハマっていたバンドにあやかって。バンド名を申請しなきゃいけないときに、こっそりつけちゃいました(笑)」(ユキナ)

高校1年で結成された花冷え。は、彼女たちがバンドの原点と語るマキシマム ザ ホルモンや、ELLEGARDENなどパンク、メロコア系バンドの曲をコピーしながら腕をあげ、オリジナル楽曲も制作。高校在学中には高校生が対象のバンドコンテスト『School's Out』で準優勝も果たした。その後、幾度かのドラマーのメンバーチェンジを経ながらも活動はつづき、高校卒業後はライブハウスでスキルを磨きながら、インディーズシーンで経験値を積みあげていった。

ライブで笑顔でベースを弾く、花冷え。ヘッツ

Photo by Mei Okabe

運命的なタイミングでのチカの加入

花冷え。の現メンバーが揃ったのは、地元・静岡県浜松市で中学生時代からバンド活動をしていたチカ(Dr.)が正式加入した2023年の5月。その出会いも運命的だった。

「そのころ、当時のバンド活動のなかでちょっとしたプロジェクトをやっていたんですけど、それが終わるというタイミングで。これからどうしようかな? もうバンドは辞めようかな? と悩んでいたときに、通っていた音楽専門学校の先生に紹介してもらったのが花冷え。だったんです」(チカ)

クレーと赤の衣装を着た花冷え。チカ

「去年の4月に3代目のドラマーが脱退することになって。バンドとしては7月にエピックレコードジャパンからメジャーデビューすることが既に決まっていたし、FOX LAKE、DROPOUT KINGSとのUSツアーだとか、いろいろな海外ライブに出演することも決定していたので、とにかく早くドラムを見つけないと! と、頭を抱えていた時期だったんです」(ヘッツ)

年齢も近い新メンバーの加入はタイミング的にもまさにベストだったが、メンバーには心配もあった。

「チカは地元の浜松でずっと活動していたので、まずは東京に出てこなきゃいけない。いきなりメジャーデビューして、海外ツアーがあって……しかも、花冷え。のやっているジャンルもヘビーだし、初対面でこのうるさい3人のなかにいきなり入るのは、相当大変じゃないかと思っていました。すごい決断をしてくれたなと思います」(ユキナ)

ところがチカは「まったく迷いはなかったです!」と笑う。

「ラウド系のバンドは初めてだったんですけど、中学でバンドを始めたときから『世界に行くぞ!』って周りにも言っていたので、花冷え。への加入のお話は運命だなと思い、すぐに参加を決めました」(チカ)

ライブで髪を乱れさせながらドラムを演奏する、花冷え。チカ

Photo by Mei Okabe

「チカが入ってすぐにライブもあったし、メジャーデビューを発表して直後に海外へ行って……と、初対面だからといって緊張している場合じゃないほどハードスケジュールだったのも、良かったんだと思います。急に2カ月くらい一緒に暮らす感覚だったので、お互い人見知りしているどころじゃなく、すぐに家族みたいになりました(笑)」(マツリ)

黒と青の衣装を着た花冷え。マツリ

ちなみに、「花冷え。を家族に例えると、誰がどの役割?」とチカに聞いてみると?

「リーダーで決断力のあるマツリはお父さんで、いつもみんなの世話を焼いてくれるヘッツはお母さん。普段はゆるっとしてるけどライブになったらスイッチが入るところが、私と似ているユキナはお姉ちゃんで、私が末っ子ですかね?」(チカ)

「みんな、好きなことになると賑やかなところも、家族っぽいんですよね。チカは食べ物の話に熱が入るし、マツリは自分の趣味とかアニメの話に前のめりだし、便利グッズとファッションが大好きなヘッツは生地とかメイクの話になると早口だし……誰かがテンション高いと、誰かが締めてくれる。すごくバランスの良いバンドです」(ユキナ)

ライブでギターを演奏する花冷え。マツリ

Photo by Mei Okabe

「-我甘党- (WE LOVE SWEETS)」へのリアクション動画が海外を意識するきっかけに

チカの加入により、すべてが揃った花冷え。は2023年7月26日、アルバム『来世は偉人!』でメジャーデビュー。それまで、すべてをセルフプロデュースしてきた彼女たちは、メジャーデビューをどのように受け止めたのだろうか。

「一番大きかったのは、やりたいことが明確にできるようになったことですね。メジャーデビュー前は、音源やミュージックビデオ(以下、MV)を作るのも、ライブをやるのも、当然、自分たちだけでやっていました。それが、周りのスタッフさんからサポートを受けられる状況になると、アイデアは倍になるし、やれることも格段に増えるようになって。やりたいことやスタイルは変えないまま、皆さんがサポートしてくれるので、今がすごく楽しいし、ありたがい環境です」(マツリ)

ライブでパフォーマンスする花冷え。と観客

花冷え。の活動の軸になりつつある“海外ライブ”も、自分たちですべてをまかなうインディーズスタイルでは実現できていなかっただろうと語る。

「自分たちだけで積極的に海外に行こう! という発想には、まだそのころはなっていなかったですね」(ヘッツ)

「行けたら楽しいだろうね、くらいで。ツアーやってやるぞ! みたいな話は全然出ていませんでした。まずは日本でどうしよう? としか考えられなかったです」(マツリ)

「海外でも人気のメタルコアバンド・CRYSTAL LAKEのGakuさんから海外の話を聞いて、すごいな! とは思っていました」(ユキナ)

ただ、海外を意識はしていたという。きっかけは、いちごの被り物がかわいいポップな衣装で“私たちはスイーツが大好き!”と歌うメッセージと、それとはアンバランスなハードなサウンドで届けた2021年発表の楽曲「-我甘党- (WE LOVE SWEETS)」のMVだ。

【花冷え。】-我甘党- (WE LOVE SWEETS) Music Video【HANABIE.】(add:English Lyrics)

「映像を見ながら感想を言う“リアクション動画”というのがYouTubeで流行っていて、『-我甘党- (WE LOVE SWEETS)』へのリアクション動画を出してくれる海外の方がたくさんいらっしゃったんです。こんなに私たちの曲を気に入ってくれたり、良いと言ってくれる人がいるんだ! とすごく気になってから、海外をしっかりと意識しましたね」(ユキナ)

「海外の方々が、うちの地域に来てほしい、ここに行ってほしいというのを動画のコメント欄に書き込んでくれて、言葉として直接見る機会が増えたんです。世界は広いな、行ってみたいなと、真剣に思うようになりました」(マツリ)

自分らしくいるための“HARAJUKU CORE”スタイルは「L.C.G」から確立した

花冷え。が海外ロックファンの心を掴んだ最大の理由は、彼女たちにしかできない唯一無二の“ HARAJUKU CORE”な表現スタイルだ。カラフルでポップでキュート、キッチュなサブカル系と原宿系ファッションがミックスされたビジュアルから繰り出される、メタリックでミクスチャーな本格派ラウドロックとのギャップには、多くの人が驚かされたことだろう。だが、そのスタイルが確立したのは、意外にも活動の途中から。2019年11月に発表したある楽曲がきっかけだという。

「5年前に出した『L.C.G』という楽曲の制作くらいからですね。私たちだけにしかできないことって、こういうことじゃない? みたいなのを、ふんわりですが全員で共有しました」(マツリ)

花冷え。「L.C.G」 MusicVideo【Official】

それまでは、彼女たちの音楽の中核であるメタルコア、ハードコアシーンに馴染むため、黒髪にTシャツ、短パンという定番の格好で対バンライブに出ていたという。

「対バンするバンドもお客さんもほぼ男性なので、女の子だっていうだけで浮いているのに、さらにちょっとでも可愛い要素を入れようものなら、もうこれは場違いかもっていうイベントが多かったんです。私たちも周りには『負けねーぞ! うちら強ぇーぞ!』って尖っていたんですけどね(笑)。でも次第に『そうじゃないな、私たちの強みは』と思うようになって。好きなものを着て、好きな髪型にしてみよう! となりました」(マツリ)

「それまではMVでも暗い髪色だったし、ボーカルのユキナを目立たせたいから、私はなるべく影になろうと地味な格好で出ていたんですけど……普段は結構髪をカラフルに染めていたんです(笑)。でも無理して周りに合わせるのはやめて、好きなようにやれば良いじゃん! と自分たちを開放したのが『L.C.G』でした」(ヘッツ)

「もともと私たちって、いわゆるラウド系バンドと趣味は真逆だったんです。特にサンリオが好きだったりして(笑)。自分たちの好きな感じを素直に出して良いんだ! という考え方になれたのは、花冷え。にとって、すごく大きかったですね」(ユキナ)

「私が加入したときも、ほかのメンバーとは被っていないから『黒髪でも全然OK!』って言われたんですけど……一緒にツアーを回るうちに、着る服もメイクにこだわるのも楽しくなって。ヘッツが、誕生日にメイク道具をプレゼントしてくれたりして、どんどん派手になっちゃいました(笑)」(チカ)

カラフルな衣装を着た花冷え。

Photo by Mei Okabe

後編では、海外での活動への想いやエピソード、バンドの未来を聞く。

後編につづく

文・取材:阿部美香

リリース情報

花冷え。「メタ盛るフォーゼ!」ジャケット写真
 
「メタ盛るフォーゼ!」
配信日:8月7日(水)
配信はこちら

「メタ盛るフォーゼ!」ミュージックビデオはこちら(新しいタブを開く)

EP「ぶっちぎり東京」
発売日:12月4日(水)

ライブ情報

『花冷え。ぶっちぎり JAPAN TOUR 2024』
12月13日(金) 福岡県:福岡DRUM Be-1 開場18:30 /開演19:00
12月14日(土) 愛知県:名古屋ReNY limited 開場17:00 / 開演18:00
12月21日(土) 宮城県:仙台Rensa 開場16:00 / 開演17:00
12月28日(土) 大阪府:GORILLA HALL OSAKA 開場17:00 / 開演18:00
12月29日(日) 東京都:Zepp Shinjuku(TOKYO) 開場16:00 / 開演17:00

連載アーティスト・プロファイル