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アニメづくりへの情熱

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』音楽制作チームが語る――映像と融合した“音楽”の魅力②

2025.02.14

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2022年に放送が開始されたTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』。女子高生バンドをテーマにし、アニメファンのみならず音楽ファンからも大きな注目を集めている。なかでも劇中バンド・結束バンドは、ミュージシャンの演奏と、キャストによるボーカルで2023年より、リアルバンドとして活動中で、2月15日には東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナにて初のアリーナワンマン『結束バンドTOUR We will B』の開催を控える。

中編では、音楽のプロデュースを行なうアニプレックス(以下、ANX)SSチームの5人が、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の見どころと、各所に散りばめられた“リアルさ”について紐解く。

  • アニプレックス山内真治プロフィール写真

    山内真治

    Yamanouchi Masaharu

    アニプレックス

  • アニプレックス安谷屋光生プロフィール

    安谷屋光生

    Adaniya Koki

    アニプレックス

  • アニプレックス西田圭稀プロフィール写真

    西田圭稀

    Nishida Keiki

    アニプレックス

  • アニプレックス岡村 弦プロフィール写真

    岡村 弦

    Okamura Gen

    アニプレックス

  • アニプレックス吉原杏菜プロフィール写真

    吉原杏菜

    Yoshihara Anna

    アニプレックス

記事の前編はこちら:アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』音楽制作チームが語る――映像と融合した“音楽”の魅力①
記事の後編はこちら:アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』音楽制作チームが語る――映像と融合した“音楽”の魅力③

アニソンを意識せず“下北沢ギターロック”に振り切った結束バンドの音楽

――もともと『ぼっち・ざ・ろっく!』は、はまじあき先生による4コマ漫画が原作です。ギタリストとしての腕は確かなのに重度の人見知り、陰キャで友達ができない女子高校生、後藤ひとり(愛称:ぼっちちゃん)が、ひょんなことから下北沢で活動するガールズバンド・結束バンドのメンバーになって、仲間とともに学校、バイト、バンド活動と日常を送っていくお話です。皆さんは『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメ化と実際にバンド楽曲や音楽の制作に携わって、どのような印象を受けましたか?

岡村:原作が4コマ構成だったので、漫画を読んだとき、実際にどういったかたちでアニメ化されるのかが、正直想像がつきませんでした。そんななか、企画の段階でSSチーム全員とアニメプロデューサー、原作のはまじあき先生とミーティングを行ない、音楽の方向性についてこちらからご提案しつつ、先生のご意見もヒアリングさせてもらったというのが、制作作業の始まりだったと思います。

山内:そのうえで、アニメとしてどういう見せ方になるのか想像できないなかでも、何か具体的に手つけなければ進まないよね、という話になりまして。アニメーションとしては何も進んでいない段階でしたが、結束バンドの曲をいったん作ってみようという流れになったんです。

岡村:そこでまずは2曲、「ひとりぼっち東京」と「ラブソングが歌えない」のデモを制作しました。劇中のどこで使うか決まっていたわけではないのですが、どこかで使えるだろう……みたいなノリで(笑)。結果、この2曲はアルバム曲としてリリースされ、『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:/Re:Re:』の劇中でも使用されました。そして、結束バンドの音楽の方向性もここで大体固まりましたね。

身振り手振りで話す岡村 弦

――結束バンドの音楽性にキーワードのようなものはあったのでしょうか?

岡村:はまじあき先生からのリクエストでは、しっかりと“下北沢ギターロック”に振り切ってもらって大丈夫というお話をいただきました。さらに言えば、いわゆるアニソンであることを意識しないでくださいというコメントもあって。私もバンドで下北界隈の音楽をやっていたので、普通に“バンドってこうだよね!”を楽しませてもらう気持ちで取り組みました。

また、演奏も含めてですが、楽曲制作に携わってくれたクリエイターさんもバンド出身者や、現在もバンド活動をしているプロのミュージシャンや作家陣を起用したので、おのずと“青春のバンド時代思い出しプロジェクト”“バンド楽しみプロジェクト”みたいなノリになっていきました(笑)。

山内:ミュージシャン、クリエイターの皆さんも、とても協力的だったよね。

岡村:そうなんです。楽曲が増えて、途中からアニメ本編のオンエアも始まったころになると、演奏してくれているミュージシャンの皆さんも、どんどん『ぼっち・ざ・ろっく!』にのめり込んでくれまして。

“(伊地知)虹夏ちゃんなら、ドラムをこう叩くだろう”“(山田)リョウはこういうフレーズを弾くタイプだよ”と、どんどん“リアル結束バンド”になっていきました。今ではライブステージで皆さん楽しそうにプレイされています(笑)。

山内:ライブが終わったあとには、ガチな反省ミーティングもしてるよね。

岡村:はい。面白いことに、たくさんの場数を踏んできたテクニシャン揃いなのに、結束バンドのライブ前日は、すごく緊張するみたいです。それは、私たちが調子に乗って技術的に非常に難しい楽曲ばかりを作ってしまったというのもあるんですが……(苦笑)。スタジオリハーサルからさらに完璧な演奏を求めてくださっているのも、ありがたいことです。

――演奏、特にギターに関して言えば、オクターブ奏法を多用したり、速いアルペジオをバッキングで使用していたりと、いかにも下北ギターバンド的なアレンジのセンスも、かなり意識されているように感じます。

岡村:そういう細かいフレーズになってくると、やはり一番力を発揮してくださったのは、おおかたの曲のアレンジを担当してくださった三井律郎さんのお力ですね。現役で下北バンドマンをやられていて、そのあたりの文脈は完璧に理解していらっしゃるので、すごく助けていただきました。三井さんは原作の読み込みも尋常じゃなく、“このシーンはあの話のあのセリフね”というのがスッと出てきます。

――安谷屋さんは『ぼっち・ざ・ろっく!』という作品をどう受け取られていましたか?

安谷屋:最初に原作を読んで面白いなと思ったのが、ぼっちちゃんが最初からギターが上手いという設定ですね。バンドものは、技術的な成長過程を楽しむスタイルが多いなか、『ぼっち・ざ・ろっく!』では、その部分が大胆に省略されています。だから、アニメでも人間模様が軸になりそうだなと感じました。

そして、そこに音楽的な表現がどう絡んでくるのだろうと思っていたんですが、結果、さまざまなアニメの演出が入ることで、想像を遙かに超える内容になっていてびっくりしました。ギター演奏シーンの参考動画撮影でも、アニメ制作側と相談しながら、作画上で演奏の上手さを調整していったのを覚えています。

身振り手振りで話す安谷屋光生

原作の“バンドあるある”をより強化した見せ方が人々の心を掴んだ

――『ぼっち・ざ・ろっく!』は、女子高生ロックバンドを描く作品ですが、物語としてはもちろんのこと、結束バンドも性別、年齢問わず人気を得ていますよね。

吉原:私はもともと可愛い女の子が好きなので、その時点で既に『ぼっち・ざ・ろっく!』は魅力的なのですが……。結束バンドのメンバーは個性的でありながらも等身大の女子高生らしさをとても感じますし、必死に練習したり、ひたむきに頑張っている姿には個人的にも共感できました。

私自身、学生時代ずっとマリンバを演奏していたこともあり、ひとりで人前で演奏する緊張感や、バンドのようにアンサンブルで演奏する難しさはすごくわかります。楽器に限らず、何かに打ち込んだことのある人なら共感できるのではないでしょうか。

笑顔でインタビューに答える吉原杏菜

岡村:ぼっちちゃんがバンドをやりたいと思った動機の“みんなにちやほやされたい”も、全バンドマンが共感したと思います、私もそうでしたから(笑)。

西田:自分もです(笑)。ぼっちちゃんが、あえてギターを学校に持っていって、声をかけてもらえないかとやきもきするとか。最初は“モテたい”が半分、“憧れのミュージシャンのようになりたい”が半分で、バンドを始めている人も多いと思います(笑)。多くのバンドマンが“わかる!”というエピソードが、たくさん散りばめられていますね。

――やはり“バンドあるある”が、原作からちゃんと描かれているので、そこにこだわり抜いたアニメーションが作画で具現化され、リアルなバンド音楽が付加されたことで、より魅力が強化されたのでしょうね。

西田:そう思います。『ぼっち・ざ・ろっく!』はライブハウスのディテールだったり、バンドマンたちの会話だったり、原作の段階からとてもリアルな“あるある”がしっかり捉えられて描かれています。そこに、アニメとして映像や音楽の要素が加わったことで、よりリアルになり、さまざまなミュージシャンやバンドの方からも共感の声をいただきました。

例えば、ライブハウスに出演するには、チケットノルマが課せられて、みんなヒーヒー言っているとか(苦笑)。バンドマンからするとあまり表に出さない話ではあるんですが、そこもコミカルに処理されていて面白いですし。お客さん視点ではわからない部分も、はまじあき先生がご自身でライブハウスに通い、取材して、空気を掴んでいらしたからこそのリアル感なのだと感じます。

身振り手振りで話す西田圭稀

山内:それは本当に大きいですね。私も世代は違いますが、かつてはバンドをやっていたので、そういうディテールにこそ共感できる部分がたくさんあります。

例えば、第12話の「君に朝が降る」の回。文化祭に結束バンドが出演するのですが、ギターの弦が切れてギターソロが弾けなくなってしまうシーンがあるんですが、そこを全員がアドリブでつないでいる間に、ぼっちちゃんが機転を利かせて、偶然あったお酒のカップを使ってボトルネック奏法をやって切り抜けるんです。ボトルネック奏法がどれくらいの視聴者に伝わっているかはわからなかったですが、自分的にはもう見ていて“泣いていいですか!”という気持ちになりましたね。

「星座になれたら」演奏シーンアニメ場面写真

――機材トラブルもバンドあるあるですからね。そこもリアルさに結びついています。

山内:そういうバンドマン目線で『ぼっち・ざ・ろっく!』を見ている自分と、もうひとつ別の方向でリアルなエピソードもありまして。

私には娘がいるんですが、音楽に慣れ親しんでほしいと思い、幼いころからずっとギターやベースを弾いている姿を見せてきたんですね。でも、何ひとつ刺さらなくて(苦笑)。ところが、当時中学生になったばかりの娘が『ぼっち・ざ・ろっく!』を見てから、「私、軽音部に入る!」と言い出したんです。

「ギターを買いに行くから一緒にきて!」と言うので、一緒に楽器屋に行って好きなギターを選ばせたら……ぼっちちゃんが劇中で手にしていたものと同じYAMAHAのPACIFICAが欲しいと。店員さんも「ずっと売り切れ状態だったんですけど、昨日入荷した2本のうちの1本、お客さんラッキーですよ! 『ぼっち・ざ・ろっく!』ってアニメ、知ってますか?」と熱く語ってくれまして。“うん知ってる”と心の中で呟きつつニヤニヤしてしまいました(笑)。

楽器屋でのエピソードを話す山内真治

『ぼっち・ざ・ろっく!』演奏シーンの細かなこだわりも“あるある”

――皆さんが、特に印象に残っているアニメのエピソードも教えてください。

吉原:私は第8話「ぼっち・ざ・ろっく」で冷めた客席を見たぼっちちゃんが“このままじゃ嫌だ!”と頑張って、ギターソロをアドリブでひとり弾き始めるシーンにグッときました。自分もぼっちちゃんに似た部分を感じることがあるので、人前に立つことすら怖いのに頑張ってる! と、勇気づけられましたね。ひとりの演奏がきっかけで空気感が変わることもよくあることなので、そのリアルさもあり印象に残っています。

ステージで演奏する後藤ひとりのアニメ場面写真

ステージで演奏する後藤ひとりのアニメ場面写真

安谷屋:私は山内さんも言っていた、文化祭のトラブルのなかで「星座になれたら」を演奏したシーンですね。声優さんの素晴らしい演技も相まって、見ていてのめり込みました。

西田:自分は第10話「アフターダーク」で、ぼっちちゃんたちが新宿FOLTにSICK HACKのライブを観に行くエピソードです。ホールクラスではなく、数百人規模のライブハウスの空間のなかで、ぼっちちゃんたちが圧倒的な音を浴び、引き込まれていく演出が非常にリアルで。

新宿FOLTのモデルである新宿LOFTという場所は、実は、バンドによってはお客さんとの距離感が実際より遠く感じてしまったり、歴史あるハコなだけにインディーズバンドがライブをやる上で決してハードルが低いライブハウスではないんです。そんなFOLTのフロアを熱狂させるSICK HACKがすごい!……というリアル感もあり、結束バンドが次のステップに向かうストーリーも踏まえて、すごくいい話だなと思いました。

新宿FOLTでのアニメ場面写真

岡村:私はひとつのエピソードというよりも、演奏シーンの細かい表現にグッときますね。文化祭のシーンで、ぼっちちゃんがボトルネック奏法を始める前にバンドがアドリブを回しているんですけど、ベースのリョウさんとドラムの 虹夏ちゃんが、「もう1周回す?」というようなアイコンタクトをしてるんですよ。あれもバンドあるあるで。

結束バンドのメンバーが揃ったころはギター初心者だった喜多ちゃんが、最初は肘からストロークしていたのに、最終話の文化祭のときは手首のスナップを効かせて弾けるようになっていて、成長を感じるとか。

演奏シーンは作画の参考にアクターさんに演技をしてもらっているのですが、演奏の途切れ目にエフェクターを踏むところは画面に足元が映っていなくても、身体をちょっと前傾して“今、ディレイ踏んだな!”というのがわかる映像になっていたり。そういう細かいリアルさが、実にじわじわ来ますね。

山内:演奏シーンのカメラワークも、アーティストのミュージックビデオ風になっていたり、すごく凝っていますよね。急にぼっちちゃん目線に切り替わったり、ギターのヘッドにGoProをつけたような映像があったり。大きなものから細かいものまで、本当に作り込まれている。

そこに音楽も呼応したことで、視聴者の方々にバンドアニメとしての本気度が伝わったんだと思います。それが、これからバンドを始めたい方から、今もバンド活動を続けている方まで、バンド音楽を愛する幅広い層に『ぼっち・ざ・ろっく!』が支持されている理由なのではないかと思います。

アニプレックスSSチーム集合写真

後編では、「結束バンド」の活躍の背景と、部門の今後のビジョンについて聞く。

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記事の後編はこちら:アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』音楽制作チームが語る――映像と融合した“音楽”の魅力③

文・取材:阿部美香
撮影:干川 修

©はまじあき/芳文社・アニプレックス

関連サイト

『ぼっち・ざ・ろっく!』公式サイト
https://bocchi.rocks/tv/(新しいタブを開く)
 
『ぼっち・ざ・ろっく!』公式X
https://x.com/BTR_anime(新しいタブを開く)
 
『ぼっち・ざ・ろっく!』公式Instagram
https://www.instagram.com/BTR_isosta/(新しいタブを開く)
 
『ぼっち・ざ・ろっく!』公式TikTok
https://www.tiktok.com/@btr_chiktok(新しいタブを開く)

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