映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』担当プロデューサーに聞く、6年の道のりと制作の舞台裏
2025.11.07


2018年放送のTVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(以下、バニーガール)を皮切りに、3本の劇場アニメが公開された「青春ブタ野郎」シリーズ(以下、青ブタ)。多くの人の心を揺さぶる原作、そしてアニメの魅力とは?
後編では、TVアニメとしては7年ぶりとなる『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』(以下、サンタクロース)の話題を中心に、シリーズ新作放送直前(取材当時)のプロデューサーならではの心境を聞いた。
目次

奈良駿介
Nara Shunsuke
アニプレックス
記事の前編はこちら:アニメ『青ブタ』プロデューサーが語る制作の舞台裏──ファンの心に深く響く“思い出にできる作品”を届けたい①
──2018年にTVアニメ第1期が放送され、翌2019年と、2023年に劇場アニメが公開……と、「青ブタ」原作のストーリーに沿ってアニメシリーズも積み上げられてきました。TVシリーズと劇場アニメの構成はどのように決まったのでしょうか。
初めにTVシリーズ(『バニーガール』)の企画が立ち上がってから、次に『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』(2019年6月公開)(以下、ゆめみる少女)を劇場アニメとして制作するところまではセットで考えられていました。なので、TVアニメ第1期放送前の先行上映会時点で劇場アニメの制作も発表していたんです。
その『ゆめみる少女』で物語のなかの問題がある程度解決されたあとに、未解決だったところ……つまり、梓川家が抱えていた問題の解決を描いているのが『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』(以下、おでかけシスター)と『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』(以下、ランドセルガール)の2作品になります。
ここはシリーズ全体のなかでも独特な立ち位置で。TVシリーズとしてではなく、劇場アニメとしてじっくりと見せる描き方が正しいのではないかということで、2作連続で劇場で公開することになりました。
──そこから続く新シリーズとなるのが『サンタクロース』ですね。
はい。これまでの高校生編に続く、大学生編という区切りで、新しいヒロインたちも登場する、新章スタートとしての位置づけのTVシリーズになります。
──第1期の放送開始から数えるとアニメ「青ブタ」は今年で8年目ということで、なかなかの長期シリーズになってきました。シリーズ継続を後押ししているものはなんだと考えていますか?
劇場アニメの反響も含め、シリーズ全体を通してファンの皆さんがついてきてくださっている、作品を好きでいてくださっている、ということをしっかり実感できるからこそ、続けられていると感じます。
「青ブタ」の場合は、地域とのコラボやポップアップショップ、昨年は『青春ブタ野郎はスクールメモリーの夢を見ない -青ブタ展-』という展示会も開催し、そういったイベントの一つひとつにもお客さんからの熱い反響がありました。TV放送や劇場公開をしていないタイミングでも、反響をいただけることが作品の後押しになっていると思います。
──ファンの方からの反響のなかで、特に印象に残っていることはありますか?
最新シリーズの『サンタクロース』では、作品舞台のモデルとして横浜市立大学が登場するのですが、原作を読まれた方のなかには、作品に影響を受けてこの大学への入学を決めたという方もいらっしゃると聞いたことがあります。そういった、人生にも影響を受けるレベルで作品を楽しんでいただけているという話を伺うと、アニメの制作に携わる者としては気の引き締まる思いがしますね。
──作品における“聖地”とはいえ、実際に入学というのはすごいですね。でも「青ブタ」は“人生そのもの”のような作品という感覚もあり、わかる気がします。
そのように言ってくださる方もいらっしゃるので、有り難いことです。鴨志田先生の原作の持っている、共感性の高さゆえだと思います。
──新シリーズの『サンタクロース』については、既に原作小説を先々まで読み込んでいる方と、TVアニメで初めてご覧になる方がいると思うのですが、それぞれどんなふうに楽しんでほしいですか?
原作を読んでいる方には、鴨志田先生が文字として描いているものがどうアニメ化されるか、という見方で楽しんでいただくことになりますが、そこは間違いなくいいものにできていると思っています。
そのうえで、アニメシリーズを追っていて原作にはまだ触れていないという方、そして、『サンタクロース』からシリーズを見始めるという方には、一つひとつのセリフを大事に聞いてもらいたいです。キャラクターの持つ悩みと、思春期症候群に関わる部分は情報も多く、セリフに合わせた画づくりがされているので、まずはキャラクターのセリフをしっかりと聞いてみてください。
──ちょっとしたセリフが、後々の伏線になって効いてくるということもある作品ですからね。
そうですね。「青ブタ」はそういう楽しみ方もできる作品なので。あまり構えずに見ても楽しんでいただけると思いますが、セリフをじっくりと聞いて、キャラクターたちの感情に思いを馳せていただけたら、よりいっそうこの作品を楽しんでもらえると思います。
──今後の物語の展開のなかで注目してもらいたいこと、楽しみにしてほしいことは?
本作のヒロインたちが抱えている悩みには、同じ境遇ではない視聴者の方にとっても、どこかしら自分に置き換えて見られる部分があると思うんです。“自分もそうかもしれない”“自分だったらこういうところが当てはまるかもしれない”というような見方ができるはずなので、そういった目線でも作品を楽しんでもらいたいなと思います。
──これまでの高校生編と違った部分では、どのあたりがポイントになりますか?
「青ブタ」という作品である以上、引き続き“青春”という部分にフォーカスしつつ……サンタクロースが突然現われるところなど、高校生編にはなかった“怖さ”のような要素は少し出てきますね。あとはキャラクターたちが大学生に成長したことにより、抱えている悩みも少し違ってくるので、そのあたりの雰囲気の違いも楽しんでもらえると思います。
──『サンタクロース』は久しぶりのTVアニメシリーズということで、オープニングとエンディングの楽曲も気になります。これまでのオープニング、エンディングテーマを踏まえて、新たに制作された楽曲について教えてください。
大学生編になっても“青春”というテーマは変わらないので、オープニングテーマ「スノウドロップ」を担当するConton Candyの皆さんには、青春を感じさせるような、爽やかなイメージの楽曲をお願いして、まさにその通りの曲を作っていただけたなと感じています。
アニメ「青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない」ノンクレジットオープニング映像 | Conton Candy「スノウドロップ」
──エンディングテーマは、作中のヒロインたちが歌う「水平線は僕の古傷」。これまでの「青ブタ」では、TVシリーズから劇場アニメ3作品まで、高校生編を通して象徴的に使われた「不可思議のカルテ」という曲があったので、新たなエンディングテーマを生み出すのは特に難しかったのではないでしょうか。
「不可思議のカルテ」がファンの方々からも大変好評をいただいていたので、大学生編になってエンディングをどうするか? というのは確かに悩んだところです。「青ブタ」の音楽を手がけるfox capture planのカワイヒデヒロさん、作詞の児玉雨子さんという、「不可思議のカルテ」を創ってもらったおふたりにもう一度お願いすることはすぐに決まったので、まずはおふたりとお話をさせていただきました。
──どういう楽曲を目指す話になっていったのでしょうか?
大学生編でも思春期症候群という現象が続いていて、話のストーリーの根幹として関わってきていることから、「不可思議のカルテ」と同様に思春期症候群をイメージした楽曲である必要性について話し合いました。
そのうえで、高校生編のときとはキャラクターたちの悩みの方向性が少し違ってくる部分を加味できると、より作品にマッチするなと。その具体的なイメージを落とし込んでいくために、今回は音づくりの前に児玉さんに歌詞を書いていただくことにしました。
──詞先の作り方はこの作品の雰囲気にもマッチしている気がします。
そうですね。同様の作り方で「不可思議のカルテ」というお手本があったおかげで、目指すべき楽曲像が明確に見えた部分もあります。結果としてエンディングも非常にいい曲ができましたので、歌詞もメロディもじっくり楽しんでください。
アニメ「青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない」ノンクレジットエンディング映像 |「水平線は僕の古傷」広川卯月
──これまで奈良さんがプロデューサーとして本作に関わるなかで、最も鳥肌が立った瞬間や、アドレナリンが出た瞬間を挙げるとしたら、どんなときでしょうか?
個人的にそういったタイミングがやってくるのは、TVシリーズの放送や、劇場アニメの公開直前なんです。「青ブタ」という非常に多くの人から支持を得る作品を、いかにして世の中のより多くの人たちに伝えていくか、というのが僕らの仕事です。
スタッフの皆さんが非常に良いアニメーションを作ってくださったというのを前提に、今度はそれを我々が“どう伝えるか”ということで奔走する。ちょうど放送開始を間近に控えた今が、その最中だったりするので、一番アドレナリンが出ているのは今かもしれません(笑)。
──作品が納品されたタイミングではなく、TV放送なり劇場公開が始まって、お客さんからの反応が来たそのときに初めて達成感が得られるわけですね。
はい。制作スタッフの皆さんが作ってくださったもののクオリティは間違いないので、それに対しどういう反応をいただけるかが楽しみでありつつ、見ていただいた方々に“どう思われるかな”という気持ちも常に持っています。達成感というよりは、“受け入れていただいた”とか“ちゃんとファンの方に届いた”ということに対しての安心感を得る、といった気持ちが大きいですね。
──最後に、奈良さんがアニメ「青ブタ」シリーズの制作を手がけるにあたって一番大事にしていることを教えてください。
“人生そのもの”のような作品という感覚とも似ていると思うのですが……「青ブタ」はエンタテインメントという枠を越えて、ファンの皆さんのなかでも心のどこかに“思い出”として置いてくださっている方々も多いように思っています。
そういった“思い出にできる作品”というのは、僕らにとって、作品を位置づける大事なポイントとして考えているところですね。ぜひ多くの人に「青ブタ」という作品を自分自身と照らし合わせて見ていただきたいです。
記事の前編はこちら:アニメ『青ブタ』プロデューサーが語る制作の舞台裏──ファンの心に深く響く“思い出にできる作品”を届けたい①
文・取材:柳 雄大
撮影:荻原大志
©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
©2024 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project
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