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アニメづくりへの情熱

アニメ『青ブタ』プロデューサーが語る制作の舞台裏──ファンの心に深く響く“思い出にできる作品”を届けたい①

2025.07.26

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2018年放送のTVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(以下、バニーガール)を皮切りに、3本の劇場アニメが公開された「青春ブタ野郎」シリーズ(以下、青ブタ)。7月からは、続編となる新章『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』(以下、サンタクロース)のTVアニメ放送が始まった。

多くの人の心を揺さぶる原作、そしてアニメの魅力とは? シリーズがこれまで歩んできた8年間の道のりと制作の裏側を、アニプレックス(以下、ANX)でTVアニメ1期から『青ブタ』に携わるプロデューサーが語る。

  • 「青ブタ」奈良プロフィール写真

    奈良駿介

    Nara Shunsuke

    アニプレックス

アニメ『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』とは?

「青ブタ」キービジュアル

思春期特有の感情と胸に迫る人間ドラマを瑞々しく描き、作品を重ねるごとに新たなファンを獲得してきたアニメ「青ブタ」の最新作。鴨志田一によるライトノベルを原作とし、これまでTVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(2018年放送)、劇場版『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』(2019年公開)、劇場版『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』(2023年公開)、劇場版『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』(2023年公開)をアニメ化している。『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』は、同シリーズでは7年ぶりのTV放送となり、横浜を舞台に加えた新章である大学生編がスタート。不安定な精神状態によって引き起こされる不思議な現象“思春期症候群”に悩む少女たちと、主人公・梓川咲太が繰り広げる“思春期×ファンタジー”の物語が再び始まる。

記事の後編はこちら:アニメ『青春ブタ』プロデューサーが語る制作の舞台裏──ファンの心に深く響く“思い出にできる作品”を届けたい②

湘南の背景描写をアニメでもしっかりと打ち出したかった

──奈良さんと「青ブタ」との関わりはどのように始まったのでしょうか?

「青ブタ」との出会いは、アニメ「青ブタ」シリーズを立ち上げた当時の僕の上長から、鴨志田一先生の原作ノベルを紹介してもらったのが最初でした。TVアニメ第1期である『バニーガール』は、その上長がプロデューサーを務めており、自分はアソシエイトプロデューサーとして作品に携わっていました。

──奈良さんがプロデューサーとして携わることになるのは、少しあとということですね。

はい。シリーズが続いていくなかで、その上長がANXを退社することになり、劇場アニメ2作目となる『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』(2023年6月劇場公開)からは僕がプロデューサーを引き継ぎ、現在に至ります。

真剣な表情で話すプロデューサー奈良

──アソシエイトプロデューサーとして携わっていたTVアニメ第1期の制作時は、どのような役割でしたか?

プロデューサーのサポートをしつつ、本読み(脚本の打ち合わせ)、音響やアフレコの演技のチェックといった現場にはすべて立ち会っていました。そのうえで僕が主に担当していたのは、作中で登場する実在の場所のロケハンの許可取りや、舞台となる街、施設とのコラボなどで、いかに「青ブタ」という作品の知名度を広めていくかといった部分ですね。

この作品では、高校生編(2018年のTVアニメ第1期~2023年公開の劇場版アニメ2作品)が神奈川県の藤沢市や鎌倉市などの湘南地域を舞台にしていて、今回の『サンタクロース』では大学生編として横浜も加わるのですが、シリーズの当初は藤沢市との施策を担当することが多かったです。

──「青ブタ」といえば、藤沢市や江の島の風景は切っても切れない関係になりました。

そうですね。原作小説のなかでしっかりと描かれている要素なので、アニメでも地域に根付いた作品として打ち出したいという思いがありました。現地のコラボでは、各地にキャラクターの“のぼり”を掲出したり、スタンプラリーを行なったりというところから始めましたが、藤沢市のフィルムコミッションや江ノ電(江ノ島電鉄)の皆さんがすごく協力的で、とても有り難かったです。

TVアニメ第1期の放送後は、2019年に藤沢警察署の1日署長、2023年には小田急電鉄の片瀬江ノ島駅で1日駅長を、ヒロインの桜島麻衣を演じる瀬戸麻沙美さんが務めるという取り組みも行ないました。作品のなかでロケーションが重要な意味を持つからこそ実施できた施策で、ファンの方々とそれを共有できたこともうれしかったですね。

アニメ「青ブタ」江ノ島駅の様子

「青ブタ」は、難しい設定のすべてを理解できなくても楽しめる作品

──鴨志田一先生の原作を読んだ当初の感想について、詳しく教えてください。

すごく心を動かされる作品だなと感じました。学生時代に見た作品に影響を受けて、その後の進路が決まったという人は結構いると思うのですが、そういったレベルで人の感情を動かす作品。

登場人物たちの悩みや考え方に対して、非常に心を揺さぶられ、エンタテインメントというひと言では片付けられない感動があると自分は感じています。表現が難しいですけど、“思い出”に触れたような……そういった受け止め方ができる作品だなと思いました。

──登場人物たちに起こる“思春期症候群”という不可思議な現象にはSFの要素もあり、2019年に劇場公開した『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』(以下、ゆめみる少女)あたりでは特に複雑な設定も見られましたが、そういった部分についてはどう感じていましたか?

相対性理論や観測の理論といった部分にフォーカスして理解しようとすると、『ゆめみる少女』は確かに難しい話かもしれません。逆に、そういった難しい要素がしっかりとストーリーに落とし込まれているのが「青ブタ」の魅力で、SF好きの方にも存分に楽しんでもらえると思います。そのうえで、その設定のすべてを理解できなくても、キャラクターたちの気持ちを感じ、楽しめるというのが、「青ブタ」のさらに素晴らしいところじゃないかと思っています。

雪が降る中で話す梓川咲太と桜島麻衣

制作スタッフ、そして原作者と築き上げてきた信頼関係で作るアニメ

──アニメーションの制作現場について聞いていきます。CloverWorks制作のもと、増井壮一監督をはじめTVアニメ第1期から最新シリーズまで共通しているクリエイターの方も多いですが、メインスタッフが揃った当初の経緯はどのようなものだったのでしょうか。

TVアニメ第1期当時にCloverWorksのアニメーションプロデューサーだった木田和哉さんから、増井監督と、脚本の横谷昌宏さんとお仕事をしたいとご指名をもらったのが始まりだったと思います。そしてお声がけした皆さんに「青ブタ」の原作を読んでいただき、“面白いから、ぜひアニメ化を実現しよう”と思いが一致したところから作品の制作がスタートしました。

──増井監督と横谷さんのクリエイティブには、どういう印象を持ちましたか。

制作が始まって内側で見てきた印象のみになりますが、やはり原作を深くまで読み込まれて、誰よりも「青ブタ」を理解されているおふたりですね。

原作を読んで疑問を持ったことや、描き方のイメージについて鴨志田先生に確認する作業が本読みの段階で行なわれるのですが、理解度が高いゆえに、先生とのコミュニケーションもスムーズで周りの我々は安心して見ていられるというか、おふたりがいれば、この作品は絶対に良い作品になるなと感じていました。

──増井監督の画づくりの特徴はどのあたりに感じますか?

「青ブタ」においては、ワンカットの長さや人物のセリフの分量に対して、たっぷり間を使って描かれているなと思います。この作品においては、見ている側にセリフがしっかりと入ってくるような間と、空気感を大切にした作り方をされていて。原作は情報の密度が高いので、アニメの限られた尺にどう落とし込むか非常に難しい部分もあるなか、“ここではしっかり間を取る”というポイントを見極められていると感じますね。

梓川咲太を抱きしめる桜島麻衣

──横谷さんのシナリオやシリーズ構成に関してはどうでしたか?

まず、横谷さんが手がける脚本は、第1稿から完成形に近いと思っています。そのうえで、脚本に対して増井監督の“こうやってフィルムに落とし込みたい”というアプローチ、鴨志田先生の“この場面はこういう意図で描いていた”といったことのすり合わせが行なわれるのですが、ここでの作業が非常に高いレベルでできるのは、横谷さんが上げてくださる脚本のおかげですね。

──原作者の鴨志田先生は脚本の打ち合わせにも参加されているとのことですが、それ以外にはどのようなかたちで関わっているのでしょうか?

鴨志田先生はアフレコにも毎回立ち会っていただいて、キャストの皆さんの演技も見てくださっています。そのうえで、増井監督に全幅の信頼を寄せられているので、アニメ作品として監督が描きたい方向性を第一に考えていただきつつ、現場のディレクションで監督たちが悩んでいるときには、質問に答えてくださったりしています。

──原作者の方がアフレコに毎回立ち会われているというのは珍しいですよね?

そうですね、あまり多くはないことだと思います。鴨志田先生には、本当にいつもご苦労をおかけしています。こうした関係性が長く続けられているのが有り難く、鴨志田先生と増井さんをはじめとするアニメ制作チームとの信頼関係が築けている証なのかなと感じています。

笑顔で話すプロデューサー奈良

「青ブタ」らしい“空気感”を作り出すためには?

──演出や音響など、アニメーションをかたちづくっているさまざまな要素のなかで、“「青ブタ」らしさ”にはどんなポイントがあると感じますか?

作品としての“「青ブタ」らしさ”については増井監督や音響監督の岩浪美和さんが判断されることなので……自分が立ち会わせてもらうことが多い音響制作の現場を見た感想で言うと、あまり“派手派手しいもの”にはならないようにコントロールされていると感じます。

岩浪さんもそういった部分を大事にしてくださっていて。音楽を担当していただいているfox capture planの皆さんへのオーダーの際も、音数が多すぎず落ち着いたもの、かつ、セリフの流れのなかで心地良く響く音楽というものにこだわっていらっしゃるなと。そのあたりが作品の空気感にも反映されていると感じますね。

──確かに、シリーズを通して静かにピアノが鳴っているような場面が多くて、それが印象に残っています。美術に関してはどうですか?

美術に関わる部分では、作品の舞台となる場所の空気感は、そのまま伝えたいと思っています。高校生編は藤沢、大学生編では横浜に何度もロケハンに行って。アニメを見た方に、“あ、あそこだ!”とすぐにイメージしてもらえるような実在感を演出する作業は、しっかりと行なってもらっています。

──「青ブタ」のアニメ制作を進めていくなかで、奈良さんにとって特に印象に残った劇中のシーンや、共感したセリフを挙げるとしたらどこになりますか?

「いつか、優しい人になりたいです」「昨日の私よりも、今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいなと思います」という牧之原翔子のセリフは、「自分もそうなりたいけど、そうなれない」と思っているがゆえに、作品全体を通して僕自身に最も響いています。人に優しくありたいという翔子と、それに影響を受けて動き出す梓川咲太という主人公こそが、「青ブタ」の物語の出発点であり、この作品で最も共感できるポイントになっていると感じています。

腕を組んでポーズを取るプロデューサー奈良

後編では、最新作『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』の話題を中心に、大人気シリーズの新作放送直前のプロデューサーならではの心境を聞く。

後編に続く

文・取材:柳 雄大
撮影:荻原大志

©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project
©2024 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project

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