アニメ『青ブタ』プロデューサーが語る制作の舞台裏──ファンの心に深く響く“思い出にできる作品”を届けたい①
2025.07.26


7月5日より放送が開始されるTVアニメ『薫る花は凛と咲く』(以下、薫る花)。原作は、三香見サカが描く、少年マガジン公式アプリ『マガポケ』で連載中の、優しく暖かで、まっすぐな想いに心を掴まれる青春学園ストーリーだ。
後編では、アニメ制作の舞台裏と7月4日に渋谷で開催された『薫る花』のスペシャルイベントについて、アニプレックス(以下、ANX)のプロデューサー・堀祥子が語る。
目次

堀 祥子
Hori Shoko
アニプレックス
記事の前編はこちら:TVアニメ『薫る花は凛と咲く』プロデューサーインタビュー――アニメ化の動機は原作のなかにあふれる“優しい言葉”①
――『薫る花』では紬凛太郎役を中山祥徳さん、和栗薫子役を井上ほの花さんが務めています。原作のファンでもある堀さんにとって、声がつくことでキャラクターの印象は変わりましたか?
中山さんも井上さんも本当にキャラクターにぴったりの声で。声がつくことでキャラクターがさらに魅力的になったと感じました。原作を読んだあとにアニメを見ると、中山さんや井上さんの声が頭に浮かぶくらい、凛太郎や薫子を身近に感じることができると思います。
この作品で大事にしている“言葉”を起点とした“優しさ”や“強さ”が、声優さんたちの演技でさらに引き立ったなと。また、原作の表現に加えて、三香見サカ先生にご意見をいただきながら、アニメ用に言い回しを調整している部分もあります。この点は、原作と照らしながら楽しんでいただけるポイントだと思います。
――監督は『アイドルマスター SideM』(共同監督)、『明日ちゃんのセーラー服』を手がけた黒木美幸さんです。黒木監督をはじめ制作スタッフの皆さんは、どんな様子でしたか?
黒木監督は作品への理解力と集中力がずば抜けていて。ご自身では「考えすぎてしまうことがあるんです」とおっしゃっていましたが、作品と一体化したように、繊細な表現にもとことんこだわって映像化してくれています。
シリーズ構成の山崎(莉乃)さんは、そんな黒木監督の意図をしっかり汲んでシナリオに落とし込んでくれましたし、そのシナリオに対してCloverWorksのアニメーション制作チームの理解度も高く、すごく一体感が強い現場になったと思います。
あとは、今回、准監督を山口智さんが務められているのですが、山口さんは美少女の作画を得意とするアニメーターさんで。山口さんが描く絵コンテの女の子がとても可愛くて(笑)、自分の得意分野を作品にいかしてくださっているなと感じています。
――原作に登場する街はフィクションですが、ロケハンもかなり行なったと聞きました。
三香見先生にお話を伺って、作画するうえで参考にされた場所へ、私たちも取材に行きました。ご指摘の通り、原作漫画内では架空の地名ですし、現実の舞台をそのまま使わず、複数の場所を組み合わせていることもあるので、すべてに明確なモデルがあるわけではないんですが、日常の表現が大事な作品だからこそ、そこのリアリティを大切にしたいということで、ロケハンはかなりの数になりましたね。
――具体的にどんな場所を取材したのでしょうか?
校舎のモデルとしては、歴史ある木造の校舎が印象的な長野県松本深志高等学校に伺いました。“薫子たちはこんな雰囲気のなかで学校生活を送っているんだ”とイメージが膨らみましたね。
ほかには、茅ヶ崎の市立図書館も取材させていただいて。取材の申請をしたところ受けていただいた方が「原作……読んでます!」とおっしゃってくださって、非常にスムーズに取材をさせていただくことができました。
あとは、凛太郎の実家がケーキ屋さんで、そのほかにカフェのシーンもあるので、黒木監督がモデルになりそうなお店をいくつか挙げてくださって、そこも取材しています。また、ケーキを作る工程にも嘘がないようにしたいということで、東京製菓学校にご協力いただき、調理器具やケーキの作り方などもしっかり取材して映像にいかされています。
――TVアニメ『薫る花』では、原田萌喜さんによる劇伴もとても美しいのですが、第1話ではいきなり合唱から始まりますよね。この合唱曲はどのような経緯で生まれたのでしょうか。
シナリオ作業の段階から“合唱で始めたい”というイメージを、黒木監督が持たれていて。絵コンテ作業をされているときに具体的な曲の相談をいただきました。そこで弊社の音楽チームに相談したところ、原田さんが本作の合唱用に作った楽譜にあわせて、社内のスタッフで歌うことになったんです。各部門のスタッフに声をかけて、歌うパートを割り振って、社内にあるレコーディングブースで歌いました。ちなみに、私も全パート歌っています(笑)。
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――あの合唱は、ANXのスタッフが歌っていたんですね!
実は過去の作品でも、社内のスタッフが歌っている楽曲があったりするので、意外とみんな慣れたもので(笑)。声がけしたときも、「また、やるんだ」「いいよ」とふたつ返事で参加してくれました。社内のメンバーが積極的にサポートしてくれるのは、有り難い限りです。
――TVアニメ『薫る花』の作品展開で、堀さんが大切にしていることを教えてください。
作品の優しいイメージを崩さないよう、登場人物のなかで優劣をつけたり、誰かが悪者に見えたりするようなプロモーションや表現は避けてほしいということだけは、宣伝チームと事前に共有しました。原作でも大事なテーマになっている“比べない”を大切にして、“ささやかな幸せを届ける”をコンセプトに、作品の温かさを伝えていきたいですね。
あとはプロモーションの一環として、放送日前日の7月4日に渋谷モディで『薫る花を届けよう』というイベントを行ないました。
こちらでは、ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のサステナビリティチームが主導している『Rebloom Flower Project』という取り組みと協力して、音楽ライブやイベントで使用された祝い花で、まだキレイな状態のものを廃棄せずに回収して利活用します。具体的には、回収されたお花を配布したり、フォトスポットをお花で飾ったりして、アニメのプロモーションと絡めています。
ちなみに、『Rebloom Flower Project』の担当者の名前が神山“薫”さんといって、“花”だけではないつながりを見出し、ここでもご縁を感じました(笑)。TVアニメ『薫る花』はとことんご縁に恵まれた作品だなと思います。
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――改めて、TVアニメ『薫る花』の“ここを見てほしい”というところを教えてください。
繰り返しになってしまうのですが、やっぱり作品として“言葉”がとても大切だと思っているので、そこには注目していただきたいですね。キャラクターの会話やモノローグの言葉の選び方も本当に素晴らしいので、きっと多くの人の心に響いてくれると思います。
そして、素晴らしい言葉にキャラクターたちの表情とキャストのお芝居と音楽が加わることで、原作と同じように優しい世界が見ている人の心を温めてくれると思います。ぜひ、この作品のひと言、ひと言に注目して楽しんでください。
記事の前編はこちら:TVアニメ『薫る花は凛と咲く』プロデューサーインタビュー――アニメ化の動機は原作のなかにあふれる“優しい言葉”①
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
©三香見サカ・講談社/「薫る花は凛と咲く」製作委員会
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