TVアニメ『薫る花は凛と咲く』プロデューサーインタビュー――アニメ化の動機は原作のなかにあふれる“優しい言葉”②
2025.07.05


7月5日より放送が開始されるTVアニメ『薫る花は凛と咲く』(以下、薫る花)。原作は、三香見サカが描く、少年マガジン公式アプリ『マガポケ』で連載中の、優しく暖かで、まっすぐな想いに心を掴まれる青春学園ストーリーだ。
アニメ化にあたっては、監督・黒木美幸を筆頭に実力派スタッフが集結し、CloverWorksがアニメーション制作を担当。「原作にあふれている“優しい言葉”がアニメ化の原点だった」と語る、アニプレックス(以下、ANX)のプロデューサー・堀祥子に、本作の見どころや制作秘話を聞いた。
目次

堀 祥子
Hori Shoko
アニプレックス
2021年より週刊少年マガジン公式アプリ『マガポケ』で連載中のマンガ『薫る花は凛と咲く』のアニメ化作品。底辺の男子校と言われる千鳥高校に通う紬凛太郎と、超お嬢様学校の桔梗女子高校に通う和栗薫子は、凛太郎の実家が営むケーキ屋で出会い、ふとしたきっかけで距離を縮めていく――。まったく違う世界で生きてきたふたりと、そんなふたりを優しく見守る仲間たちが紡ぐ青春物語が、アニメーション作品となって新たな輝きを放つ。キャストには、中山祥徳(紬凛太郎)、井上ほの花(和栗薫子)、戸谷菊之介(宇佐美翔平)、内山昂輝(夏沢朔)、石橋陽彩(依田絢斗)、山根綺(保科昴)。制作はCloverWorks、監督は「明日ちゃんのセーラー服」の黒木美幸。准監督は山口智、シリーズ構成は山崎莉乃、シリーズ演出は都築遥、キャラクターデザイン・総作画監督は徳岡紘平、音楽は原田萌喜が担当する。
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――まずは、漫画『薫る花』がアニメ化に至った経緯を教えてください。
縁と運に恵まれた話なのですが、もともと私が原作の大ファンで。連載が始まった当初から三香見サカ先生が描く優しい世界観に引き込まれ、何とかアニメ化を実現したいと思って、上長の瓜生(恭子)さんに相談していたんです。
そんなところに、権利元である講談社の方から『薫る花』の映像化の話をご紹介いただいて。さらに、そのお話が元々制作を相談したいと考えていたCloverWorksにも届き、CloverWorksサイドも“ぜひ、『薫る花』のアニメ化を手がけたい”ということで、「3社の思いとタイミングがこれだけ一致しているなら、やるべきなんじゃないか」と瓜生さんからも後押しをもらって、アニメ化のプロジェクトが始動しました。
――瓜生さんの名前が挙がりましたが、そこにも縁があったと聞きました。
そうなんです。私は、前職の出版社で小説や漫画作品の二次使用などを扱うライツ業務を経験したのち、アニメの企画、制作に携わりたいと思うようになってANXに転職したんですが、実は前職の仕事を通じて瓜生さんと知り合っていまして。
アニメの企画、制作に携わりたいと思うようになったのも、ANXを志望したのも瓜生さんの仕事ぶりを見て、「瓜生さんと一緒に仕事がしたい」と思ったからなんです。
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――ということは瓜生さんからの引き合いがあってANXに?
いえ、そのためにこのご縁を利用するのは違うなと思ったので、誰にも言わずにソニーミュージックグループの中途採用に応募して、採用試験、面接を経て入社しました。
そうしてANXに入社してから、1本目か2本目に書いたアニメ化の企画書が『薫る花』だったんです。
――堀さんが『薫る花』をアニメ化したいと思ったポイントを具体的に教えてください。
私は原作漫画をずっと読んできて、“この作品をアニメ化できたら、絶対にステキな作品になる!”という確信めいたものがありました。
まず、最初のフックになったのは三香見サカ先生が描く絵のタッチですね。『薫る花』は『マガポケ』のオリジナル作品ですが、『マガポケ』自体が「週刊少年マガジン」の公式アプリなので“少年漫画誌を読んでいたら、突然少女漫画が現われたぞ”と思わせる絵柄が異彩を放っていました。
そのうえで読み進めてみると、描かれているのが凛太郎と薫子の単なる恋愛模様ではなくて。キャラクター同士が本気で向き合って、それぞれの優しさをぶつけあいながら、その関係性が発展して馴染んでいくというドラマが描かれています。
しかも、それぞれがぶつけあう優しさに、押しつけがましい感じがまったくなく、作品のなかで自然に伝わってくる。そこがすごく魅力的で、アニメでも伝わってほしいと思うポイントです。
もうひとつ、私が原作の大きな魅力だと感じているのが“言葉”ですね。キャラクターたちは、自分の思いをきちんと言葉にして伝えている。言葉の選び方や伝え方、受け取り方が、どれも素直で丁寧なんですよね。それが私には“強さ”のようにも感じられました。
『薫る花』は、年齢や性別、さらには国籍も関係なく、誰にでも届く“優しさ”と“強さ”があふれている作品だと思うので、この作品をアニメ化することで、もっと多くの人に『薫る花』の魅力を伝えていければと思っています。
――アニメの制作を進めるにあたって、権利元の講談社、アニメーション制作のCloverWorksの皆さんとは、それぞれどのようなコミュニケーションがありましたか?
先日、講談社で『マガポケ』を担当されている平岡(雄大)さんと、CloverWorksの辻(俊一)プロデューサーとお話をする機会があったのですが、それぞれこの作品から感じることは当然ながら少しずつ違っていましたね。
例えば、平岡さんは「原作者の三香見サカ先生にしか描けない作品」と話していて。「三香見先生の人柄や才能が、作品に強く反映されている」とおっしゃっていました。
辻さんは“これが現代の若者たちのリアルなんだろうな”と感じていたそうで。作品から「昭和生まれの自分たちとは感覚が違う。今の若者の文化として新しさを感じた」と話していたんです。
ただ、それぞれ作品に対する感想は違っていても、作品から伝わってくる温もりや優しさといった部分の認識は一致していたので、アニメ化の方向性については、最初から大きなすり合わせをしなくても、みんなが同じ方向を向いていました。制作を進めていくにあたり、ほとんどすれ違いはなかったと感じています。優しさがあふれる、すごく平和な現場でした(笑)。
――堀さん自身は、三香見サカ先生の作品の魅力をどのようにとらえていますか。
私が感じる三香見先生の作品の魅力は、やはり全体に一貫した優しさがあることですね。どのキャラクターもいい人で、それが嘘っぽかったり、わざとらしく感じることがないのが素晴らしいと思います。“言葉”や“行動”が素直に心に響いてくる。
そして、それは平岡さんがおっしゃっていたように三香見先生の人柄から来るものなんだろうなと感じていて、ご自身の優しさがきちんと定着しているからこそ、それが作品から伝わってくるんだと思います。
――『薫る花』は、底辺男子校・千鳥高校に通う紬凛太郎と、お嬢様女子高・桔梗女子高校に通う和栗薫子の恋愛ストーリーです。堀さんにとって、本作で描きたいキャラクターの姿とはどんなものでしたか?
実は、最初に原作を読み始めたころは、特に凛太郎に共感していたんです。高校生のときに薫子みたいな友達がいたら、もっと素敵な学生生活を送れたのかもしれないなって思ったりして(笑)。
そのうえで、薫子はこの作品におけるヒロインであり、同時にヒーローでもあるので、作品を読んでいて、彼女の存在にすごく救われたような気持ちになりました。
なので、ピュアな凛太郎の姿と、薫子のヒロイン性やヒーロー性をアニメでも丁寧に描くことができればいいなと考えていました。
――千鳥高校と桔梗女子高校は隣同士にありながら、毛嫌いし合っている。そこで展開される恋愛ストーリーは『ロミオとジュリエット』のような関係です。そして凛太郎たちは最初、桔梗女子高校の生徒たちから冷たい目で見られているものの、両者の距離感が徐々に変わっていく。そこが本作の面白いところのひとつですよね。
凛太郎や友人たちはそもそも不良じゃないんですよね。勉強が苦手なだけというか。そして作品のなかでは、何か特別な大事件が起こるわけではなく、普通の学生生活、何気ない1日のなかで起きるようなできごとが物語のベースになっていて、そのなかでの心の動きがとにかく丁寧に描かれている。だからこそ、キャラクターが魅力的で、言葉も伝わりやすい。本当に稀有な作品だと感じています。
後編では、キャストやクリエイター陣、7月4日に開催されたイベントについてについて語る。
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
©三香見サカ・講談社/「薫る花は凛と咲く」製作委員会
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