番外編:や団×マネージャーが振り返る『キングオブコント』ファイナリストに至る道
2025.09.05


ソニー・ミュージックアーティスツ(以下、SMA)所属の芸人たちをフィーチャーする「芸人の笑像」、その番外編。活躍目覚ましい芸人とマネージャーのクロストークで、現在に至るまでの道のりを語る。
今回は、2022年以降、『キングオブコント』決勝戦に連続出場しているや団と、もともと彼らの先輩芸人で、今はスタッフとして支えるマネージャーが登場。や団の活躍の裏には、全幅の信頼を寄せるマネージャーとのドラマがあった。
後編では、4度目の正直があるのか? 『キングオブコント 2025』にかけるそれぞれの想いを語った。
目次

や団
Yadan
(写真左より)ロングサイズ伊藤/1981年3月22日生まれ。神奈川県出身。血液型A型。身長183㎝。体重74㎏。趣味:スポーツ全般。本間キッド/1982年12月23日生まれ。埼玉県出身。血液型AB型。身長168㎝。体重60㎏。趣味:プロレス、格闘技観戦、Tシャツ収集。中嶋享/1982年6月23日生まれ。埼玉県出身。血液型A型。身長171㎝。60㎏。趣味:ラーメン屋巡り

鈴木俊樹
Suzuki Toshiki
ソニー・ミュージックアーティスツ
記事の前編はこちら:番外編:や団×マネージャーが振り返る『キングオブコント』初ファイナリストに至る道
――2022年に、鈴木さんがや団のマネージャーになってからは、『キングオブコント』でも3年連続でファイナリストになり、知名度もどんどん上がっていきました。
鈴木:本人たちも頑張りました。でも正直、2023年、2024年は、僕にとっては大打撃でしたね。
伊藤:いきなり怖いなぁ(苦笑)。
鈴木:やっぱり、マネージャーをやってて担当芸人が賞レースで優勝するなんて、一握りの人しか経験できないじゃないですか。下積みも長かったや団ですけど、今年はイケる! とネタを見て確信していたのに、行けなかったことがとてもショックで……。
それに、テレビには映らないですけど、決勝戦の舞台裏って、マネージャー同士も戦いのように思えるんですよ。
本間:ドラマですよね。
鈴木:普段は仲の良い他社のマネージャーさんとも本番が始まると会話もせず、みんなモニターを凝視して、負けた順からその前を去って行きます。どの事務所さんも芸人の人生がかかってますし、お互いにかける言葉も難しく……。
本間:ピリピリですね。
鈴木:そのピリピリ感も楽しいんですけどね。そういうなかで、や団には言いませんでしたけど、一昨年、去年と優勝できなかったことが、かなりショックではありました。や団の強みが、最高潮に達したと思っていたので。
――舞台に立つ側は、毎年、どういう思いで挑んでいるんですか? 3年連続の決勝進出だと、気持ちのうえでの変化もありますよね。
本間:うん、毎年ありますね。初めて決勝に行って優勝できなくて。次の年は「ここで決勝に行けなかったら人生終わる!」くらいの気持ちで挑まなきゃダメだし、「そこで残れれば大丈夫だから!」って言われて、ファイナルに行けてホッとしたけど、また優勝できなくて。次の年になると、それまで「2年連続で決勝行けたら芸人としては安泰だ!」って言ってた人たちが、「いや、もう3回連続行かないと仕事減るよ?」と言い始める(苦笑)。
だから、毎年決勝が近づくたびに「ここで残れないと終わるんだ!」と必死なんですよ。だけど、ずっとファイナリストが続いている、追われる者のプレッシャーみたいなものは、僕の中には意外となくて、毎年毎年、契約更新しなきゃ! とただただ必死なだけですね。それはもう、優勝しない限り続くんですよ。
――中嶋さん、伊藤さんはどうですか? そういう、もがく苦しみを味わっていることについて。
中嶋:ロングは意外に危機感をちゃんと持ってるから、本間にもいろいろ言ってますよね。
伊藤:言うっていうか……新ネタを増やそうよとか、早いうちから取り組もうよ、くらいなものですけど。結局、ネタを書くのは本間、僕と中嶋は下請け業者という立場なので、材料がなければ進められないんです。僕らがやいのやいの言ったところで本間の調子次第だから、本間が頑張ってくれているのは承知のうえで、それでも一応、声はかけておこう、くらいの感じです。
本間:うん。ネタもね、できるときはできるし、できないときはできない。そういうのは、ロングが入った2007年から、もう20年近くやってきてるわけだから、お互いわかってますよね。
中嶋:売れない時代を一緒に過ごしてきてますから、そこはもう把握済みというか。
伊藤:どっかに、いい意味での諦めみたいなものもないとね。
鈴木:そこに関しては、僕も責任を感じてるんです。3年連続で決勝に行っておきながら、もうワンステージ上らせてあげられていないから。僕はやす子のマネージャーも兼任しているので、やす子も忙しくさせていただいてるなかで、正直、や団の現場につけないこともあったりで……。
でも、やす子も大事だし、や団も大事。ほかにも若手芸人を見ていたりしますが、そのすべてが大事です。現場もあるけど営業も回りたい。身体ひとつでどこに時間と熱量を割いたらいいだろうと考えながら、やはり、や団をステップアップさせられていないという自分のパワー不足も自覚しますよね。
だから一度、平井(精一/SMAお笑い部門プロデューサー)さんにマネージャーの変更を申し出たことがあるんです。やす子とや団は芸人のタイプがまったく違うから、売り込み先も違う。もっとたくさん仕事をとってきたいのに、それができていないのが申し訳なくて、「や団と近い芸人やネタ番組を担当しているマネージャーと交代したほうがいいんじゃないか」と……。
本間:それをトシキさんから聞いて僕は、いやいや、待て待て! と。
伊藤:別に、ほかの人が嫌だというわけではないんですけども。
本間:そうそう、そういうことじゃないんですよ。トシキさんとはもともと先輩後輩としての信頼も関係性もあるし、俺らは一緒にやっていきたいんだ! と。忙しくて僕らの現場に来られなくても、別に昔からネタ番組に出るときも、ずっと自分たちだけでやって来てたんだから、気にしないでほしくて。
現場の立ち会いに来れなくても、それ以外のこともすごくよくやってくれているから、僕らも居心地がいいんですよ。もともと芸人だから、ネタの話もプライベートなことも、いろんな相談がしやすい。それが変わってしまうのは嫌だとダダをこねて、すぐに撤回してもらいました。
中嶋:考え方が柔軟なんですよね。僕らのこともいろんな視点で見て総合的に判断してくれるから、とてもやりやすいんです。
伊藤:確かにトシキさんは、誰よりもしゃべりやすい。何でも相談しやすいですね。
本間:昔から友達ですからね。だから僕も去年、1週間休みをもらってパリオリンピックを観に行けましたし、テレビの情報番組やスポーツ紙の現地取材のお仕事も入れてもらえました! トシキさんじゃなかったら、そんなワガママ言えなかったですよ!(笑)
――『キングオブコント』のファイナリストになってからは、バラエティ番組でや団を見ることが増えました。
本間:最初に決勝に出てからは仕事が格段に増えましたね。決勝進出2回目はそのまま現状維持で、去年、3回目でまたちょっと増えました。個人の仕事もここ最近、ロングが千鳥さんの『チャンスの時間』や『ロンドンハーツ』に出させてもらったり、中嶋や僕が『水曜日のダウンタウン』の企画に出られたり、“3年連続”で良かったなと、今また思い始めてるところです。
――“売れてきた”という手応えを感じることも多くなりましたか?
伊藤:それはちょっとありますね。自分らの仕事だけじゃなく、例えばアンガールズさんやケンコバ(ケンドーコバヤシ)さんとかが、僕らの話をラジオやYouTubeでしてくれて。直接的な仕事じゃないけど、そういうのはすごくありがたいですし、うれしいです。
本間:くりぃむしちゅーの有田(哲平)さんやケンコバさんがライブに呼んでくれたこともあって。気にしてもらっているんだなっていうのは実感しますね。『キングオブコント』の決勝に連続で行けたことで、僕らからも「コント面白いので観てください!」って、自信を持って言えるようになりましたし。
――生活のほうも変わりましたか?
本間:最初に決勝に行ってすぐにアルバイトを辞めて、なんとか戻らずには済んでますけど。
中嶋:僕もお金のことを気にせず、ラーメン食べてます(笑)。一応、バイトしていたラーメン店に今も籍は置いてあって、月に2~3回、どうしても人手が足りないときには行ってますね。『水曜日のダウンタウン』のドッキリ企画でMCをやらせてもらったときも、収録後にラーメン屋で働いてました(笑)。
鈴木:本間さんなんかは、最近、脚本の仕事もね。
本間:あ、そうですね。書かせてもらう仕事をちょこちょこいただいてます。
鈴木:ネタ担当としてはありがたいことなので、演者との“二足のわらじ”スタイルとか?
本間:だとしたら、実は本間が密かに作家やってます! というよりは、お笑いを前面に出して、や団の本間が書いてます! のスタンスがいいですね。基本は演者でいきたいし、演者だけでやっていけるなら、ほかに書かなくても僕はいいので。
伊藤:僕は……若干、お給料のベースアップがあったくらいで、前に比べたらちょっといいですけど……。トリオだと3等分になるので……(笑)。僕は、空いてる時間があれば働いてお金が欲しいタイプなので、昔からやっている水道メーターの検針は、少ないながらもまだ続けてます。
でもさすがに、バイト先に休みの連絡をちょいちょい入れるのが、気が引けるじゃないですか。なので、違うバイトに変えたいんですけどね(苦笑)。
鈴木:ロングなんかは、身長も高いし、顔も悪くないかなと。コントで培った演技力もあるから、本当はお芝居系の仕事も入れられたらな……と思うけど、お芝居ってスケジュールをかなり取られてしまうので、や団の活動に影響が出ちゃうかな? と思ったり。
なので単発のオーディションなどの話があったときは、ロングに振るようにしてるんです。おかげで最近だと、LIXILさんの窓ドアリフォームのWeb CMに出させてもらえましたからね! 役者・ロングサイズ伊藤ですね!
本間:いや、でも! 僕は一撃、ロングには大河ドラマとか出てほしいですけどね! 例え1年間、や団の活動ができなくなっても、俺はそれはアリ!
伊藤:いや、大河だったらね!(笑)
本間:そこからハリウッド映画に抜擢とかさ、面白いじゃない。ハリウッド俳優が『キングオブコント』出るんだよ?(笑) めちゃめちゃ箔がつく役者仕事ができるんだったら、1年間3人で活動できなくてもいいかなぁ。
伊藤:『地面師たち』みたいな、Netflixのドラマとかね。Netflixもオーディションで決まるっていうから。
中嶋:死体役とかね(笑)。
本間:それでも全然いいよ、話題になるなら(笑)。
――中嶋さんも『ラーメンWalker』の“百麺人”に選ばれ、最近はラーメン特集の番組にもよく出ています。
中嶋:いや~、どうなんですかね。大河俳優やハリウッド俳優のインパクトと比べると、もっと違う武器も必要ですよね(笑)。
本間:とにかく今は、何でもやりたい時期で。いつもと違うことをやる3人が集合して、また新しいコントをやりたいんですよね。
鈴木:それで思うんですけど、確かにや団はコントを武器にしていますけど、ヘンに“コント師”のイメージだけを先行させたくないというのはありますね。全員がパンツ一丁で体も張れますし、個々が持っているマニアックな部分とか、個性も見ていただきたいです。
伊藤:そうなんですよね。僕らの本質は、いわゆる“コント師”じゃない気がする。
本間:僕は、特殊な3人組になりたいんですよね(笑)。だからトシキさんには、この3人のキャラをいかせるお笑い以外のオーディションがあったら、どんどん突っ込んでってほしいんですよ。
そこで受からなくても、エピソードトークのネタにできるじゃないですか。今、月に1回、ひとりでトークライブをやってるんですけど、今月、なんにも新しいこと起こってねーな! ってこともあるから、新しいことは常にやっていきたいです。
伊藤:そうすれば、3人での平場にも強くなれそうだし。
鈴木:今年、『アメトーーク!』の“賞レースで結果出してるのに……もっとチャンス欲しい芸人”の回に出させていただきましたけど、まだまだ3人での平場のトークは……。なのでそこも今後の課題ですかね。
伊藤:佐久間(宣行)さんにもハマリたいんですけどね~(苦笑)。
本間・中嶋:あぁ~……。
鈴木:どんな場にも出て行けるチャンスをできるだけ作って、一緒に頑張っていきたいですね。
――新しいことという意味では、今年は6 月末から 7 月末にかけて、初めての東名阪 3 都市単独ライブ『ザ・ファースト・ワールド・ツアー』に挑戦しました。東京公演は追加公演も含めてチケットがソールドアウトし、大好評でしたね。
本間:ここ数年、6月、7月あたりに東京で単独ライブをやって『キングオブコント』に備えるというルーティーンを繰り返してきたんで、環境を広げたいっていうのがあったんです。そうしたら絶対、ネタの根本も作りやすくなるので。
毎年まったく同じだと、やっててもなんか苦しくなっちゃうんですよ(苦笑)。だから今年はすごいワクワクしましたし、ネタも狂気的なものだけじゃ飽きられちゃうんで、バラエティに富んだ内容を目指しました。
中嶋:僕の友達からは、去年のあのネタのほうが良かった的なリアルなトーンのダメ出しも受けましたけど(苦笑)。
本間:ネタって面白いことに、やっぱり変化していくんですよね。賞レースでやろうと思うネタは、何度も舞台にかけることで、ほかのネタに比べてウケ方もちょっと違う風になったりしますし、それまでイマイチだなと思ってても、ひとボケ増えただけで、奇跡的に輝き出すこともある。
でもまぁ、今回のツアーでいろいろ見えてきたものもあるので、それは賞レースだけでなく、今後にいかしていきたいなと。で、もし来年も単独をやるなら、今度は例えば九州とか東北とか、行くエリアも広げたいですし、ネタのほうもテレビに乗せる乗せないはあまり考えず、モニターをもっと使うとか、今回のホール会場のように、広いところでしかできないことにも挑戦していきたいなと思ってます。
――そして今年も『キングオブコント』の予選が始まっていますが、昨年ファイナリストのや団は準々決勝からの参加で、順調に準決勝にコマを進めました。
本間:どうなんだろうなぁ……無事、勝ち上がっていければいいんですけど。もちろん今年もファイナル出場を目指して頑張ってるんですけど! まぁこればっかりは、やってみないとわからないですからねぇ(苦笑)。でも、気持ちはもちろん優勝! なので!
――そんなチームの一員として、『キングオブコント』を戦っているや団に、鈴木さんからひとことお願いします。
伊藤:ヤバい、泣いちゃうなぁ……(笑)。
本間:あはは!
中嶋:(ニヤニヤしながら)ふふふっ。
鈴木:ずっと3人で肩を組んでやってきて、そこに僕も混ぜてもらえているのは、うれしいことなんです。
2022年にSMAのマネージャーとして復帰して名刺を作りましたけど、裏にはSMAに所属する芸人の名前が書いてあるんですね。関係者の方々と名刺交換するとき、2022年より今のほうが、「あぁ、や団さん!」という反応をいただくことが、すごく多くなったんですよ。その勢いを絶やさないよう、僕もこれからさらに頑張りたい。3人が大変なのもわかっていますけど、そのまま変わらず突っ走ってほしいし、僕も肩を組んで一緒に走っていけたらなと思います。
伊藤・本間・中嶋:4人で! よろしくお願いします!
記事の前編はこちら:番外編:や団×マネージャーが振り返る『キングオブコント』初ファイナリストに至る道
文・取材:阿部美香
撮影:遠藤勇司

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