徹底解説! アニメ『WIND BREAKER』キャラソンプロジェクト【S-MASH UP】――“対話するように響かせるキャラソン”の作り方①
2025.11.26


11月7日に日本での公開がスタートする、中国発の長編アニメーション映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』(以下、『羅小黒戦記2』)。第1作に続き、アニプレックス(以下、ANX)が、日本でのローカライズを手がけている。
後編では、キャスティングやアフレコ秘話を中心に、担当プロデューサーが語る。
目次

孫宗楨
Son Sotei
アニプレックス
『羅小黒戦記』は中国のアニメ監督・木頭(MTJJ)及び寒木春華(HMCH)スタジオが制作したアニメ作品。2011年より動画サイトで公開されたWebアニメシリーズを経て、2019年に劇場版を制作。同年9月からは小規模ながら日本国内でも中国語音声・日本語字幕版が公開され、アニメファンやクリエイターを中心に話題を呼んだ。その後、2020年には日本語吹替版『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』をANXの制作、配給により全国公開。コロナ禍の影響もありながら、異例の半年間というロングラン上映となった。
続編となる日本語吹替版&字幕版『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』は、配給に加えて、日本語吹替版・字幕版の制作をANXが担当し、2025年11月7日(金)より全国公開。黒猫の妖精・シャオヘイを花澤香菜、人間でありながら最強の執行人・ムゲンを宮野真守が演じるなど実力派キャストが再び集結。愛おしいキャラクターたちに、疾走感のあるアクション、ストーリーが一体となって、さらなる冒険ファンタジーを繰り広げる。
記事の前編はこちら:映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』担当プロデューサーに聞く、6年の道のりと制作の舞台裏
――『羅小黒戦記2』では、シャオヘイの姉弟子であるルーイエが新たに登場します。ルーイエは、今作において特に存在感のあるキャラクターで、キャストを悠木碧さんが担当していますね。
今年の3月~4月ごろにもろもろ設定資料をいただいたときに、ルーイエのキャスティングをどうするかはかなり悩みました。そういったなかで、ANX社内の制作チームで検討した結果、悠木さんにオファーさせていただくことになりました。
――悠木碧さんは、かわいらしいキャラクターからシリアスなキャラクターまで、演技の幅が広くさまざまな役柄を演じられているのが印象的ですよね。
そうですね。実は、アフレコで演技をしていただいたときの第一声は、ルーイエの設定がボーイッシュだったこともあって、もっとトーンが低い“お兄さん”っぽい感じだったんです。そこで音響監督の岩浪美和さんとも相談させていただいたうえで、悠木さんに調整をお願いして、今のルーイエのトーンになりました。
――そういったアフレコ現場での調整に関して、中国語の作品を日本語吹替にするにあたっては、どのように工夫していましたか?
アフレコのときには、僕のほうで原語の音声を確認しながら“こういうニュアンスのセリフなのですが、日本語にするとセリフの尺が足りなくなるので、どこを優先しましょうか?”と確認するようなやり取りが何回かありました。
翻訳の初稿が上がってくると、ANXでチェックをし、音響監督の岩浪さんがチェックして、そこである程度直しも入れつつ、アフレコに臨むんです。岩浪さんからは“そういう意味だったら、こういうふうに変えましょうか”と提案していただきながら進めました。
――1作目のときも、翻訳内容とセリフの尺の兼ね合いから、言葉としてどこを切って、どこを足すのかといった非常に細かい調整があったそうですね。『羅小黒戦記2』でも、この点は同様でしたか?
そうですね。今回も台本チェックの時点で、原作元の担当者に“このセリフはどういった意味ですか?”“このような解釈で合っていますか?”と確認するようにしていました。
そのうえで、『羅小黒戦記2』は1作目と比べてストーリーが複雑になっているので、吹替版の制作はなかなか難しかったです。中国語は、ひとつの短い言葉のなかに3つ4つのニュアンスが入っていることがあるので、それらを全部拾い切るのが大変でしたね。
でも、1作目から引き続いて翻訳を引き受けてくださった片山寛子さんを含め、スタッフの皆さんは素晴らしい仕事をしてくださいましたし、日本語としてなるべくわかりやすいものを心がけましたので、楽しんでいただけるものになったのではないかと思います。
――セリフの意味合いの解釈などで、『羅小黒戦記2』で特に難しいと感じたシーンはどこですか?
どちらかというと、キャラクターの関係性に関する内容が多かったですね。作中で特に説明はされず、パッと出てくるキャラクターにもかかわらず、結構セリフを喋っていたりする……ということが本作では多くて。キャラクターの設定表はもらっていたので、顔と名前は一致するものの“このキャラは一体誰なんだろう?”となってしまうんです。
例えば、そういったキャラが、主人公格のムゲンに話しかけるとき、ムゲンとの関係性がわからないと、言葉遣いをどうするべきかがわからない。ましてや、それが人間ではなく妖精だと事情も複雑になりますので、そういったところの細かな確認は慎重に行なっていきました。
――妖精たちが転送門の前に集まるシーンはキャラクターが非常に多かったですね。
あそこに出てくるキャラクターには、細かい設定までなかったりするキャラも多いんです。となれば、“このセリフのこのキャラって、きっと重要な人物なんですよね?”“どれだけすごい人なんですか?”というような確認をして。そんなにすごいんだったら……とキャスティングを考えたりしました。
例えば、上記のシーンに出てくる妖精(ハオク)は、セリフはそこまで多くないのですが、登場したときの印象の強さもあって、実力のある方にぜひお願いしたいということになって。あのキャラクターの声は日野聡さんにお願いしています。
――確かにあの妖精は短尺の登場でしたが、声のカッコ良さとともに印象に残りました。
1作目で言うと、テンフー役の杉田智和さんもそうでしたね。“お肉”と“お酒”しかセリフがないという。あまりにも贅沢なキャスティングだったので、音響監督の岩浪さんには“本当にいいんですか!?”と驚かれましたが(笑)。
――『羅小黒戦記2』の作中で特にお気に入りのシーン、おすすめのシーンを教えてください。
たくさんあるのですが、あまり言うとネタバレになってしまうので、ひとつだけ挙げると、中盤の飛行機のアクションシーンですね。このシーンでは当初、制御不能になった飛行機が落ちていくのを見せるだけの予定だったところ、木頭(MTJJ)監督が「ママー! おトイレ行きたいー!」という子どものセリフをつけようと提案したそうなんです。
飛行機の乗客にとっては絶体絶命の状況で、本当だったらトイレだなんて言っている場合じゃない、というミスマッチになっていて。さらに言うと、ルーイエが乗客たちを助けるために飛行機をバラバラにしてしまったあとのセリフなので、行きたくてもトイレはもう機内にないんですよ(笑)。そういう、随所に入るちょっとしたユーモアも見どころだと思います。
――緊迫したシーンが多い作品だけに、そういったコミカルなところを感じさせるシーンがほど良いアクセントになっています。吹替版の制作にあたっては木頭(MTJJ)監督と接する機会も少なくなかったのではないかと思いますが、監督は孫さんから見てどんな人柄の方だと感じましたか?
音響監督の岩浪さんの言葉を借りるなら、めちゃくちゃ“職人”ですね。監督は、作品のなかで表わしたいことや、伝えたい中心的なメッセージについて、あまりご自分で解説をしません。完成した映像を見てもらって、お客さんが感じたことが正解、ともおっしゃっていましたね。
――木頭(MTJJ)監督ご自身が代表を務める寒木春華スタジオならではの特色としては、どのような部分が挙げられると思いますか?
“内製化”にすごくこだわりを持たれている、という印象があります。それは制作を外注することを嫌っているという意味ではなく、単純に“自分たちでいいものを作ろう”という精神が根づいていて。『羅小黒戦記』1作目もほとんど寒木春華スタジオの内製で作られたものだったと伺っているので、すごいところだなと思います。
――今回の日本語吹替版は『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』というタイトルになりましたが、“ぼくらが望む未来”というサブタイトルをつけることにした経緯や、意味合いについて教えてください。
1作目はシャオヘイ中心のストーリーだったので、サブタイトルも“ぼくが選ぶ未来”という一人称でした。それに対し、本作のシャオヘイは自分の意思を持つようになったので、そこは立てつつも、妖精たち全体が人間とどう関わっていくか、というテーマのお話になったので、“妖精たちのこれから”という部分も念頭に置きながら、主語を“ぼくら”に変えようということになりました。
“ぼく”と“未来”は踏襲したうえで、その間の言葉をどうつなぐかというのを話し合った結果、ANXのスタッフから、“選ぶ”じゃなくて“望む”はどうか? というアイデアが出て、ハマりが良かったこともあり、こちらに決定しました。
――ちなみに今回は映画の日本公開と同時期にTVアニメシリーズの放送も始まりましたが、こちらはサブタイトルのない『羅小黒戦記』となっています。
今回のTVアニメシリーズとして構成しているものはもともと、映画第1作以前に公開されていたWebアニメで、『羅小黒戦記』シリーズの原点になったお話です。物語の時系列としては『羅小黒戦記2』よりもさらに未来になるのですが、あれが最初に作られた、オリジナルの『羅小黒戦記』ということになります。
――オリジナルシリーズの吹替版もTVで見てもらいつつ、新作映画をぜひ見に来てほしいということですね。
そうですね。ただ、TVアニメシリーズの企画自体は2021年から動いていたものなので、必ずしも映画第2作とそのプロモーションありきというわけではなくて。『羅小黒戦記』の原点となった作品に触れていただいて、そこから映画に入ってもらえたらなおうれしいですね。TVシリーズでは、原作のショートアニメ3~4話分をTVアニメ1話ずつとして束ねた構成になっているので、初めてご覧になる方にも楽しんでいただけると思います。
――孫さんは『羅小黒戦記』をきっかけに現在の制作担当になってから、『万聖街(バンセイガイ)』『TO BE HERO X』など、中国発のさまざまな作品に携わっていますが、それらの制作を経て自身のなかで変化したことや、得られたと思うことはありますか?
勉強させてもらったことはたくさんあります。特に『羅小黒戦記』のような吹替作品では宣伝業務に絡むことも多いので、宣伝まわりの知見は、先輩方のやり方を見ながら色んなことを教えてもらいました。
――今後、中国や海外のアニメを日本に届けていくにあたり、孫さんが目標にしていることを教えてください。
そこに面白い作品があるなら、その作品をお客さんに届けるためのお仕事ができたらという思いでいます。それが海外作品のローカライズであれ、オリジナルの作品であれ、制作に参加させてもらえること自体が有り難いお話なので、今はそこにひとつずつ黙々と向き合いながら、より多くの作品に携わっていけたらなと思います。
記事の前編はこちら:映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』担当プロデューサーに聞く、6年の道のりと制作の舞台裏
文・取材:柳 雄大
撮影:冨田 望
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