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アニメづくりへの情熱

アニメ『ガンバレ!中村くん!!』はなぜ心をつかむのか──音楽起点で読み解く企画背景と制作の挑戦①

2026.05.06

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2026年4月から放送、配信中のアニメ『ガンバレ!中村くん!!』は、内気な男子高校生・中村男久斗のピュアな片想いを描いたラブコメディ。クラスメイトの広瀬愛貴と仲良くなりたいけれど、空回りしてばかりの不器用な中村くんの姿が共感を呼び、幅広い層から支持を集めている、春泥による人気漫画が原作だ。

さらに、どこか懐かしさを感じさせる作品世界に加え、岡村靖幸と中島健人によるオープニングテーマ、毎話異なるエンディングテーマと映像演出も注目を集めている本作。アニメの企画立ち上げの背景、楽曲に関する取り組みについて、アニプレックス(以下、ANX)、主題歌のコーディネーションを担当するソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)、楽曲制作に携わるソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)レガシープラスの各担当者に話を聞いた。

  • 片岡プロフィール写真

    片岡裕貴

    Kataoka Yuki

    アニプレックス

  • 田坂プロフィール写真

    田坂健太

    Tasaka Kenta

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 福田プロフィール写真

    福田良昭

    Fukuda Yoshiaki

    ソニー・ミュージックレーベルズ

記事の後編はこちら:アニメ『ガンバレ!中村くん!!』はなぜ心をつかむのか──音楽起点で読み解く企画背景と制作の挑戦②

アニメ『ガンバレ!中村くん!!』とは?

『ガンバレ!中村くん!!』キービジュアル

春泥氏による王道BLコメディ漫画を原作としたアニメーション作品。主人公は、どこにでもいる内気な男子高校生、中村男久斗。友達も少なく目立たない存在だが、クラスメイトの広瀬愛貴にひと目惚れして以来、彼の毎日はドキドキと妄想で満たされていく。広瀬と仲良くなりたい一心で空回りを繰り返し、ときに暴走してしまう中村くんの“片想いをめぐる妄想と奮闘”を、1980~1990年代のタッチでコミカルに描写。不器用でままならない恋心を軸に、青春のもどかしさや優しさを丁寧にすくい取った物語が、多くの共感を呼んでいる。

海外でも支持される、中村くんのピュアな恋心

──アニメ『ガンバレ!中村くん!!』における皆さんの役割を教えてください。

片岡:私は、本作のプロデューサーとして、アニメの企画立案から製作委員会の組成、ビジネス設計、そして完成した本編の納品までを担当しています。作品としての魅力を最大化しつつ、アニメを事業として成立させることが役割ですね。

身振り手振りで話す片岡

田坂:私は主題歌を中心とした音楽周りのコーディネーションを担当しています。レコード会社とアニメ製作委員会の間に立ち、双方の意見、意図を聞きながら、オープニングテーマの楽曲制作、エンディング企画の実現、プロモーションなどタイアップにまつわる取り組みのサポートを行ないました。

福田:僕は、ソニーミュージックグループの豊富な音楽カタログを活用するSMLのレガシープラスに在籍しています。今回は、主題歌とエンディングの音楽に関する調整を担当しました。

岡村靖幸さん書き下ろし、中島健人さんとのコラボレーションによる主題歌「瞬発的に恋しよう」では、アーティストと向き合いつつ、関係各所との調整を行ない、エンディングでは管理楽曲を中心に、アニメと音楽のより良い関係性を検討しました。

『ガンバレ!中村くん!!』オープニングカット

──『ガンバレ!中村くん!!』のアニメ化は、どのような経緯で企画が立ち上がったのでしょうか。

片岡:北米を拠点とする配信プラットフォームであるCrunchyrollが、本作に注目していて、“映像化したい原作候補”の上位に『ガンバレ!中村くん!!』が挙がっていたことがきっかけでした。

春泥先生の原作は恋が成就した“その後”ではなく、恋が始まるまでの気持ちを丁寧に描いている点がとてもユニークで海外でも支持が高く、ファンアートがネットミームのように広がっていました。

ちょうどそのころ、制作スタジオのドライブの皆さんと新作アニメについて相談するなかで、“ぜひやりたい”と意見が一致し、企画が具体化していきました。

照れる中村

手を振る広瀬

昭和、平成の楽曲で彩る、原作のエバーグリーンな魅力

──本作では、毎話エンディングテーマと映像が変わります。さらに使用している楽曲は懐かしい名曲ばかりですが、このアイデアはどのように生まれたのでしょうか。

片岡:まず前提として、今回のアニメ化でできるだけ多くのファンの皆さんに「ガンバレ!中村くん!!」の世界観を楽しんでもらいたい、という思いがありました。毎回エンディングを変えることで、“今回はどんな曲だろう”と話題にしてもらいやすくなるのではないかというのと、継続的に見てもらうきっかけにもなると考えたんです。

もうひとつ大きかったのが、原作者である春泥先生の画風です。春泥先生の絵のタッチは、どこか懐かしさがありつつも現代的で、いわゆるエバーグリーンな魅力があります。その空気感には、アーティストに新曲を書き下ろしてもらうよりも、既に時代を越えて親しまれてきた楽曲を取り入れるほうが、自然と寄り添えるのではないかと感じました。

さらに、2021年に発売されたドラマCD『ガンバレ!中村くん!!』のジャケットには、中村くんがラジカセを持っているイラストが描かれています。公式設定ではないのですが、そのビジュアルから“もし、中村くんが音楽を聴くとしたら”とイメージが膨らみました。音楽をフックにすることで、これまでこうしたジャンルに馴染みのなかった方にも、本作の魅力に気づいてもらえる可能性がある。そんな期待も込めています。

田坂:旧譜を軸にエンディングを毎話変えながら構成するというのは、過去にあまり例がなく、作品の空気感にも合っていると感じました。

もちろん、毎回楽曲が変わることで印象が薄まるリスクはあります。ただ、この作品はコンセプトが非常に明確なので、“次はどんな曲が来るのだろう”と、むしろ楽しみにしてもらえるのではないかと。さらに、使用楽曲を束ねてパッケージ化するなど、音楽企画としての広がりも見込めそうだと感じました。

机に座る中村くん

──実際にエンディングで使用する楽曲は、どのように選定したのでしょうか。

田坂:ジャンルを絞る案もありましたが、最終的には幅を持たせる判断をしました。企画が動き始めた2022~2023年ごろは、日本のシティポップが海外で再注目されていた時期でもありましたし、原作自体も海外人気が高い。この作品をきっかけに、まだ海外で知られていない日本の旧譜にも触れてもらえたら面白いと思ったからです。

片岡:最終的にはジャンルを限定せず、“懐かしい”“良い曲だな”と直感的に感じてもらえるような、多様な選曲を目指すことにしました。結果として、1980~1990年代、昭和から平成初期にかけての楽曲が中心になっています。

今の若い世代は新旧を区別せず音楽を楽しんでいますし、勝手な想像ですが、中村くん自身も、古い曲が似合いそうだなと(笑)。本人の好みなのか、はたまた偶然ラジオから流れている楽曲なのか、あえて細かな設定は設けず、想像の余地を残しました。

TVアニメ『ガンバレ!中村くん!!』第1回エンディングテーマ曲:村下孝蔵「初恋」

──エンディングに使用されている楽曲は、ソニーミュージックグループのカタログが中心なのでしょうか。

片岡:結果的にソニーミュージックの旧譜が多くなっていますが、限定しているわけではありません。例えば「フライディ・チャイナタウン」のように、他社で管理されている楽曲でも、ストーリー上の必然性があれば積極的に採用しました。

田坂:時代感やジャンルのバランスを考えながら、その楽曲が、中村くんの感情の流れに自然に寄り添うかどうかを大切にしましたよね。

そのうえで、旧譜は楽曲ごとに権利関係や条件が異なるため、使用可否や音源の扱いも含めて総合的に判断する必要があります。レガシープラスのサポートを受けながら、何度も候補を見直して最終的なラインナップを固めていきました。

福田:僕のところに楽曲の候補リストが届いたのは、2024年3月ごろでした。担当アーティストの楽曲について、OK、NGの判断をしつつ、片岡さん、田坂さんとやりとりを重ねていきました。

個人的には、自分がかつてプロモーションの現場にいたころにヒットした楽曲も多く、感慨深かったですね。それらの曲が、アニメというコンテンツ軸で再び光を当てられ、海外にも広がっていく。もしかしたら、この作品がきっかけで楽曲を知った人が口ずさんだり、誰かに薦めてくれたりするかもしれない。当時は想像もしていなかったことですし、すごくうれしいことだと思っています。

笑顔で話す福田

スタッフ一丸となり、楽しみながら制作したエンディングアニメ

──エンディングは楽曲だけでなく、アニメーションもそれぞれに合ったものを制作しています。制作にあたって、梅木葵監督をはじめとするスタッフの皆さんとは、どのようなやり取りを重ねていったのでしょうか。

片岡:まず、レガシープラスと田坂さんをはじめとする音楽チーム、そしてANXで検討した楽曲リストを、アニメの制作現場に共有しました。そこから梅木監督やエンディングディレクターの畳谷哲也さんなど、メインスタッフの皆さんと一緒に具体的な検討を進めていきました。

アニメのエンディングは基本的には89秒と尺が決まっているので、そのなかに楽曲がきちんと収まるかどうかは、とても重要なポイントでした。ただ、こちらの都合で自由に楽曲を編集するわけにはいきません。

そこで事前に社内の制作チームが、楽曲のどのパートを使うのが最も効果的かを一曲ずつ検証したうえで、アニメ制作スタジオのドライブに持ち込み、最終的には監督やスタッフの皆さんが編集時にタイミングなどを調整してくださいました。“中村くんの感情をどう受け止めて、視聴後にどんな余韻を残せるか”というところを軸に、選曲していきましたね。

田坂:楽曲に合わせてエンディングアニメのトーンも毎回変わるので、音と映像の関係性はかなり緻密に設計されています。どこか肩の力が抜けていて、それでいて心地良い。YouTubeで一時期人気を集めたローファイ・ヒップホップにも通じるような、リラックスした感覚を味わってもらえると思います。

真剣な表情で話す田坂

──完成した映像からは、制作スタッフの皆さんが楽しみながら取り組んでいる様子が伝わってきますね。

片岡:梅木監督はご自身では“音楽はそこまで詳しくない”とおっしゃっていましたが、その分、歌詞やメロディがシーンの感情にきちんと合っているかどうかを、とても丁寧にチェックしてくださいます。

逆に、エンディングディレクターの畳谷さんは、よりカルチャー的な視点から、“ここでこの曲が流れたら視聴者はうれしいよね”“この選曲は意外性があって驚かれるかも”といった演出面を担ってくださいました。

制作スタジオのドライブの皆さんも、とても手間のかかる施策にも関わらず、アニメーションプロデューサーの宮腰(徹)さんや吉川(貴哉)さんが中心になって、毎話エンディングを変えるという挑戦を前向きに楽しんでくださったのもとても有り難かったです。

田坂:楽曲の選び方にも軸があります。ひとつは、聴いた瞬間にスッと楽しめる、わかりやすい曲。もうひとつは、作品をじっくり、細部まで鑑賞したうえで初めて意味が立ち上がる、少しハイコンテクストな選曲です。

レガシープラスの皆さんのアイデアを軸に、アニメチームの意見とすり合わせながら進めていくかたちになりました。その結果、初めて見る人にも入りやすく、知れば知るほど奥行きが感じられる。そんなエンディング構成になったと思います。

テーブルに足をのせて歌う中村くん

後編に続く

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

©Nakamura-kun!! Animation Project

関連サイト

アニメ『ガンバレ!中村くん!!』オフィシャルサイト
https://nakamura-kun.love/(新しいタブを開く)
 
アニプレックスコーポレートサイト
https://www.aniplex.co.jp/(新しいタブを開く)

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