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ドラマーからラッパーへ。異色の転身を遂げたあっこゴリラが爆誕するまで<後編>【連載第7回】

2018.8.1

Interview

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あっこゴリラ

Artist/Talent

今後さらなる注目を集めるであろう、気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「Artist Profile(アーティストプロファイル)」。ドラマーからラッパーへの異色の転身を果たしたあっこゴリラを追う。

インタビュー後編では、あっこゴリラとしてのソロ活動からHAPPY BIRTHDAYの解散、そして今後について語ってもらった。

ラッパーとしてのソロ活動のきっかけ

──ラップを表現方法としたのは、自分の感情をぶつけるのに最適だったからですか。

あっこゴリラ:私、愚痴れなかったんですよ。ドラムは下手だし、愚痴っちゃいけない、愚痴るレベルの人じゃない、って。思い込み過ぎだろ! って感じなんですけど、みんなが言うことを過剰に受け取っていたんです。こんなふうに言われて、こう思っちゃったとか、言っていい立場じゃないでしょ、ありがたく音楽やらせてもらってるんだからとか。思い詰めてしまったので、まずは愚痴るところから始めてみようと思ったんです。

とりあえずリズムに乗って愚痴る。リズムに乗ると、「あ、なんか楽しい」と思えるようになっていって、悪い感じがしなかったんですよね。ウザいんだよね~とか、ぐちぐち言ってると嫌な感じがして自分も許せなくなるんですけど、リズムに乗って愚痴ると何か許せちゃって。

あっこゴリラ

──そのラップを人前でもやってみようと思ったきっかけは?

あっこゴリラ:ボーカルが喉を壊してしまって、でも活動を止めないために事務所の社長さんから、ソロでライブやってみれば? って言われたのがきっかけです。マジすか? じゃあやってみよ! ぐらいの軽い気持ちでOKして。そのために、人前に出せるような曲を書かなきゃいけなくなって、それがきっかけでした。

誰かのためにやったことになるんですが、結果自分のためになった。矛盾してるようなんですけど、何でもやれる人なんですよ、私。やったら? って言われて、自分なんか……とか言いながら誰かのためになるなと思った瞬間に、何でもやれちゃうというか。自分で言うのも何ですがけっこうハートが強い。恥じらいとかなく、バーってできちゃうタイプなんです。

──そのときはどんな曲を作ったんですか。

あっこゴリラ:何を書いていいか分からなかったので、とりあえず自分の好きなことを曲にしました。それでお兄ちゃんの曲とか、向井秀徳さん(ZAZEN BOYSのボーカル&ギター)の「向井さん」という曲とか。とりあえず自分の好きな人のことを書こうっていう感じでした。RIP SLYMEとかを聴いて育ったので、何となくラップの手法は分かるというか、韻を踏むとかも分かっていたので、素人なりの韻の踏み方ですけど、頑張って歌詞を作りました。

──最初にライブに出たときのことは覚えていますか。

あっこゴリラ:覚えてます。下北沢CLUB Queで。やばかったですね〜。超ロックしちゃって、観客のみんなが、あっこヤベーじゃんみたいになって(笑)。その後次々とライブのオファーがきて、やるやる! ってどんどん受けました。先のビジョンとかまったくないままに。

バンドの解散

──ちょうどHAPPY BIRTHDAYの解散と重なるようにして、あっこゴリラが爆誕した。

あっこゴリラ:そうですね(笑)。とりあえず休止しようってなったとき、もうあっこゴリラしかなかった。でも、そのときは本格的にじゃなくて、バイトしながらあっこゴリラもやろうみたいな心構えだったんです。でも、毎ライブ毎ライブけっこうロックオンしちゃって、グッズもけっこう売れるようになっていった。

そうなると、ちゃんとグッズ作ろうって。解散ライブの頃にはもう絶対バイトしない、あっこゴリラだけで生活すると心に決めて、ライブを月に20本ぐらい入れた。そういう生活を2015年から始めたんです。とにかくグッズ売らないと生活ができないので切羽詰まったこともありましたけど、おもしろがって楽しみながら何とかやっていきました。

あっこゴリラ

──そんななかで、だんだんと変化していったことはありましたか。

あっこゴリラ:MCバトルがちょっと流行る前ぐらいに、大きい大会に出場した際の映像がYouTubeにアップされて、それで一気に名前が広がったんです。バンド時代にも経験したことのない名前の拡がり方で、街歩いていても声かけられたり。

そうなるとソロでもっと音源を作らなきゃ、聴いてもらえるものを作らなきゃと思った。自費でCDも、ちゃんとしたミュージックビデオ(MV)も作ったんです。名前が拡がっていた影響でCDもMVも想像以上に反響があって、そこで一気にいろんな事務所やレーベルに声をかけてもらいました。ちょうどラップを始めて2年ぐらい経っていたんですが、そのときに初めてHIPHOPってどういうものなのかってことが分かったんです。

自分が自分のことを必要以上に下げまくっていた思考回路や、何でそうなっちゃったのかとか、どうして私はラップを始めたのかとか。HIPHOPってそもそもどういうものなのか、それは自分を誇ることなんです。自分が自分のボスであること。そういうことを知っていった。だから私はHIPHOPに救われたんですよね。私のなかで作家性がガラッと変わった瞬間でした。衝動だけでやっていた時期が終わったんです。

──より音楽的になっていった?

あっこゴリラ:「音楽的」が何を指すのか分からないですけど、最初は本当に衝動だけで、未来は考えない。聞かれても破滅と答えるぐらいの感覚で、ダイナマイトを自分のお腹に巻いてるみたいな感じでした(笑)。自分なりのHIPHOP観が定まってからは、自分を下げまくっていた昔の自分に対して書くようになっていきました。

そこからお客さんも変わっていきましたね。昔の自分のようなお客さんが増えてきました。同じ気持ちを共有している感覚があるんですよね、共鳴というか。よく考えたら、私が昔好きだった音楽ってそうだったということにも気付いて。フラストレーションとか自分の気持ちを言葉にしたものがちゃんと共鳴し合うことこそが音楽なんだ。自分が今やっていることも、そういう風になったんだなって。

──それまでのお客さんというのは?

あっこゴリラ:ぶっ飛んでる姉ちゃんを見に来てる、みたいな(笑)。根本は変わってない部分もあるんですけど、明らかに考え方も生き方も変わりました。一人ひとりが幸せになる価値は当たり前にあるっていうことを、やっと思えるようになってきたっていうか。それまでそういうふうに思えなかったんですよね、まったく。自分は幸せになっていい人間じゃないって考えていたので。でも、私も幸せになれる、なる価値があると当たり前に思えるようになった。今日、ちゃんと幸せに生きようみたいな価値基準を教えてくれたのがHIPHOPなんです。

あっこゴリラが表現したいこと

──今、ラップをすることがすごく楽しそうですね。

あっこゴリラ:楽しいし、自分の中ですごく意味があることだと思っています。私のラップを聴いたとき、私のように自分を超下げてた人がそんなことないって気付くきっかけになるような、価値観を壊して新しい価値観を植え付けるという感覚なんですよね。言葉選びとか歌い方とか、自然とそう意識するようにもなってきました。

あっこゴリラ

リリックが書いてあって、それを壁にパンッて貼って口にするというだけだと表現として成立しないんですよね。その言葉をどういう言い方、声の出し方、歌い方なのかを総合的に考え抜いて、五感でちゃんとガツンと衝撃を与えられるかということを以前よりもすごく意識するようになりました。だから、リリックを書く時間がハンパなく長くなった(笑)。でもやらなきゃいけない、私が、みたいな勝手に使命感があるから書ける。なんかやんなきゃいけないって使命があると私は本気で思ってるんで、そういう気持ちで今やってます。

──ここ1、2年の目標は定まっていますか。

あっこゴリラ:「クレヨンしんちゃん」の主題歌! それとファンタ(フルーツ炭酸飲料)のCMに出ること。あと、宙づり。宙に浮いて登場したい。縦横無尽に生きたいんですよね。「FUJI ROCK FESTIVAL」にも、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にも出たい。そういうメジャーな感じになりたいです。

HIPHOPだからってHIPHOPのフィールドだけにずっといたくない。いろんな表現がしたいし、できるなとも思ってます。私の表現したいことは、全部を自由に楽しむこととか、自分を好きになる、認めるとか、そういうことだと思います。そのためにいろんな方法で、あっこゴリラを表現したいんですよね。

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連載6回目のあっこゴリラが爆誕するまで<前編>はこちら

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