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アーティスト・プロファイル

バーチャルライバー・緑仙――クリエイターから活動者へ、新たな挑戦【前編】

2021.02.26

気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「Artist Profile」。

今回登場するのは、歌動画を中心に投稿し、自身のYouTubeチャンネル「緑仙channel」では40万人以上の登録者数を誇る『にじさんじ』所属のバーチャルライバー(以下、ライバー)・緑仙(りゅーしぇん)。

2018年6月にライバーとして活動を開始して以来、性別不詳の中性的なキャラクター、高い歌唱力、1980年代のアニメシーンへの深い造詣と歯に衣着せないトークで、着実にリスナーを増やしつづけている。デビューから3年近くが経ちライバーたちを取り巻く環境が急速に変わるなかで、緑仙が自身の未来に見据えるものは何か。

前編では、緑仙がライバーを目指したきっかけと、これまでの活動を振り返る。

  • 緑仙

    Ryushen

    2002年4月16日生まれ。バーチャルライバーグループ『にじさんじ』に所属するライバー。2018年6月の活動開始以来、100本以上の歌動画を投稿している。2021年2月14日に1st EP『It'sLie』をデジタルリリース。

ライバーになるきっかけは自分の好きを“共有したい”という思い

2016年、第一人者となった“キズナアイ”の誕生以来、インターネットを中心に驚異的なスピードで活動範囲を広げ、世界的に人気を拡大している“バーチャルYouTuber”(以下、VTuber)。2DCGや3DCGで描画されたキャラクターたちが、ネット上で動画投稿や生配信を行なう姿は、今や当たり前の光景となった。

そのなかでも、いちから株式会社のVTuberグループ「にじさんじ」に所属するVTuberたちは、YouTube以外にも活動の場を広げていることから、“バーチャルライバー”(以下、ライバー)と呼ばれ(世間一般で使われるライブ配信アプリまたは生放送アプリを使って生放送をする、生身の人間を含めた「ライバー」とは定義が異なる)、若年層を中心に人気を博している。

緑仙が『にじさんじ』に参加してライバー活動をスタートしたのは2018年6月のこと。そのキッカケは“友達を作りたい”というピュアな思いからだった。

「僕がライバーになろうと思ったのは、高校で上手く友達が作れず、自分と同じような境遇の人がインターネットの世界にならたくさんいるんじゃないかと思ったのがきっかけです。それと僕は1970年代、1980年代の音楽やアニソンが好きで、漫画やアニメも同じ年代のものが好きなんですけど、同世代で同じ趣味の人を見つけるのが難しくて(笑)。身近では共感してもらえる人がいなくても、自分の好きな音楽、漫画やアニメについてのおしゃべりや、歌いたい曲を歌ってインターネットで発信できれば、住んでいる場所や世代といった垣根を超えて“好きなことを共感できる友達”が作れるんじゃないかと思ってライバーになろうと思いました」

YouTubeの初投稿動画『はじめまして、リューシェンの話』

緑仙が好きで、同じ世代には共感してもらいにくいという懐かしの音楽やアニメ。具体的に作品名を問うと、確かに2000年以降に生まれた世代には馴染みが薄いものだと頷ける。

「基本的にはマニアックなものが好きなんですが、有名な作曲家の方を挙げると山本正之さん。『タイムボカン』シリーズの曲は、挿入歌もあわせて全部歌えます。普段は、今、流行っている曲や注目のアーティストの曲も聴くんですけど、僕は音楽や漫画、アニメも“文脈を辿る”のが好きなので、“今あるものが昔のこういった作品から影響を受けている”というのを探究しています。親の影響などは関係なく、J-POPのルーツを辿っていくとやっぱり日本の歌謡曲に辿り着くので、気づいたら昔の歌謡曲を聴き込んでいました。好きなアイドルも佐野量子さんや畠田理恵さんだったり。今は1970年代から前衛的な曲を作られていた原田真二さんにハマっていて、リスナーさんにも『年齢ごまかしてるんじゃない?』ってよく言われます(笑)」

歌を自分の武器に、共感してもらえる存在を目指す

そんな音楽への深い造詣が、緑仙のライバー活動にも色濃く反映されている。多くのライバーが雑談やゲーム実況を主軸にしてリスナーとの交流を図っているなかで、緑仙が最も力を入れているのが“歌”だ。

緑仙がライバーを始めてすぐの2018年6月末に発表したカバー楽曲動画『ロキ / みきとP (covered by 緑仙)』には「こんなに歌が上手いなんて!」というリスナーからの驚きのコメントが多数つき、再生回数もうなぎ登り。歌唱力の高さを見せつけた。

「今も活動のメインは歌です。ライバー活動を始めた3年前、僕の周りには才能にあふれた人がたくさんいて、皆さんそれぞれの武器を持っていました。そこで『自分にできることは何だろう?』と考えたときに、これしかないなと思ったのが歌です。『にじさんじ』のなかでも、歌をメインに活動されている先輩は、現在はメジャーデビューもされている樋口楓さんくらいしかいなかったんです。古いアニソンを含め、今までたくさんの音楽を聴いてきたことは僕の武器になる。歌を通じて、みんなが求めている、共感してもらえる僕になれたら良いなと思いながら歌っています」

ロキ / みきとP (covered by 緑仙)

歌が武器というだけあって、緑仙の歌動画の投稿数は『にじさんじ』のなかでもトップを誇る。てにおはの『ヴィラン』が338万回再生を記録するなど、動画投稿サイトで人気のボカロP楽曲のカバーは多く、コンスタントに人気を博しているが、「白日」(King Gnu)や「Pretender」(Official髭男dism)などのヒットチューン、ひとりカラオケ状態でアニソンを歌い続ける生配信、同じ『にじさんじ』所属のライバー仲間と結成したアニソンカラオケ同好会による生配信など、ジャンルにこだわらない選曲とボーカリスト活動には、緑仙ならではのアイデアが反映されている。

そして、歌動画の制作でも“緑仙らしさ”を熟考し、動画を彩るイラストの制作者や楽曲を支えるトラックメーカー、音楽クリエイターも緑仙自身がSNSで直接依頼。よりクオリティの高い動画制作を目指しているという。

「やっぱり、友達が欲しいというところから始まったライバー活動なので、歌わせてもらっている曲もリスナーさんからのリクエストを参考に、みんなが見たい曲、聴きたい曲をメインにして、僕の歌声に合うものを選曲しています。でもたまに、『これくらいなら、僕の趣味を出しても許してもらえるかな?』という懐かしいアニソンや歌謡曲も交ぜさせてもらっています。さらにコアな趣味の歌は、ユニットを組んでアニソンカラオケ同好会で大爆発させてます(笑)」

白日 / King Gnu (covered by 緑仙)

アニソンカラオケ同好会3Dで大暴れ!?の巻

ライバーをつづけて芽生えた責任感――緑仙の現在点

自身のYouTubeチャンネル『緑仙channel』でのボーカリスト活動以外にも、『にじさんじ』に所属する三枝明那、童田明治、鈴木勝、える、ジョー・力一と結成した本格的なライバー音楽ユニットRain Dropsの一員として、2020年5月にはミニアルバム『シナスタジア』でメジャーデビュー。オリコン週間合算ランキング、Billboard JAPAN総合アルバムランキングHot Albumsを含む11部門で総合1位を獲得した。同年11月にはセカンドミニアルバム『オントロジー』をリリースし、ますます活動の幅を広げている。

「Rain Dropsで本格的な音楽活動をすることになって、初めて自分ひとりで作品を作りあげるのではなく、スタッフの皆さんにプロデュースしてもらって、僕はパフォーマンスだけに集中して音楽を伝えられる場ができました。それはとても楽しい経験だったし、今まで自分がいかに気を張り過ぎてライバー活動をしていたのかということにも気づくことができました。だからRain Dropsでの活動は少し肩の力を抜いて、僕もすごく楽しくやれています。ライバーって基本的には人見知りの人が多くて、僕もそうだったりするので、ユニット活動を始めたころはビクビクでしたけど、今ではメンバー同士もすごく仲良くて、Rain Dropsが長くつづくと良いねと話しています。ユニット活動をしているライバーさんは多いですが、メジャーデビューまでいったグループは多くないし、僕らの活動が軌道に乗れば、第2、第3のユニットも生まれてくると思うんです。そのためにも頑張っていきたいなと思っています」

緑仙 1st EP「It'sLie」クロスフェード

個人の音楽活動にも、ますます意欲が湧いている。2月14日のバレンタインデーには、今まで『緑仙channel』内で発表してきたオリジナル楽曲に新曲「君になりたいから」を加えた1st EP『It'sLie』をデジタルリリース。各種サブスクリプションサービスで配信されており、好評を博している。

「“やっと出せたな”という気持ちですね。リリース当日には生配信もやったんですが、リスナーさんからもうれしい反応をたくさんいただきました。カバーしている曲にもRain Dropsの曲にも“歌が好き”という気持ちはたくさん込めていますが、オリジナル楽曲は、曲を提供してくださるクリエイターさんと1対1でお話をして、僕はこういう人間で、今、自分はこういう感情で、活動に対してこういうモチベーションを持っている、ということを全て伝えて形にしてもらっているから、生身の緑仙がそのまま詰め込まれています。まだまだオリジナルで歌いたい曲のアイデアはたくさんあるし、楽曲制作は本当に楽しい。第2弾、第3弾もリリースしていきたいですね」

“自分の一番の武器は歌”という強い思いを持ってライバー活動をつづけてきた緑仙は、40万人以上のリスナーに愛される場を今得ているからこそ、ライバーとしての責任と同時に、歌そのものの大きな力も実感しているという。

「僕は言葉があまり得意じゃないから、生配信でも結構、トゲトゲしい言葉を使ってしまったり、他人には言われたくないようなこともつい発してしまうことがあります。そういう僕の話を面白がってくれる人もいるけど、それによって誰かの気分を害してしまっていることもある。だから、YouTube上での登録者40万人というのは、僕が自分勝手に何でもしていいものではなくなっていると思うんです。でも、歌っていうのはすごいもので、どんな曲でも誰かの心を潤したり、震わせたりしてくれる。歌を通すことで、伝わってほしいなと思うことが言葉以上に伝わることがあるし、例えそれがトゲトゲしいものだったり、ネガティブで暗いものだとしても、違う捉え方をしてもらえるんです。そこが歌の面白さだと思うし、素直な自分でいる生配信と、クオリティにこだわった歌の両方をつづけていくことが、僕に一番合っている活動スタイルなんだと感じています」

イツライ / 緑仙 (Official Video)

 
後編につづく

文・取材:阿部美香

にじさんじ Anniversary Festival 2021

海外ライバーを含む総勢100名以上の『にじさんじ』所属ライバーが参加し、全編オンラインで開催される『にじさんじ』の3周年を記念した大型フェス。2月26日(金)の前夜祭ではロックバンドのFLOWも参加する『にじさんじ Anniversary Festival 2021 前夜祭 feat.FLOW』も行なわれる。
 
今回、取材に応えてくれた緑仙は26日の前夜祭から参加。最終日28日にはRain Dropsとして出演するライブ『にじFes2021 月ノ美兎&樋口楓&Rain Dropsステージ』でパフォーマンスを行なうだけでなく、「面接やオーディション、恋愛での成功率を20%確実に上げる方法」と題した、自身がMCとなってトークを繰り広げるユニークな体験授業の配信も行なわれる。
 
本イベントには、ソニー・ミュージックソリューションズが実行委員会に参加している。

 

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