イメージ画像
イメージ画像
連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

【After Talk】『Puzzle Project』で出会った10組のクリエイター。その“才能”とともに作り出す未来

2021.04.30

  • Twitterでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Facebookでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • LINEでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • はてなブックマークでこのページをシェアする(新しいタブで開く)
  • Pocketでこのページをシェアする(新しいタブで開く)

最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスの種」。

“ネットを活用して自身の作品を発表しているクリエイター”とソニーミュージックグループがマッチングする場として開催された『Puzzle Project』。その選考の結果、多数のエントリーのなかから10組のクリエイターと未来を見据えた活動を行なっていくことが決まった。

はたして今回の『Puzzle Project』では、どんな“才能”に出会うことができたのか?

プロジェクトの中心人物、ソニー・ミュージックエンタテインメントの須藤一希と屋代陽平に、選考を終えて感じたことと『Puzzle Project』の未来、そして今回出会った10組の才能について話を聞いた。

  • 須藤一希

    Suto Kazuki

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

  • 屋代陽平

    Yashiro Yohei

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

Puzzle Projectに集う才能に感じた、若さと幅広さ

――『Puzzle Project』でマッチングしたクリエイター10組が発表となりましたが、改めて2020年11月20日から12月20日にかけて行なわれた第1回募集の手応えはいかがでしたか?

須藤:エントリー数はトータルで約1,600件ありました。予想以上の数のエントリーをいただけたなというのが第一印象です。LINEの公式アカウントでエントリーを募るというやり方は初めてだったのですが、それがネット上で活動しているクリエイターのみなさんに響いたのだとしたら良かったなと思います。

屋代:“ネットを活用して自身の作品を発表しているクリエイター”を対象にしていたので、いわゆるボカロPと呼ばれる方々が多くエントリーされるのではないかと思っていたのですが、シンガーソングライターの活動をされている方など、僕らの予想を裏切るような幅広いジャンルの方々からエントリーをいただけました。

須藤:それと全体的に若い年齢層の応募が多い印象がありましたね。あとは、ボカロP、シンガーソングライター、HIP HOP系の方もいましたが、バンド形式での応募はほとんどなかったというのも今回の特徴だと思います。

■『Puzzle Project』の関連記事はこちら
オーディションではなく“才能”というピースに出会うために始動した『Puzzle Project』

――エントリーのなかから、どのような選考を経て、今回の10組を選ばれたのでしょうか。

屋代:エントリーのときに送っていただいた音源を聴きながら、それぞれが気になった方をリストアップして持ち寄り、プロジェクトメンバーで選考していきました。その後、約50組の方々と面談を行ない、最終的に10組の方たちの活動を『Puzzle Project』としてサポートさせていただくことになりました。

――面談のときは、どんなことをお話ししていたのでしょうか。

須藤:今回は、すべてオンラインで面談をさせていただいたのですが、最も密にコミュニケーションしたのは、「どんなサポートを求めているか」ということでした。50組いれば、当然、50通りの考えがあり、我々に求められるものも違ってきます。『Puzzle Project』では、個々の活動に最適なサポートをしていきたいと考えていたので、まずお聞きしたいのはそこでした。

屋代:あとは、“将来をどうイメージしているか”というのもよく質問させていただきました。今後、どこに自分の立ち位置を置きたいのか、そのイメージがあるかどうかを確認しておきたかったんです。

誰でも現在の自分の立ち位置ですら正確につかむのは難しいと思うんですが、意識しておけるかどうかはとても大事なことだと考えていて。逆に、それがないと10年後、20年後、30年後のご自分の人生がどうなるかわからなくなってしまいます。

なかなかのヒットが生まれたとしても、それだけで一生食べていけるわけではないですし、ヒットを継続させなければいけない。そのためのサポートを僕らがさせていただく上で、“自分がどうなりたいのか”、その考えをしっかり持っている方かどうかも確認させていただきました。

――実際に面談をしてみて、従来のオーディションで集まる人材との違いを感じたことはありましたか。

須藤:オーディションを開催すると、所属することが目的になってしまう方がいらっしゃるんですが、『Puzzle Project』は既にご自身で活動をされている方たちばかりなので、それがなかったのが僕らにとって新鮮でしたし、刺激ももらいましたね。

屋代:面談をしているうちに、これは僕らのほうが試されているんだと気づかされました。「で、ソニーミュージックグループは何をしてくれるの?」というバイブスが画面越しで感じるんです(笑)。

須藤:そうなんですよ。皆さん既に戦える武器をしっかり持っているので、こちらが準備不足だったり、具体的な可能性が提示できていないと、それを見透かされているように感じました。

屋代:今回エントリーしてくれた方々は楽曲を作るだけでなく、配信やマネジメントも自分でやっている方が多い。僕らも柔軟に、それぞれのクリエイターが求めていることをサポートしていきたいと考えています。

――今回、取り組むことになった10組の方たちには、何か共通点はあったのでしょうか? もしくは『Puzzle Project』として考えていた統一性などがあれば教えてください。

屋代:きっかけは『Puzzle Project』ですが、実際の活動としては『Puzzle Project』で括るわけではないので、『Puzzle Project』として求めた統一性はありません。共通点については、このプロジェクトに興味を持っていただけたということだけで、それ以外はないですね。

実際、10組のクリエイターの方たちの楽曲を聴くと、その幅の広さに驚いてもらえると思います。既に界隈では有名な方もいらっしゃいますし、正直、ここまでの結果は予想していませんでした。なかなかのキャラクターが揃ったなと僕らも驚いています。

須藤:今回、面談をしてみて感じたのは、アーティストやクリエイターに年齢は関係ないということですね。印象的だったのは「おこづかいが足りないから機材が買えないんです」という相談をしてくれた中学生の方もいて。むしろ年相応であることも、その人の個性なんだと改めて気づかされました。

Puzzle Projectがサポートする10組のクリエイターレビュー

『Puzzle Project』の振り返りが終わったところで、須藤と屋代に10組のクリエイターを自らの言葉で紹介してもらうことにした。どんな才能との出会いがあったのか、ご注目いただきたい。

クリエイタープロファイル①:晴いちばん

アイドルへの楽曲提供などの活動をする、新進気鋭のクリエイター

屋代:ポップセンスあふれる楽曲を作ることができるクリエイターです。自らの楽曲制作だけでなく、アイドルに楽曲提供を行なっているなど、既に幅広い活動を始められていて。人に楽曲を提供するときも、自分の個性をクリエイティブにしっかり入れているところに大きな魅力を感じました。さらに、現在は音楽の理論を勉強中ということで、彼がもともと持っているセンスに、ロジックの裏打ちがなされていくことで、今後その音楽性がさらに広がっていくのではという期待感があります。面談時は、まだ中学生だったので、ご両親から請求書の作り方を学んでいると言っていたのも印象的で。既に自分の音楽をしっかりビジネスにしようと考えていることに、クリエイターとしての矜持を感じました。

Twitter:@Haru1_kaze_(新しいタブで開く)
ニコニコ動画:http://bit.ly/30R8Gy7(新しいタブで開く)
YouTube:http://bit.ly/2xGtkqe(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル②:わーるど

海外からの注目を集める、アレンジセンス抜群のコンポーザー

須藤:バイオリンを習っていたりと、豊かな音楽環境で育ち、自分の音楽を表現するために歌声合成ソフトを使っているのが面白いと思いました。代表曲「ねるねるねるね」はbilibili動画で20万再生を突破しているのですが、bilibili動画で正式会員のアカウントを作るのは結構やっかいで、中国語を理解していないと難しいんです。そこを個人で乗り越えて、活動しようという意欲を持っているのも素晴らしいと感じました。音楽的には、現時点で既に完成されたスタイルを持っているクリエイターだと思います。メロディはとてもキャッチーでありながら、哀愁を感じるフレーズがあちこちにちりばめられている。アレンジもいろいろな楽器を取り入れる遊び心があって面白いです。『Puzzle Project』を通じて、ほかのクリエイターやアーティストとコラボレーションすることで、もっと彼の世界観が広がるんじゃないかと楽しみにしています。

Twitter:@HodWald1024(新しいタブで開く)
YouTube:https://www.youtube.com/c/WaldOfficial(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル③:皆川溺

楽曲、映像編集、アートワークを駆使して独自の世界観を展開

屋代:映像編集、アートワークも自分でこなすマルチクリエイターなので、どの作品にも彼自身の独特なカラーがしっかりと入っているのが面白いなと感じました。音楽的には狙い所がしっかりわかっているクリエイターだと感じています。現在の音楽シーンでどういう楽曲がウけるのかをちゃんと考えていて、そこに向けて高い精度で照準を合わせることができる。別のメディアの取材でご一緒する機会があったのですが、とても視野が広く、自分の立ち位置を考え、この先をしっかり見据えていると感じました。『Puzzle Project』で、皆川さんがイメージしている未来をスピード感をもってサポートしていきたいと考えています。

Twitter:@23dimensionsP(新しいタブで開く)
ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/user/92109435(新しいタブで開く)
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCAFdAoSrsbf7IZvcAzny6ug(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル④:ど~ぱみん

音ゲーとEDMをルーツとするトラックメーカー

須藤:今回出会ったクリエイターなかでも、特に異色なキャラクターだと思います。彼の音楽のバックグラウンドは、いわゆる音ゲー(『ビートマニア』などのリズムゲーム)や海外のEDM。身体が自然と動くようなトラックを作ることに長けているので、彼の楽曲は日本だけでなく、世界で受け入れられる可能性があるし、子どもから大人まで楽しめるものを作れるのではないかという期待感があります。例えば、彼の楽曲をクラブのように流すだけでも踊れるライブが成立するのではないかとイメージできる、そういうビジョンを想起させてくれるクリエイターですね。

Twitter:@DTM_dopamine(新しいタブで開く)
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCz-IailvAsZZK9_By6ZAnfA(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル⑤:なきそ

歌詞のセンスに魅せられる、共感できる楽曲を作るクリエイター

屋代:『Puzzle Project』に関わる前から、個人的に注目していたクリエイターです。彼はメロディだけでなく、イラストや楽曲タイトルも含めて雰囲気をきちんと作ることができるタイプだと思っていて。自身の体験などをベースに自分のなかから溢れ出てくる言葉を用いることで、とても伝わりやすい楽曲を作っています。実際にお話ししても、“伝わること”“聴かせる”ことをしっかり考えていて。“売れたい”“成長したい”という意思も明確に示してもらえました。そういうマインドの方とは、前向きにいろいろな展開が考えられますし、一緒に取り組んでいきたいですね。

Twitter:@7kiso_nakiso(新しいタブで開く)
ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/user/53610183/mylist/61837157(新しいタブで開く)
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC7d3Y_v5O202eo006uvvPzw(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル⑥:SEE

ネットからライブへ活動の幅を広げ

須藤:バンドのようなサウンドが魅力で、ネットのなかだけでなく、ライブなどのフィジカルな場にも活動を広げていけそうだなと感じました。本人もコンポーザーとしての活動はもちろん、ライブをしていきたいという意思やご自身で歌っていきたいというビジョンも持っていて、ステージでは自身もフロントに立ちたいという思いも伺うことができました。また、アジアへの発信も考えているということだったので、そこを目標にしながら、我々がサポートしていければと考えています。

Twitter:@senlalowns(新しいタブで開く)
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCYEYa0kZYh9MStcWA-kt_vw(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル⑦:林田匠

アルバムリリースの実績とさらなる切磋琢磨

屋代:楽曲だけでなく映像もご自身で手掛けるクリエイターです。ボカロPとしての活動で、既にアルバムを配信でリリースしているだけでなく、林田さんの曲がカバーされ100万再生超えをしているという実績がいくつもあります。彼のようなレベルの方と、こういう形で出会えるとは思っていませんでした。面談をしたときは、「まだまだ足りてない部分がたくさんある」とおっしゃっていて、インプットへのどん欲さと音楽への高い熱量を感じました。ボーカリストやアレンジャーに興味を持っているということなので、そういった方面もご紹介でサポートをしつつ、ソニーミュージックでじっくりと楽曲を練り上げて、シーンに届くものを一緒に作れればと考えています。

Twitter:@studiohayashida(新しいタブで開く)
Studio Hayashida公式サイト:https://studiohayashida.kdcs.work/(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル⑧:ふたりごと

SNSから生まれた癒し系の男女ユニット

須藤:芸術系の大学院で音楽を学んでいるコンポーザーの三浦さんがエントリーされたことがきっかけで出会った、男女のユニットです。三浦さん個人でのエントリーを受けて、コンタクトを取ったところ、三浦さんは大学院卒業後も音楽活動をつづけるというお考えで。しかも、SNSで知り合ったボーカリストの杜ノ狼さんとユニットを組んで活動を考えているということだったんです。であるならば、ユニットとしての活動をご一緒しましょうということになりました。既におふたりの楽曲もあって、そのイメージは“癒し”。三浦さんが手掛ける楽曲と、杜ノ狼さんの歌声はすごくマッチしており、これからの活動に期待しています。

YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=2666lOsjBLw
杜ノ狼 Twitter:@OOKAMI_329(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル⑨:Sohbana

引き出しの多い、メロディメイカー

須藤:この春、学校を卒業して上京し、就職先も決まっているので本職はそちらということになりますが、Sohbanaさんはいわゆる作家的な活動も視野に入れていたので、主に作家と向き合っているソニーミュージックの楽曲部をご紹介しました。今後は、楽曲のコンペ情報をお伝えしたり、例えば何かお題に沿った楽曲を提出いただいたり、といったコミュニケーションを取っていきます。音楽的には、もちろんご自身のやりたい方向性があると思いますが、非常に引き出しが多く、いろいろなリクエストに対応できる方だなと感じています。


Twitter:@Sohbanasick(新しいタブで開く)
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC0Ss3V3-fJI6AiqQLdRSx4Q(新しいタブで開く)

クリエイタープロファイル⑩:モネルタP

天才的な調声技術を持つコンポーザー

須藤:モネルタPさんは元々バンドでベースをやられていました。この方もどちらかというと作家志向が強いと思ったので、楽曲部をご紹介しました。POPSをしっかりと感じられる楽曲を作れる方で、ボーカロイドの声を調整する調声技術が天才的だなと感じます。楽曲が、すごく聴きやすいんです。論理的に音楽を作れる方なので、声優アーティストの楽曲やアニソンのようなジャンルにもマッチするのではないかと考えています。また、ウィスパーボイスを得意としたボーカルを起用した楽曲も制作したいとおっしゃっていて、面白そうだと思いました。

Twitter:@mnruta_p(新しいタブで開く)
ニコニコ動画:https://www.nicovideo.jp/user/89432451/video(新しいタブで開く)
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCTWMdK8p47nE-3IfKRxOX4Q(新しいタブで開く)

『Puzzle Project』は今後も新しい才能との出会いを求めつづける

――『Puzzle Project』には、世界に向けて音楽をディストリビューションできるThe Orchard Japanも加わっています。今後、『Puzzle Project』で出会った才能をどのように海外展開されていくのでしょうか。

屋代:具体的には、サブスクでの海外展開や国と地域ごとにローカライズしたプロフィールの編集、現地メディアのインタビューやSNSの投稿といった展開が考えられます。そこは今後、整えていきたいと思いますし、クリエイターの方たちの楽曲が世界のどこかでスパイクを起こすなら、The Orchard Japanからその情報が共有されるので、そのチャンスを逃さず楽曲や情報を発信していきたいと考えています。

その上で、クリエイターの方たちのご紹介でもお話しした通り、個々のクリエイターによって見据えている将来像が異なりますし、現時点で発表されている楽曲の数も違います。音楽活動のスタンスも、生粋のクリエイター気質の方もいれば、自らパフォーマンスも行なうアーティスト寄りの方もいらっしゃいます。

もちろん、既に海外を意識されている方には、そういったサポートも行なっていきますが、十把一絡げですぐに海外展開を行なっていくことは考えていなくて。大事なのは個々のペースに寄り添いながらベストなタイミングを探っていくことだと思います。

――今回、10組のクリエイターとのマッチングを発表されましたが、『Puzzle Project』は今後どのような展開を予定されているのでしょうか。

須藤:オーディション形式での第2回、3回というのは予定していなくて、『Puzzle Project』としては常に新しい才能、クリエイターの方に出会っていきたいと考えています。期限を決めず、作品さえあればいつでも気軽にご連絡いただけるような仕組みにしていくつもりです。今回エントリーいただいた方々に関しても、これで終わりということではなく、引きつづき皆さんの活動もできる限り追っていきたいですし、今回、選出しご紹介した10組のクリエイターの活動をご覧になって、もし何か一緒にやりたいと感じてもらえたら、ぜひエントリーをしてください。お待ちしています。

 

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

関連リンク

Puzzle Project 公式サイト
https://www.sonymusic.co.jp/sd/puzzle_project/(新しいタブで開く)
 
ソニー・ミュージックエンタテインメント SDグループ
https://www.sonymusic.co.jp/sd/(新しいタブで開く)
 
monogatary.com
https://monogatary.com/(新しいタブで開く)
 
The Orchard Japan
https://www.theorchard.com/(新しいタブで開く)

連載エンタメビジネスのタネ

  • Sony Music | Tech Blogバナー

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!