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エンタメビジネスのタネ

『VRデビルマン展』の成り立ち――仮想空間で行なう哲学エンタテインメント・エキシビション【前編】

2021.05.29

最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスの種」。

4月28日から、バーチャルリアリティ(以下、VR)技術を用いて仮想空間で開催されている展覧会『VRデビルマン展~悪魔の心、人間の心~(以下、VRデビルマン展)』は、株式会社 東映エージエンシーとソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)の2社によって新たに共創された仮想空間エキシビション・プラットフォーム『VU (ヴュー) Virtual Utopia(以下、VU)』上で行なわれている。今回は本展のプロジェクトメンバーに集まってもらい、協業のきっかけ、VR展覧会の企画、開発について話を聞く。

前編では『VU』の立ち上げから『VRデビルマン展』の成り立ち、展覧会のコンセプト作りについて担当者が語る。

  • 松平恒幸

    Matsudaira Tsuneyuki

    ソニー・ミュージックソリューションズ
    チーフプロデューサー
    「Project Lindbergh」メンバー

  • 岡田拓実

    Okada Takumi

    ソニー・ミュージックソリューションズ

  • 田中和治

    Tanaka Kazuharu

    ソニー・インタラクティブエンタテインメント VR推進室
    ソニーグループ  事業化推進部 RL準備室
    「Project Lindbergh」メンバー

  • 千田祐壱

    Senda Yuuichi

    株式会社 東映エージエンシー
    プランニングディレクター

コロナ禍に負けないために生まれた企画

――VR技術を用いた展覧会『VRデビルマン展』が4月28日より開催中で、こちらは東映エージエンシーとSMSの2社による取り組み「仮想空間エキシビション」の第1弾となっています。まずは、皆さんのこの企画における役割からお聞かせください。

松平:私は、VR、ARを中心としたテクノロジーの研究、開発と新規事業をプロデュースするソニーグループの横断型xR(xReality:VR、AR、MRの総称)プロジェクト「Project Lindbergh」に参加していて、さまざまなVRの新規事業に携わっています。今回は、その流れから『VRデビルマン展』のプロデューサーを担当することになりました。

岡田:自分は、SMSのエンタノベーションオフィスという部署に所属していて、ここで新規事業開発を手掛けています。今回のようなVRにまつわる事業もそのうちのひとつです。『VRデビルマン展』ではプロジェクト全般に携わっていて、企画、制作、開発、一部商品企画などの業務を担当しています

田中:私は、ソニー・インタラクティブエンタテインメントのVR推進室に所属しながら、ソニーグループでは新規事業の開発に携わっています。「Project Lindbergh」では、主にXR関連の検証やコンテンツ開発を行なってきましたが、今回の『VRデビルマン展』は、その検証で培った経験やテクノロジーを上手くいかせるのではないかということで、プロジェクトに参加させていただき、開発リーダーを担当しました。

千田:東映エージエンシーで、展覧会やイベントの企画を担当しています。今回は、その経験と作品のTVアニメ版がグルーブの東映アニメーション製作ということもあり、プラニングディレクターという立場で企画に参加させていただきました。具体的には、バーチャル上に展覧会を作るべく、SMSの皆さんと一緒にコンテンツ制作に携わらせてもらっています。

――『VRデビルマン展』は仮想空間エキシビション・プラットフォーム『VU』で実施される展覧会の第1弾ということですが、この企画を立ち上げられた経緯をお聞かせください。

 

VU (ヴュー)とは

 

東映エージエンシーとソニー・ミュージックソリューションズの2社が共同で立ち上げた仮想空間エキシビション・プラットフォーム。東映グループや関連企業が保有する国内外の人気アニメコンテンツと先端VR技術を融合させた新しいエンタテインメントの価値創造を目指す。

松平:ご承知の通り、昨年から新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題になり、4月には1回目の緊急事態宣言も出されて、一部の映画館が休館または映画の公開規模を縮小せざるを得ない状況になりました。

そのころに、もともとお付き合いのあった東映グループのプロデューサーの菅原(宏之)さんと“エンタメ業界の今後”についてお話をする機会があって。そのやりとりのなかで、映画を仮想空間で上映できないかという案があったんですね。実際に、それを検討してみると、現状では、まだ多くのVRデバイスが映画館のクオリティを担保できないことがわかりました。

そこで映画上映が難しいとしても、展覧会ならば「Project Lindbergh」で研究開発していた技術を使って何かできるんじゃないかという話になったんです。東映エージエンシーの相原(晃)社長(代表取締役社長)にもご相談に乗っていただき、VR展覧会を企画することになりました。これが1年ぐらい前の話で、東映グループからIPとしてコンテンツをご提供いただき、ソニーグループが制作を担当するというパートナーシップが組まれたんです。

千田:東映グループというと、映像事業をまっさきにイメージされると思いますが、実はグループ内ではイベントや展覧会のビジネスも展開しています。しかし、コロナ禍で映画館の営業自粛が求められたように、イベントや展覧会も従来通りには開催しにくくなっています。たくさんの人を集めることが難しくなった今、「展覧会ビジネスも新しい見せ方、スタイルに挑戦していかなければ」という話を菅原とはよくしていたんです。

そんななかで、松平さんがおっしゃったように、VRの技術を使うことで新しいかたちの展覧会ができるのではないかと。そこから話を始めていきました。

VR展覧会の特徴は“その場に実物がないこと”

――現実のイベントと、VR空間のイベントではどんな違いがあるとお考えでしたか。

松平:東映エージエンシーもSMSも、これまでにリアルな展覧会やイベントは数多く手掛けてきました。リアルな展覧会では、企画の初期段階で来場者の滞留率やスループット(処理可能量)を計算して動線設計を行ないます。

しかし、VR空間はそういったことを一切気にする必要がない。ある意味でやりたい放題とも言えます。例えば、とても広い空間も作れますし、空中に浮島があるエリアを作ることだってできる。

千田:リアルの展覧会では、会場のサイズに合わせて展示を考えていかなければならないのですが、VR展覧会はそこを自由にできた。それが大きな違いでしたね。

『VRデビルマン展』のイベントマップ。      

――今回の展示コンセプトをお聞かせいただけますか。

千田:展覧会の多くは“その場に実物がある”ことが価値になっていると思います。しかし、今回の展覧会の舞台は仮想空間なので、当然実物は置けない。それでは、仮想空間で行なう展覧会にはどんな価値が見出せるだろうと考えました。

その答えが、VR空間だからこそ表現できる世界観を、エンタテインメントとしても体験させるなかで、作品の「テーマ」を浮き彫りにして展示することでした。

松平:『デビルマン』という作品に込められたメッセージを、エンタテインメント性にあふれたVR上の展覧会で伝える。私たちは今回の『VRデビルマン展』のコンセプトを“哲学エンタテインメント・エキシビション”と呼んでいます。

『VRデビルマン展』のステージスクリーン。

千田:実際の空間を、VRを使って再現するようなVR展覧会はこれまでにもありました。でも、『VRデビルマン展』はそうではなく、作品の世界観そのものをVRエンタテインメントとして体感できるものにできたら面白いのではないかと考えたんです。

そして文化的な展覧会としての側面と、エンタテインメントとしての演出性のバランスを検討して行くなかで、“哲学エンタテインメント・エキシビション”というコンセプトになって、今回の『VRデビルマン展』につながりました。

松平:結果的には、僕らが想定していたよりも、派手なものになりましたよね。当初はもっと地味な展覧会になるのかなと考えていたんですが、田中さんをはじめとするVR開発チームの皆さんがありあまる情熱を注ぎ込んでくれまして、エンタテインメントの部分がよりはっきり体感できるものになったと思います。

能動的に動くことで楽しめる、新たなプラットフォーム『VU』

――展覧会の会場となる、仮想空間エキシビション・プラットフォーム『VU(ヴュー)』についても聞いていきます。『VU』はどのようなコンセプトで開発を進めたのでしょうか。

松平:実は今回、VRを体験するためのシステムである「VRプラットフォーム」そのものを開発しているんです。ユーザーインターフェース(UI)を含めて、イチから作り起こしています。開発期間はかなり短かったのですが、開発チームが膨大な作業をこなしてくれました。

田中:今回、『VU』を手掛けた開発チームはこれまで数多くのXR系コンテンツの開発に携わってきただけでなく、第一線でゲーム開発も行なってきたスタッフで構成されています。『VU』プラットフォームには、ゲーム開発で培ったVRならではのユーザーインターフェースを作り出し、今までにはない展覧会体験に進化させてくれていると思います。

特に今回の『VRデビルマン展』では平面的な素材(マンガ、アニメ)を仮想の3D空間上で見せていくことがポイントになっていました。VR技術を使っているのですから、空間上に置いてあるものを“ただ、見る”というようなものはやりたくなかったんです。マンガの絵やアニメの映像をただ受動的に眺めるのではなく、来場者が能動的に展覧会を体験できるものにしたいと考えました。

そこで今回は、VRデバイスのコントローラーで映像や画像を“掴んで楽しむ”ことができるようにしています。“掴む”ことによって、映像が再生され、画像を読むことができる。来場者が能動的に動くことで「これを知りたい」「あれを見てみたい」という欲求に応えられるようにしました。自分が、その世界に参加している実感を味わえるものにしたかったんです。

岡田:“ゲームらしさ”みたいなものは全体的にかなり意識していました。ドット絵のゲームのころから、ゲーム中で何かを“調べる”ときには“ボタンを押す”という行為がありましたが、あれはゲームの背景や世界観を知るために重要なアクションだったと思います。

それが今回のVR空間で絵や映像を“掴む”という動作につながっているんだと思うんです。“掴む”ことで『デビルマン』という作品の世界観やメッセージが伝わりやすくなる。ゲームらしいUXを意識しながら、中身はしっかりと作品性が伝わるものをと、開発チームの皆さんと制作を進めていきました。

絵や映像をVR空間内で“掴める”有料エリア。

田中:一般的に展示内容が濃いもの、見応えのあるものにするには、情報量を増やして、その階層を深くすれば良いと考えがちです。でも今回、私が開発チームに強く要望していたのは「階層を浅くした上で、内容がしっかりとわかるものにしてほしい」ということでした。数回の操作で目的地にたどり着けるようなものを意識していたんです。

VRデバイスを使ったUIになるのであまり操作が煩雑にならないようにも注意していました。ゲーム開発では、タイトルによってコアなゲームユーザー向けの操作を採用することもあるのですが、今回は初めてVRを体験する人も多いと思います。そこでチュートリアル(操作説明)がなくても、直感的に操作できるものを目指しました。

松平:あと、今回はなるべく多くの方に展示を見ていただけるように、「VRヘッドセット版」だけでなく、PCから参加可能な「デスクトップ版」も作っています。VRヘッドセットをお持ちでない方でも、ゲーミングPCを使用して「デスクトップ版」からイベントに参加していただけます。とは言え、『VRデビルマン展』のポテンシャルを最大限に楽しむには「VRヘッドセット版」を体験してもらうのが一番良いのは間違いありません。

後編につづく

文・取材:志田英邦

※インタビュー取材は、リモート会議アプリケーションを使用して行なっています。

©永井豪/ダイナミック企画
©ダイナミック企画・東映アニメ―ション
©Go Nagai-Devilman Crybaby Project
©VRデビルマン展実行委員会

【プロジェクト第一弾:『VR デビルマン展~悪魔の心、人間の心~』開催概要】

会期(予定):2021年4月28日(水)11:00~2021年5月31日(月)23:59
使用プラットフォーム:仮想空間「VU(ヴュー) Virtual Utopia」アプリケーション
公式サイト:https://www.virtualutopia.jp/devilman/
 
チケット種別
■1DAY(日付指定):2,200円(税込)
■ALL-DAY(期間中フリーパス):5,500円(税込)
■ALL-DAY PREMIUMグッズ付き*限定1,000セット:14,300円(税込・グッズ送料込配送は日本国内のみ)
【オプション】音声ガイド:550円(税込)

関連サイト

東映エージエンシー
https://www.toeiad.co.jp/
 
ソニー・ミュージックソリューションズ
https://www.sonymusicsolutions.co.jp/

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