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Action ~いま、私たちにできること~

「テクノロジーは企業のCSR活動も進化させるか?」その可能性をエキスパートたちに聞いた【後編】

2021.07.31

「Action ~いま、私たちにできること~」では、急速に変わりゆく社会のなかで、ソニーミュージックグループやエンタテインメント業界の新たな試みに注目。どんなときでも人々に寄り添い、心を潤すエンタテインメントの未来を追いかけていく。

現在、多くの企業が取り組むCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)活動。ソニーミュージックグループでは、環境活動への取り組みをはじめ、中高生を対象とした「会社訪問プログラム」と「出張授業」という、独自のCSR活動を行なってきた。

しかし、昨年からつづく新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、どちらの運営も休止せざる得ない状況に。現在は、2019年度から取り組んでいるオンラインツールを用いた「遠隔授業」を実施し、社会の未来に資するべく活動を継続している。

そこで今回は、教育支援活動をオンラインで進化させ、新たなCSR活動につなげるための施策について、スペシャリストを招いて検討していく。

参加者は、ソニー・グローバルエデュケーションでオンライン授業システム『HyperClass®(ハイパークラス)』の開発に携わるプロダクトマネージャーの酒井英佑と、同セールスマネージャーの望月美希、そしてソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)でCSR活動を担当する鳥本綾子の3人。それぞれの視点で、未来のCSR活動を語ってもらった。

後編では、オンラインツールによってSMEのキャリア教育がどう変えられるのか、そして未来のCSR活動はどうあるべきかを語り合う。

  • 酒井英佑

    Sakai Eisuke

    ソニー・グローバルエデュケーション
    プロダクトマネージャー

  • 望月美希

    Mochizuki Miki

    ソニー・グローバルエデュケーション
    セールスマネージャー

  • 鳥本綾子

    Torimoto Ayako

    ソニー・ミュージックエンタテインメント

『HyperClass』で遠隔授業の課題を解決

──(前編からつづく)SMEが取り組むオンラインツールを活用した「遠隔授業」では、中高生たちにアーティストのプロデュース案をポスターにまとめるプログラムを実施しているということでしたが、生徒たちはどのようにしてポスターを発表するのでしょう。

鳥本:現状は、割とアナログなやり方をしているんです。まず、学校側にタブレットを1台設置してもらって、SME側のPCとオンライン会議システムでつなぎます。その上で、学校側ではタブレットの映像をプロジェクターや大画面モニタに投影してもらって、教室に集まった生徒たちはそれを見ながら私たちとコミュニケーションを取ります。生徒たちがポスターの発表を行なうときには、タブレットの前に来てもらって、カメラに向かってポスターを見せてプレゼンする……という流れです。

望月:生徒たちには、ひとり1台タブレットが与えられているわけではないんですね。

鳥本:そうなんです。ひとり1台端末があれば、生徒たち一人ひとりの顔と様子がわかりますが、現状では生徒たちが私たちの話をどれくらい理解してくれているのか、やはりモニタ越しでは汲み取りにくいところもあるんですよね。また、学校側の通信インフラが整っていない場合もあって、こちらから映像を流すのは難しいんです。

実際の『遠隔授業』の様子。

酒井:インフラと機材、それぞれに課題があるわけですね。

鳥本:はい。現在は先生方が生徒たちに事前に授業を行ない、発表の場だけ私たちが参加するというスタイルですが、もし可能であれば事前の授業から参加したいですね。そうすれば、より具体的な事例をお話しできますし、もっと気軽に生徒たちとコミュニケーションを取れると思うので。このような状況なんですが、『HyperClass』を使って、よりスムーズに授業を行なう方法は思いつきますか?

酒井:『HyperClass』は、音声や動画を生徒に向けて流したり、PDFを画面上に表示することができます。ジャストアイデアですが、タブレットのカメラに向けてポスターを見せるのではなく、事前にPDF化したポスターを画面に表示してプレゼンしてもらうのはどうでしょう。

望月:『HyperClass』は、QRコードを読んだ上で写真を撮ってもらうと、画面上にその写真を表示することができるんです。これなら操作も簡単ですし、写真に対して先生や鳥本さんがコメントを書き込むことも可能です。

鳥本:それは便利ですね。もうひとつお聞きしたいのですが、複数の生徒が参加している授業で、特定の子だけに声をかけることはできますか?

望月:それは現状ではできませんね。

鳥本:例えば、生徒たちがポスターのアイデアを考えている過程を見てアドバイスを送ったり、生徒からの質問を個別に受け付けたりできると良いなと思ったんです。実際、学生の皆さんに会社に足を運んでいただく「会社訪問プログラム」では、そうしたコミュニケーションを行なっていたので。

望月:学習塾の方々からも同じようなご要望をいただいたことがあります。要望に完全に応えるものではありませんが、現状では、黒板機能に文字を書くことで個別のやりとりができるようにはなっています。

鳥本:一人ひとりに声掛けができるようになったら、『HyperClass』をぜひ使ってみたいと思いました。加えて発表だけでなく、その前後でも1対1のやりとりができると良いですね。みんなの前で質問するのも良い経験ですが、聞きたいことを聞けなかったというケースもあると思っていて。授業のあとでも構わないので、個別のコミュニケーションを取れるようになると良いなと思いました。

ただ、その機能が今はなくても、オンライン授業ツールに特化した『HyperClass』の利便性は今日のデモを見させていただいても充分感じました。酒井さん、望月さんたちが、『HyperClass』で生の授業体験にこだわっていらっしゃるのが、よくわかりました。

『HyperClass』はPCだけでなくスマホやタブレットで使えるアプリ展開もされている。

GIGAスクール構想で広がるオンライン授業の可能性

──ほかに「遠隔授業」をはじめとする教育支援活動で、課題を感じていることはありますか?

鳥本:私はSMEでキッズ向けに、エンタテインメントとエデュケーションを組み合わせたエデュテインメント事業に取り組んでいたこともあるのですが、当時はビジネスとしていかにマネタイズするかという視点で事業に取り組んでいました。

いっぽう、SMEの教育支援活動では、純粋に“次の社会を担う子どもたちのために何ができるか”という視点で授業プログラムを考えることができます。「遠隔授業」をはじめ、各プログラムは無償で実施しているものなので、教育格差が生まれることがないところも良い点だと思います。

現在、「遠隔授業」は順調に実施できている反面、ご好評のため2022年2月分までのお申込み分が既に定数に達していて受付が終了しています。このことからも、休止している「会社訪問プログラム」のオンライン化を早く実現させたいと思っています。コロナ禍の終息が一日でも早く訪れることを心から願いつつ、対面とオンライン、両軸でどんどん授業を行なえる仕組みを作ることが今後の課題ですね。その際、学校側も私たちも利用しやすいオンラインツールや環境があると、より広くプログラムを展開できるのではないかと思います。

酒井:環境という視点で言うと、文部科学省が始めたGIGAスクール構想が、その一助になるのではないでしょうか。これからは生徒がひとり1台端末を持つ時代になります。その前提であれば、できることも広がりそうですよね。

望月:「遠隔授業」のインタラクティブ性も、さらに高まると思います。『HyperClass』なら選択式の回答で生徒たちがどの答えを選んだか統計で見られますし、早押し機能などで楽しみながら、授業を受けることも可能です。

鳥本:ちなみに、学習塾以外ではどのような場に導入されているのでしょうか。

望月:『HyperClass』は、語学学習とも相性の良いシステムなので、英語教室、日本語学校などからもお問い合わせをいただくことが多いですね。また、社会人教育との親和性も高いと感じています。生涯学べる教育サービスにおいても、『HyperClass』をご利用いただきたいと思いますし、我々からも積極的にご提案していきたいと考えています。

オンライン授業システムで学びの多様性を実現

──オンライン授業システムは、コロナ禍で広く普及しました。アフターコロナを迎えたとき、オンライン授業はどんな進化を遂げていくと思いますか?

酒井:教育業界はあまり進化が速いほうではありませんが、新型コロナウイルス感染症は強烈なパラダイムシフトをもたらしました。コロナ禍が収まっても、オンラインを主体とするこうした流れが逆行することはないでしょう。とは言え、完全にオンライン授業に移行するとも思っていません。オンラインと対面、それぞれの特性が今回のことで浮き彫りにされたことで、今後は明確な棲み分けがされていくと思います。

望月:オンライン授業の市場も、まだまだ伸びしろがあると感じています。諸説ありますが、この1年で市場規模は20、30%と伸びると言われるほどです。また、オンライン授業は対面授業の代替というだけではなく、成績の管理などまた違った可能性があると思います。

酒井:そんななか、『HyperClass』が目指すべきは、授業前から授業中、授業後までを含めて学びのサイクルを構築すること。それには、その生徒が今どのような状態にあるのか的確に分析し、さらに伸びるためには何をすべきか見定めることが重要です。

もちろん、そこにはその生徒が目指す将来像も関係してきます。ミュージシャンになりたいのか、学者になりたいのかで、当然学ぶべきことも違いますから。生徒一人ひとりの未来を見据え、「今はこの部分が足りないから伸ばしましょう」「この能力が素晴らしいのでもっと伸ばしましょう」と複数のストーリーが描けるようにしたいですね。そういうサジェストを通じて、自分の好きな道、なりたいものに近づけるサイクルを作れたら良いですよね。

──学びの多様性ですね。

酒井:そうですね。私見ですが、今後は決まった職業がなくなると思います。今も、ネイルアーティストやフードコーディネーターのように、ひと昔前には存在しなかった職業がたくさんありますよね。自分の武器やスキルを組み合わせ、何ができるのか探す時代になっていくと思うんです。つまりは「職業・自分」。その人にしかできない仕事をクラフトする時代が訪れるのではないでしょうか。

鳥本:私も、先ほどおふたりがお話ししていたように、対面授業とオンライン授業、それぞれの良さがあると感じています。アフターコロナでもすべてを対面授業に戻すのではなく、対面とオンラインの二軸でプログラムを実施したいですね。学校側や生徒の皆さんの状況に応じて授業形式を選択できるようにできたら良いなと思います。

また、今後は学校だけでなく院内学級など、何かの事情で学校に行けないようなお子さんたちも対象にできる、教育支援活動を推進できたらと考えています。どんなお子さんでも、タブレット1台あれば気軽に私たちとつながれるはず。授業プログラムも、音楽やアニメに限らず、キャラクタービジネスなどソニーミュージックグループが展開するさまざまなエンタテインメント事業に広げていきたいですね。

 

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

関連サイト

ソニー・グローバルエデュケーション
https://www.sonyged.com/ja/

『HyperClass』公式サイト
https://hyperclass.sonyged.com/

ソニー・ミュージックエンタテインメント CSR活動
https://www.sme.co.jp/csr/

一般社団法人 プロフェッショナルをすべての学校に
https://progaku.com/

ソニー・ミュージックエンタテインメントが実施する「遠隔授業」に関する詳細
https://progaku.com/sme-jissen/
※2021年4月~2022年2月分までの遠隔授業については、ご好評につき既に申し込みが終了しております。

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