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連載Cocotame Series

IPを生み出すレシピ

占いアプリ『タロット男子』の制作過程で学べる新規IPを生み出すために必要なこと【前編】

2021.12.15

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「IPビジネス」の源泉となるオリジナルキャラクターや作品を生み出そうとする人たちに焦点を当てる連載企画「IPを生み出すレシピ」。

今回フィーチャーするのは、12月7日にローンチされた完全無料のスマートフォンアプリ『タロット男子 ~22人の見習い占い師~』(以下、『タロット男子』)。ソニーミュージックグループの新規IP創発プロジェクトに参画するアニプレックス(以下、ANX)と、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)の共同制作によって生まれた“イケメンキャラクター×占い”をテーマにした占いアプリだ。

企画の立案からクリエイターの発掘方法まで、あえて過去の実績に頼らない手法を選んだプロジェクトメンバーたち。そこに込められた“新規IP創発”にかける思いと、完全無料のアプリであるがゆえに、今後どのようなビジネス展開を描いているのかについて、企画開発に携わった4人のキーパーソンに話を聞いた。

前編では、『タロット男子』が開発されることになった経緯と、なぜ過去に頼らないという制約が設けられたのかについて語ってもらった。

  • 松永友喜子

    Matsunaga Yukiko

    アニプレックス

  • 泉ありか

    Izumi Arika

    アニプレックス

  • 吉留明子

    Yoshidome Akiko

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 早川洸子

    Hayakawa Hiroko

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

『タロット男子 ~22人の見習い占い師~』とは?

 
タロットカードの大アルカナから顕現した22人のイケメンキャラクターたちが、ユーザーの毎日の運勢を占ってくれる占いアプリ。その日の運勢が占える「今日の占い」や、毎日21時以降に公開される「明日の占い」に加え、ポイントを貯めてテーマ別の特別な占いができる「シュプレムタロット」など、5つの占い項目を楽しめる。また、22人のキャラクターたちと、「明日の占い」や日替わりで7種類用意されている「トランプゲーム」で触れ合い、親密度を高めると特別な衣装や新規ボイスが解放される。広告視聴によってポイントを獲得でき、占いやゲームをプレイしていくことで、キャラクターとの親密度を上げることができる。アプリは広告視聴をベースに、すべてのサービスを完全無料で提供している。

“新しい何か”を生み出すためのチャレンジ

――『タロット男子』は、ソニーミュージックグループ内で発足した「新規IP創発プロジェクト」において、ANXとSCPが共同制作して実現したプロジェクトだと伺いました。具体的にどういった経緯で『タロット男子』は誕生したのでしょうか。

松永:「新規IP創発プロジェクト」自体は2019年にスタートしていて、『タロット男子』の企画は、原形となるものがわりと早い段階で案としては出ていました。ただ、最初はかなり手探りの状態でしたね。

早川:プロジェクトの会議では、それこそほっこりした癒しを与えられる……例えば『すみっコぐらし』のような、愛される新キャラクターを作ろう! というような話もしてましたよね。

松永:そうそう。でも、「新規IP創発プロジェクト」のミッションとして明確にあったのが、“新しい何か”を生み出すということ。方向性は違いますが、ソニーミュージックグループのなかで、同じキャラクタービジネスを手掛けるANXとSCPの両社が協力すると何が生み出せるのか? 「新規IP創発プロジェクト」は、それにチャンレンジする企画でもあったんです。

そこから、さまざまなアイデアを出しつづけ、絞り込まれていった結果、たどり着いたのが“イケメン”と “占い”という、ふたつのキーワードでした。そこで、このふたつを掛け合わせたら新しいコンテンツが生まれるんじゃないかと、さらにアイデアを出し合い、2020年春ごろから本格的にプロジェクトが始動したんです。

コンセプトは癒しを提供する“イケメン×占い”

――確かに“イケメン”と“占い”という組み合わせは、女性層を中心に多くの支持を集めそうなキーワードですね。どなたの発案だったんですか。

松永:“イケメンのキャラクター”を作りたいというのは、吉留さんから。“占い”は早川さんからのアイデアでしたね。

吉留:私はSCPでキャラクター開発の仕事にも携わっているのですが、世代を問わず「イケメンに癒されたい」という夢は、誰でも持っているかなと思ったので(笑)。

早川:“占い”も世代を問わず、性別も問わず、多くの方が興味を持っていると思いますが、なかでも女性からの支持は熱いですよね。実は、私自身も占いにものすごくハマった時期がありまして(笑)。占いというとスピリチュアルなイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちが目指したかったのは、イケメンというテーマと同様に、やはり“癒し”なんです。占いの結果を深刻に捉えるのではなく、“日常を楽しく過ごすための、ちょっとしたアドバイス”として受け取ってもらえるコンテンツが作れたら良いなと思いました。

――はじめからスマートフォンのアプリで展開しようと考えていたんですか?

松永:デジタルコンテンツとしてスタートすることは決めていましたが、最初からアプリをイメージしていたわけではありません。でも、どうせ形にするのなら、イケメンキャラクターが占い師になって、毎日ユーザーを占ってくれたら、よりキャラクターに親しみが湧きやすい。だったら占いアプリが良いよねと、徐々にシフトしていった感じです。

吉留:具体的な内容として、イケメン占い師のキャラクターを何かの占いをモチーフに作ろうという話になったんですが、それがタロット占いに決まるまでは紆余曲折ありましたよね。星座占いなのか四柱推命なのか、もっと別の占いなのかと。

――現在の『タロット男子』のシステムでは、タロットカード占いでよく使用される 「大アルカナ」(タロットカード78枚のうち、0番から21番までの寓意画※が描かれたカードのこと)カードをモチーフにしたイケメンキャラクターが22名登場。ユーザーはそのなかから“推し”の占い師を決め、その彼に日々の占いをしてもらうことで親密度が上がり、特典要素がオープンされていく、育成ゲーム感覚が楽しめる占いアプリです。占い師のモチーフをタロットカードに決めたのは、どういう理由からでしたか?

※寓意画(ぐういが)ある意味を直接的に表わさず、別の物事に託して表わした絵

吉留:理由はふたつあって、タロットカードをモチーフにしたキャラクターコンテンツが世の中にあまりなかったというのがひとつ。もうひとつが、例えば星座占いのように、パーソナルな情報に基づくものをキャラクターに当てはめてしまうと、ユーザーの方はやはり自分の星座キャラクターを“推し”にしたくなってしまう、セレクトに縛りができてしまうかなと思ったんです。

それでは“推し”を選ぶ楽しみが薄れてしまうので、個人の生年月日に左右されない占いはなんだろう? ということで考えて。最終的には、そのときどきの状況に応じて、カードをめくって占うタロット占いが一番ハマるよね、という話になりました。

早川:タロット占いの大アルカナカードには、1枚ごとに“愚者”“魔術師”“運命の輪”など異なる意味やイメージがあるんです。そこがキャラクター化しやすいという判断でしたね。

新しいことに挑戦するためのルールは“過去に頼らない”

――新規IPを作る企画なので、まずはいかに魅力的なキャラクターを生み出すかが大命題だったと思います。そうなると、キャラクターデザイン、イラストをどなたに描いてもらうかは非常に重要なポイントですよね?

松永:そこも難問でしたね。一般的には新規IPであればあるほど、経験豊富で実績のあるイラストレーターの方にお願いするのが、リスクヘッジになると思うのですが……。

――『タロット男子』は違ったのですか?

松永:はい。『タロット男子』は「新規IP創発プロジェクト」として、すべてにおいて“新しさ”と“チャンレンジ”が求められていました。だから、イラストレーターの方も「ツテのある大御所の方々はNG、フレッシュな方で!」という条件が、プロジェクト内にあったんです。上長にも、さまざまな方をプレゼンしたのですが、「もうブレイクしている人はダメ! このプロジェクトは新規IPを生み出そうとしているのだから、自分たちで才能を見付け出しなさい」と却下されました(苦笑)。

早川:そこで、SCPも参加している「東京インターナショナル・ギフト・ショー」や「ライセンシング ジャパン」といった展示会で、クリエイターブースを覗かせてもらったり、pixivでイメージに合いそうな方を探してきて、プロジェクト内でプレゼンをする……ということを、何週にも渡ってやりました。キャラクターイラストが決まらないと、先に進まないので、あの時期は大変でしたね。

泉:私は『タロット男子』のプロジェクトに途中から参加して、吉留さんたちと一緒にキャラクター開発に関わるようになったのですが、ANXでもクリエイターの方を選定するのに、こういう条件が付けられることはなくて驚きました。

ただ、確かにクリエイターの方が有名であればあるほど、“この作品を手掛けた人”という先入観のようなものはできてしまう。『タロット男子』はそうではなく、まだ世に多くの作品は出ていないけど、魅力あるイラストを描ける方と出会うことが命題。なかなか決まらなくて本当に苦労しましたが、その分、すばらしいクリエイターの方と出会うことができました。

――それが、キャラクターデザインを担当された白皙(はくせき)さんだったわけですね。

泉:そうです。残念ながら本日の座談会には参加できなかったのですが、私たちと同じく「新規IP創発プロジェクト」のメンバーで、『タロット男子』の制作に携わっているANXの小田桐(成美)さんが白皙さんの作品を見付けてきて推薦してくれたんです。

――同じく「新規IP創発プロジェクト」から生まれた『ダイナ荘びより』の取材のときに、小田桐さんには我々もお話を伺いました。白皙さんを最初に推薦したのは、小田桐さんだったんですね。

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泉:はい。白皙さんはpixivなどでイラストを発表されているイラストレーターの方で。商業イラストもいくつか描かれていますが、ひとつの作品でこれだけの数のデザインを手掛けられるのは初めてということでした。

吉留:だから最初は、小田桐さんがpixivを経由して白皙さんにコンタクトを取ってくれました。そこから流れができて、『タロット男子』の企画をご相談したら、白皙さんご自身も占いやタロットに興味があるとおっしゃってくださって。最初からフィーリングがとても合いましたね。

――白皙さんにお願いした決め手は何でしたか?

吉留:やはり、描かれるキャラクターが魅力的だったということですね。pixivで発表されているイラストのタッチを拝見して、繊細だけど個性があるキャラクターを上手に描いていただけそうだと思いましたし、ファンタジックな占いの世界観、寓意画っぽい表現をするのにも、絵柄がとても合っていると感じました。

松永:ずっと厳しい意見を言っていた上長も、白皙さんの絵柄はとても気に入って、やっとGOサインが出ました。

22人のキャラクター制作に苦戦

――そこから、現在『タロット男子』公式サイトでも公開中の、タロットの大アルカナカードに対応した22人のキャラクターが制作されていったわけですね。

早川:最初は私たち制作チーム内で、タロットカードの解説本などを基に、各カードにふさわしい性格や人柄を考えていきつつ、タロット占いをよく知っている人でも違和感を覚えないように、アプリ全体の占いを監修してくださっているプロの占い師・ace先生と、さらに細かく打ち合わせをして、各カードのキャラクター設定を詰めていきました。

泉:その設定を基に、アニメでいうシリーズ構成のような立場でふたりのライターの方に入っていただいて、キャラクターの性格設定や衣装のアイデアなどの肉付けをしてもらっています。よりユーザーの心を掴むキャラクターにするには、どういう見た目で、どういう萌え要素が必要か。そこであがってきたものを、またace先生に監修いただくというかたちで進んでいきました。

松永:ありがたかったのは、ace先生もイケメンキャラクターの萌え要素や“推し”のカルチャーに造詣が深かったことです。例えば「塔」のカードには“悲嘆、災難、不名誉、転落”という意味があるんですが、ace先生は「塔」をキャラクターにするなら子どもっぽいルックスのほうが、込められた意味を背負いすぎなくて良いとアドバイスをもらいました。そういうace先生のイメージもかなり反映してもらっています。

ディザスタ・バベル(CV:榊原優希)カード:塔

早川:タロット占いは、カードをめくったときに、絵柄がどの方向になっているかで意味が大きく変わるんですが、「塔」は正位置も逆位置も良くないカードなんですよね。カードの意味も含めて、キャラクターをどう差別化したら良いか、ace先生もかなり考えてくださいました。

吉留:そういう詳細なキャラクター設定を、白皙さんにお渡ししてキャラクターデザインをしていただいたのですが、白皙さんご自身がタロット好きなので、お渡しした設定テキストだけで、私たちが求めているキャラクター像を深く理解してくださって。22人分のデザインという物量には驚かれていましたが、あがってきたキャラクターデザインは、ほぼすべて一発OKでした。

――大アルカナカードには「死神」のように擬人化しやすい形のあるものをモチーフにしたカード以外に、とても抽象的なものもありますよね。「運命の輪」とか。

松永:確かにそうですね。「運命の輪」は白皙さんもおそらく一番悩まれたカードだったと思います。“一か八か”みたいな意味のあるカードでもあるので、ギャンブル好きのキャラクターになっていますが、あまりにも人のイメージが湧きにくい。

ロット・シックザール(CV:坂 泰斗)カード:運命の輪

そういうイメージが漠然としたカードが何枚かある上に、22人分を一気に作るのも大変。これが星座占いをモチーフにしていたなら、12で済むんですよね。……だから誰もタロットカードのキャラクター化をしてこなかったんだなと、そこではたと気付きました(笑)。

タロット男子たちの相関関係を徹底的に作り込む

――ほかにタロットカードのキャラクター化で、苦労されたことは?

泉:キャラクター同士の相関関係を考えるのも大変な作業でしたね。この『タロット男子』は、ユーザーが異世界の城「アルカナ・グレイス城」に迷い込み、そこで22人の見目麗しい見習い占い師と出会い……というイントロダクションがあって、その城のなかにある「リビングルーム」では、くつろいでいるふたりのキャラクター同士の会話を見ることができるんです。ちょっとしたサービスコーナーではありますが、会話をさせるからには、彼らの関係性が垣間見えないとやっぱり面白くない。

松永:そこで、22人のキャラクター全員が、ほかのキャラクターとどういう関係性なのかを、総当たりで考えていきました。この人とこの人は仲良しだけど、こっちのキャラとはあまり仲が良くないとか、お互いがお互いをどう思っているのか、相関図も作りましたよ(笑)。

泉:これだけの人数なので、ものすごく膨大な量の相関図になりましたよね……。

松永:ビジュアルを含め、キャラクター性を重視するファンは、大きく二通りの楽しみ方をしている人が多いと思います。ひとつは、キャラクター単体をとことん好きになることと、もうひとつがキャラクター同士の絡みを見ているのが好きということ。

――男子同士のわちゃわちゃ感や、特定のふたりの仲良し感を楽しみたい方に向けた要素でもあるんですね。

松永:はい。『タロット男子』はどちらの需要にも応えられるように作っています。

早川:そう言えば、どのキャラクターたちを仲良しにしようか? というのを決めるのに、リモートとリアル、両方でミーティングを重ねました。チーム内には男性もいますが、キャラの組み合わせのアイデアや会話の内容について、私たちが「それ、わかるー!」と盛り上がっている横で、しーんとなっていましたよね(笑)。

吉留:私たちで話していると、やっぱりそういう感覚の共有は早くて(笑)。その上で、じっくりみんなで話し合って決めていったので、ユーザーの皆さんにも「リビングルーム」の会話は楽しみにしていただきたいですね。会話から彼らの日常生活を想像してみるのも楽しいですから。

後編につづく

文・取材:阿部美香
撮影:干川修

©2021 Tarodan

タロット男子 ~22人の見習い占い師~

ジャンル:占い育成アプリ
対応OS:iOS/Android
価格:完全無料
 
ダウンロードはこちら
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関連サイト

『タロット男子 ~22人の見習い占い師~』公式サイト
https://tarodan.com/(新しいタブで開く)
 
『タロット男子 ~22人の見習い占い師~』公式Twitterアカウント
https://twitter.com/tarotdanshi(新しいタブで開く)
 
アニプレックス YouTube チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC14QT5j2nQI8lKBCGtrrBQA(新しいタブで開く)

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