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ソーシャルメディアでの挑戦

「ヨワネハキ」のヒットで一躍人気物件となった『MAISONdes』の試み【後編】

2022.01.28

ソーシャルメディアでクリエイティブを発揮する新プロジェクトをフィーチャ―する連載「ソーシャルメディアでの挑戦」。

2021年5月に発表した第5弾楽曲「ヨワネハキ feat.和ぬか,asmi」が大ヒットとなり、YouTubeチャンネルの登録者数10万人を突破した『MAISONdes(メゾン・デ)』。今回は、この“架空のアパート”の管理人が『MAISONdes』を解説。誕生の経緯から今後の展望までを語る。

後編では、楽曲制作の裏側と狙い、今後のビジョンなどを聞く。

  • MAISONdes 管理人

入居基準は6畳半の歌を作れる人、歌える人

――(前編からつづく)『MAISONdes』の住人であるアーティストやクリエイターは、どうやって選んでるのでしょうか?

最初はこちらからお声掛けしていました。管理人が入居者を募集するっていう形なんですけど、去年の夏くらいから、「良いコンセプトなので入らせてください」って言ってくれる方も増えました。

――入居基準はありますか?

ないですね(笑)。ただ、なるべくほかにはない組み合わせにしたいなとは思っています。ひと言で“ネット系”と括られるもののなかにも、いろいろな形があるんだよってことを見せたいし、裏テーマとしては、クリエイターや歌い手の方たちの、パブリックイメージとは異なる一面を見せてあげられる組み合わせになるように心掛けてます。あとは、6畳半の歌を作れる人、歌える人っていう基準で選んでます。

――第1弾「Hello/Hello」は、歌い手がyama、楽曲制作が泣き虫☔というコラボでした。

yamaさんの最初の5曲くらいはくじらくんが作っていました。「春を告げる」の歌詞、“深夜東京の6畳半”に代表されるように、シティポップっぽい音や、2020年版のボカロサウンド……というか、くじらサウンドみたいなイメージが強かったんです。でも、yamaさんは感情的な声をしてるので、エモーショナルなギターロックを歌ったらきっと素敵だろうなと思って、泣き虫☔さんにお願いして。良くできた曲だと思います。

【101】[feat.yama,泣き虫☔️] Hello/Hello / MAISONdes

――第2弾「For ten minutes, for a hundred yen」での、シンガーソングライターのさとうもかとくじらの組み合わせも意外でした。

【310】[feat. さとうもか, くじら] For ten minutes, for a hundred yen / MAISONdes

くじらくん自身も、とは言えボカロPというか、インターネットミュージックの人というスタンスだったと思うんですけど、彼は人が歌う曲を作るのも上手で。そのボーカリストの歌声の最も心地良い部分や日本語が聞こえやすい部分を大事にして、おおよそボカロPっぽくない、もっとフィジカルな音楽の人っぽい考え方なんです。

さとうもか

普通にボカロっぽい曲を“歌ってみた”で発信している人や、ネットカルチャーのなかにいる人を組み合わせても面白くないなと思ったので、その文化圏にいない人に向けて曲を作ってもらいました。さとうもかさんはライブハウスっぽい匂いのする人で、くじらくんとコラボする歌い手選びはその辺りを意識してました。

「ヨワネハキ」は最初からパワーがあった

――「ヨワネハキ」のasmiもシンガーソングライターです。和ぬかは、2022年のauのCMにも起用されることになりましたが、楽曲を発表した当初はヒットすると思っていましたか?

ヒットすると思っていましたが、ここまでとは予想してなかったですね。もちろん、全部の曲に対して可能性を感じているし、やれることは全部やってるんですけど、これほどまでになるとは思ってなかったです、正直。

――YouTubeだけで視聴回数が3,000万回を突破してます。

この曲のおかげでYouTubeチャンネル登録者数も増えました。最初の曲を出したとき、すぐに10万人くらいはいくんじゃないかと思ってたんですよ。でも全然いかなくて。yamaさんとくじらくんに参加してもらってるのにこの数字ってことは、これはいよいよ世間から「意味がわからない」って思われているんだろうなと感じて。もう可能性がないかな……と思うこともありました。

でも「ヨワネハキ」を発表した直後からいろんな数字がほんの少しずつ増えはじめて、小さな一歩ですけど、チャンネル登録者数が1万人を超えたんですね。それで、これは何かあるかもしれないと思って、その次の曲を出したときに、初動の数字がこれまでに比べて一気に3倍まで伸びたんです。何者でもなかったところから、ちょっと認識され始めたかもしれないなという感触はありました。そういう意味では、「ヨワネハキ」は公開したときからパワーがあるなとは思っていました。

――2021年、TikTokで最も投稿された楽曲という認定もされました。最初からTikTokをはじめとしたSNSで、“歌ってみた”や“踊ってみた”などへのアプローチも視野にあったんでしょうか。

そうですね。冒頭で言ったように、音楽が“スナックカルチャー”になり、“聴くものから見るもの”になりつつあるなかで、今は“使うもの”にもなっている。使われる音楽じゃないと、ドラマやCMのタイアップなど半強制的に接点があるものじゃない限り、何もないところから広がることはないんだろうなと思ってます。これもすぐに変わるかもしれないので、2021年はそうだったんだくらいの気持ちではありますが。

――『MAISONdes』のターゲットもTikTokを頻繁に使う世代ですよね。

16歳から20歳くらいですね。その人たちに伝わることが最も重要だと思っています。

――Z世代向けと言って良いでしょうか。

そう言われることが多いですね。ただ、私は“Z世代”という言葉として意識していたわけではなくて、何かの目的を持ってひとり暮らしを始める、それまでの生活圏を離れて都市部に近付くのが早くて16歳から20歳くらいの幅かな、と思って、その世代を意識していました。

『MAISONdes』の“住人”アーティストにも言ってるんですけど、私はここから発信される音楽は“みんなの歌”にならなくて良いと思っていて。どこかの、誰かひとりだけのための歌で良い。だから、MAISONdesの曲が全部好きという人はいなくても良いと思っています。それよりも、“この曲は私のための歌だ”って思ってもらえる人がひとりでもいてくれると良いなって。本当に、ひとりの人にお手紙を書く気持ちというか。

もちろんコロナ禍でひとりの時間が増えたのもあると思うんですが、今、必要とされているのは、みんなで共有する歌じゃなくて、私のための歌だと思ってもらえる曲だと思うんです。そういう意味では、Z世代に向けてではなく、あなただけのための歌を、という気持ちで音楽を発信しています。

『MAISONdes』の住人たち(2022年1月現在)

――2021年6月リリースの「ダンス・ダンス・ダダ」のMisumiによるリミックスを10月にリリースしたのを皮切りに、12月には「ヨワネハキ」のリミックスも発表しています。

今は邦楽でも、ひとつの曲が売れるとリミックスを何曲も出すのが主流になってきました。なので、『MAISONdes』でも“Re:MAISONdes”というシリーズを始めました。

【Re: 102号室】「ヨワネハキ(Snowdrop mix) feat. 和ぬか, asmi, Taro Ishida」

とにかく1カ月に1曲は何かしら発表したいので、リミックスをやろうっていうのが発端ですね。リリースの際にレコード店でCDを面出ししてもらうのと同じで、サブスクのトップページに出してもらうのは非常に大事なんです。そのためにはとにかく出しつづけないといけないので、今後も可能性のあるものはリミックスを出していきたいと思っています。

これまでとはターゲットを変えた、B棟を作ることも可能

――『MAISONdes』の認知度が上がるなか、これからの展開はどう考えていますか?

管理人としては、曲を出すことくらいしかやることがないんですね。すごくシンプルな構造なので、引きつづきコンセプトをぶれさせずに作品を出していきたいです。歌い手やクリエイターのマッチングは自由度も高いし、形がないからこそできるいろんなトライアルもある。そもそも実験の場として作ったものだから、失うものは何もないと考えています。

仮に『MAISONdes』が取り壊されることになっても、路頭に迷うアーティストはいない。だから、このまま実験を繰り返していければ良いなと考えています。あとは、空き部屋はいっぱいありますから、企業のPRの場にもしやすいと思うので、そういう意味でのコラボレーションもできると良いですね。大きなアパートになるのが理想で、この箱が成熟すれば、できることが増えていくのではないかと思います。

――できることとは?

例えば、ターゲットを変えて、『MAISONdes』のB棟を作ることも可能ですよね。今はアーティストとクリエイターがコラボしていますが、曲とアーティストのコラボがあっても良い。つまりカバーという考え方ですね。2021年は、数年前に発表された楽曲が、カバーされることでバイラルヒットした例がいくつかありました。4naの「hazama」やKotohaの「真生活(feat.案山子)」などです。

これらも、元々は初音ミクを使って発表された、知る人ぞ知る曲だったんです。カバーであることを隠してるわけじゃないけど、聴いてる人はカバーとは思ってない。そういうカバー曲の掘り起こしを考えています。いつの時代にできて誰が作ったかは、ユーザーにとってはどうでもいいことだと思うので、埋もれている曲を、今のアーティスト、最前線にいる表現者とコラボさせたいなと思っています。

――「ヨワネハキ」のasmiは、YouTubeチャンネルの“THE FIRST TAKE”にも登場しましたが、『MAISONdes』からも歌い手やプロデューサーの人気者が出てくる、登竜門的な存在になることを目指してますか?

MAISONdes - ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi / THE FIRST TAKE

そうですね。『MAISONdes』のブランドが成熟したあかつきには、“ヒット新人輩出ブランド”にもなれたら良いなと思ってます。特に新人のアーティストは、どんなに才能が豊かでも、リーチ数を稼げるツールを用意しなければ、ヒットするチャンスに結び付けるのが難しい。そして、アーティストやクリエイターとパートナーシップを結んで何かを試そうとする第三者、例えばレーベルと呼ばれるものなどは、独自のそういったツールを複数揃えていなければ、今後は存在意義が問われてくると思います。

音楽を作るのにも、ディストリビューションするのにもコストがかからなくなってきたし、メディアの力を使って宣伝してもうまくいかないこともあるとなると、レコード会社の役割は何なんだってことになる。だから、“ここから発信されているものはイケてる”と、ユーザーから信頼されるものを作らないといけないという強い危機感があります。音楽を届ける立場にいる者として、できることの可能性をひとつでも増やしていきたいですね。

 
文・取材:永堀アツオ

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