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ミュージアム~アートとエンタメが交差する場所

新企画展「しあわせは、みんなの笑顔」もスタートした『スヌーピーミュージアム』の現在地【後編】

2022.02.15

連載企画「ミュージアム ~アートとエンタメが交差する場所」では、アーティストや作品の魅力を最大限に演出し、観る者の心に何かを訴えかける空間を創り出す人々にスポットを当てる。

今回取り上げるのは、今では国内の『ピーナッツ』ファンの聖地と言われる『スヌーピーミュージアム』。1月15日から新たな企画展「しあわせは、みんなの笑顔」が始まり、スヌーピーやピーナッツ・ギャングが訪れた人々に笑顔の輪を広げている。この企画展の見どころを紹介するとともに、クリエイティブ・ディレクターの草刈大介氏に、企画の狙い、そしてコロナ禍の今、ミュージアムが果たす役割について話を聞いた。

後編では、南町田グランベリーパークに移転してからの『スヌーピーミュージアム』の様子と、ミュージアムというカルチャーのこれからについて語ってもらった。

  • 草刈大介氏

    Kusakari Daisuke

    『スヌーピーミュージアム』クリエイティブ・ディレクター

シュルツさんがプレゼントした『ピーナッツ』の原画

──(前編からつづく)館内に展示された原画には、上部にシュルツ氏直筆のメッセージが入っているものがありましたが、あれは何が書かれているのでしょうか。

シュルツさんが描いた『ピーナッツ』の原画は、新聞に掲載されてから返却されていましたが、シュルツさんは周りの友人や知人の方に、その原画をよくプレゼントされていたんです。その際、相手の名前と自分の名前、そして「Best Wishes」(手紙などを締めくくる言葉)と書いていたんですよね。

ただ、アメリカの『シュルツ美術館』では、そうして世界に散らばった『ピーナッツ』の原画を保全するために、散らばった作品を集める活動も行なっています。なかには原画をプレゼントされた方が、「そういうことであれば」と『シュルツ美術館』に寄贈されるケースもあるそうで、現在は、コミックの原画17,897点のうち約8,000点が『シュルツ美術館』で所蔵されています。

──原画を人にプレゼントしてしまうというのは驚きですね。

日本でもそうですが、原画が貴重なものだという認識になったのは実は最近のことで、1980年の後半ぐらいからだと思います。もちろんシュルツさんが手元に残していた原画もありますが、なくなってしまったものもたくさんあって。なかでも、連載が始まったばかりの1950年代のコミックは、ほとんど見付からないようですね。

連載から1カ月分くらいのコミックの原画は散逸してしまっているので、それこそコミック第1話の原画が見付かったら、とんでもない価値になるのではないでしょうか。

南町田グランベリーパークに移転してからの『スヌーピーミュージアム』

──今回の企画展「しあわせは、みんなの笑顔」では、6カテゴリの展示を行なっています。なかでもおすすめはありますか?

“おかしみ”ということで言えば、「笑わせておくれよ、チャーリー・ブラウン」ですかね。チャーリー・ブラウンは本当にかわいそうなんですよ。「なんでここまで?」というくらいダメに描かれることがあって(苦笑)。そんなふうにチャーリー・ブラウンを描きつづけるシュルツさんも面白いですし、シュルツさん自身、彼に相当な愛着があったのではないでしょうか。

あと、カテゴリの最後に展示されている「スマイルの連鎖」も個人的におすすめですね。誰かの笑顔につられて微笑んでしまう素敵な話もあれば、ひどい話も含まれていて、振れ幅があるのが面白いです。“笑いはひとりのものじゃない”というメッセージに勇気づけられますね。

──草刈さんは、六本木のころから『スヌーピーミュージアム』のクリエイティブ・ディレクターを務められています。南町田グランベリーパークに移ってから、『スヌーピーミュージアム』に変化はありましたか?

六本木ではスペースの都合で実現できませんでしたが、南町田グランベリーパークに移転して常設展を設置することができました。「『ピーナッツ』ってどんな作品ですか?」「作者のシュルツさんはどんな人物ですか?」「『ピーナッツ』にはどんなキャラクターがいますか?」という、作品に触れる上で、基本的で重要な説明のためにワンフロアを割くことができている。これは専門のミュージアムとして、とても大事なことだと思っています。

『スヌーピーミュージアム』の常設展。

ただ、コロナ禍になってしまったのは本当に悔やまれます。郊外の南町田に移転することでイメージが変わり、お客さんが少なくなることもあるのかなと思いきや、2019年12月のリニューアルオープン当初は六本木のころよりも来館者が増えたんです。

その後は皆さんもご承知の通りですが、再オープンしても皆さんがどこか漠然とした不安や心配を持っていらっしゃるんじゃないかと想像してしまうんですよね。そんな心の底から自分の好きなものを楽しめない空気感、それが歯がゆかったのもあって、今回の企画展にたどり着いたという側面もあります。

──常設展の内容は、オープン当初から変わっていないのでしょうか。

「オープニング・シアター」の映像は、開館から1年ぐらいで変えるという構想もあったんですが、まだ来館がかなっていない方も多くいらっしゃるので変えていません。基本的には、常設展を細かく変えるより、半年を目安に企画展を入れ換えて、何度も楽しんでいただくという方針です。

ピーナッツ・ギャングがお出迎えする「オープニング・シアター」。

ミュージアムが提供するものとそこにある価値

──改めて『スヌーピーミュージアム』は、『ピーナッツ』というコンテンツにおいてどんな役割をはたす場所だとお考えですか。草刈さん個人のご意見をお聞かせください。

『ピーナッツ』というコンテンツにおける役割としては、やっぱり元気であることが大事だと思います。『スヌーピーミュージアム』が精力的に活動をつづけていること、オープンしていること自体が、『ピーナッツ』を愛するファンの方や、携わる関係者が健康であることのバロメーターだと思うんですね。

「ミュージアムの企画や展示が変わった」という情報が届けば、たとえこの場に来られなくても「ああ、『スヌーピーミュージアム』が盛り上がっているな」とわかり、ファンの皆さんにも元気が伝わるはず。『ピーナッツ』という作品を愛するすべての人の大きな掲示板のような存在ではないでしょうか。

──昨年12月までは、『スヌーピーミュージアム』でもオンライン体験を提供していました。オンラインから先を見据えると、ミュージアムのようなカルチャーを伝える場でもメタバース(仮想空間)のような可能性が広がりつつあるなか、リアルな体験を重視する既存のミュージアムはどうあるべきだとお考えですか。

展覧会というのは、ひとつの商品でもあります。ミュージアムという展示会場にわざわざ足を運んでもらって、ある空間のなかで作品を観てもらい、グッズなどのお楽しみはありますが、物理的には何も持って帰らない。こうした体験に、それなりの金額を払っていただくわけです。

例えばイラスト集なら、ネットでワンクリックで買えて、どこでも読めるし、本というものが手元に残ります。それに比べると、会場に来てもらうのは簡単なことではありません。いつ行くのか、誰と行くのか、スケジュールを調整して、予定表に書いてもらう。そして実際にミュージアムに行くことを実行してもらう。それには、結構な熱量が必要です。

内覧会では、プレスの方々に展示の意図をご説明しましたが、一般の方々はご自身で理解しなければいけない。約60点の作品が並ぶ会場をぐるっと回って、「このぐらいの広さなのか」「こういう配置なのか」と全体を把握して、そこからテキストを読んで、一つひとつ作品を観て「なるほど」となる。これって意外と骨が折れる作業ですよね。

でも、それが商品として成立していることに僕は興味があるし、希望もあると思っています。興味のない人からすれば面倒だと思われるような行為のなかに、日ごろ得られない何かがある。そう思うから、人は展覧会に行くんでしょう。会場に着くまでの間にも、気持ちがセットされていきますよね。「私は今日これを見に行くんだ」と思い、友達とも道すがら会話をする。素地ができて、温まっていって、能動的に作品を観て、その人なりの何かを感じる。

もちろん、それによって急に教養が高まるわけではないし、自分がクリエイティビティにあふれるわけでもない。だけど、「自分はこういうのが好きだな」とか、「こういう視点を持っているんだ」と感じて、自分が自分であることを確認できる。

ミュージアムに行くという行為は、美しい、おかしい、悲しい、いろんな感情が入り混じったなんだかわかんないものを得ようとする営みであり、生きるために必要な栄養のようなものだと思うんです。

僕はこういう仕事をしていながらも、アートや文学が万人に必要だとは思っていません。こうしたものを必要とするのは、何かで悩んだり、苦しんだりしている人なんじゃないかと思うんです。実際、僕自身もそうなので。そして僕がこの仕事をしているのも、自分が展覧会というものを通じて何が得られるのかを知りたいから。それが一番の原動力ですし、そこに対しては追求しつづけていきたいです。

僕自身は、ミュージアムや展覧会というパッケージには、まだまだたくさんの可能性があると思っています。ただ作品が並んで説明があって「好きに観てください」というのではなく、展示という体験に関しては、もう一歩突っ込んだプレゼンテーションができると考えています。ある空間のなかで、能動的なアクションも含めて、どういう観え方、どういうストーリーを作り、どんな体験を持って帰ってもらうのか、まだまだやれること、やるべきことがあると思います。

──最後に、ミュージアムというカルチャーを、どのように次世代へとつないでいくべきか、ご意見を聞かせてください。

ミュージアムって、すごく良くできた場所だなと改めて感じます。例えば、この取材を受けている「PEANUTS Cafe」もそうですが、普通の場所って、周りにはいろんな音や情報があふれていて、人はそのなかから対象を選んでいます。

でも、ミュージアムは見せたいものだけを見せられる場所なんですね。白い壁にしているのは、作品だけに集中するため。何もない状態にして、絵だけを観られるのがミュージアムの、ホワイトキューブ(余計な装飾のない、白い立方体のような展示空間)のすごいところです。VRではなかなか同じようにはいかないでしょう。そういう意味でも、ミュージアムは今後も成立していくと思います。

文・取材:野本由起
撮影:篠田麦也

©Peanuts Worldwide LLC

『スヌーピーミュージアム』(町田)

所在地:東京都町田市鶴間3-1-1
アクセス:東急田園都市線・南町田グランベリーパーク駅より徒歩4分
東名高速道路・横浜町田ICより約1km
 
休館日:2月15日(火)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
 
【入館料】
一般・大学生:1,800円(前売券)/2,000円(当日券)
中学・高校生:800円(前売券)/1,000円(当日券)
4歳~小学生:400円(前売券)/600円(当日券)
 
スヌーピーミュージアムでは、日時指定の前売券を販売
当日券は、前売券の販売状況に余裕のある場合にミュージアムの窓口にて販売
 
チケットは、イープラスにて販売中(先着順)
https://eplus.jp/sf/word/0000136396
ワークショップのチケットは、パスマーケットにて販売中
https://snoopymuseum.tokyo/s/smt/group/list?ima=0000&cd=workshop
 
PEANUTS Cafe スヌーピーミュージアム
営業時間:10:00~19:00(ラストオーダーは18:00)
席数:90席

関連サイト

『スヌーピーミュージアム』公式サイト
https://www.snoopymuseum.tokyo/
 
『スヌーピーミュージアム』公式Instagram
https://www.instagram.com/snoopymuseumtokyo/
 
シュルツ100公式サイト
https://snoopymuseum.tokyo/s/smt/page/schulz100_1
 
日本のスヌーピー公式サイト
https://www.snoopy.co.jp/
 
日本のスヌーピー公式Facebookページ「Snoopy Japan」
https://www.facebook.com/SnoopyJapan
 
日本のスヌーピー公式Twitterアカウント「Snoopy Japan」
https://twitter.com/snoopyjapan

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