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連載Cocotame Series

エンタメに効くアプリ

音声と位置情報でどんなエンタメが生まれる?『Locatone』の可能性をクリエイターが語る【後編】

2022.12.30

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エンタテインメントを活性化させるアプリをフィーチャーする連載企画「エンタメに効くアプリ」。

今回は『Locatone Creator Contest 2022』で、見事グランプリと特別賞を受賞した3組のクリエイターをフィーチャーする。マップ上にある特定のスポットを訪れると、自動的に聞こえてくる音声や音楽とともに、現実世界を散策できる「Sound AR」を楽しむアプリ『Locatone(ロケトーン)』。

『Locatone Creator Contest 2022』は、その『Locatone』が今年の夏から秋にかけて渋谷区が主催した「渋谷芸術祭2022」とのコラボで開催するクリエイターの発掘を目的とした公募コンテンストだ。

『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』でグランプリを受賞した寺田忠勝氏、『バーチャル渋谷ライブ!~オンザストリート~』(以下、バーチャル渋谷ライブ!)で特別賞(アイディア賞)を受賞したチーム・TAKAHASHI×2の内海覚氏と梶田雄太郎氏、『永遠神剣外伝 異世界のヘリオン -Helion The Another Real World-』(以下、異世界のヘリオン)で特別賞(オーディエンス賞)を受賞した高瀬奈緒文氏に、受賞作の開発秘話と、『Locatone』を活用したコンテンツの魅力を語ってもらった。

後編では、『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』の制作ストーリーと、3組のクリエイターが感じた『Locatone』の可能性について話を聞いた。

  • 寺田忠勝氏

    Terada Tadakatsu

    『Locatone Creator Contest 2022』グランプリ受賞作品『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』制作者。

  • 内海覚氏(TAKAHASHI×2)

    Utsumi Satoshi

    『Locatone Creator Contest 2022』特別賞・アイディア賞受賞作品『バーチャル渋谷ライブ!~オンザストリート~』制作者。

  • 梶田雄太郎氏(TAKAHASHI×2)

    Kajita Yutaro

    『Locatone Creator Contest 2022』特別賞・アイディア賞受賞作品『バーチャル渋谷ライブ!~オンザストリート~」制作者。

  • 高瀬奈緒文氏

    Takase Naofumi

    『Locatone Creator Contest 2022』特別賞・オーディエンス賞受賞作品『永遠神剣外伝異世界のヘリオン -Helion The Another Real World-』制作者。

目に見えない“渋谷川”を神様と楽しく学ぶ『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』

――(前編からつづく)グランプリを受賞された寺田さんの『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』は、都市開発化されたことで、現在は一部しか地上で流れているところを見ることができない、暗渠(あんきょ:地下に埋設した水路)となった“渋谷川”の水脈を、川の音やキャラクターが紡ぐ物語、解説を聴きながら辿ることができる作品です。この作品のテーマはどこから生まれたのでしょうか。

寺田:まず、与えられたテーマが渋谷の街歩きだったというのが一番大きいのですが、『Locatone』はそもそも“音”がコンテンツ体験において重要な要素になっているので、目に見える情報を扱うのではつまらないと考えました。以前、僕自身が渋谷川について興味を持った時期があり調べたことがあったので、“目に見えないものを聞かせる”ツアーにすれば、オリジナリティがあるものが作れるのではないかと。

現在も渋谷は様変わり中で、駅直結の新しいビルが「渋谷ストリーム」だったり、渋谷川にまつわる施設名が付いていますが、個人的にはもっと“この街にはこういう歴史があったんだ”という気付きや、余韻を感じてもらえるコンテンツがあっても良いのではないかと感じていました。『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』のツアー体験を通じて、それを皆さんに提供できたら良いなと考えたんです。

――美術館や博物館の音声ガイドツアーのように、ポイントごとに単純に解説を聴かせるのではなく、渋谷川の神様や守り人というキャラクターの会話を楽しみながら、見えない渋谷川の流れを追って歩いて行く物語が楽しいですね。民話や神話の世界に入り込んだようで。

渋谷川の神様・シブヤと出会う「渋谷ストリーム」の広場。

寺田:歴史を真面目に語るだけでは飽きられてしまうと思ったので、キャラクターに代弁させる方法は最初から考えていました。ただ、アニメ風のキャラクターに徹してしまうとプレイしてくれる方の幅も狭まってしまうと思ったので、童話的というか、少しファンタジー寄りの話にしたんです。知識一辺倒にもなりすぎず、キャラクター自身の物語も掘り下げつつ……というその辺のバランスは結構チューニングしました。

――キャラクター達の会話が聴ける場所を、渋谷川の流れを辿るルートのなかでどこに配置するかもポイントだったかと思います。『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』の場合は、ひとつのスポットで流れてくる音声が長いものでは7分、8分あるものもあり、次に目指すポイントまでの距離や時間も、絶妙に計算されているように感じました。

寺田:そこは一番意識しましたし、苦労したところですね。私自身は歩くのが速いほうなので、もっとゆっくりのペースならこのくらいかなという、ベースとなるスポットを事前に考え、その間を何度も歩いて決めていきました。でも、ポイントとポイントを結ぶルートも何種類も考えられるので、それらも実地で検証しています。

――やはりフィールドワークは大事な作業なんですね。

寺田:会話劇の合間には、ランダムボイス、ハプニング的な音も入れて、飽きずに散策を楽しんでいただきたかったので、ポイント間の距離もかなり計算しました。遊びの間を作りつつ、一番気持ち良く音声を聞いてもらうには何分くらいが良いだろう? というのをベースに、脚本を起こして組んでいきました。

ただ、地図上では近く見えても、特に渋谷駅周辺は再開発が日々進んでいるので、企画書上ではスポットにしていた場所も、実際にロケハンをしてみたら、行きにくいというところもあって、泣く泣く変更したということもありました。

――常に進化する渋谷という街ならではの苦労ですね。

寺田:欲を言えば、「Locatone Studio」上でルートを実際に歩くスピードを設定してシミュレートできる機能を追加してもらえれば、さらに制作者サイドは楽になるなと思いました。

――ハプニング的な音と言えば、水溜まりをパシャパシャ歩いているような水音が聞こえる場所が印象的でした。これはTAKAHASHI×2のおふたりが、手拍子サウンドとして活用していたスマートフォンのモーションセンサーと連動した演出機能ですね。

寺田:今回、コンテストの応募作品を制作するにあたって、『Locatone』の運営サイドからの制作サポートがあり、私は声優の方のキャスティングサポートと、効果音として使えるオーディオストックの音源サポートをお願いしました。そのオーディオストックのなかから、ちょうど良い“パシャパシャ”の音源を探して使用しています。そして探した音を実際にモーションセンサーに当て込んでみて、歩いてる感覚に一番合う“パシャパシャ”の入れ方を、ひたすら生身で検証しました(笑)。やはり川を辿っている感覚、自然を感じていただきたかったので、そこもかなりこだわっています。

クリエイター視点からの『Locatone』コンテンツの可能性

――こうして開発秘話をお聞きしてから作品をプレイすると、一層楽しみ方が深まりますね。皆さんの作品も、個々の世界観のジャンルや遊び方のテイスト、遊んでみた印象も異なっていて、とても個性的でした。お互いに気になったポイントもあったかと思いますがいかがですか?

高瀬:今回私は、渋谷をゲームの舞台として考えていきましたが、寺田さんの『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』の企画は、まさにこのコンテストにぴったりで、「これだ!」と思ったんですよ。渋谷を散策するのにふさわしいテーマだと、その着眼点に本当に感心しました。

梶田(TAKAHASHI×2):キャラクターも皆さん工夫されていて、高瀬さんの作品は、アニメファンやゲームファン、アイドルファンにも訴えかけるものですし、寺田さんの作品は幅広い層から支持が得られると思いました。

内海(TAKAHASHI×2):『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』の世界観は、メルヘンな雰囲気もあって、妖怪好きな方にも刺さるんじゃないかと。僕はアニメにもなった『夏目友人帳』が大好きなので、その視点でも惹かれましたね。

『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』に登場する守り人たち。

梶田(TAKAHASHI×2):『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』は、渋谷の稲荷橋広場を出発して、最終的には明治神宮まで歩くので、それなりの距離を歩くことになるのですが、歩くときに鳴る水音を聞くとすごく爽やかな気持ちになれて、疲れも癒されますよね(笑)。

寺田:少しでも普段と違う景色を感じてもらえたらうれしいですね。

梶田(TAKAHASHI×2):『異世界のヘリオン』も、普段見ている渋谷の景色が変わる感覚がありました。『Locatone』でも、ゲーム性のある作品が作れるんだという発見もありましたし、イベントのポイントが細かいのもすごいなと思いましたね。

寺田:『異世界のヘリオン』は、マップを開いた瞬間、ポイントの多さに圧倒されました(笑)。『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』の3倍以上ですから、これをおひとりで作られたのは本当にすごいです。

高瀬:あれは、僕が「Locatone Studio」ツールの仕様を理解しきれていなかった弊害なんです(苦笑)。TAKAHASHI×2のおふたりが先ほど「隠しポイント」を置いていることを話されていましたが、マップ上でポイントの可視化がオン、オフできると知ったのが、実作業に入ってしばらくしてからだったんです。で、締め切りまでに直そうと思ってたら、手が回らなくなりました(苦笑)。ミッションごと、ステージごとにポイントが見えるようにすれば、もっと遊びやすくなると思うので、次の機会にはしっかり取り入れたいと思います。

寺田:あと先ほど、高瀬さんのお話で「ストーリーを分岐させたい」というご意見がありましたが、私もそれは欲しかったですね。ただ、高瀬さんはそこを音声の指示などで工夫して擬似的に分岐を作られていたのがすごい。街を歩くというシステムを上手に利用されているのが、さすがだなと思いました。

そして『バーチャル渋谷ライブ!』も街歩きならではのアイデアですよね。ライブ会場で音楽を狙って聴きに行くんじゃなくて、「あ、こんな曲があるんだ」という偶然の出会いが、ストリートライブというテーマの下に上手く作られていて、空間設計を仕事にしている身としても、興味深く体験させてもらいました。

高瀬:『Locatone Creator Contest 2022』に参加して、いろいろな発想に触れることができたのも良かったです。次に作るとしたら、こういうことができそうだとか、こういうところに気を付けたいという考えも浮かびますし。『Locatone』自体の可能性も広がりますよね。

全国各地で『Locatone』オリジナルツアーを制作したい

――次に『Locatone』のコンテンツを作るとなったら、例えばどういったアイデアが浮かびますか?

高瀬:今回は物語として1本ルートがある作品を作りましたが、『Locatone』はマップの位置情報を使って街全体を舞台に展開できるので、オープンワールドゲームのようなコンテンツにも挑戦してみたいですよね。メイン軸のストーリー以外のところで、この場所に行ったら全然違うキャラがいるとか。そういう配置ができると、街自体をゲームのフィールドにできますし、ルート単位でシナリオを追加していくこともやれなくはない。それを課金要素として導入すれば、クリエイターにも還元できますしね。そのためには、開発ツールである「Locatone Studio」の進化にも今後期待したいです。

寺田:私も、継続的に楽しめるコンテンツ、繰り返し遊べるコンテンツは、『Locatone』で試してみたいですね。高瀬さんがおっしゃった追加シナリオもそうですが、例えばコンテンツ内に時間設定ができると、ランニングやウォーキングが趣味の方が自分の走破記録に挑戦できたり、タイムアタックができたりするでしょうし。同じ趣味の方のコミュニティも広がる。それぞれの通勤・通学時間を活用して、最終地点はいつもの会社や学校ですが、今日はこっちのルートで行ってみたら、違うサウンドが聞こえてくるとか。そういう日常使いの『Locatone』コンテンツというものにも、可能性を感じますね。

梶田(TAKAHASHI×2):僕らは今回の『バーチャル渋谷ライブ!』で、ストリートライブをバーチャルで開催するひとつの例みたいなものを示せたと思うので、実際に活動しているアーティスト達が、どんどんストリートスポットを自分で作れるようになると良いなと思いました。今回は、コンテストの趣旨として渋谷エリア限定でしたが、どんどんアップデートされていくストリートライブツアーが作れたら、とても自由度があって良いなと。

内海(TAKAHASHI×2):「Locatone Studio」が一般の方も気軽に使えるようになれば、全国各地のストリートミュージシャンが自分の地元でツアーを作れるでしょうし、ストリートライブをやっている人が、いつもここで演奏しているよというアピールもできますよね。

高瀬:それは良いですね! 地方を拠点に活動しているアイドルの方も多いので、ミュージシャン以外の広がりもあると思います。エンタテインメントコンテンツは、どうしても大都市中心になってしまうので、全国的に『Locatone』のコンテンツを広げられれば、エンタメの地域格差問題も少しは解消できるかもしれない。

――TAKAHASHI×2のおふたりのストリートライブツアーは今後、全国規模で企画してもらいたいと思いますし、高瀬さんには、『Locatone』でさらなるゲーム性の模索を期待したいです。寺田さんには『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』の世界観で、全国の街を掘り下げるツアーも作っていただけたらと、『Locatone Creator Contest 2022』の公募作品を体験して強く思いました。

高瀬:確かに、『Locatone』のコンテンツにはまだまだ可能性があると、実際に制作して感じました。今日、集まった皆さんも、それは実感されていると思います。私たちの作品を通じて、『Locatone』の面白さがひとりでも多くの方に伝えられていたらうれしいですね。

寺田:今後もこういった公募の場があるとクリエイターも参加しやすいですし、今回の受賞者の皆さんもそれぞれ得意分野がありますから、クリエイター同士のコラボツアー制作というのも、できるかもしれない。ぜひ、こういう機会をまた作ってもらって、『Locatone』のコンテンツを作る側の人も増やしていきたいですよね。

梶田(TAKAHASHI×2):YouTubeやTikTokのようにコンテンツのプラットフォーム化が理想ですよね。そうすると『Locatone』のクリエイターにもキャッチ―な呼び名が欲しいですね(笑)。

内海(TAKAHASHI×2):YouTuber、TikTokerだからLocatoner(ロケトナー)?

高瀬:それ良いね! でも、真面目な話、新しいコンテンツプラットフォームができることで、クリエイターの活躍の場、ビジネスの場が新たに生まれるのは有難いこと。ぜひ、『Locatone』にも、みんながコンテンツを生み出したくなるプラットフォーマーになってほしいですね。期待しています。

文・取材:阿部美香
撮影:干川修

関連サイト

Locatone公式サイト
https://www.locatone.sony.net/(新しいタブで開く)
 
Locatone Creator Contest 2022
https://locatone-contest.jp/productiontour.html(新しいタブで開く)

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