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連載Cocotame Series

エンタメに効くアプリ

音声と位置情報でどんなエンタメが生まれる?『Locatone』の可能性をクリエイターが語る【前編】

2022.12.29

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エンタテインメントを活性化させるアプリをフィーチャーする連載企画「エンタメに効くアプリ」。

今回は『Locatone Creator Contest 2022』で、見事グランプリと特別賞を受賞した3組のクリエイターをフィーチャーする。マップ上にある特定のスポットを訪れると、自動的に聞こえてくる音声や音楽とともに、現実世界を散策できる「Sound AR」を楽しむアプリ『Locatone(ロケトーン)』。

『Locatone Creator Contest 2022』は、その『Locatone』が今年の夏から秋にかけて渋谷区が主催した「渋谷芸術祭2022」とのコラボで開催するクリエイターの発掘を目的とした公募コンテンストだ。

『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』でグランプリを受賞した寺田忠勝氏、『バーチャル渋谷ライブ!~オンザストリート~』(以下、バーチャル渋谷ライブ!)で特別賞(アイディア賞)を受賞したチーム・TAKAHASHI×2の内海覚氏と梶田雄太郎氏、『永遠神剣外伝 異世界のヘリオン -Helion The Another Real World-』(以下、異世界のヘリオン)で特別賞(オーディエンス賞)を受賞した高瀬奈緒文氏に、受賞作の開発秘話と、『Locatone』を活用したコンテンツの魅力を語ってもらった。

前編では、3組のクリエイターがコンテストに応募したきっかけと、『バーチャル渋谷ライブ!~オンザストリート~』、『異世界のヘリオン』の制作ストーリーを聞く。

  • 寺田忠勝氏

    Terada Tadakatsu

    『Locatone Creator Contest 2022』グランプリ受賞作品『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』制作者。

  • 内海覚氏(TAKAHASHI×2)

    Utsumi Satoshi

    『Locatone Creator Contest 2022』特別賞・アイディア賞受賞作品『バーチャル渋谷ライブ!~オンザストリート~』制作者。

  • 梶田雄太郎氏(TAKAHASHI×2)

    Kajita Yutaro

    『Locatone Creator Contest 2022』特別賞・アイディア賞受賞作品『バーチャル渋谷ライブ!~オンザストリート~」制作者。

  • 高瀬奈緒文氏

    Takase Naofumi

    『Locatone Creator Contest 2022』特別賞・オーディエンス賞受賞作品『永遠神剣外伝異世界のヘリオン -Helion The Another Real World-』制作者。

『Locatone Creator Contest 2022』とは?

ソニーが開発した「Sound AR」※を楽しむためのエンタテインメントアプリ『Locatone』。そのコンテンツクリエイターを新たに発掘&応援するコンテストが『Locatone Creator Contest 2022』だ。「渋谷芸術祭2022」とのコラボレーションで実現したこのコンテストでは、渋谷の街の散策をテーマに『Locatone』を活用した、新しい街歩き体験を提供するコンテンツのアイデアを一般募集した。約100点に及ぶ応募から選ばれたファイナリスト10組の作品は『Locatone』アプリ上でも公開され、多くのユーザーを楽しませた。2022年11月11日には「渋谷芸術祭2022」の一貫として表彰式が行なわれ、「YOU MAKE SHIBUYA」チャンネルにて動画(新しいタブで開く)も公開されている。
 
※「Sound AR」は、現実世界と仮想世界の音が混ざり合う新感覚の音響体験です。

3組のクリエイターのコンテスト参加理由

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――今回は、『Locatone』を使用したクリエイターコンテストとして、初の試みとなった『Locatone Creator Contest 2022』入賞者3組にお集まりいただきました。まずは、皆さんのプロフィールを伺わせてください。アイディア賞受賞の『バーチャル渋谷ライブ!』を制作された“TAKAHASHI×2”は、チームでの参加ですね。

梶田(TAKAHASHI×2):はい。ですが、そもそもTAKAHASHI×2は、クリエイティブな活動をするために集まったチームではなく、同じ大学の友達や気の合った仲間4人で、旅行に行ったり遊んだりするときに付けた、いわばサークル名みたいなものなんです。メンバーの高橋くんがリーダーなので、彼の名前をとってTAKAHASHI×2と名付けています(笑)。

内海(TAKAHASHI×2):大学卒業後、4人ともそれぞれの道に進んでいますが、グループはそのままつづいて、LINEグループ名もTAKAHASHI×2でやってます(笑)。

梶田(TAKAHASHI×2):『バーチャル渋谷ライブ!』は、内海と僕が中心になって作ったんですが、2人とも大学では立体音響の研究をしていました。卒業後は、僕がオーディオメーカー、内海は放送系の仕事に就いたんですが、お互い立体音響は変わらず好きで。まつわる情報収集を行なっていたところ、偶然『Locatone Creator Contest 2022』を見付けました。

それで内海に連絡したら、「やってみようよ!」ということになりまして。なので、クリエイターとして参加したというよりは、僕らが得意で大好きな立体音響を使って、何か面白いことができないか? という、ノリ優先のチャレンジでした。

内海(TAKAHASHI×2):そんな風に始まった応募だったので、まさか賞がいただけるとは思っていなくて。とてもうれしかったです。

――TAKAHASHI×2のおふたりは、こういったコンテンツ制作は今回が初めてということですが、『異世界のヘリオン』で、オーディエンス賞を受賞された高瀬奈緒文さんは、長年ゲームクリエイターとして活動されてきた実績のあるクリエイターであると伺いました。

高瀬:はい、20代からゲーム業界に入って開発に携わるようになり、キャリアとしては20年ほどになります。主にテキスト主体のシミュレーションゲーム、RPGゲームなどの企画やシナリオライティングを手掛けてきました。『Locatone Creator Contest 2022』に参加したきっかけは、実はアニメの聖地巡礼アプリ『舞台めぐり』なんです。

私は、『舞台めぐり』でも何本かシナリオを書かせてもらっていて、そのときにつながりのある方から、『舞台めぐり』のノウハウとソニーの「Sound AR」の技術を融合した『Locatone』アプリのことを聞いて、自分のスキルをいかせるかもしれないと興味を持っていたんです。そんな折にコンテストが開催されると聞いて、自分も参加することにしました。

――ご自身の経験をいかしたコンテンツ制作に挑戦されたわけですね。

高瀬:はい。それと『舞台めぐり』のコンテンツ制作に関わるうちに、私自身、どんどん旅好きになっていったんです。なので、今回のように渋谷という街を散策しながら、物語と音を頼りに辿るコンテンツを作ることに、とても興味が湧きました。おかげさまで、作品が一般公開されてからは、私が携わったほかの作品を知る方や、出演してくれた方たちのファンの皆さんにもたくさん遊んでいただきました。そういう方たちの応援も、今回の受賞につながったのだと感謝しています。

――そして『水を感じる。川の息吹を聴く街歩き』で、グランプリを受賞された寺田忠勝さん。寺田さんもTAKAHASHI×2チームと同じく、アプリ用のコンテンツ制作は今回が初めてと伺いました。

寺田:そうですね。私は現在、企業でデザイナーとして働いていて、手掛けているのは主に空間デザインなんですが、私が所属する会社はスポーツイベントやショウルームの制作、展示会や式典など、扱う仕事の幅がとても広いんです。そこであるとき、博物館の仕事でバリアフリーな空間設計に深く関わることになったんですが、例えば目の不自由な方に展示情報を伝えるには、音の情報というのが非常に大切だと気付きまして。

これからは、“音”に着目した空間デザインにも取り組みたいと思い始めていた矢先、コンテスト情報サイトで『Locatone Creator Contest 2022』の開催を知ったんです。それまで“音を作る”ことは未経験でしたが、私が仕事を通じてやってみたいと感じたことと、『Locatone』アプリのコンセプトが非常に親和性が高い。今回、応募用の作品を作るために用意された「Locatone Studio」という制作ツールも簡便で、初心者へのサポート態勢も整えているとあったので、挑戦してみようと思って応募しました。

――ご自身のお仕事での知見と、今後チャンレンジしたいことが、このコンテストでマッチしたんですね。

寺田:そうなんです。音響だけを作るコンテストだったら二の足を踏んだと思いますが、実在の街を歩いていくなかで、音響が人の耳にどう聞こえるかとか、『Locatone』の特徴となるARカメラを使ったギミックをどう置くか? という空間体験の組み合わせは、自分が普段企画していることとそれほど変わらないというか、むしろそちらは得意分野でもあるので、やってみようと。締め切りも近かったので、大急ぎでアイデアを練って企画書を書いたのですが、まさかグランプリをいただけるとは思わず、とてもうれしかったです。

ストリートライブの魅力を再現した『バーチャル渋谷ライブ!』

――ここからは1組ずつ、作品へのこだわりと開発エピソードを伺っていきます。TAKAHASHI×2の『バーチャル渋谷ライブ!』は、公園や高架下など渋谷中心部のマップ上に点在するスポットに行くと、アーティストのオリジナル楽曲のストリートライブ演奏を、イマーシブサウンド(=立体音響)で聴けるという作品になっています。このアイデアは、どこから生まれたのでしょうか。

モヤイ像前、宮下パークやJR線の高架下トンネルなど、渋谷の各スポットを訪れて、7組のアーティストのライブ音源やインタビューなどを楽しむことができるのが『バーチャル渋谷ライブ!』。あるスポットを訪れると、8個目のスポットが出現する隠し要素もツアーに仕掛けられている。決められたルートがなく、どこのスポットから巡っても楽しめるのもポイント。

梶田(TAKAHASHI×2):ストリートライブを題材にしようと思ったのは、内海が昔から趣味でつづけている音楽活動がきっかけになりました。

内海(TAKAHASHI×2):今は解散してしまいましたけど、TAKAHASHI×2のメンバーでもある中学時代からの友人と、高校、大学と引き語りのデュオを組んで、ストリートライブをやったり、ライブハウスでステージにあがったりしていたんです。

梶田(TAKAHASHI×2):そのころに僕がよく内海たちのストリートライブを観に行っていて、そのときのライブ体験がとても印象的だったんです。ふらっと街を歩いてて、何気なく聴こえてくるストリートライブの音楽は、街歩きのBGMとしても体験できるし、もしその曲や演奏が気に入れば、演奏者に自分から近寄ることで、ライブそのものの空気感も味わえる。ストリートライブって実は、すごく良い音楽との出会い方だなと、大学時代から思っていました。

しかも、その場で同じ路上アーティストを応援する人が集まってコミュニティもできてくるし、ファン同士が会話したり、なんならアーティスト本人とも会話ができる。音と場所を連動させられる『Locatone』のシステムは、まさにその場所でしか生まれない音楽との出会いができる、ストリートライブを再現するのにぴったりだと思ったんです。

内海(TAKAHASHI×2):企画を考え始めたころは、梶田と2人でいろんな案を出していったんです。そのなかで、ストリートライブをテーマに、僕らの得意な“立体音響”を使って、よりライブへの没入感を演出するのはどうだろう? というアイデアが梶田から出てきたときに、「絶対それだよ!」と思いましたね。

梶田(TAKAHASHI×2):『Locatone』というアプリ自体も、街中で演奏するストリートライブそのものも立体音響の表現とは相性が良い。場所と音をリンクさせるアイデアとしては、絶好でした。

――参加アーティストは、どのように選ばれましたか?

内海(TAKAHASHI×2):実際に楽曲提供と演奏をしてくれたのは、僕の音楽仲間であったり、インディーズで活躍するアーティストの皆さんです。僕らとしては、『Locatone』を通して自分たちの作品の面白さを知ってもらいたいということもありましたが、それよりも、ひとりでも多くの人に良い音楽、素晴らしいアーティストに出会ってもらいたいという思いがあって。そのことをアーティストの皆さんにご説明したら、皆さん快く参加してくれました。今回は全部で8組のストリートライブ音源を収録しています。

『バーチャル渋谷ライブ!』の参加アーティストは、レトロリロン、叶芽フウカ、Nagakumo、斉藤省吾、古田ミチヒロ、竹田糸摩、空間工房の7組+シークレット1組。弾き語りやバンドスタイルなど、それぞれ異なるジャンルの音楽が楽しめる。ちなみに、訪れたスポットの音声は、その場を離れても後で繰り返し聞くことができる。

――渋谷の街のどこに音楽が流れるポイントを配置するかは、どのように考えたのでしょうか。

梶田(TAKAHASHI×2):今回は、渋谷駅前から代々木公園までを、大まかな散策ルートとして考えました。また、僕らの作品のキモはやはり立体音響なので、どのポイントを選べば面白い立体音響が録音、再現できるかを選択し、プロトタイプを制作しながら、渋谷に何度も足を運んで制作を進めました。また、実際に録音するのが難しい場所については、国土交通省から提供されている「PLATEAU(プラトー)」を使ってシミュレーションで再現して対応しました。

内海(TAKAHASHI×2):例えば渋谷駅周辺で言うと、モヤイ像の前は近隣の頭上に空中通路があって、ビルの壁に取り囲まれた閉じた空間でもある。そういう場所だと、開けた路上とは音の反響も変わるので、その反射する音の感じも上手く再現できたかなと思います。ほかにも、宮下公園から公園通りに抜けるJRの高架下のトンネルなども、反響が特別なので立体音響には向いている。そういう場所は積極的に採り入れていきました。

梶田(TAKAHASHI×2):今回は全部で8組のアーティストに参加してもらっていますが、そのうち路上ライブの許可が取れた5組ほどは、現場で実際にアンビソニックマイクとレコーダーを使って録音させてもらいました。現場での生演奏が不可なポイントに関しては、演奏音源を3D都市マップに照らし合わせて音響をシミュレートしています。

内海(TAKAHASHI×2):リアルなライブ演奏の録音は、せっかくの機会なので、事前にSNSなどで収録日を告知して、そのアーティストのファンの皆さんに集まっていただいたり。日常的なストリートライブらしさを最大限に再現しました。

――ライブポイントに行くと、スマホを振ることで手拍子の音が鳴らせるというのも、面白いですよね。

内海(TAKAHASHI×2):はい、そういうことができるのも『Locatone』の制作ツール「Locatone Studio」ならではの特徴だと思います。実際の路上ライブもそうですが、ただ、音楽を聴くだけでは受動的過ぎるので、インタラクティブ要素として入れてみました。

梶田(TAKAHASHI×2):最初はオマケの機能だったんですが、実際にプレイしてみると、これが予想以上に面白くなりました。さらにライブポイントでARカメラを使うと、街を背景に設定した絵の写真が撮れる機能も、いろんな場所、いろんなアーティストのライブグッズをコレクションする感覚が楽しめると思います。

それと散策している臨場感をより出したくて、通行人の会話が流れるようになっています。ライブポイントでの演奏が終わると、そのアーティストのインタビューの音声も聴けますが、それもアーティストとの距離が近いストリートライブらしさの演出です。あと遊びの要素として、こっそりと隠しスポットを入れていたり……。

――隠しスポットがあるんですか?

梶田(TAKAHASHI×2):はい、僕らの作品は、音声と音楽が聴こえてくるポイントは決まっていますが、巡る順序は関係なく散策を楽しんでもらえる仕様になっています。その上で、実はマップ上に表示されていないライブポイントがひとつありまして。そこに近付くと突然、内海がサプライズで弾き語りをしているという(笑)。内海のライブポイントではスマホを振ると、いつもの手拍子ではなく、缶ジュースのプルタブを開ける音が鳴るという遊びも入れてあります。ライブ演奏を聴いてぜひ試してもらいたいです。

渋谷を舞台に音声でアドベンチャーゲームを楽しむ『異世界のヘリオン』

――高瀬さんの作品、『異世界のヘリオン』は、ゲームプレイ感を刺激するストーリー性の高さが魅力です。渋谷に突如現われた危険な異界存在ディファレント。プレイヤーが「警視庁異界犯罪対策課」のスレイヤー・羽黒ヘリオンの協力者となって、『Locatone』マップ上に出現するディファレントを探し出して斬滅していくという、位置情報RPGライクなアドベンチャーゲーム仕立てになっていますね。

高瀬:今回の物語は、私が制作に携わったゲームを知っている方にもぜひ体験してもらいたいと思い、私が長年制作してきた『永遠神剣』というシリーズ物の外伝として書きました。本編はファンタジー世界のお話ですが、今回は外伝ということで、異世界から現実の渋谷にキャラクター達が侵食してくるという世界観にしています。

――ファンタジーとリアルの融合というところから、既にゲームシナリオらしい設定ですね。

高瀬:はい。私が得意とするのは、やはりゲームのシナリオなので、『異世界のヘリオン』にもできるだけゲーム性を持たせたかったんです。ただ、『Locatone』はゲームアプリではないので、制作ツールである「Locatone Studio」には、現在のところイベントの比較演算を行なう機能がありません。なので、どうしたらアドベンチャーゲームやRPGのように、プレイヤーが自ら行動を選択したかのような体験を与えられるかを、考えていきました。

――実際に体験してみると、序盤から、ライブ会場に行く道に迷ったアイドルに出会い、会話のヒントを頼りにライブハウスを探して送り届けるといったような、ミッションクリア的なエピソードが盛りこまれ、RPG感が演出されていました。さらに、マップ上に表示された音声が流れるイベントポイントもかなりの数が用意されていて、驚きました。

高瀬:はい、あえての物量作戦ですね。一般的なゲームは“指と目で遊ぶ”ものが多いですが、『Locatone』は“耳と足で遊ぶ”もの。ヒロインのヘリオンと一緒に、できるだけたくさん渋谷を散策することでキャラクターに愛着を持ってもらい、クライマックスでより気分を盛りあげてもらえるよう、シナリオへの没入感と達成感を高めることを、第一に考えました。そのためにもプレイヤーには、とにかくたくさん歩いていただこうと(笑)。

結果、『異世界のヘリオン』はプレイ時間が60分ほどの長尺になってはいるんですが、『Locatone』は中断してもつづきからプレイできる仕様になっているので、ゆっくり楽しんでいただくこともできる。遊んでくれたゲーム好きの方からは、好評だったので安心しました。

『異世界のヘリオン』は、スポット数が今回の応募作品のなかでも群を抜いて多いのがポイント。渋谷の街を広く使って、ゲーム性の高いストーリーを完成させた。

――特に苦労されたところはどこでしたか?

高瀬:音声を流すポイントとマップ上のスポットをどう紐付けたら良いかは、シナリオを組む上で熟考しましたね。観光地やランドマークがはっきりした街なら、例えば“歩いている途中で何もなかった道路からお城が見えた”という散策の感動もシナリオに盛りこんでいけるんですが、渋谷のような繁華街は、基本的にビル街なのでひとつの施設にスポットさせるのが難しい。

そこで、先ほど話に出たように、ミッションを追いかけることで敵を発見しつつ、最終決戦にふさわしい場所に向かって進んでいって、最後はプレイヤーに選択を迫る……といった擬似的なゲーム性を持たせて、話に変化を加えていきました。あと苦労したことと言えば、やはり時間との戦いですね(笑)。

一同:(笑)

ストーリーを進めるとプレイヤーに「進む」か「帰る」かの選択を迫るスポットも登場する。

高瀬:制作期間は約2カ月ほどだったんですが、登場キャラクターをプロの声優さんふたりと、アイドル役を本物のアイドルの方に演じていただいた以外は、すべて自分ひとりの作業。イベントスポットを増やしてしまった分、シナリオ執筆もマップに音声を配置する作業にも時間がかかり、締め切りに間に合うかどうか? そのスリルはかなりありました(笑)。また、制作スケジュールに追われた分、セリフ以外の効果音のクオリティを高める作業にまで手が回らなかったのは、心残りですね。

――『異世界のヘリオン』は、コンテスト期間中からずっと、オーディエンスからの支持がとても厚かったそうですが、そのあたりも狙いでしたか?

高瀬:そうですね。アイドルキャラクターを登場させたのも、テーマがアイドルのライブの聖地になりつつある渋谷だからこそでした。そして、遊んでくれた方が増えたのも、アイドル役を演じてくれたアイドルグループ・#ババババンビの岸みゆさんが、ご自身のファンの皆さんに向けて毎日のようにSNSで『異世界のヘリオン』をアピールしてくれたことが大きな要因でした。

『Locatone』は、実際にその場に足を運んで体験するコンテンツ。それなりのモチベーションがなければ、これだけ渋谷の街を散策しようとはなかなか思えないと思うんです。だから『異世界のヘリオン』で言えば、キャストの皆さんのお力も本当に大きかった。前田佳緒里さん(羽黒ヘリオン役)、岸みゆさん(上杉ヨスガ役)、波多野翔さん(梅津辰彦役)には、この場を借りて改めてお礼を言いたいです。

後編につづく

文・取材:阿部美香
撮影:干川修

関連サイト

Locatone公式サイト
https://www.locatone.sony.net/(新しいタブで開く)
 
Locatone Creator Contest 2022
https://locatone-contest.jp/productiontour.html(新しいタブで開く)

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