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連載Cocotame Series

エンタメに効くアプリ

“地球丸ごとテーマパーク”『Locatone(ロケトーン)』が目指すエンタメの新たなかたち【後編】

2021.12.14

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エンタテインメントを活性化させるアプリをフィーチャーする連載企画「エンタメに効くアプリ」。

今回は、マップ上にある特定のスポットを訪れると、自動的にその場に応じた音声や音楽が聞こえてきて、自分の好きなコンテンツと一緒に現実世界を散策できる「Sound AR」サービス『Locatone』をフィーチャー。本サービスの企画、制作に携わった関係者を招き、開発までの経緯や制作秘話を聞いていく。

参加者は、ソニーの安彦剛志と八木泉、そしてソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)の大仁田弘志の3人。

後編では、『Locatone』で現在公開されている最新コンテンツの魅力や制作の舞台裏、そして『Locatone』の未来への展望について話を聞く。

  • 安彦剛志

    Abiko Tsuyoshi

    ソニー

  • 八木 泉

    Yagi Izumi

    ソニー

  • 大仁田弘志

    Onita Hiroshi

    ソニー・ミュージックソリューションズ

『Locatone』のフラグシップコンテンツが必要だった

──現在の『Locatone』の注目コンテンツとして、YOASOBIの楽曲「大正浪漫」と、その原作小説をフィーチャーした「YOASOBI SOUND WALK」(2022年3月31日まで)や、LiSAのソロデビュー10周年を記念して、全国47都道府県で開催されている「LiSA Sound Walk Tour」(2022年1月31日まで)が開催されています。こちらはどういう経緯で実現されたのでしょうか。

八木:『Locatone』のフラグシップコンテンツを作りたいと思ったのがきっかけでした。『Locatone』で何が体験できるのかというのは、言葉だけではどうしても伝わりづらい部分があるので、『Locatone』の技術的、体験的、企画的なことも含め、すべて盛り込んだコンテンツを作りたいと考えたんです。

また、『Locatone』には、埼玉県飯能市の「ムーミンバレーパーク」で体験できる「サウンドウォーク ~春のしらべ~」といったヒットコンテンツや、しながわ水族館で体験できる「シュラとニコのしな水大冒険!」などの注目コンテンツが現在ラインナップされています。しかし、どちらも開催場所がスポットで限定されているため、遠方にお住いの方に気軽に体験していただくのは難しいという実情がありました。「YOASOBI SOUND WALK」と「LiSA Sound Walk Tour」は、そういった体験場所を全国規模に広げるチャレンジを行なったコンテンツでもあります。

──確かに、「YOASOBI SOUND WALK」は東京版の先行公開を皮切りに、その後、札幌、名古屋、大阪、福岡と全国の5大都市部で体験できるようになり、「LiSA Sound Walk Tour」に至ってはすべての都道府県で体験できるようになっていますね。

八木:はい。先ほど安彦さんがお話しされた通り、『Locatone』のコンセプトは“地球丸ごとテーマパーク”です。土地や地域、一定の場所とコンテンツを結び付けるのは『Locatone』の特徴のひとつですが、それが縛りになってはいけないと思っていて。「ストーリーや展開次第では、こういうコンテンツもできますよ」というのをお見せしたかったんです。

加えて『Locatone』のコンテンツ制作において、ロケーションが重要というのは事実なんですが、今後はあえてコンテキストを緩くしていくことも必要なんじゃないかと思っています。例えばコンビニとか学校、駅とか、どこか限定した場所に行かなくても、体験できるコンテンツも作れたらと考えています。

安彦:それにチャレンジしたのが47都道府県で開催している「LiSA Sound Walk Tour」です。場所に縛られずに場所をいかす、これも『Locatone』の将来像のひとつとして考えていることですね。

──なるほど。それでは、それぞれのコンテンツについて伺っていきます。まずは、「YOASOBI SOUND WALK」についてですが、こちらは『Locatone』チームのほうから制作に関してのアプローチをされたのでしょうか。

八木:YOASOBIの楽曲が小説投稿サイト「monogatary.com」と連動して生み出されていることは皆さんご存じだと思いますが、その「monogatary.com」のチームリーダーで、YOASOBIのプロデュースを手掛ける、ソニー・ミュージックエンタテインメントの屋代(陽平)さんと「小説と『Locatone』は、コンテンツとして相性が良いよね」という話は以前からしていて。

ちょうど私たちがフラグシップコンテンツを制作しようというタイミングで、何か展開できるコンテンツがあればと相談させてもらったんです。そうしたらちょうどYOASOBIで「大正浪漫」という楽曲をリリースし、その原作小説も発売されるとわかって、一緒に取り組ませてもらうことになりました。

■「monogatary.com」の関連記事はこちら
monogatary.comという“物語のタネ”の芽吹き【前編】
monogatary.comという“物語のタネ”の芽吹き【後編】

物語の世界観を損ねることなく凝縮していく

──「大正浪漫」の楽曲と小説の世界を『Locatone』で制作する上で大変だった点はありましたか?

大仁田:まずひとつは、原作の小説が短編ではなく、しっかりとしたボリュームがある作品ということでした。「YOASOBI SOUND WALK」は、移動時間を含めて約60分の体験時間になっていますが、音声コンテンツ自体は30~40分ぐらいに収めなければいけなかったので、それが本当に大変でしたね。原作の素晴らしい物語を破綻させないように気を付けながらも、要点を極限まで削らなければ、とてもこの尺には収まらないので、あのシーンも、あのセリフも、泣く泣くカットしました。

加えて、ユーザーをあらかじめ定めた12のスポットに誘導して、各所を移動させなければいけない。スポットが12あるということは、12編の音声コンテンツに分けて制作する必要がある。じゃあ、その分け方をどうするか? というのも悩ましかったですね。

あとは映像がいっさいなく完全に音声のみの体験になるので、登場人物が多くなると誰が何をしゃべって、何が起きているのかわからなくなる恐れがあります。そのため、ユーザーが理解しやすく、よりストーリーに没入してもらうために、登場人物も主人公のふたりのみとしました。

──その上で、YOASOBIの楽曲が持つ世界観を、どうやって音声コンテンツに落とし込んだのかも気になります。

大仁田:楽曲を使うところは本当に重要なポイントでした。まずYOASOBIの楽曲をBGM的に使うのはもったいないですし、物語が展開される音声コンテンツに集中しづらくなるのでやめました。そうすると、オープニングとエンディングがベストな置き所になるのですが、そこで意識したのがYOASOBIというアーティストの特性。つまり、小説をベースに楽曲が作られているということです。

楽曲の「大正浪漫」は、「大正浪漫」という原作小説から作られたのだから、その歌詞自体が物語を補完してくれるツールにもなります。だから、オープニングで曲を聴いてもらい、まずは物語の世界観に触れてもらうことにしました。

そして12のスポットをめぐり、物語がエンディングを迎えたところで、また楽曲が鳴り出す。ユーザーの方たちは、主人公たちの結末を体験していますからね。エンディングのあとは「大正浪漫」という楽曲への理解度も深まっているはずなんです。そういう楽曲と物語で相乗効果を生むような楽しみ方ができるように、「YOASOBI SOUND WALK」は作りました。

今回の経験を経て『Locatone』なら、オーディオドラマではなく、ミュージックビデオでもない、その中間に位置するような新しいジャンルのエンタテインメントを作れるのかなと、個人的には感じましたね。

八木:大仁田さんの言う通りで、単純なオーディオドラマにはしたくなかったんです。現実の世界を拡張させる「Sound AR」の体験なので、ユーザーが街を巡りながら、どういったものが聴こえてきたら楽しいのか、物語の世界に没入できるのかという点にフォーカスしてシナリオも練りに練ってもらいました。もちろん、ロケハンも何度も行なって、体験していただく皆さんにとって、最高の体験価値の創出を目指しました。

──スポット同士の距離感とコンテンツの尺の関係や、どういう聞かれ方をするのかということも意識されていたのでしょうか。

大仁田:そうですね。実はスポット同士の距離感もストーリーと連動させていて、こことここで聞こえてくる話には転換がある、時空を超えるストーリーなので距離をもうちょっと空けようとか。その地点間を移動する際のBGMもそれぞれ設定していて、そのBGMを聴きながら、期待を高めて次の地点に移動してもらえるように心掛けました。ひとつ前のスポットで聞いた物語の余韻をちゃんと維持しながら、次の地点に行けるように設計したので、個人個人の最適なペースで回っていただければと考えています。

どの街でも体験ができるような将来像

――「LiSA Sound Walk Tour」についても伺います。先ほどからお話に出ている通り、こちらは有料コンテンツとして日本全国で体験が可能ですね。

大仁田:今年がLiSAのソロデビュー10周年というアニバーサリーイヤーでありながら、コロナ禍によってライブもイベントも100%の状態で開催するのが難しい状況がつづいていたので、デジタルコンテンツ施策として何かできないか、我々SMSから提案させていただきました。

安彦:「LiSA Sound Walk Tour」は、各県の主要都市に設定された10カ所のスポットをめぐりながら、オリジナルのストーリーとLiSAの10曲の代表曲を楽しんでもらうという内容になっています。ファンの方々に、ご自身が見慣れた景色のなかでLiSAのベスト盤を体験してもらうようなイメージですね。

――オリジナルのストーリーは大仁田さんが手掛けられたものですか。

大仁田:はい。長年の研究の末に、自分の頭のなかを送る装置を開発したLiSAですが、たくさん送りすぎてしまい記憶をなくしてしまいます。47都道府県に散らばった「LiSAメモリーズ」を、皆さんの協力で集めてもらってLiSAを復活させるというのがストーリーの概要です。本人にも出演してもらいながら、彼女のポップな魅力とキュートな一面を楽しんでいただくコンテンツになっています。

安彦:オリジナルストーリーによる、まさにご提案ですね。こういうやり方をすれば場所や地域をひとつに限定しなくても、コンテンツを展開する方法があるんだということを、多くの方に知ってもらいたかったので、YOASOBIやLiSAというトップアーティストの方々とご一緒させてもらえるのは、本当にありがたいことでした。

企画の出発点からしてそうですが、テクノロジーを追求するソニーと、エンタテインメントを追求するソニーミュージックグループの、まさにシナジーが体現できている点だと思います。

八木:今回の展開で、アーティストやクリエイターの方々に加え、企業や自治体、行政の方々にも、興味を持っていただけたらうれしいですね。お話があれば、それこそどこへでも伺いますし、技術的な面、クリエイティブの面、どちらについてもさまざまなご提案ができますので。

──お話を伺っていて思ったのですが、例えば視覚障がいによって音を頼りに生活されている方をサポートするコンテンツや、社会のなかで音が必要なシチュエーションにアダプトしていく方向性も『Locatone』にはあるんじゃないかと感じました。現在手掛けられている開発者向けのキットが、スマホアプリぐらいになって普及すると、本当にさまざまなコンテンツが生み出されそうな予感がします。

安彦:先日、「まっぷる」を手がけられている昭文社が『Locatone』のスキームに参加してコンテンツ制作を行なうことを発表されたんですが、その第1弾として三重県名張市で音楽プロデューサーのKOBASOLOさんが作った音楽とともに街をめぐる、「名張コバソロ旅」という新感覚のツアーが展開されています。

また、島全体が世界農業遺産に認定された佐渡島を、櫻坂46の森田ひかるの声と一緒にめぐる「SADO-SOUND ベンチャー」もスタートしました。こちらには櫻坂46のファースト・シングル「Nobody's fault」のミュージックビデオのロケ地と、佐渡市の景勝地を周る「聖地めぐり」コースも用意されています。

八木:現在は、エンタテインメントのコンテンツが中心ですが、将来的には、ご指摘のような暮らしやすい街作りや生活をサポートするようなコンテンツが『Locatone』から発信される可能性が十分にあると思います。

新しい価値を創造する核にしていきたい

──コロナ禍で気軽に外出ができない時期がつづきましたが、今後は『Locatone』のようにテクノロジーと融合した体験型コンテンツが増えていきそうです。

安彦:このコロナ禍でリアルなライブやイベントの開催が難しくなり、ネットで配信するスタイルが定着しました。これはある意味で、表現方法の変化だと思うんですよね。『Locatone』も同様で、「YOASOBI SOUND WALK」や「LiSA Sound Walk Tour」というコンテンツで、音楽体験に新しい表現方法をご提案しました。

今後も楽曲を音声コンテンツや街の風景とつなぎ合わせることで、新たな音楽体験を創出していきたいですし、アーティストの皆さんにも、音楽表現の新しい手法として認識してもらえるよう、『Locatone』のコンテンツを増やしていきたいですね。

──色々な可能性を秘めた『Locatone』ですが、改めて今後の展望をお聞かせください。

大仁田:『Locatone』での体験を音楽や映画と並ぶ、エンタテインメントのジャンルのひとつとにしたいです。街を歩きながら音楽や物語を感じたり、街のガイドを楽しんだり。ユーザーの皆さんにとって、時間を割く価値があるものに育てていきたいですね。

そのためには良質なコンテンツを作らないといけません。『Locatone』の可能性にまだ気付かれていない方が大半なので、まずはその可能性に気付いてもらえるようなコンテンツ、思わず体験してみたくなるようなコンテンツを考えていくのが自分のミッションだと考えています。

八木:将来的にはYouTubeやTikTokのように、一般の方々が自分の街の魅力を発信したり、ご自身をIPとして打ち出せるようなコンテンツプラットフォームにしたいですね。それまでに踏まなければいけないステップは、まだまだたくさんありますが、アーティストやクリエイターの方々の力もお借りして、『Locatone』を進化させていきたいと思います。

あとは海外展開ですね。詳細な時期などはまだ決まっていませんが、今後、具体的にどうやって動いていくかを見定めながら、『Locatone』のコンセプトである“地球丸ごとテーマパーク”を具現化していきたいですね。

安彦:『Locatone』はサービスでもあり、プラットフォームでもありますが、やらなくてはいけないことはやはり『Locatone』にたくさんの仲間を作ることだと考えています。

『Locatone』というプラットフォームがあり、さまざまなクリエイターの方たちがいて、新しいクリエイティブが生まれる。そういう意味では、『Locatone』は新しい価値を創造するコアになれるようなサービスプラットフォームとして育てていかなくてはならないと思っています。なるべく近いうちに、そういう姿を皆さんにお見せできるよう頑張っていきます。

大仁田:あとは、八木さんにはホラーコンテンツを手掛けるという命題もありましたよね(笑)。

安彦:そうそう、ここでちゃんと書いておいてもらわないと、八木さんやってくれないですからね(笑)。

──ホラーコンテンツですか?

八木:(苦笑)。「ムーミンバレーパーク」の「サウンドウォーク」でもご一緒させていただいている小栗(了)さんたちにも言われているんですが、「『Sound AR』の体験は絶対にホラーコンテンツにハマるから、早くやってよ」と。

ただ、私が怖いのが本当に苦手で……。それこそどこかの自治体や企業との取り組みで、廃墟のシチュエーションでも用意できたら、最高のホラー体験が作れると思うんですが、ずっと逃げているんです。だって、絶対怖いですもん「Sound AR」のホラー体験なんて。でも、何とか、これも実現できるよう頑張ります!(笑)。

 

文・取材:油納将志
撮影:冨田 望

Copyright 2021 Sony Corporation
©Moomin Characters ™

『大正浪漫』SOUND WALK

開催期間:2021年10月29日(金)~2022年3月31日(木)
開催場所:東京 銀座・日比谷エリア
札幌 大通公園エリア
名古屋 栄・久屋大通公園エリア
大阪 堂島・中之島エリア
福岡 天神エリア
所要時間:約1時間
価格:無料
出演:森永悠希(時翔役)、永瀬莉子(千代子役)

 
 

LiSA Sound Walk Tour

開催期間:2021年11月1日(月)~2022年1月31日(月)
開催場所:全国47都道府県
所要時間:約1時間
価格:980円(980コイン)
出演:LiSA、モモコ(CV 小林ゆう)

関連サイト

『Locatone』公式サイト
https://www.locatone.sony.net/(新しいタブで開く)
 
YOASOBI公式
https://www.yoasobi-music.jp/(新しいタブで開く)
 
YOASOBI SOUND WALK『大正浪漫』公式サイト
https://yoasobi-locatone.jp/(新しいタブで開く)
 
LiSA 10th ANNiVERSARY SPECIAL SITE
https://www.lxixsxa.com/LiSA_10th/(新しいタブで開く)
 
「LiSA Sound Walk Tour」公式サイト
https://www.lxixsxa.com/LiSA_10th/LiSA_soundwalktour/(新しいタブで開く)
 
「LiSAサウンドウォークツアー」オフィシャルTwitterアカウント
https://twitter.com/LiSA_SWT_JP(新しいタブで開く)
 
ソニー・ミュージックソリューションズ公式サイト
https://www.sonymusicsolutions.co.jp/s/sms/?ima=4528(新しいタブで開く)

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