CocotamesearchtwitterFacebookSeriesnewsaboutarticlesstorypick up
連載Cocotame Series

エンタメに効くアプリ

“地球丸ごとテーマパーク”『Locatone(ロケトーン)』が目指すエンタメの新たなかたち【前編】

2021.12.14

エンタテインメントを活性化させるアプリをフィーチャーする連載企画「エンタメに効くアプリ」。

今回は、マップ上にある特定のスポットを訪れると、自動的にその場に応じた音声や音楽が聞こえてきて、自分の好きなコンテンツと一緒に現実世界を散策できる「Sound AR」サービス『Locatone』をフィーチャー。本サービスの企画、制作に携わった関係者を招き、開発までの経緯や制作秘話を聞いていく。

参加者は、ソニーの安彦剛志と八木泉、そしてソニー・ミュージックソリューションズ(以下、SMS)の大仁田弘志の3人。

前編では、『Locatone』が開発されるまでの経緯と、サービスに込められた思いを聞いた。

  • 安彦剛志

    Abiko Tsuyoshi

    ソニー

  • 八木 泉

    Yagi Izumi

    ソニー

  • 大仁田弘志

    Onita Hiroshi

    ソニー・ミュージックソリューションズ

『Locatone』とは?

 
ソニーが開発した「Sound AR」を楽しむためのエンタテインメントアプリ。『Locatone』内で自分の好きなツアーを開始すると、マップ上にスポットが表示され、その場所を訪れると自動的にその場に応じた音声や音楽が聞こえてくる。ユーザーは、その音とコンテンツを楽しみながら、現実の世界を散策したり、ARカメラ機能で写真撮影なども楽しめる。現在は、LiSAのソロデビュー10周年を記念した、全国47都道府県で開催されている「LiSA Sound Walk Tour」(2022年1月31日まで)やYOASOBIの楽曲「大正浪漫」の物語と音楽が体験できる「YOASOBI SOUND WALK」(2022年3月31日まで)が最新コンテンツとしてラインナップされている。2021年度グッドデザイン賞、グッドフォーカス賞[新ビジネスデザイン]を受賞。

コンテンツとテクノロジーが融合して生まれた『Locatone』

――今回は、『Locatone』の開発、運営に携わる皆さんにお集まりいただきました。まずは、皆さんのプロフィールと『Locatone』が生まれた経緯を教えてください。

安彦:私は、エンジニアとしてソニーに入社し、当時の「VAIO」の開発部門に配属となりました。その後、Blu-ray(以下、BD)フォーマットの策定にも参加していたんですが、規格が完全に確立されたところで、次は新しいことに挑戦したいと思い、ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)に異動。ゲームの世界でもいろいろなことを経験させてもらってから、再びソニーに戻り、今度はクラウド開発の部署に所属になりました。ここで、クラウドを使ったサービスを考えることになって、始めたのがスマホアプリの「舞台めぐり」だったんです。

──アニメの舞台となった地域やゆかりのある場所を訪れて、その土地の魅力をコンテンツとともに楽しむスマホアプリですね。

安彦:はい。アプリのプロトタイプが完成し、実際にアニメ作品とコラボして実証実験を行なっていたところ、ソニーコンピュータサイエンス研究所で「舞台めぐり」の事業化を目指すことになったんです。

その後、2013年に「舞台めぐり」が正式に事業として立ち上がり、ある程度目処がたったところで、ソニーミュージックグループのソニー・ミュージックコミュニケーションズ(現ソニー・ミュージックソリューションズ)に「舞台めぐり」のプロジェクトが移管されて、運営をつづけていました。

その過程で、「Sound AR」を手がけていた八木さんたちと出会ったんです。「Sound AR」の開発チームも技術的な開発は終えていて、「Sound AR」を具体的にどう体験してもらうか、コンテンツとしての出しどころをどうするかというフェーズに入っていました。だったら、音声や音楽という音による体験がサービスの軸になっている者同士、一緒にやりましょうという流れになったんです。

その後、2019年に開催された「ソードアート・オンライン」の展覧会「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-」展では、「舞台めぐり」のノウハウと「Sound AR」の音声体験をいかした展覧会の音声ガイド「Sound AR Guide to EX-CHRONICLE」を手掛けるなどして、コンテンツ制作の実績を積み上げ、昨年の11月に『Locatone』として正式にアプリのローンチにたどり着いたという経緯でしたね。

■「Sound AR」の関連記事はこちら
冬の夜に『ムーミンバレーパーク』で語られる特別な物語――そこに込められた思い【前編】
冬の夜に『ムーミンバレーパーク』で語られる特別な物語――そこに込められた思い【後編】
ムーミン谷の音を現実に拡張させる技術『Sound AR™』――音で伝えるムーミンの物語の世界観【前編】
ムーミン谷の音を現実に拡張させる技術『Sound AR™』――音で伝えるムーミンの物語の世界観【後編】

八木:私はソニーで、イヤホンやヘッドホンの商品企画、XperiaのUX(User Experience)企画担当などを経て、「Xperia Ear Duo」というヒアラブルデバイスの商品企画を手掛けていました。実は、この「Xperia Ear Duo」が「Sound AR」の生まれるきっかけになったんです。

「Xperia Ear Duo」

「Xperia Ear Duo」は、スマホと連動してさまざまな音声アシストを行なってくれるオープンイヤー型のスマートプロダクトです。スマホを取り出さなくても、通話できることはもちろんですが、電話、メッセージの確認・返信、SNSの確認に加え、スケジュールや道案内なども音声でアシストする機能を持っていました。

耳をふさがないオープンイヤー型という特徴をいかした、常時装着ができるヒアラブルデバイスを目指していたので、開発していたときに、コンテンツが音声アシストだけではもったいないのでは? という話が挙がったんです。せっかく常時装着できるデバイスなのだから、音が持つ力によって現実世界を拡張するサービスやコンテンツを増やしたらどうだろうと。このコンセプトがまさしく「Sound AR」の原形になりました。

そこから「Sound AR」の技術的な積み上げが始まり、ちょうどかたちになってきたときに、既に「舞台めぐり」を展開されていた安彦さんにお声掛けして、本格的なコラボレーションがスタートしました。

 

「Sound AR」とは?

現実世界に仮想世界の音が混ざり合うソニーによる新感覚の音響体験。ユーザーはスマートフォンとイヤホンを使用して、現実世界と仮想世界の音が混ざり合った拡張現実の世界を体験できる。また、スマートフォンのGPS機能や加速度・ジャイロセンサーを活用した身体センス機能との連動によって、ユーザーの行動を主軸にしたインタラクティブな体験や、立体的な音場空間を実現するソニーの360立体音響技術と組み合わせて全方位からの音響体験を提供することもできる。

──大仁田さんはSMSから参加されているんですよね。

大仁田:はい。自分は、SMSのクリエイティブプロデュース本部という部門に所属していて、アーティストやコンテンツの展覧会やイベント、ライブなどのさまざまなクリエイティブディレクションを担当してきました。

僕が『Locatone』に関わるようになったのは、「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-」展で、安彦さん、八木さんたちとご一緒させてもらったのがきっかけです。「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-」のクリエイティブを担当していた際に、音声ガイドの体験設計からUI作りまでディレクションさせてもらったんです。このときは色々と大変だったんですが(笑)、音声で人の体験を生み出すという仕事がすごく面白くて、次もまた何かご一緒できたらと思っていました。

そうしたら今度は、バーチャルライバーグループのにじさんじのメンバーが、京都の街を実況するスマホアプリ「にじめぐり。」のリニューアルを行なうので、一緒にやりませんか? というお声掛けをいただいたんです。「にじめぐり。」にも「Sound AR」が使われていて、「これは面白そうだ」と思って参加させていただきました。

そこからはかなり濃密なやり取りがつづいて、『Locatone』のアプリを立ち上げるというタイミングで『Locatone』全体のクリエイティブのお話をいただき、現在は『Locatone』のコンテンツ制作を含めて、クリエイティブディレクターとして携わっています。

世界を舞台にすることもできるエンタメフィールドの創出

──それでは、改めて『Locatone』のコンセプトを教えてください。

安彦:“地球丸ごとテーマパーク”――それが『Locatone』のコンセプトです。

──“地球丸ごとテーマパーク”というのは壮大ですね。どういう着想で決められたものなのでしょうか。

安彦:この考えに至ったのは、やはり「舞台めぐり」がベースにありました。そもそも「舞台めぐり」のサービスは、私がBDフォーマットの策定に関わっていたとき、その仕事の延長で始めた「あなたの力でBD化プロジェクト」という企画がきっかけで生まれたんです。

この企画は、BDの普及推進団体・BDA(Blu-ray Disc Association)が主催して、当時、まだBD化されていない映像作品で投票を行ない、1位に選ばれた作品のBD化を目指すというものでした。この第1回投票で選ばれたのが、アニメ作品の「true tears」だったんです。

その後、メーカーの方たちのご協力もあって「true tears」のBD化が実現。それを記念して、作品の舞台になった富山県の南砺市でイベントを行なうことになりました。そこで、イベント終了後に盛り上がったファンの方たちが「一緒に南砺の街を歩きましょうよ」と、私に声を掛けてくたんです。「ここがあのシーンの海岸です」、「ここが主人公たちが歩いた道ですよ」という感じで。

このときのファンの方たちの笑顔がすごく印象に残ったんですね。そしてファンというのは、自分の好きなコンテンツやアーティストに対して、ここまで熱量を注げるものだということに改めて気付かされました。このときの体験がベースになって、リアルな土地を遊び場にする新しいプラットフォームとして、「舞台めぐり」を作りたいと思ったんです。しかも、コンテンツは世界にあるわけですし、場所を日本だけに限定する必要もありません。世界、地球全体を舞台にすることができると考えました。

──そのような流れがあって「舞台めぐり」が生まれ、『Locatone』の“地球丸ごとテーマパーク”にたどり着いたんですね。

安彦:そうですね。いっぽうで『舞台めぐり』はアニメ作品の聖地巡礼に集中しているので、アニメファンではない人に体験してもらうことが難しいこともわかっていました。

その上で、僕らはコンテンツと音によって現実空間を拡張させるこのサービスを、もっと広く、世界中にも届けたいと考えたんです。アニメも、音楽も、芸術も、いろんなIPと組み合わせることで、コンテンツツーリズムのサービスを作れたら、世界でもスタンダートになれるじゃないか、そう思って取り組んだのが『Locatone』というわけです。

──「Sound AR」としては、『Locatone』というアプリでどんな価値を提供しようと考えたのでしょうか。

八木:現実世界を自分の好きなコンテンツと散策する、まさに「Sound AR」という“体験”ですね。音の力によって場の魅力を向上させたり、ユーザーに新しい出会いや発見を促すこともできます。「Sound AR」は、GPSと連動した音の再生や、各種センサーを活用した身体連動による音の体験、さらにはソニーの360立体音響技術も導入されているので、機能や技術の集合体と認識されているかもしれません。しかし、私たちはそれらすべての技術や機能を内包し、そこで得られる体験の総称を「Sound AR」としています。

というのも、「Sound AR」は現時点が頂点であるとは思っていなくて。今後もソニーグループなどで新しい技術が開発され、それが音によるAR体験を促進するものであれば、積極的に取り入れていきたいと考えています。

また、現在、『Locatone』内で展開されている各チャンネルのコンテンツは、基本的には我々が制作をディレクションしてきましたが、今後はユーザーの方々が、直接『Locatone』のコンテンツを制作できる「Locatone Studio」というツールも準備中です。こちらは、クリエイターやコンテンツホルダーの方々への展開から始めていく予定ですが、最終的には一般の方でも気軽に「Sound AR」のコンテンツ制作を体験できて、『Locatone』内で公開できるようにしていけたらと考えています。コンテンツを楽しむだけでなく、コンテンツを生み出すことも含めた「Sound AR」体験を、皆様に提供していきたいですね。

──音によって現実を拡張させる「Sound AR」のコンテンツが、『Locatone』というプラットフォームを拡張させていくということですね。

八木:先ほどお話しした通り、「Sound AR」はヒアラブルデバイスの開発に携わって、音で人々の暮らしをもっと豊かにしたり、楽しくしたり、便利にするために必要なものは何か? というところが原点になっています。

今、『Locatone』にアップされているコンテンツは、エンタテインメント性やアトラクション色が強いものが多いんですが、もっと実用性に特化したコンテンツがあっても良いと思っています。そのためにも、門戸を広く開放して、さまざまなコンテンツが集まるプラットフォームにしていきたいと考えています。

Locatone™(ロケトーン)プロモーションビデオ【ソニー公式】

ソニーの技術や経験を集結させたプラットフォーム作り

──大仁田さんは『Locatone』のネーミングやロゴのデザイン、UIの制作を担当しつつ、『Locatone』のコンテンツ制作にも携わっていると伺いましたが、『Locatone』の魅力をどのように捉えていますか。

大仁田:イベントや映像の制作には時間軸があって、始まりから終わりが決められています。そして、クリエイティブ側から提供できるモノ・コトは、基本的に均一です。もちろん、その感じ方や捉え方は人それぞれですが、こちらとしては感動を狙って「ここは溜めて、ここで盛り上げよう」とか、自分のなかでもある程度、見る側のリアクションを想定しながらクリエイティブを行ないます。

『Locatone』でのコンテンツ作りも、同じような志向性はありますし、提供するものが均一であることに変わりはないのですが、『Locatone』で体験するコンテンツは圧倒的に個人差があるのが面白いと感じました。『Locatone』のコンテンツは、特定の場所で音を体感するわけですが、与えられる情報が音だけなので、目の前の景色がどういうふうに見えるのか、どこで感動するかは本当に人それぞれ。ビジュアルから得る情報より、音から得る情報のほうが想像力が膨らんで、いつも見ている景色がまったく別の空間に感じられる。極端なことを言えば、ひとつのセリフの言い回しだけで、Aという人は泣いて、Bという人は笑う。それぐらい『Locatone』のコンテンツというのは、ユーザー側に感情の起伏が委ねられるものだとわかりました。

もちろんそこまで感情を昂らせるためには、体験するユーザー側にコンテンツへの熱量が求められますが、今まで自分が手掛けてきたクリエイティブとは異なる、予測困難で試行錯誤できるコンテンツ作りが楽しかったですね。

あと、「Sound AR」のコンテンツ制作にはゲーム作り的な面白さもあって。物語のプロットを作るとき、「このスポットに伏線を張って、ふたつ先のスポットで回収しよう」とか、「ここでは油断させておいて、次に驚かせよう」とか、一手ずつ詰めていく楽しさもあります。また、物語を分岐させて作るやり方もできるので、自分でゲームを作ってみたいと思っているような方にも、クリエイターとして興味を持っていただけるんじゃないかと思っています。

 
後編につづく

文・取材:油納将志
撮影:冨田 望

Copyright 2021 Sony Corporation
2015 Copyright Sony Music Solutions Inc. All Rights Reserved.

『大正浪漫』SOUND WALK

開催期間:2021年10月29日(金)~2022年3月31日(木)
開催場所:東京 銀座・日比谷エリア
札幌 大通公園エリア
名古屋 栄・久屋大通公園エリア
大阪 堂島・中之島エリア
福岡 天神エリア
所要時間:約1時間
価格:無料
出演:森永悠希(時翔役)、永瀬莉子(千代子役)

 
 

LiSA Sound Walk Tour

開催期間:2021年11月1日(月)~2022年1月31日(月)
開催場所:全国47都道府県
所要時間:約1時間
価格:980円(980コイン)
出演:LiSA、モモコ(CV 小林ゆう)

関連サイト

『Locatone』公式サイト
https://www.locatone.sony.net/
 
YOASOBI公式
https://www.yoasobi-music.jp/
 
YOASOBI SOUND WALK『大正浪漫』公式サイト
https://yoasobi-locatone.jp/
 
LiSA 10th ANNiVERSARY SPECIAL SITE
https://www.lxixsxa.com/LiSA_10th/
 
「LiSA Sound Walk Tour」公式サイト
https://www.lxixsxa.com/LiSA_10th/LiSA_soundwalktour/
 
「LiSAサウンドウォークツアー」オフィシャルTwitterアカウント
https://twitter.com/LiSA_SWT_JP
 
ソニー・ミュージックソリューションズ公式サイト
https://www.sonymusicsolutions.co.jp/s/sms/?ima=4528

連載エンタメに効くアプリ

公式SNSをフォロー

ソニーミュージック公式SNSをフォローして
Cocotameの最新情報をチェック!