山下達郎『CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA』は達郎愛あふれる空間【後編】
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音楽を愛し、音楽を育む人々によって脈々と受け継がれ、“文化”として現代にも価値を残す音楽的財産に焦点を当てる連載「音楽カルチャーを紡ぐ」。
今回は、『山下達郎 TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection』のリリースにちなんで開催中の『CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA』をフィーチャー。イベントの開催を主導したタワーレコード渋谷店・店長に、そのこだわりと深い“達郎愛”を聞く。
前編では、ポップアップストア開催のきっかけやこだわりを語るとともに限定グッズなどの概要を紹介する。
目次
青木太一氏
Aoki Taichi
タワーレコード渋谷店 店長
タワーレコード渋谷店8F“SpaceHACHIKAI”にて、期間限定で開催中のポップアップストア。『TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection』より、アルバム『FOR YOU』のアナログ盤、カセットテープの販売や超高音質オーディオシステムによる試聴コーナー、パネルフォトスポット、オリジナルグッズ販売、ガチャコーナー、PIED PIPER HOUSE in『CITY POP UP STORE FOR YOU』、TOWER VINYL SHIBUYA 『OLDIES』SHOPなどを設置。入場無料。5月28日(日)まで開催中。
──タワーレコード渋谷店では、山下達郎のポップアップショップ『CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA』を開催中です。まずは、そのきっかけである『山下達郎 TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection』のリリースを、店長としてはどのように受け止められていますか?
TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection Teaser
まずレコード店としては、そのシリーズの第1弾リリースであるアルバム『FOR YOU』(1982年)の中古盤レコードの値段がものすごく上がってしまっている状況があるなかでの発売ということで、山下達郎さんの心意気みたいなものを感じましたね。誰もが手に取りやすい価格で、かつレコードの魅力をもっと広げたいという気持ちで今回のリリースが実現したのではないかと勝手に思っていますので、“レコ屋”であるタワーレコードとしてもそのお気持ちをお客様に向けて代弁する思いで、ポップアップショップを開催しました。
──いち山下達郎ファンとしての、青木さんご自身のお気持ちはいかがでしたか?
リリースされるということを知ったときは素直にうれしかったですね。『FOR YOU』は5枚ぐらい家にあるんですけど、さらに新しいのが買える楽しさというか(笑)。
──では、今回のリリースが『FOR YOU』から始まると知ったときはどう思われましたか? 通常であれば、リリース順に『CIRCUS TOWN』(1976年)から発売されても良いのかなと思うのですが。
そこにも達郎さんの気概を感じたというか、今の『FOR YOU』の世界的なニーズに対して、最初に投下したかったのではないかと思いましたね。
山下達郎が1976年から1982年までのRCA/AIR YEARS在籍時に発売した全8タイトルを、2023年最新リマスター&ヴァイナル・カッティングにて商品化したレコードおよびカセットテープを完全限定生産でリリース。
──店頭に立たれていて、『FOR YOU』をはじめとする山下達郎のレコードの中古盤販売の状況が変わってきたことに気付かれたのはいつごろか覚えていらっしゃいますか?
2019年ぐらいですかね。そのころからDJやレコード屋のバイヤー以外に、外国人の旅行者が買って帰るというケースが増えていったように感じます。日本のレコードは盤質も良いですし、保存状況も良好なので、わざわざ買いに来てくれるんですよね。そういう需要があって、どんどん価格が上がっていくのを肌で感じていました。
──まさに日本だけでなく海外からも待ち望まれていた『山下達郎 TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection』ですが、『CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA』では『FOR YOU』のレコードとカセットテープの販売を行なうだけでなく、Tシャツなどのオリジナルグッズの販売、超高音質オーディオシステムによる試聴コーナー、大型ジャケット写真によるフォトスポットなど、さまざまなアイテムや企画を盛り込んでいます。
もちろん、レコード店としてお客様に作品を届けるということが一番大事なんですけど、それだけで終わりたくなかったんです。この渋谷店では、常日頃K-POPやアイドルのイベントを多く行なっていて、そのジャンルのファンの方が同じ空間に集まって、同じ楽しさを共有するっていう場を提供させてもらっています。そういった場を、山下達郎さんでも設けたかったんですよね。同じ想いを持った方々が集える空間を作りたいというか。
──『山下達郎 TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection』の情報が明らかになったのが今年の1月ですが、いつごろからポップアップショップの準備は始められていたのでしょうか。
2カ月前ぐらいからですかね。通常ですと、この規模のイベントは1年ぐらい前には開催が決まっていて、その半年後ぐらいに商品の詳細などが見えてきたところから具体的な準備を始めます。なので、今回は準備期間が圧倒的に短かったです。
──短期間で準備されるにあたって、特に大変だったことはなんでしょうか。
今回、イベント名に“CITY POP”と入れているように、山下達郎さんのプロダクトとともにシティポップをフィーチャーしているんですが、タワーレコードとしてはただシティポップをやるだけでは面白くないな、と。どうせなら、“山下達郎”の背景に広がっている音楽の魅力も伝えたいと思って、“オールディーズコーナー”を作ったんです。そこに並べるレコードを集める作業が一番大変でしたね。
──山下達郎の名物ラジオ番組『サンデー・ソングブック』でかかりそうなレコードがたくさん並んでいますが、これはどのようにして集めたんですか?
中古レコードをネットで探したり、自分が持っていたもののなかからも出したりしています(笑)。渋谷店のスタッフも協力してくれて、2カ月かけて地道に集めていったんです。タワーレコードでも中古レコードを扱ってはいるんですが、オールディーズのジャンルはあまりなくて、市場にも出回っている数が少なかったので、枚数を集めるのに苦労しました。
──今の潮流で考えるとシティポップに関連したレコードのほうが売り上げが望めそうですが、あえてオールディーズを置いたところに青木さんの、そしてこのポップアップショップからのメッセージが感じられますね。
確かにシティポップのレコードを置いたほうが売れるかもしれないですね。でも今回は、ありきたりじゃない、今までトライしてこなかったことをやってみたかった。そしてなにより、達郎さんの音楽的ルーツにもここに来てくださったお客様には触れてもらいたかったんです。
さらに、達郎さんといえば、音質へのこだわり。ショップには超高音質オーディオシステムによる試聴コーナーも設けました。
──そのシステムで実際に『FOR YOU』を試聴したユーザーの反応はどうでしたか?
A面1曲目の「SPARKLE」からB面ラストの「YOUR EYES」まで通して聴かれるお客様が多かったですね。改めて、良い音でゆったりと聴くというのがレコードの一番贅沢な楽しみ方だと考えて、このポップアップショップでしか味わえない特別な空間を作ったんですが、皆さんに満足していただいているようでうれしいです。僕自身もこのオーディオシステムで聴きましたが、「SPARKLE」のカッティングギターが大音量で迫ってくる感じはまるでライブを体験しているようで、レコード全体の解像度がすごく高まったような印象を受けましたね。
──グッズに関してのこだわりはどういったところですか?
まずは『FOR YOU』のアートワークをあしらったキャンバスパネルですね。ちょうどレコードくらいのサイズなんですが、鈴木英人さんのイラストをキャンバスに展開して飾れたら良いなと思っていたので、僕から提案させていただいて商品化できました。初めての試みだったんですが、個人的にも欲しかったんです(笑)。
──来店者が楽しめるものとして、『RIDE ON TIME』の顔出しパネルもあります。
達郎さんの顔をくり抜いちゃって良いのかな? とちょっと躊躇しましたけど(笑)、大好評です。女性の方もたくさん撮影されていたのでうれしかったですね。おひとりでご来店いただいてもスタッフが撮影するので、どんどん声を掛けていただきたいです。
遊べるものとしては、アルバム8タイトルをモチーフにしたミニアクリルスタンドのカプセルトイもあります。こちらも皆さんコンプリートを目指して楽しんでいただけているようです。
──実際にポップアップショップがスタートしてからは、店頭に立たれていてどんなふうに感じていらっしゃいますか?
初日のオープン前は、外に並ばれているお客様が30~40人ほどいらっしゃったんですけど、往年のファンといったご年齢層で、あ、やっぱりそうかって思ったんですね。でも、日が経つにつれて若い世代のお客様の来場も意外と多いなと感じています。
──その若い世代の人たちもレコードを目当てに?
はい、レコードをお買い上げいただいています。おそらくCDは持っていらっしゃって、でもやっぱりレコードで聴きたいという気持ちでお買い求めいただいているんじゃないかと思っています。やっぱり、レコードで聴きたいという層が増えているんだろうなということを実感しましたね。
モノを買うだけだったらネットで事足りる時代に、いかに作品プラスアルファのものを楽しんでもらうことができるか。今回のポップアップショップに限らず、タワーレコードでは常にどうやってお店まで足を運んでもらえるかを、音楽を楽しむという観点から考えています。『CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA』で、またひとつ、良い事例ができたのではないかと思いますね。
文・取材:油納将志
撮影:荻原大志
アナログ盤
『FOR YOU』(1982年作品)
発売中(カセットテープ同時発売)
『TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection』
予約はこちら
『山下達郎 PERFORMANCE 2023 全国ライブツアー』
詳細はこちら
タワーレコード渋谷店
https://towershibuya.jp/
『TATSURO YAMASHITA RCA/AIR YEARS Vinyl Collection』
特設サイト
https://www.tatsurorcaairyears.com/
Twitter
https://twitter.com/TATSURO_RCA_AIR
YouTube
https://www.youtube.com/@TATSUROYAMASHITA_Official
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