Sunny Sunnyだから表現できる日向と日陰【前編】
2023.06.27
ソニー・ミュージックエンタテインメント
2023.06.14
気鋭のアーティストの実像に迫る連載企画「アーティスト・プロファイル」。
今回は、自身の活動だけでなく、楽曲提供やサポートミュージシャンなど、多岐にわたる活躍を見せるシンガーソングライターの堂島孝平をフィーチャー。ポップソングの旗手として「葛飾ラプソディー」など数々の作品を発表しつつ、好きなものが次々と仕事に繋がってきた彼のバランス感覚とは。
後編は、アンジュルム・竹内朱莉との対談Part2。竹内の卒業ソング「行かなくちゃ」誕生の裏側をお互いに明かす。
堂島孝平 Dojima Kohei
1976年2月22日生まれ。茨城県出身。1995年2月21日、シングル「俺はどこへ行く」でメジャーデビュー。1997年にリリースしたアニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』のオープニングテーマ「葛飾ラプソディー」がヒットとなる。また、KinKi Kids、藤井フミヤ、乙葉、THE COLLECTORS、PUFFY、藤井隆、A.B.C-Z、Sexy Zone、Negicco、坂本真綾、アンジュルムら数多くのアーティストへの楽曲提供も行ない、近年ではKinKi Kidsの共同プロデューサーとして、レコーディングだけでなくコンサートメンバーとしても活動中。2023年6月21日より、ライブツアー『KOHEI DOJIMA TOUR 2023「POP dB」』がスタート。
竹内朱莉(アンジュルム) Takeuchi Akari(Angerme)
1997年11月23日生まれ。埼玉県出身。血液型O型。特技:書道・硬筆(正師範)。2011年にスマイレージに加入し、2019年よりアンジュルム(2014年にスマイレージより改名)の2代目リーダーとなる。公式ニックネームはタケちゃん。6月21日の横浜アリーナ公演をもってグループを卒業する。卒業ソロ曲「行かなくちゃ」を収録するアンジュルムのシングル「アイノケダモノ/同窓生」は6月14日リリース。
――(中編からつづく)6月21日の横浜アリーナ公演をもってアンジュルムを卒業する竹内さんの最後のシングルのカップリングとして、竹内さんのソロ曲「行かなくちゃ」を堂島さんが作詞作曲されています。
竹内:ラストシングルに入るかもしれないソロ曲を作るってなったときに、ディレクターさんがデモ音源を聴かせてくださって。「これ、すごく良いですね、素敵ですね」って言ったら、それが堂島さんが私の卒業とはまったく関係なく作ってくださっていた曲だったんですよ。
堂島:そうです。実は「愛すべきべき Human Life」のデモと同じタイミングで渡していた曲のうちの1曲だったんですよね。まだ1番のメロディだけで、ざっくりしたデモアレンジだけしてあって。
竹内:えー! そんな前からあったんですね。
堂島:昨年の11月にアンジュルムの日本武道館公演を観に行ったときに、ディレクターのたいせいさんに「あの曲をアンジュで使いたい」とだけ言われたんですよ。まさかそれが竹内さんの卒業のソロ曲になるとは知らなかったし、何なら僕、歌詞を自分で書くとも思ってなかったんです。
そしたらその約1カ月後、『COUNTDOWN JAPAN 22/23』を観に行ったときにもたいせいさんと会って。ちょうど竹内さんの卒業が発表された10日後ぐらいで、その場でたいせいさんに、「例の曲、タケのソロ曲で。歌詞もお願いしたいんです」って言われて「ええっーーー!」ってなって(笑)。だから、あの日のアンジュのコンサートはあんまり覚えてないです。ボーッとしながら観てたんで。
竹内:ライブの前に言われたんですか?
堂島:そうでしたね。そこから1カ月ぐらいで歌詞を書くっていう感じだったと思います。
――歌詞にはどんな想いを込めましたか?
堂島:たいせいさんは、竹内さんの卒業曲だけど、あんまり竹内さんに寄せすぎないほうが良いと思うって話をされていて。これから新しい環境に踏み出していく人たちにとってもちゃんと響くものにしたい、と。それはそうだなと思って。あんまり個人を対象にしすぎると、がんじがらめになっちゃうところもあるし。
でも、竹内さんが歌うからこそ成立するっていうものには絶対にしたいと考えていました。だから気を付けたのは、竹内さんのことを細かく描くのではなく、竹内さんを通して、新しい一歩を踏み出す人にもちゃんと響くものにしたいっていうこと。あとは、竹内さんはとにかく物言いがシンプルなので、小難しい言葉は絶対使わないこと。
竹内:あはははは。本当にありがたかったです。アンジュルムの曲ってわからない言葉がいっぱいあるんですよ(笑)。なんなら、シングル曲の「大器晩成」(2015年)もわからなくて、「なんて読むんですか?」から始まったし。しかも最近、アンジュルムは強くて、芯の通った女性像の代表みたいなイメージがどんどん確立されていけばいくほど、本当に意味わかんない言葉がいっぱい出てきて、どういう意味だろう? って。でも、あんまり調べて歌うってこともしてこなかったので、知らないなら知らないまま、なんとなくの雰囲気でやってて。
堂島:最高ですよね。それでやれちゃうんですもんね。
――(笑)竹内さんは「ひらがなでしゃべってる」ってよく言われてました。
堂島:それは竹内さんの良さであり、竹内さんの真骨頂だと思うんですよね。いろんな意味で、こだわりが強すぎたり、変化をつけすぎたりすると、届くものも届かなくなっちゃうっていうリスクもあると思うんですよ。
それに、作詞をするなかで改めて気付いたこともあって。回りくどい言い方とか、難しい言葉を使わないっていうことは、歌詞としては逃げ場がなくなっていくんですよね。ごまかせなくなっていくというか。それは、竹内さんの在り方と通じていて。本当に、ごまかしのないやり方、振る舞いでやってこられたんだなと思いました。
竹内:堂島さんが書いてくださった歌詞を読んだときに、「これ、どんな意味なんだろう?」っていう言葉がひとつもなくて。全部、意味がわかるし、本当にストレートに刺さってきて、すごく感動しました。
堂島:最初はグループへの曲として渡していたっていうことも含めて、そのときに持っていたイメージは、アンジュルムがバーっとこの曲で走り出す姿だったんですよ。そこに追い風が吹いている、みたいな。だから、竹内さんを後押しできれば良いなっていうのと、あとは、すごく難しいことだと思うんですけど、自分でやってきたことを自分自身で肯定するっていうことを込めたかった。葛藤ののちに“YES”を持っていく。この竹内さんの卒業のタイミングで、竹内さんがそう思ってくれていたら良いなと思ってました。
――過去を振り返って、未来を見据えながら、今、現在の地に足をつけながら、そのすべてを肯定している歌詞になってますよね。
竹内:そうですね、私は10歳からこの世界に入ったんですけど、本当に昔から今まで、自分がやってきたことが描かれてる感じがして。これはもう堂島さんだからこそ書けた歌詞だなと思ったし、堂島さんに書いていただけて本当に良かったと思いました。
堂島:いやあ、うれしいですね。
――歌詞には、“小さな明かりは”というご自身の名前につづいて、“煌めき出して/舞い上がっていくよ/道を照らす”というフレーズも入っています。
竹内:自分の書道家としての名前が煌舞(こうぶ)なんですけど、それを見付けた瞬間に「うわ、すげ!」て思って。しかも、こんなにさりげない感じで入ってるのがうれしかったです。
堂島:たいせいさんに、「タケに寄せすぎないように」って言われたんですけど、ここの大サビだけは寄せさせてくださいって。
竹内:あはははは。でも、ステージの上で歌っても、別に違和感のない言葉なので、自分の名前が「あかり」で良かったと思いましたね。違う名前だったら難しかっただろうなと思って。
堂島:いや、でも、考えてみたら、名前をただ単に入れたくて作ったというよりも、やっぱり自分がしてもらったことを書いているという気持ちのほうが強くて。
竹内さんの名前は「あかり」さんなんですけど、やっぱりこっちは灯してもらった感じがずっとしてるんですよね。アンジュルムのメンバーの皆さんもそういう話をよくしてるし、ファンの皆さんも、竹内さんがいてくれたからみんなが集まってるんだという気持ちがあると思う。
だから、竹内さん自身の今までの道とこれからの道という歌にはしてるんですけど、実際は本当に、こっち側が明かりを灯してもらったんだということを書いてますね。
――今、“これから”という言葉もありました。歌詞には“夢ができたんだ/また新しい夢”というフレーズもありますが、竹内さんは今、どんな夢を思い描いてますか。
竹内:卒業後は書道の道で世界を目指していきたいっていう思いがあります。卒業理由もそれが大きかったりするので、卒業後は全然違う進路にはなると思うんですけど、まあ本当に不安がまったくなくて。
周りの方も「卒業後が楽しみです」と言ってくださってるんですけど、何なら私自身が一番楽しみにしてて。まだ何も決まってないし、何の予定もないんですけど、「いや、できそう」と思ってます(笑)。
しかも、最後の曲がしんみりしっとりっていう感じでもなく、ちょっとキラキラした、本当に背中を押してくれるような曲になってて良かったです。卒業するのは寂しさもあるんですけど、早く先の自分を見てみたいなって気持ちもありますね。
堂島:本当に、やりたいことは全部やってほしいなと思いますし、とにかく元気で暮らしてほしいです。
――歌はやらないんですか? 「行かなくちゃ」を聴いて思うのは、その歌いっぷりの良さなんですが。
堂島:そうなんですよ、やっぱりすごいと思いました。作家冥利に尽きると言うか、自分が想像していた何倍も良かったです。
竹内:えーー!!
堂島:僕、めっちゃ言いましたよ。ミックスのスタジオに行ったときに、たいせいさんやエンジニアの方がいたんですけど、テイクを聴くたびに「普通出ないですよ、これ!」とか、「いやあ、本当に良いシンガーだな!」ってずっと言ってました。
竹内:あはははは。ファンの方にも、関係者の方やスタッフさんにも、すんごい言われるんですよ。正直、最初は本当に歌うつもりはなかったんです。もうこれで歌は終わりにしようと思ってたんですけど、あまりに言われすぎて、「あれ? これはやったほうが良いのかな」と思うようになって。
――歌もつづけてほしいですね。
竹内:最初は、卒業を発表してから半年あったので、あと半年歌ってキレイサッパリ終わりにしようと思ったんです。でも最後のツアーをやっていくなかで、途中から声援がオッケーになって、その感じを味わったときに「あれ? もうちょいやりたいな、これ」と思っちゃって。
声援ありのライブをやったときに、「え? 私はあと数回しかこれを味わえないのか。みんな、ずるっ!」と思っちゃって(笑)。私はこれでずっと育ってきたのに、最後にちょっとしか味わえないのはなんか寂しいなあと思ったし、今、皆さんにすんごい言っていただけてるので、「要検討中です」って答えてます(笑)。本当に何も決まってないから、「やります」とか、「今後も歌つづけます」とか、「また歌いますので」って言い切ることはできないんですけど。
でも、逆に言えば、やりたいことがいろいろ出てきて、なんか楽しそうだなという気がしています。ひとりになったからこそできることもたくさんあるんだろうなと思いますね。
――またおふたりの共演があることを願っています。最後に、お互いがどんな存在かを聞かせてください。
竹内:堂島さんがコロナ禍でアンジュのことを見付けてくださってなかったら、私は堂島さんに出会ってなかったわけなので、私の最後の曲も全然違うものになっていたと思うんですね。だから、本当に出会いに感謝だなって思いますし、アンジュのメンバーで堂島さんのライブを観に行かせていただくときは、堂島さんのファンの方たちに負けないくらい楽しんで盛り上がっていました。
堂島:いや、本当にびっくりしますよ。
竹内:関係者席だけど、なんか高まっちゃってるから良いよね! みたいな(笑)。堂島さんのライブに行って、わーって騒げるような存在になれると思ってなかったですし、普段から楽屋でも堂島さんの曲が流れてるんですよ。
堂島:え~、こわっっ!
竹内:あはははは。上ちゃん(上國料萌衣)とかしょっちゅう歌ってるんですよ。「この曲、好きだわ」とか言いながら。堂島さんのライブで観たことを「こういうのをアンジュでもやりたいね」って話してたりもして。普段からアンジュを応援してくださってますけど、私たちも刺激をたくさんもらっているので本当にうれしいです。
ライブにもたくさん足を運んでくださって、終演後のインスタで、「え? 今日、堂島さんいたらしいよ」みたいな確認をすることも多くて。本当にどこまでも来てくださるので、今後もよろしくお願いしますって感じですね。
堂島:いや、もう僕は、楽曲提供をするという関係にもなり、アンジュルムの皆さんが僕のライブに来てくださったりもして、お互いに演者としての関わり合いみたいなのも生まれてきていて、めちゃくちゃうれしいなと思いつつ、大前提として、勝手に好きになっちゃっているっていうところがいまだに大きくて。
で、ふと考えるんですよ。アンジュルムを好きになったタイミングで、もし竹内さんがアンジュルムにいなかったら、どうだったんだろうな? って。そう思うと、あのときの自分がもらったエネルギーは竹内さんそのものだったというふうに思うんですよね。僕はずっとエネルギーをもらっているし、憧れてもいるし、感謝しかない。とにかくありがとうございますっていう気持ちしかないです。
竹内:いえいえ、こちらこそ、ありがとうございます。アンジュにはまだ悪ガキがいっぱいいるし、静かになることはないですね(笑)。さらにうるさい子も新メンバーとして入ってきたので、これからも応援してください。
堂島:もちろんです! 変わりながら成長をつづけるアンジュルムも楽しみにしております。
文・取材:永堀アツオ
撮影:干川修
アンジュルム「アイノケダモノ/同窓生」
発売中
堂島孝平
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