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連載Cocotame Series

エンタメビジネスのタネ

すべてはヒットキャラクターを生み出すために―― クリエイターレーベル『UNI』の挑戦【前編】

2023.09.20

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最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ──。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。

今回は、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)がイラストレーター、漫画家、アニメーター、デザイナーなどのクリエイターを多角的にサポートし、それぞれと連携して新たなヒットキャラクターの創出を目指すクリエイターレーベル『UNI(ウニ)』と、そこで展開されている新規プロジェクトをフィーチャーする。

『UNI』では、SCPが得意とするクリエイターのエージェント業務、営業サポートに加え、公式ファンアートオンラインストア「MashRoom Cafe」やショートコミックサイト「キャラコミWalker」なども展開。それぞれがヒットキャラクターを生み出す受け皿になることを目的として、今年、立てつづけにローンチされた。

SCPが『UNI』でクリエイターとともに目指すこととは? 『UNI』の具体的な内容とともに、担当スタッフたちが今後の展望を語る。

前編では、プロジェクトが立ち上がった経緯と『UNI』の事業内容について話を聞いた。

  • 江川プロフィール画像

    江川昌宏

    Egawa Masahiro

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 佐村プロフィール画像

    佐村大侑

    Samura Daisuke

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 笹﨑プロフィール画像

    笹﨑愛美

    Sasazaki Manami

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

  • 大矢プロフィール画像

    大矢武彦

    Ohya Takehiko

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

SNS発のヒットキャラクターを目指せ

――まずは、皆さんが担当されている業務について教えてください。

江川:音楽制作の現場を経て、2013年にSCPに異動してきました。そこからさまざまなキャラクタービジネスに携わりながら、『UNI』を運営する組織の原型を立ち上げたのが4年ほど前ですかね。以来、『UNI』でやるべきこと、我々が持っているべきビジネスの機能は何かをチームで試行錯誤しながら組み立てていって、現在に至っています。

江川画像1

笹﨑:5年ほど前からSCPで『PEANUTS』や『きかんしゃトーマス』といったIPのライセンス営業を担当してきました。現在は『UNI』を運営する部門で、主に「MashRoom Cafe」の担当をしています。

佐村:『UNI』では、クリエイターの方を発掘して一緒にコンテンツを作っていく開発分野の業務と、企業などからの受注でクリエイターの方たちの作品をマネタイズしていく営業分野の業務の、両方を横断的に担当しています。

大矢:2012年からSCPが保有するキャラクターライセンスの海外営業を担当しています。それと兼務という形で『UNI』の運営に携わっていて、『UNI』では#GIFの伊豆見さんというクリエイターのエージェントを担当しています。

#GIFの伊豆見 ビジュアル画像

――クリエイターレーベル『UNI』が、どういった経緯で立ち上がったのか教えてください。

江川:もともと私は、オリジナルキャラクターのヒットを生み出したいと思い、希望してSCPに異動してきました。そこでキャラクタービジネスについていろいろと勉強しながら気づいたのは、SCPには自社でオリジナルのキャラクターを生み出して、それをマーケットに送り出すシステムがないということ。

例えばメーカーだったら、社内にイラストレーターやデザイナーがいて、その人たちが描いたキャラクターで文具や雑貨などのグッズを作り、流通販売するというシステムがあります。しかしSCPは、「スヌーピーミュージアム」や「六本木ミュージアム」といった自社運営施設でのグッズ販売は行なっているものの、自社で直接グッズを作って流通販売するというビジネスは行なっていません。

これではオリジナルキャラクターでヒットを目指すというのは難しい。何か良い手はないかと考えながら時が過ぎていたのですが、そのうちにSNS発のヒットキャラクターが出てくるようになりました。そのときは、まだ無名のクリエイターの方々がSNSに投稿したキャラクターの漫画やイラストが注目され、人気に火がつき、ヒットを生み出す。それを目の当たりにしたとき、この方法をベースにクリエイターの方たちと組むことができれば、SCPからでもオリジナルキャラクターのヒットを生み出せるのではないかと考えたんです。

――確かにSNSからヒットキャラクターが生まれ、アニメ化、グッズ化へとつながっていった例は、近年、増えてきています。

江川:それが2019年ごろだったのですが、ちょうど同じころにご縁があって、つむぱぱさん、#GIFの伊豆見さんというおふたりのクリエイターと出会い、エージェント契約を結ぶことになりました。それが『UNI』のエージェント事業の始まりです。

けれど音楽の世界と同じで、たくさんのクリエイターと出会わないと、ビジネスの規模を大きくすることはできません。かといって契約できるクリエイターの数には限りがあります。どうやったらネットワークを広げられるかと考え、辿り着いたのが、セールスサポートというシステムでした。クリエイターとエージェント契約は結ばず、企業などのクライアントからの依頼とクリエイターをマッチングし、案件ごとに進行管理などをサポートするというものです。現在、そういった形で約50組のクリエイターの方々をサポートさせていただいています。

――そのエージェント事業を、今年6月にクリエイターレーベル『UNI』として正式に立ち上げたということですね。

江川:はい。エージェント業務はずっと表向きには打ち出さず、クリエイターの方々の資料を営業先の企業や関係者に配って周知するだけでした。しかし、もっと多くのクリエイターの方々と出会うためには、「SCPと仕事がしたい」と思っていただけるようなプラットフォームを作り、広くプレゼンテーションする必要があると考え、『UNI』をスタートさせたという経緯です。

ライセンスビジネスのノウハウをいかす

――時系列的にいうと、実は『UNI』のローンチよりも前に立ち上がったショートコミックサイト「キャラコミWalker」と公式ファンアートオンラインストア「MashRoom Cafe」に関しても詳しく聞いていきます。改めてになりますが、「キャラコミWalker」「MashRoom Cafe」は、クリエイターレーベル『UNI』というプロジェクトの一環として展開するサービスということですね。

江川:そうです。クリエイターエージェント、営業サポートとは別軸で、SCPがこれまでに培ってきたノウハウやコネクションを『UNI』でもいかしたいと考えて、それぞれ立ち上げたサービスです。

――「キャラコミWalker」は、どういった経緯でスタートしたのでしょうか。

キャラコミWalker ロゴ画像

江川:キャラクターをヒットさせる手法のひとつに漫画があると考えました。SNS発のヒットキャラクターの多くは、キャラクターがかわいいというだけでなく、ちょっとシュールだったり、クスッと笑ってしまうユーモアがあったり、癒し系だったりと、ストーリー性があってハマっているものが多い。

キャラクターがいて、ストーリーがあるなら、それはもう漫画でしょうということで、我々もオリジナルキャラクターの漫画を発表できる場を作ろうと考えたんです。加えて、SNS上では短文、短尺が好まれるので、4コマ漫画をベースにしたショートコミックサイトにつながりました。

その場として、かねてからSCPと長くお付き合いいただいているKADOKAWAのキャラクター情報サイト「キャラWalker」内に、「キャラコミWalker」という新コーナーをオープンさせていただき、クリエイターの方々の漫画連載を掲載していくことになったんです。

――つづいて「MashRoom Cafe」についても教えてください。

Mashroomcafeロゴ画像

江川:『UNI』のエージェント事業にしても「キャラコミWalker」にしても、立ち上げてから、すぐにヒットが生まれるなどという甘い考えは持っていませんでした。むしろ、ローンチ後しばらくは、我々とクリエイターの方々が出会うために必要な準備期間で、これだけでビジネスを展開するのは難しい。そこで温めていたオンラインストア構想を具現化し、「MashRoom Cafe」が実現しました。

――「MashRoom Cafe」は著作権の権利元に許諾を得たファンアート(二次創作)をグッズ化し、公式にオンデマンドで販売、購入できるオンラインストアとのことですが、ファンアートに焦点を絞った理由は?

笹﨑:SCPでも、2019年ごろから自社ECサイトの必要性が議論されていて、コロナ禍に入ってからその声がさらに高まっていました。ただ、SCPはライセンスビジネスで多くのキャラクターをお預かりしていて、一つひとつのIPには既にオンラインストアが存在しています。それらと競合して、ファンやユーザーの皆さんを混乱させてしまっては意味がありません。では、どうしたらSCP独自のECサイトを生み出せるかと考えていたときに出会ったのが、ファンアートという文化でした。

笹﨑画像1

江川:二次創作というのは、権利的にはグレーな部分もあって、権利元の意向によってはNGとされている場合も多くあります。そこに、ライセンスビジネスのプロであるSCPが間に入れば、逆にうまくいくのではないかと。権利元にきちんと許諾をもらい、オンデマンド生産で在庫リスクも減らすことで、クリエイターがファンアートをグッズ化し、それをファンが購入できるシステムにしました。

――この取り組みは、権利元とファンの間に立って長年ライセンスビジネスを手掛けてきたSCPの強みを最大限発揮できるものですね。

江川:優秀なクリエイターと出会い、その方たちと一緒にビジネスを展開していく『UNI』のエージェント事業を中心に、作品を漫画という形で発表する場「キャラコミWalker」、ファンアート作品をECで販売する「MashRoom Cafe」。すべてがクリエイターにつながるプロジェクトとして相互に連携し、循環していくイメージです。

クリエイターのマッチングとサポートを行なう『UNI』

――ここからは、各プロジェクトの内容についてさらに詳しく聞いていきます。まずはクリエイターレーベル『UNI』ですが、クリエイターのエージェント事業とは具体的にどういったものなのでしょうか?

佐村:エージェントの仕事は大きく分けてふたつあると思うのですが、ひとつは企業などがキャラクターを使ったプロモーションを展開する際、要望されたクリエイティブに最適なクリエイターの方を紹介するマッチングですね。例えば、「この商品をPRするために、SNSでPR投稿をしてくださるクリエイターを10人紹介してください」という依頼があったときに、我々が間に入って、クリエイターの方々にお声掛けさせていただく。それがマッチングの仕事です。

もうひとつは、クリエイターと向き合って制作をサポートする仕事。こんな企画をやったら面白いのでは、今後のネタはどういう方向性でいこう、といったことを一緒に考えます。クリエイティブの主体はあくまでクリエイターなので、我々は創作が煮詰まったときの相談役という感じですが、サポートさせていただいています。

佐村画像1

――『UNI』という名前の由来は、“トゲがある=際立ったオリジナリティ、高級食材=クオリティが高い”という「ウニ」と“Unique=個性、Unite=協力、Universal=世界の”という「Uni」のダブルミーニングであるとサイト(新しいタブで開く)に載っていましたが、「レーベル」という呼び方は、音楽レーベルを多数擁するソニーミュージックグループならではだと感じました。

江川:どんな曲を作ろうとか、どんなライブにしようとか、アーティストとスタッフが互いにアイデアを出し合って、ブレストしながら作り上げていくという意味では、音楽レーベルと同じですよね。

――現在、『UNI』とエージェント契約をしているクリエイターが4組いますが、どのような取り組みをしているのか具体的に教えてください。

佐村:つむぱぱさんは、家族の日常をほっこりしたイラストで描くクリエイターですが、ご自身で到達したい目標を定めて、ロードマップを作っていらっしゃいます。それによると、将来は家族でBBQやアウトドアも楽しめる「つむぱぱパーク」という公園を作り、その先の最終目標として「つむぱぱランド」も構想されていて、「つむぱぱ」をテーマパークが作れるぐらいのコンテンツにしたいという大きな夢を持っていらっしゃいます。

このようにクリエイター自身が明確な目標を持って、ゴールを描いている場合は、そこに向けて一緒にプロモーション計画を立てたり、スケジュール管理をしたり、個展の準備をサポートするなどしています。

つむぱぱ ビジュアル画像

大矢:#GIFの伊豆見さんは、YOASOBIの楽曲「ハルカ」のミュージックビデオの制作を担当したことで、我々にとっても新しい扉を開けてくださったなと思っていて。というのも、SCPはソニーミュージックグループのなかでも非音楽部門なので、音楽制作のチームと交わる機会があまりなかったんですね。

YOASOBI「ハルカ」Official Music Video

しかし、こういった事例を増やしていけば、将来的にはソニーミュージックグループの音楽チームが作るアルバムジャケットやミュージックビデオといったアートワークを『UNI』のクリエイターが担当するという流れも作れるので、グループ内のシナジーをさらにいかせると考えています。

大矢画像

江川:いじまさおりさんは、とにかく絵がかわいかったのでお声掛けさせていただいたのですが、キャリア的にはほとんどゼロからのスタートでした。そこで、「のこのこ うちのコ」というコンテンツを作り、昨年の春からSNSアカウントを立ち上げて投稿されています。

いじまさおり ビジュアル画像

佐村:「おひげのポン」については、クリエイターとしての契約ではなくコンテンツとしての契約で、我々は日本国内ではなく、中国、香港での展開に関するエージェントになります。もともと日本で人気のある「おひげのポン」ですが、作者のかなざわ まことさんは世界でヒットさせたいという思いをお持ちで、そのお手伝いができればというところから始まりました。

おひげのポン ビジュアル画像

話し相手になるだけで創作が進む

――聞いていると、作風も活動フィールドもキャリアも、いろいろなタイプのクリエイターがいらっしゃいますね。

江川:漫画表現に向いているクリエイター、企業から求められるタイプの絵を描くのが得意なクリエイター、アーティスト気質のクリエイター、デザイナー寄りのクリエイター……ひとくちにクリエイターといっても得意分野がまったく違います。加えて「ヒットさせたい!」と強く思っている方もいれば、好きな絵を気ままに描いていたいと思っている方もいて、SNSのフォロワー数などもまちまちです。

だからこそ、一人ひとりのクリエイターとじっくり向き合うことが重要なんですが、残念ながら、まだビジネスとして立ち上がったばかりなので、スタッフの人数が圧倒的に足りないというのが、今の我々の切実な悩みです。クリエイタービジネスに興味があるという方は、ぜひ挙手をお願いします!

大矢:クリエイターの方々と向き合っていると、創作って孤独な仕事だなと感じることがあるんですね。そんなときに、私がただの話し相手になるだけでもリフレッシュされて創作が進むそうで、実際に翌日、良い作品が上がってきたりします。これは、自分が直接担当になるまでわからなかったことですが、クリエイターの方たちからは感謝していただけますね。

佐村:我々はとことん寄り添いますからね(笑)。さらに言うと、ライセンスされるような領域で活躍できるようになると、企業との条件交渉やSNSを使った宣伝、情報発信に時間をとられるようになって、肝心の創作活動に時間が割けなくなってしまうこともあります。そういうときに、『UNI』が間に入ってしっかりサポートをさせていただきます。

――『UNI』の今後の目標を教えてください。

江川:インターネットやSNSを介してクリエイターとクライアントがダイレクトにつながり、直接仕事のやり取りができる今、対価を払ってでも『UNI』と仕事がしたい、ここなら信頼して作品を預けられるとクリエイターの皆様に思っていただける存在になること。まずは、そこからですね。

この人たちは自分のことを理解して、ちゃんと見てくれているんだという安心感を持っていただける、それがエージェントとして何よりも大事だと思います。

後編につづく

文・取材:原 典子
撮影:干川 修

関連サイト

クリエイターレーベル『UNI』
https://www.uni-creator.jp/(新しいタブで開く)
 
Mashroom Cafe
https://mashroomcafe.com/(新しいタブで開く)
 
キャラコミWalker|ウォーカープラス
https://theme.walkerplus.com/characomic/(新しいタブで開く)

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