K4の成熟した魅力と“ADULT K-POP”の可能性をスタッフが解説【前編】
2023.10.17
最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ──。新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画「エンタメビジネスのタネ」。
今回は、ソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)がイラストレーター、漫画家、アニメーター、デザイナーなどのクリエイターを多角的にサポートし、それぞれと連携して新たなヒットキャラクターの創出を目指すクリエイターレーベル『UNI(ウニ)』と、そこで展開されている新規プロジェクトをフィーチャーする。
『UNI』では、SCPが得意とするクリエイターのエージェント業務、営業サポートに加え、公式ファンアートオンラインストア「MashRoom Cafe」やショートコミックサイト「キャラコミWalker」なども展開。それぞれがヒットキャラクターを生み出す受け皿になることを目的として、今年、立てつづけにローンチされた。
SCPが『UNI』でクリエイターとともに目指すこととは? 『UNI』の具体的な内容とともに、担当スタッフたちが今後の展望を語る。
後編では、「MashRoom Cafe」と「キャラコミWalker」の立ち上げまでの経緯と『UNI』が持つ新たなビジネスモデルの可能性について聞いた。
江川昌宏
Egawa Masahiro
ソニー・クリエイティブプロダクツ
佐村大侑
Samura Daisuke
ソニー・クリエイティブプロダクツ
笹﨑愛美
Sasazaki Manami
ソニー・クリエイティブプロダクツ
大矢武彦
Ohya Takehiko
ソニー・クリエイティブプロダクツ
――(前編からつづく)公式ファンアートオンラインストアの「MashRoom Cafe」について、サービス内容などを詳しく教えてください。
笹﨑:「MashRoom Cafe」は、ファンアート(二次創作)のグッズを販売、購入できるオンラインストアです。現在は、我々が許諾をいただいたアニメのキャラクターやアーティストなどのファンアートを「MashRoom Cafe」にアップロードし、それが権利元(コンテンツホルダー)によって承認されると、Tシャツやマグカップといったグッズを販売できるようになります。
グッズが購入されると投稿者に一定の報酬が支払われる、オンデマンドシステムで行なっているので在庫が余ってしまうリスクもありません。二次創作のお題となる作品は基本的に期間限定での募集になりますが、それ以外のオリジナルアートの販売、購入も可能です。
これまでの実績としては、音楽ジャンルでYOASOBI(募集・販売期間終了)、MAISONdes、BOOM BOOM SATELLITES、THE SPELLBOUNDを展開し、キャラクターとしては、「タイムボカン」シリーズや「ヤッターマン」、「みなしごハッチ」など、数々の名作アニメを生み出されてきた「タツノコプロ創立60周年」ファンアートも展開しています。
――「MashRoom Cafe」は、今年5月にローンチしましたが、プロジェクトはどのような経緯で始まったのでしょうか?
江川:先ほどもお話ししたように、そもそもはSCPの自社ECサイトを立ち上げようという動きからスタートしていて、『UNI』のプロジェクトとは別軸だったんです。コロナ禍で巣篭もり需要が伸び、ECサイトの立ち上げが急務となっていたなかで、どんなオンラインストアであれば、SCPが独自に運営する価値があるかと考えたときに、着目したのがファンアートでした。この分野なら、いけるのではないかと。
そして結果的に、クリエイターが何かを生み出すという意味ではクリエイターレーベル『UNI』が目指すところと同じだよねということになり、『UNI』のプロジェクトの一環になったという流れです。
――「MashRoom Cafe」は、クリエイター、コンテンツホルダー、購入者をつなぐプラットフォームという点でも面白い取り組みですね。
笹﨑:3者いずれにとってもリスクがないというのは、アピールしたいポイントですね。ユーザーがファンアートを出品するにあたって参加費はかからず、商品が売れたら売り上げの10%が支払われます。そして注文を受けてから生産するオンデマンドシステムなので、余剰在庫を抱えるリスクもありません。また、権利元が「MashRoom Cafe」をご利用いただきIPを展開していただく際も費用はかからないので、お試しでもチャレンジしていただきやすい環境になっています。
――リスクという意味では、権利元にとってファンアートのクオリティをどのように担保するかは気になる点だと思います。どのような方法でグッズ化する作品を審査しているのでしょうか?
笹﨑:最低限のルールに関しては、募集要項に「NG事項」や「審査ガイドライン」を明記しています。当然ですが「公序良俗に反するもの」や、昨今の懸案事項として「AI画像生成サービスを使用して作成したもの」は却下になります。そして、ファンアートを申請する際は、それらを承認した上で会員登録をしていただくことになるので、そこはクリアになっています。
ただ、ルールでガチガチに固め過ぎてしまうと、ファンアートならではの面白さや魅力が損なわれてしまうことにもなりかねないので、そこの線引きは難しいところですね。どれだけのことを「ガイドライン」として提示するかは、各権利元と相談しつつ、申請された作品を見ながら臨機応変に対応していきます。そのためには、やはり我々がファンアートの市場をきちんと理解し、クリエイターと向き合っていくことが重要です。
――先ほど、今後もさまざまなジャンルのファンアートを募集していくというお話を伺いましたが、「MashRoom Cafe」の将来をどのように展望していますか?
江川:SCPというライセンスビジネスのノウハウを持つ会社が手掛けることで、新たな可能性を拓いていきたいと思っています。そのためには、権利元の皆さんにもユーザーの皆さんにも、もっと広くこのサービスを知ってもらうことが必要ですね。
――「MashRoom Cafe」の取り組みが広がって、ファンが集まり、交流できる場になるのも良いですね。
笹﨑:「MashRoom Cafe」を、ファン参加型のプロモーション施策と捉えていただくのも良いかもしれません。たくさんのファン、クリエイターのアイデアを掛け合わせて、「MashRoom Cafe」でしか実現できないものを提供していきたいです。
大矢:「MashRoom Cafe」の「マッシュ」は、音楽で言う「マッシュアップ」にちなんで付けた名前なんですが、ヒップホップなどでは既存の曲同士を混ぜ合わせて、「元曲よりもカッコ良い!」と言われる曲が生まれました。今後「MashRoom Cafe」からも、ファンの方の熱量が高いからこそ生まれるファンアートがたくさん出てくると思いますし、期待しています。
――つづいて「キャラコミWalker」です。こちらは今年3月末からスタートしているプロジェクトですが、立ち上げまでの経緯を教えてください。
江川:これも最初にお話したように、ヒットキャラクターを生み出すにはどうすれば良いか? というのを起点に考えたプロジェクトです。SNSに投稿された4コマなどのショートコミックからキャラクターがヒットする事例が多くありましたから、我々もまずはオリジナルキャラクターの漫画を作って発表する場を設ける必要があるなと。そこから人気に火がつけばライセンシーを見つけることができますし、そこまでいけばSCPの得意とするビジネスフォーマットに入っていけます。
ではどこに漫画を発表するか? ということですが、個々のクリエイターのSNSアカウントでバラバラに発表するよりも、当然、一カ所にまとめた方が良いという話になって。そこで、かねてからSCPが懇意にしていただいているKADOKAWAのキャラクター情報サイト「キャラWalker」内に、「キャラコミWalker」という新コーナーを持たせていただき、5組のクリエイターによる漫画連載をスタートしました。いずれもオリジナルキャラクターに特化した、4コマ程度のショートコミックです。
――現在は13本の漫画を連載中で、毎週木曜に更新されています。編集作業は皆さんが担当しているのですか?
江川:はい、編集者の方にもアドバイスをいただきながら、慣れない作業でも自分たちでやっています。
――スタートから約半年ですが、手応えはいかがですか?
江川:それぞれの連載のビュー数が出てきているので、読まれている作品は、はっきりしてきました。ただ、ビュー数はひとつの目安にはなりますが、その数が少ないから連載を終了するとか、そういう単純な話ではないと考えています。やはり「どう読まれているか」という中身が重要なのと、クリエイターの方の創作意欲を高めること。しっかり精査をしながら、クリエイターの方たちと二人三脚でクオリティを高めていきたいと思います。
――クリエイター側からの連載企画の持ち込みもあるのでしょうか。
佐村:いくつかお話はいただいています。ここからヒットキャラクターが生まれれば、「キャラコミWalker」で連載したいと言ってくださる方も増えると思うので、早くその領域に辿り着きたいですね。そのほか現在の動きとしては、『UNI』で行なっているセールスサポートのほうで、メーカーの方から「キャラコミWalker」で連載しているキャラクターを商品化したいというお声掛けもいただいています。そちらのほうでの進展もあるかなと。
笹﨑:あとは、「MashRoom Cafe」のなかに「キャラコミWalker」の公式ショップを作ろうかという計画もあります。そこでキャラクターをグッズ化して、盛り上げていけたらという考えです。
――クリエイターレーベル『UNI』、そこに紐づく公式ファンアートオンラインストア「MashRoom Cafe」、ショートコミックサイト「キャラコミWalker」。それぞれが連携することによって、改めてどのような展開が期待されますか?
江川:目指すところはヒットキャラクターを生み出すことですが、一連の取り組みでSCPのビジネス領域を広げたいという狙いもあります。当然、そこには海外展開というのも視野に入っていて、そのためにはやはり自社でオリジナルのヒットキャラクターを生み出し、ワールドワイドに売り込んでいくというのがわかりやすい道筋です。『UNI』をライセンスビジネスと並ぶSCPの事業の柱にしていきたいですね。
佐村:ヒットが出たあとのIPビジネスの仕組みやノウハウは持っているので、そういったSCPという会社のポテンシャルをもっといかすためにも、オリジナルキャラクターを開発し、自由度の高いIPを作っていく必要があるのかなと思います。
大矢:当然のことながら、海外のマーケットを視野に入れると、売り上げを取れるフィールドが広がるわけですよね。海外展開をするには中華圏のマーケットが近道だと言われていますが、まずはアジア、そこから世界へと広げていければ良いですよね。
――では最後に、皆さんそれぞれの今後の目標を教えてください。
笹﨑:私が主に担当している「MashRoom Cafe」は、ひとつの事業という枠を超えて、新しいカルチャーを生み出すことにもつながる試みだと思っています。ファンアートを通して新たな価値観を醸成し、キャラクタービジネスで世界を変えていきたい! そんな野望をもって日々取り組んでいます。
大矢:新規IPの創出と海外展開がふたつの大きな命題ですね。ソニーミュージックグループのなかでも、SCPはキャラクタービジネスを手掛ける会社という独自のポジションにありますが、ヒットキャラクターを生み出して海外への突破口を作ることができれば、よりグループに貢献できる部分が大きくなります。そうやってSCPの存在感をどんどん大きくしていくというのが、私の目標です。
佐村:私が直近の目標にしているのは、クリエイターの皆さんに『UNI』と一緒に仕事がしたいと思ってもらえることですね。音楽アーティストがソニー・ミュージックレーベルズと、アニメーターがアニプレックスとタッグを組んで作品を作りたいと思ってくださるのと同じように、クリエイターには『UNI』があると思ってもらえたら最高! そこを目指していきたいですね。
江川:ソニーミュージックグループから、多くのスター、アーティストが誕生しました。ミュージシャンやタレントでもそれを成し得てきたので、今度はイラストレーター、漫画家、アニメーター、デザイナーといったクリエイターのなかからもスターを生み出したい。『UNI』ですべきこと、我々がやるべきことは、それに尽きると思います。
文・取材:原 典子
撮影:干川 修
クリエイターレーベル『UNI』
https://www.uni-creator.jp/
Mashroom Cafe
https://mashroomcafe.com/
キャラコミWalker|ウォーカープラス
https://theme.walkerplus.com/characomic/
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