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エンタメビジネスのタネ

4人組ボーカルグループ・K4の成熟した魅力と“ADULT K-POP”の可能性をスタッフが語る【前編】

2023.10.17

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最初は小さなタネが、やがて大樹に育つ――。ソニーミュージックグループを中心に、新たなエンタテインメントビジネスに挑戦する人たちにスポットを当てる連載企画。

今回取り上げるのは、10月18日(水)にミニアルバム『K4YOU ~K for you~』で国内プレデビューを果たす“ADULT K-POP”ボーカルグループ・K4。それぞれがさまざまなキャリアを経て、セカンドチャンスを掴まんとする韓国国内のオーディション番組で結成された4人組だ。

現地では韓国演歌とも呼ばれる「トロット」の歌い手としてデビューした彼らだが、日本では“すべてのジャンルを超えた大人も楽しめるK-POP「ADULT K-POP」”をコンセプトに、本国とは違った切り口で活動を行なっていく。その背景には、どんな思いやビジョンがあるのだろうか? プロジェクトを主導するふたりのスタッフにK4の魅力を聞くとともに、日本のエンタテインメント市場における“ADULT K-POP”という新ジャンルのビジネスチャンスについて語ってもらった。

前編は、日本におけるK4のコンセプト、プレデビューミニアルバム『K4YOU ~K for you~』について深掘りしていく。

  • 髙木直樹プロフィール画像

    髙木直樹

    Takaki Naoki

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 小野裕司プロフィール画像

    小野裕司

    Ono Yuji

    ソニー・ミュージックレーベルズ

K4

K4アーティスト写真

韓国のオーディション番組「ハロートロット」に出演していた(写真左から)キム・ヒョンミン、オ・ジュジュ、リュ・フィリップ、チョ・ジュンの4人で結成された4人組ボーカルグループ。本国では、ここ数年トレンドになっている音楽ジャンル「トロット」のグループとして活動しているが、日本プレデビューミニアルバム『K4YOU ~K for you~』は、韓国ドラマのオリジナルサウンドトラック“韓ドラOST”の楽曲を収めたカバーアルバムを発売する。

最大の強みは4人の“歌力”

──まずは、髙木さん、小野さんのこれまでの経歴から教えてください。

小野:ソニー・ミュージックレーベルズ(以下、SML)で長年宣伝を担当してきました。1994年ごろに名古屋営業所でアルバイトとして働き始め、入社後は洋楽の宣伝を15年ほど担当。その後、アニプレックスでも音楽、映画の宣伝をし、2020年ごろから現在のSML レガシープラスACレーベルに移ってきました。

髙木:私は広島営業所のアルバイトとして採用され、その後、別のエンタテインメント企業に移り、20年以上前に出戻りでソニーミュージックグループに転職しました。戻ってきてからは、五輪真弓さん、渡辺真知子さん、太田裕美さん、松田聖子さん、伍代夏子さん、藤あや子さんなどが在籍してきた現在のACレーベルに所属しています。

──髙木さん、小野さんともにSMLのレガシーブラスACレーベルに所属となりますが、こちらはどういったレーベルなのでしょうか。

小野:レガシープラスはソニーミュージックグループが抱える豊富な音源を主軸に、コンピレーションアルバム、レジェンドアーティストの復刻版の企画・制作、高音質化、サブスクリプションサービスへの対応などを行なうレーベルです。最近は、ベテランアーティストが活動を再開するときによくご一緒させていただいています。

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髙木:レガシープラスACレーベルのACは、アダルトコンテンポラリーの略です。レガシープラスACレーベルの前身で、ソニー・ミュージックダイレクトという主に旧譜カタログを扱う会社のなかで、ベテランアーティストの新譜を制作するセクションで、レガシープラスACレーベルとなった今も、その機能が移管され同じようにビジネス活動を行なっています。

──K4プロジェクトにおける役割についても教えてください。

小野:私はK4のA&R(アーティスト&レパートリー:音楽アーティストをさまざまな面でサポートしながらヒットへ導く音楽業界の業種)として、音楽制作やプロモーションに携わっています。韓国に本社を置き日本にオフィスを構えるK4のマネジメント会社と向き合いつつ、我々の部署にもK4の日本での活動をサポートするマネージャーを配属し、その担当者と一緒に360度ビジネスを展開していきます。

私の上長でもある髙木さんは、韓国の音楽ビジネスやベテランアーティストの展開について幅広い知見を持っていらっしゃるので、プロデューサーという立場でK4プロジェクトにアドバイスをいただいています。

髙木:私は過去に、パク・ヒョンビンというトロットアーティストを担当していたことがありまして。その経験もあったので、基本は小野さんにすべて任せつつ、何か助けが必要なときにはサポートさせてもらう立場です。

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──K4は、韓国のオーディション番組『ハロートロット』で結成された全員30歳以上の豊富な経験を持つ4人組グループです。皆さんはどの段階からK4に関わってきたのでしょうか。

小野:K4のプロデューサーであり、彼らが所属するマネジメント会社・社長のオ・ジュンソンさんは、“韓国ドラマOST(オリジナルサウンドトラック)の名匠”と言われる作曲家でもあります。その方が、ソニーミュージックグループのOBと交流があって、「日本でデビューさせたいアーティストがいる」と話を持ち掛けられたのが最初のきっかけでした。

彼らは年齢的にも音楽的にも成熟したアーティストなので、大人世代のマーケティングについて知見があるレガシープラスACレーベルに話が来たという経緯ですね。

──それはいつごろの話ですか。

小野:初めてオ・ジュンソンさんにお会いしたのは、2022年末ごろだったと思います。彼らは韓国で2022年9月にデビューしていましたが、まずは実際のパフォーマンスを見ないことには始まりません。そこで日本から、私と髙木さんを含む4人で赴き、事務所のステージで歌をしっかり聴かせてもらいました。

そこで感じたのは、彼らの“歌力(うたぢから)”です。もう声量も表現力も素晴らしくて。メンバーが1曲ずつ日本の歌を披露してくれて、日本での活動を視野に入れていることも伝わりました。加えて、一人ひとりのキャラクターも面白そうだなと思いましたね。

髙木:小野さんの言う“歌力”はもちろん、コーラスワークの強さも印象的でした。オーディションを通じて優秀なメンバーが集められているので、一人ひとりの歌の個性が強いんですよ。しかもその個性が混ざると、コーラスの迫力も4倍、5倍になる。そこに魅力を感じましたし、日本でデビューしたら面白いんじゃないかとみんなで話しました。

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韓国演歌トロット歌手として韓国デビュー

──「トロット」のアーティストを発掘する「ハロートロット」というオーディション番組で結成されたK4ですが、そもそも「トロット」とは、どんな音楽ジャンルなのでしょうか。

小野:日本だと“演歌歌謡”と表現されるジャンルがイメージとして近いです。韓国では3、4年前から人気が再燃していて。日本だと演歌と若者世代の間に少し距離がありますが、「トロット」は韓国で若者にも親しまれているようです。

例えば「トロット」とEDMを融合させたり、「トロット」の楽曲を手掛けたアーティストが今話題のK-POPグループ・NewJeansの曲を作曲したりと、若者の生活にも音楽として溶け込んでいるんですよね。

「トロット」のオーディション番組も複数あり、なかには視聴率が30%に達した番組もあるようです。このジャンルに限らず、韓国ではオーディション番組が百花繚乱なので、K4のメンバーのようにセカンドチャンスを掴むケースも多いですね。

髙木:昔と今では「トロット」の意味合いも少し変わってきていると思います。もともとは、韓国でも年配の人たちが聴く演歌というイメージだったんですが、そこにダンスミュージックの要素などが加わり、ここ10~20年は演歌歌謡ダンスという位置づけになっていると思います。

先ほど挙げた、“トロット王子”ことパク・ヒョンビンは、その火つけ役と言えるアーティストです。K-POPが流行り始め、東京ドームでK-POPフェスティバルが開催されたとき、パク・ヒョンビンもこのイベントに出演したんです。ほかの出演者が、アイドルグループばかりのなかで、彼ひとりが「トロット」を歌ったので異彩を放ち、お客さんも大いに沸きました。昨今は、K-POPアイドルも「トロット」をカバーするようになり、若者の間に「トロット」が浸透していったのだと思います。

小野:みんなが歌える伝統歌という位置づけですよね。

──ジャンルとして今も盛り上がっているわけですね。韓国では昨年9月に「トロット」の歌い手としてデビューしたK4ですが、反響はどうだったのでしょうか。

小野:韓国では、ラテンテイストを取り入れた楽曲「Love Storm」でデビューしました。トラディショナルな「トロット」とは異なるアプローチで、“ニュー・トロット”とも呼ばれています。オーディション番組で見出されたメンバーが集まっているグループですが、デビューしてやっと1年というところで、まだまだこれから頑張っていかなければいけないですね。

韓国のアーティストが日本でデビューするときは、“韓国の大人気グループがいよいよ日本上陸!”と鳴り物入りでやってくることが多いですが、K4はそうではなく、日本でも地道にゼロからファンを獲得していきたいと考えています。彼らもそのために強い熱意を持って来日してくれています。

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韓ドラOSTで韓国カルチャー好きにK4を届けたい

──韓国では主に「トロット」を歌っているK4ですが、日本では違った売り出し方をしていく。そのマーケティング戦略に至った経緯を教えてください。

小野:韓国でのデビュー曲「Love Storm」は哀愁漂う素晴らしい楽曲ですし、日本人にとってもラテン歌謡のメロディは馴染みがあります。ですから、当初は日本でもトロットアーティストとして活動する案がありました。ただ、日本ではまだまだ「トロット」自体の認知度が低く、この取材のように、どうしても説明が必要です。

そこで、J-POPを歌ってもらうとか、日本語で童謡を歌ってもらうなどいろいろな策を練りましたが、どれもしっくりこなくて。そんななか、K4のマネージャーを務める担当者が、「韓国ドラマのOSTはどうでしょう」と案を出してくれたんです。

確かに、K4のプロデューサーであるオ・ジュンソンさんは韓ドラOSTの名匠です。しかもコロナ禍で韓国ドラマ人気がさらに高まり、第4次とも言われる韓流ブームも来ていたので、ソニーミュージックグループで発売している韓ドラOSTのコンピレーションアルバムも、好調な売れ行きを見せていました。こうした背景もあって、韓国ドラマのOSTを歌うという方向性が見えてきたんです。

髙木:しかも、今年は『冬のソナタ』が日本で放送されてからちょうど20年なんですよね。

小野:先ほどお話したように、K4は韓国でまだ大ヒットしているグループではありません。韓国カルチャーがお好きな方に、彼らの歌力をどう届けるかと考えたときにOSTが適しているんじゃないかと思ったんです。

韓国ドラマのOSTは名バラードが多くて、メンバーの歌唱力が映えるんですよね。しかも、曲自体が素晴らしいのでドラマを見たことがない人にも響きます。そこで、プレデビューのミニアルバムではオ・ジュンソンさんが手掛けたOSTの名曲から収録曲を選びました。

最近は歌って踊れる欧米照準のクールなアイドルグループが人気ですが、20年前に『冬のソナタ』にキュンとした方たちに「あの音楽は不滅です。心安らぐ歌声を持つグループが出てきました」と伝えたいですね。

──となると、収録曲も少し前の韓ドラOSTになるのでしょうか。

小野:そうですね。『花より男子』『主君の太陽』など、10~15年前の韓国ドラマで使われた楽曲を中心に収録しています。僕はオ・ジュンソンさんの曲だと意識せずに聴いてきましたが、今聴き直しても本当に名曲揃いなんです。それが一番の選曲理由ですね。もちろん『冬ソナ』の主題歌「最初から今まで」も収録しています。あのドラマから韓流ブームが始まったので、リスペクトやオマージュを伝えたいと思いました。

また、韓国カルチャーがお好きな方にも話を伺い、「日本語に訳さず、ハングルの響きを聴きたい」といった意見をたくさん聞きました。韓国のカルチャーが好きな方たちの心にできる限り寄り添いたいと思っています。

──やっぱりハングルの響きは重要なんですね。

小野:髙木さんとも「言語が違うから意味は理解できないけど、韓国語の歌って感情はしっかり我々にも伝わるよね」「何とも言えないもの悲しさや切なさがあるよね」と話していました。そこで、こちら側では脚色せず、そのままの響きを伝えられたらという方向性になりました。

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例えば今回のアルバムに収録した「Our Tears」(ドラマ『花郎<ファラン>』より)の歌詞のなかには、「キオケヨ」という言葉が出てくるんです。“覚えています”という意味で、つまり“記憶”なんですね。日本語とのつながりも感じますし、響きが素敵じゃないですか。K4のメンバーが切ない表情で「あのころを覚えています」としっとり歌うのを聴いて、心が動かされました。韓国語の響きの美しさ、情感の豊かさをこの歌ですごく感じましたね。

──髙木さんは、小野さんから日本での売り出し方を聞いたとき、どう思いましたか?

髙木:僕はパク・ヒョンビンと出会って日本デビューを手掛けたように、以前から韓国のカルチャーが好きで、プライベートでも20年以上前から何度も韓国を訪れていました。最初にハマったきっかけは、韓国ドラマの主題歌。今はOSTと言われますが、当時は韓国の街中でよく流れている流行歌という認識でした。しかも私は、当時、韓国のドラマや映画のなかで流れてくるバラードがとても好きでしたから、ミニアルバムのコンセプトを聞いて「どストライクが来た!」と思いましたね(笑)。

先ほど小野さんも話していましたが、K4は日本でいちから作り上げるつもりでプロデュースするグループです。いろいろなアイデアがあるなかで、日本でのプレデビューなのに日本語一切なし、しかもオリジナル楽曲ではなく、OSTのカバーで勝負するという今までにないコンセプトが面白いと思いました。

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──デビューに先駆けて、ソニーミュージックグループのスタッフに向けてK4のお披露目イベントも行なわれたそうですね。多くの人が集まり、若手スタッフからも大変好評だったと聞きました。

小野:日本ではまだ知名度がなくファンもいませんから、あの社内イベントは最初の試金石でした。20人も来てくれれば良いかなと思っていましたが、蓋を開ければ140人近いスタッフが集まってくれて、大変好評でうれしかったです。

ライブ前は、バラードで涙する方もいるかなと思っていましたが、うっとりしながら微笑んでいてくれる人が多くて。あのリアクションはうれしい誤算でしたし、改めてK4の進むべき方向性が見えた気がしました。

若いスタッフからも非常に好意的なリアクションをもらって、その後メールで意見を送ってくれた人もいます。このミニイベントでもらった声がアーティストや我々スタッフにとって“K4の歌は聴いてさえもらえれば心に届く”という大きな自信になりましたね。あの風景とソニーミュージックグループのスタッフのリアクションが、私の心のよりどころです。

後編につづく

文・取材:野本由起
撮影:干川 修

リリース情報

K4『K4YOU~K for you~』ジャケット画像
K4YOU ~K for you~
発売日:10月18日(水)
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関連サイト

K4 日本オフィシャルサイト
https://www.110107.com/K4(新しいタブで開く)
 
K4 日本オフィシャルYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@K4japanofficial(新しいタブで開く)
 
K4 Japan Official X(旧Twitter)
https://twitter.com/K4JapanOfficial(新しいタブで開く)

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