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エンタメ業界を目指す君へ

女子美術大学の学生たちが触れたキャラクタービジネスの心得とは?【前編】

2023.11.24

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エンタメ業界の最前線で働く人々から現場の生きた情報を聞き出し、お届けする連載企画「エンタメ業界を目指す君へ」。

今回は、産学連携企画としてソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)が、女子美術大学(以下、女子美)の「キャラクター制作演習授業」と連携して実施した「キャラクター制作セミナー」をフィーチャーする。セミナーに参加した学生は22人。約1カ月の講義を経て、一人ひとりがオリジナルキャラクターを制作し、そのなかから6つの作品が表彰される結果になった。

SCPはどのような講義を行ない、女子美の学生たちはどんな学びを得たのか。本セミナーのプロジェクトリーダー・朝倉精吾に 今回の産学連携企画で目指したことを聞きつつ、講義に参加した学生には、セミナーで得た学びと感想を語ってもらった。

前編では、「キャラクター制作セミナー」が企画された経緯と本セミナーを開催した狙いをSCPの担当者に聞く。

  • 朝倉プロフィール画像

    朝倉精吾

    Asakura Shogo

    ソニー・クリエイティブプロダクツ

会社組織におけるキャラクターデザインの在り方とは?

――今回実施されたSCPと女子美による「キャラクター制作セミナー」はどういう経緯で始まったのでしょうか。朝倉さんの関わり方も含めて教えてください。

今回のお話は、女子美でヒーリング表現領域の非常勤講師をされている戸川 先生からお声がけをいただいて実現しました。実は戸川先生は、SCPのOGでいらっしゃって、そのご縁で「オリジナルキャラクター制作演習の授業」と、「企業のクリエイティブ部門の業務についてのセミナー」を実施することになり、私がプロジェクトリーダーとして担当することになりました。

私はこういった産学連携のプロジェクトに興味を持っていて、個人的にずっとやってみたいと思っていたんです。その一番の理由は、ソニーミュージックグループでキャラクタービジネスを手がけるSCPという会社の周知です。

SCPは、世界的にも有名なキャラクターを数多く手がけていながら、社名自体の認知度は高くないと感じています。でも、SCPがやっているビジネスを私自身はすごく面白いと思っていて。ひとことで伝えるのは難しいのですが、キャラクタービジネスを軸にして、あらゆる業種とのコラボレーションやコンテンツ制作に関わることができて、働きがいのある会社だと私は感じています。「SCPってこんなに面白い会社なんだよ」ということを、もっと学生の皆さんに伝えたいと思っていました。

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──具体的には、どのような講義を行なったのでしょうか。

美大に通っている学生の皆さんは、概ね“自分の力で作品を作る”ということを在学中の課題として取り組んでいらっしゃると思うんです。でも、社会に出て会社の一員としてクリエイティブに関わるという道を選ぶと、学生時代とはちょっと違うものが求められるようになります。具体的に言うと、いろいろな部門や部署間で連携を図り、版権元や取引先とも調整しながら、チームでひとつのものを作っていくことになる。

つまり自分の好きなもの、作りたいものを追求するだけではなく、“世の中に望まれているものを作る”という視点も重要になってくるんですね。講義では、そういった企業内のクリエイティブ担当に求められる要素を具体的にお伝えしていきました。

そして講義を行なったあとは、こちらから学生の皆さんにテーマを提示して、オリジナルキャラクターを作っていただきました。今回、学生の皆さんにお伝えしたテーマは“Z世代をターゲットにした、SNSでバズるヒットキャラクターの開発”。このテーマとプレゼンテーション用のフォーマットをお渡しして、おひとりずつオリジナルキャラクターを考案してもらっています。

ちなみにフォーマットには、ただキャラクターをデザインするだけでなく、キャラクターのプロフィールやSNS上での展開、ライセンスビジネスのアイデアを書く欄も設けていて。“キャラクターをデザインしたら終わり”ではなく、その先にあるビジネスのビジョンまでしっかり詰めてもらう課題をお渡ししました。

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その後、学生の皆さんが考えた“Z世代をターゲットにした、SNSでバズるヒットキャラクター”をプレゼンテーションしてもらい、それをSCPのスタッフが拝見してフィードバックを行ないました。その一連の作業で改めて感じたのは、学生の皆さんがそれぞれ自分だけの武器をお持ちだということ。

ある人はストーリー、ある人はイラスト、ある人はデザインと、それぞれの長所が詰まったプレゼンテーションを見て、そういった自分のストロングポイントを、どうやったらキャラクター制作に最大限いかせるのかを、フィードバックの際にお伝えしました。

担当者が感じたZ世代の傾向

──作品を通じて、学生の皆さんとやりとりをして、どのような手応えを感じましたか。

戸川先生のご指導のもと、学生の皆さんは我々にプレゼンするキャラクターをひとり10案ずつ考えてもらっています。戸川先生もなかなかにハードルを上げられるなと思いましたが(笑)、ある学生さんのスケッチで、我々の目から見て光るものがあると感じたキャラクターがあったんです。それを本人にお伝えして、そのキャラクターを最終選考に持っていけるように作り込むことをアドバイスしました。

でも、その学生さんは私たちの意見にはしっかり耳を傾けながらも、「自分が一番思い入れの強いものを作品として提出したい」と言って、推奨したものとは別のキャラクターを作り込んで提出されました。私はその一途な思いもすごく大事なことだと考えています。

なぜなら自分がそのキャラクターを愛していないのに、人から愛されるキャラクターは生まれないという考え方もあるからです。今回の経験を経て、自分の力でキャラクターを生み出したということが、学生の皆さんの成功体験になれば良いなと思っています。

──女子美の皆さんの印象はどうでしたか。

私も美大出身なのですが、自分の学生時代と比較すると、今の学生さんたちはすごくしっかりしていますね(笑)。今回、皆さんが作った作品をひとり3分でプレゼンテーションしてもらったのですが、それぞれが自分の言葉で作品についてしっかり説明してくれました。

人前でプレゼンテーションをするというのは、学生の方たちにとってはハードルが高いことだと思うのですが、どんなキャラクターを作るべきなのか独自に調査して、とてもロジカルにキャラクターを生み出されていました。短い期間にもかかわらず、皆さんすごいボリュームのアイデアを考えて、一つひとつ作り込んでくださるその真面目さに感銘を受けましたね。

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SCPが学生へ贈った3つの賞

――今回、学生の皆さんにマーケティング賞、クリエイティブ賞、ネクストブレイク賞という3つの賞が贈られました。こういった賞を設けたのはどんな理由があったのでしょうか。

作品をコンテスト形式で評価することも、賞を設けることも、当初の予定にはなかったんです。ただ、学生の皆さんの貴重な時間を使ってもらって、“作品ができました”というだけではもったいないという話になりまして。それなら完成した作品に対して、我々もプロとして評価させてもらおうということになりました。それで急遽コンテストを開催することが決定したんです。ただ今回は、順位はつけるのではなく、それぞれの作品の優れた点を表彰させていただくという形で各賞を設定しました。

――授業の期間中にコンテスト形式にすることが決まったわけですね。結果、各賞の受賞者は2名ずつとなりました。

そうですね。最初はひとつの賞につき、ひとりずつ選べれば良いなと考えていたんですが、実際、最終選考に残った作品は、どれも素晴らしくて……短い期間にも関わらず、学生の皆さんはどんどん企画をブラッシュアップしてくれました。

本当に良い作品がたくさんあったので、そこからひとつに絞り込みをするのは難しく、結果として各賞に2名ずつ賞をお贈りすることになりました。学生の皆さんの意欲あふれる作品に触れたことで、我々も刺激をもらうことができました。

――どんな刺激を受けましたか。

昨今はデザインをするためのツールも充実していますし、SNSを中心に情報を入手する、もしくは発信する手段が増えているので、クリエイティブの自由度がすごく上がっていると思います。学生の皆さんはそのツールや環境をしっかりと自分の表現に活用して、自分の作品作りにチャレンジされている。今回、参加された22名の生徒さんたちならではの新しいアイデアを、今のやり方で形にしていくという姿勢に一番刺激を受けましたね。

学生と向き合うことで得られたもの

――今回の演習では最終的に完成度の高い作品が多く集まったようですが、SCPとして今回のセミナーで気をつけたのはどんなことですか?

作品の完成度という意味では、学生の皆さんの頑張り以外、何ものもないなという感想ですが、SCP側で気をつけたことを強いて挙げれば、しっかりコミュニケーションを取るということですね。

完成したものが良いか悪いかという判断よりも、制作の過程をしっかり見て、その作品の良さを見つけて、最大限に引き上げるということが重要だと思っていたので、コミュニケーションを大切にしていました。

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──今回の「キャラクター制作セミナー」を行なっての感想と手応えを教えください。

とても楽しかったですね。ただ、学生の皆さんは、あの短い時間のなかで、ものすごくたくさんのアイデアを出して、そのうえでブラッシュアップまでしなければいけないという状況だったので、本当に大変だったと思います。

我々が苦労したところがあるとすれば……どのように考えをお伝えするかというところですかね。IPの魅力や可能性を取引先のみなさんにお伝えすることは普段から行なっているんですが、学生の方たちに対してお話しすることは経験がなかったので、そこはとても悩みました。最終的にはなるべく具体性をもって、わかりやすいように工夫しながら伝えるということを心がけました。

後編につづく

文・取材:志田英邦
撮影:干川 修

関連サイト

女子美術大学アート・デザイン表現学科 ヒーリング表現領域
http://joshibi-healing.net/(新しいタブで開く)

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