音楽プロデューサーに欠かせない素養とは? 尾崎豊、石崎ひゅーいらを手がける須藤晃に聞く【前編】
2023.11.28
エンタメ業界の最前線で働く人々から現場の生きた情報を聞き出し、お届けする連載企画「エンタメ業界を目指す君へ」。
今回は、産学連携企画としてソニー・クリエイティブプロダクツ(以下、SCP)が、女子美術大学(以下、女子美)の「キャラクター制作演習授業」と連携して実施した「キャラクター制作セミナー」をフィーチャーする。セミナーに参加した学生は22人。約1カ月の講義を経て、一人ひとりがオリジナルキャラクターを制作し、そのなかから6つの作品が表彰される結果になった。
SCPはどのような講義を行ない、女子美の学生たちはどんな学びを得たのか。本セミナーのプロジェクトリーダー・朝倉精吾に 今回の産学連携企画で目指したことを聞きつつ、講義に参加した学生には、セミナーで得た学びと感想を語ってもらった。
後編では、キャラクターデザイナーを目指すうえで大事なことと、今回の「キャラクター制作セミナー」に参加した学生たちのコメントを掲載する。
朝倉精吾
Asakura Shogo
ソニー・クリエイティブプロダクツ
――(前編からつづく)今回の産学連携企画を通じて、朝倉さんはどういう個性や思いを持った人にキャラクターデザイナーやクリエイターという職業を目指してほしいと思いますか。
先ほども言いましたが、今回、我々は学生のみなさんに“Z世代に受けるキャラクター”を考えてほしいという課題を提示しました。それに対して戸川先生(女子美術大学 ヒーリング表現領域・非常勤講師)、保高先生(ヒーリング表現領域・准教授)、筋野さん(ヒーリング表現領域・助手)は、学生の皆さんに、ひとり10案のキャラクターを提出するよう指導されています。
先生方がそういった課題を提示されたのは、“アイデアは量を出すことも大事”ということを学生の皆さんに伝えたかったからだと思うんですね。その考え方には我々もすごく共感しています。
ヒットキャラクターを生み出すために、ひとつのアイデアを突き詰めることは大事なことです。しかし、その手前の段階でアイデアをたくさん出し、それをストックとして持っておけると、ひとつのアイデアをブラッシュする際にもプラスアルファの効果が出ると思います。
たくさんのチャレンジをして、いろいろなアイデアをさまざまな角度から出していけるクリエイターのほうが、その後に拓ける道も多いと思うので、創作活動に対してそういった姿勢、志を持って挑める方には、ぜひ、この業界を目指してほしいですね。
あとはクリエイターの方と接していると、パーソナルな経験をシンプルに表現されている作品が多くの人の共感を生んでいる事例をよく目にします。これにはSNSの影響も多分にあるとは思いますが、それだけではないと私は考えていて。
例えば、SCPが版権をお預かりしている「リサとガスパール」の原作者であるアン・グットマンさんとゲオルグ・ハレンスレーベンさんは、ご自身の子育ての経験やその間に起こったごくパーソナルで日常的なできごとを作品に反映されているんですが、それを多くの人が面白く感じ、共感していくんですよね。
そういう意味では、自分も含めた多くの人の身近にあるものを、少し視点を変えて、もしくは自分なりの表現で作品に落とし込むことができるというのも、クリエイターとしての素養に関わってくるのではないかと感じています。
――講義を受けた学生の皆さんにお話しを伺うと、個人的な経験からインスピレーションを得てキャラクターを作ったという声が多かったです。
偶然もあると思いますが、自分の好きなこと、興味のあるものをストレートに描けているというのは、すごく良いことだと思います。
――今回の産学連携企画で、学生の方々は実践的なクリエイター講習が受けられたと思いますし、SCPサイドとしては、間もなく社会に出ようとしている学生の方々にSCPという会社をアピールする機会が得られたのと、さらには未来のクリエイターとの出会いの場が創出されたと思います。今後、この「キャラクター制作セミナー」をどのように展開していきたいと考えていますか。
SCPという会社が行なっている“クリエイティブ”という仕事は、すごく幅広いんですね。我々は“360度ビジネス”と呼んでいるのですが、ひとつのIPからあらゆるビジネスを展開していこうと日々取り組んでいます。そのなかでは、さまざまな商品化をはじめ、映像制作、広告制作、デジタルコンテンツ、イベント、時にはテーマパークの企画に携われる機会もあります。そういうIPビジネスの魅力を、ひとりでも多くの学生の方に感じてもらいたいなと考えています。
今回、ご一緒できたのは限られた人数の方々でしたが、改めて将来有望な学生の方たちがたくさんいるんだということがわかりました。我々も通常業務を行ないながら取り組んでいるのと、今回が初めての試みだったということもあって、不慣れなこともありましたが、回を重ねていければ、もっと高効率なセミナーにブラッシュアップすることができると感じました。女子美の先生方とも話していますが、来年以降も同じような取り組みを行ないたいと考えていますし、規模を拡大していくことも検討していければと思います。
SCPと女子美術大学 芸術学部アート・デザイン表現学科ヒーリング表現領域は2023年6月に産学連携企画として、女子美の「キャラクター制作演習授業」と連携して「キャラクター制作セミナー」の授業を6月19日から7月14日の約1カ月にわたり実施した。
授業内では最初にSCPから企業内でのクリエイティブのセミナーを実施。それを受けて、受講する22名の学生は、SCPが提供したフォーマットに基づいてキャラクターデザインを制作することになった。SCPが学生たちに提示したテーマは“Z世代をターゲットにしたSNSでバズるヒットキャラクターの開発”。学生たちはキャラクターを考え、キャラクターのデザインコンセプト、キャラクターのプロフィール、SNSでの展開方法、ライセンスビジネス化の案を提案。授業のなかで、ひとり約3分で第1回のプレゼンテーションを行なった。
そのプレゼンテーションを受けて、SCPは学生が作ったキャラクターに対してさまざまなアドバイスや意見を返答。そのフィードバックをもとに学生が作品を完成させ、最終プレゼンテーションに挑んでいる。最終プレゼンテーションを見たSCPサイドは3つのカテゴリで学生の作品を評価し、6つの作品に賞を贈ることになった。
定められた賞は3つ。ビジネス化を想定した視点を評価する「マーケティング賞」、キャラクターデザインとストーリー性のクオリティを評価する「クリエイティブ賞」、次世代のヒットキャラクターになる期待感のある作品に贈られる「ネクストブレイク賞」である。
現代社会では人々がテクノロジーやデジタルコミュニケーションに依存していて、人と生物のつながりが希薄になり、そこに孤独が生まれているように私は感じます。そういった人々の心に寄り添うことができるようなキャラクターを考えたいと思って、「PIKA」というキャラクターをデザインしました。
今回のセミナーに参加させていただいて、キャラクターデザインそのものだけでなく、そのキャラクターにどのように血を通わせ、命を宿していくか。そして、そのキャラクターを今の世の中にどうやって広げていくかといったところまで考えることができて、とても勉強になりました。
私はもともとちょっと狂気を感じさせるようなキャラクターが好きなんです。いきなり叫びだすとか、踊りだすとか、そういうキャラクターを作りたいと思って課題に取り組みました。でも、なかなかアイデアの素になるものが見つからなくて……。あるとき朝食を食べていたら、イカのハンペンが出てきて、そこから“タコの踊り食い”ってあるなと連想したら、一気に「たこあし~ず」のアイデアが生まれていきました。
これまでにもオリジナルキャラクターを考えたことはあったんですが、いつも描いて終わりだったんです。でも今回は、SCPの皆さんからライセンスビジネスへの展開を教えていただいたり、SNSを活用したプロモーション方法を考えることができたりして、学ぶことがとても多かったです。自分の手で生み出したキャラクターをどうやったら広げていけるか、それを具体的に考えることができたのが良かったです。
「推し活頑張る!ももたさん」作者・関口さんのコメント
「推し活頑張る!ももたさん」は、私の想いをベースに作りました。ももたさんはブタのキャラクターなんですが、ブタは見えないところでものすごく努力している動物と言われていて。私もそういう人になりたいと思っているので、自分を投影するように設定を考えました。ピンクという色も好きだし、ほぼ私自身をキャラクター化したような感じですね(笑)。
私もこれまでに何度かキャラクターを作ったことはあったんですが、途中で飽きてしまったり、考えているうちに行き詰っていました。なので、こんなに自分自身が愛せるキャラクターを作れたのは今回が初めてです。自分にとっては貴重な経験になりましたし、学びになったなと思います。SCPの皆さんの講義のおかげで、このキャラクターを生み出すことができたなと思っていて、感謝しています。
「どこでもパンチョ」作者・山下さんのコメント
私は片づけが苦手なんですが、「どこでもパンチョ」はそんな自分の苦手なことに着想を得たキャラクターです。毎日生活していると、思わぬものが思わぬところから出てくることってありませんか? 例えば、自分が履いていた靴下の片方だけが布団の隙間から出てくるとか、「何でここにあるの?」っていうことありますよね(笑)。日常生活のなかで「何でこの子はここにいるんだろう、でも……かわいい」って思えるキャラクターがいたら、毎日に楽しみが生まれるんじゃないかなとひらめいて、「どこでもパンチョ」は生まれました。
今回は10案のキャラクターを提案するという課題だったんですが、SCPの皆さんからは当初、「どこでもパンチョ」以外のキャラクターが良いんじゃないかというご意見をいただいたんです。でも、自分の日常をベースにデザインした「どこでもパンチョ」のほうがイメージしやすくて。この子(「どこでもパンチョ」)だったら、これから先も長い間、愛せるなと思ったんです。そこで今回は「どこでもパンチョ」を発表させていただきました。今回、賞をいただくことができて、改めてキャラクターに愛情を注ぐことの大切さを学ぶことができました。
「いきをころせ」作者・椿結さんのコメント
どんなポーズをとっても形が崩れないキャラクターを作りたいと思ったのが、「いきをころせ」の出発点です。形が崩れないをコンセプトに、いろいろなポーズを考えているときに、そういえばブリッジのポーズをしているキャラクターってあまり見かけないなと思って、このデザインになりました。生き物ではあるけれど、動物では見たことのないかたちにしたかったのと、ポーズが複雑だと色が塗りにくくなるんじゃないかと思って、色味も一色でシンプルにしています。
私もみんなと同じで、これまでにもキャラクターをデザインしたことはあったのですが、プロフィールや展開案まで作ったことはなかったので新鮮でした。自分以外の人に愛してもらうためには、どういうプロフィールが良いのかを考えたり、SNSでどんな展開をしたらみんなが喜んでくれるかをイメージしながら、ライセンスビジネスへの展開をデザインできたのは大きな学びになりました。
「ポップコーン太郎」作者・紙野さんのコメント
私は映画館で映画を見るのが趣味なんですが、上映前に流れるCMのキャラクターを見ていて、自分でもこういうキャラクターを作ってみたいと思ったのがきっかけでした。そして映画館といえば欠かせないのがポップコーン。そういえば、ポップコーンのキャラクターはあまり見たことがないなと思ってキャラクターにしてみようと考えました。
ひとつのキャラクターで、コンセプトやストーリー、映像配信、ライセンスプランまで考えることは初めてでした。これまでにない経験ができたことがすごくありがたかったです。
受賞式では、それぞれに自らがデザインしたキャラクターがプリントされた盾が贈られた。今回の経験が、これからデザインの世界で活躍する才能の原石たちを導いていくことだろう。
文・取材:志田英邦
撮影:干川 修
女子美術大学アート・デザイン表現学科 ヒーリング表現領域
http://joshibi-healing.net/
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