マネスキンのメンバー4人が並んでいる
マネスキンSPバナー画像
連載Cocotame Series

ヒットの活かし方

マネスキンが来日で巻き起こした熱狂の舞台裏――洋楽ヒットを生み出すスタッフの挑戦【前編】

2024.03.17

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“0”から生み出された“1”というヒット。その“1”を最大化するための試みを追う連載企画「ヒットの活かし方」。

今回取り上げるのは、イタリア出身の新世代ロックバンド、マネスキン。昨年12月には、最新アルバム『ラッシュ!』を引っさげたワールドツアーの一環として、東京と神戸で開催された1万人規模の4公演が瞬く間にソールドアウトする人気ぶりを見せつけた。

ジャパンツアーの合間には、海外アーティストとしては珍しい、約2週間の長期に及ぶプロモーション活動も実現。「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)や「DayDay.」(日本テレビ系)への生出演も大きな話題を呼び、洋楽ロックのリスナーはもちろん、10~20代の幅広いファンを獲得している。

音楽の聴かれ方の変化から、洋楽離れが進んでいると言われる今の日本で、マネスキンが大反響を巻き起こしている理由とは? 彼らの日本での活動を全力でサポートするソニー・ミュージックレーベルズのスタッフに話を聞いた。

前編では、スタッフから見たマネスキンの魅力と人気の理由を語ってもらった。

 

  • 奥平裕紀プロフィール画像

    奥平裕紀

    Okudaira Hiroki

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 佐藤里沙プロフィール画像

    佐藤里沙

    Sato Risa

    ソニー・ミュージックレーベルズ

  • 風岡涼太プロフィール画像

    風岡涼太

    Kazaoka Ryota

    ソニー・ミュージックレーベルズ

MÅNESKIN(マネスキン)

マネスキンアーティスト画像

©︎Fabio Germinario

写真左から、トーマス・ラッジ(Gt.)、ダミアーノ・デイヴィッド(Vo.)、ヴィクトリア・デ・アンジェリス(Ba.)、イーサン・トルキオ(Dr.)からなるイタリア、ローマ出身のZ世代4人組ロックバンド。2021年、ヨーロッパ最大の音楽の祭典「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」で優勝し、瞬く間に全世界でブレイクした。ロック、ラップ、レゲエ、ファンクなどの多彩な要素をソウルフルなボーカルに織り交ぜたサウンドと、抜群のルックスを兼ね備えた華やかなロックスター然とした佇まいが特徴。2022年夏に初来日を果たし、「SUMMER SONIC」でのライブパフォーマンス、さまざまなメディア露出で日本でも大きな話題を呼ぶ。2023年1月にリリースした最新アルバム『ラッシュ!』は日本における洋楽の新人アーティストとしては異例のヒットを記録。2023年のジャパンツアーではアリーナクラスの4会場すべてがソールドアウトとなった。

老若男女に愛されるロックバンドでありポップアイコン

――まずは、マネスキンの日本でのアーティスト活動をサポートする皆さんの役割、仕事内容について教えてください。

奥平:私はマネスキンのA&R(アーティスト&レパートリー:音楽アーティストをさまざまな面でサポートしながらヒットへ導く音楽業界の業種)を担当しています。日本でのプロモーションの全体的な方向性を決めつつ、プロモーションのプランニングを行なっています。来日スケジュールの管理も主な業務として担当しました。

佐藤:私の担当は、海外渉外です。マネスキンに限らずですが、アーティストの海外オフィスと日本チームを繋いで、やり取りをしています。

風岡:自分は主にWebやデジタルに関する部分を担当しています。WebプロモーションやSNS展開のプランニングなどですね。

――そもそもマネスキンは、2017年にオーディション番組『Xファクター イタリア』に出演して注目を集め、2021年には「サンレモ音楽祭」と「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」に出場して見事優勝。その後、イタリアを代表する若手ロックバンドとして、世界中で人気を集める存在になりました。洋楽、特にロックが若者に以前ほど聴かれなくなったと言われる日本の音楽シーンでも、マネスキンの知名度と人気はうなぎのぼりです。

奥平:彼らは平均年齢が20代前半。ルックスもパフォーマンスも個性的でキャッチーですし、音楽的にもギラッとした感性と遊び心とこだわりがある。今、洋楽というとヒップホップなどがよく聴かれますが、こういうテイストの若いロックバンドは少ないので、そこが非常にインパクトだったのではないかと思います。

カーキ色の服を着た奥平裕紀

――国内では、2022年8月の初来日時に「SUMMER SONIC」に出演。豊洲PITでの日本初ワンマンライブも大盛況を博しました。昨年12月には2度目の来日公演を果たし、さらなる熱狂を巻き起こしています。日本ではどういったファン層に支えられているのですか?

奥平:メインのファン層である10~20代の人たちからは、ボーカルのダミアーノ・デイヴィッドの類い稀なスター性、ベースのヴィクトリア・デ・アンジェリスの開放的なファッションやパフォーマンスなど、メンバーそれぞれがアイドル的な人気も獲得しています。

ですが、彼らは骨太なロックをやっているので、日本ではいわゆるレジェンドロックを愛する年輩のロックファンからも、非常に熱く支持されている。そこは、ほかの若いバンドにはない特徴であり、幅広い層に受け入れられている理由だと思います。

――海外ではいかがでしょうか。日本との違いはありますか?

風岡:ストリーミングサービスのデータを見る限りでは、海外では10~20代の若年層がリスナーの中心になっています。日本でも大まかには同様なのですが、より年齢層が幅広いのが特徴です。よく“老若男女”という形容がされるのですが、まさにその通りで、ロックバンドのリスナーがエルダー層の男性中心になっているなかで、ファンの年代に偏りがなく、女性にも強く支持されているのは珍しいケースだと思います。

ボーダーの服を着た風岡涼太

――日本でも、想像以上に女性層のファンが多いイメージはありますね。

風岡:そうなんです。日本においても海外においても、ロックバンドとしては特異なファンベースを確立していて、リスナーのデモグラフィだけで言えば、むしろハリー・スタイルズやマイリー・サイラスなどのポップスターに近いですね。

マネスキンが映ったモノクロの写真

メンバーの人柄に触れて魅力を再確認

――皆さんは、マネスキンの魅力はどんなところにあると感じていますか?

佐藤:ビジュアルや音楽性はもちろんですが、私個人としては、彼らの人柄の良さも大きな魅力だと思います。実際、一緒に仕事をしていても、気づかいがすばらしくて。スケジュールが立て込んでもわがままなことなどいっさい言わないですし、求められることにしっかり応えてくれます。

しかも、メンバー全員、仲が良いんですね。常に自然体で、昔からずっと一緒にいた幼馴染だけに、メディアに出るときもプライベートでも仲の良さが滲み出ている。そういったところが、若い人たちがマネスキンを好きになるきっかけになっているのではないかと感じます。

黒い服を着た佐藤里沙

奥平:Instagramなどでもプライベートな動画や写真はたくさん公開されていますしね。

佐藤:根っから陽気と言われるイタリアの国民性が理由かもしれませんが、私たちに対してもいつもフレンドリーに接してくれます。

風岡:魅力はたくさんありますが、特筆すべき点は、ロックバンドらしいカリスマ性を持ちながら、同時にアイドル性も兼ね備えているところですね。自然体で、礼儀正しさがありながらフランクなアティチュードや、ファンとのコミュニケーションを活動全体の基軸に置いているところは、ここ10~20年の間に登場したロックバンドでもすごく珍しいと思います。

いっぽうで、彼らのパフォーマンスや演奏を見ると、往年のクラシックロックのスターを彷彿とさせるところもあります。マネスキンが強く影響を受けた往年のアーティスト、例えばクイーンやデヴィッド・ボウイが活躍した1970年代~80年代には、ロックスターであることとアイドルであることは必ずしも相反するものではなく、むしろイコールであることが多かった。

大雑把な整理になりますが、1990年代にオルタナやインディロックが台頭して以降、ロックシーンがよりシリアスで純粋主義的な方向に変化したなかで、かつてのアイドル性のあるロックスター像をリバイバルさせたのがマネスキンのユニークなところだと思います。そして、その表現が今の若年層にも新鮮に響くという、絶妙なポジションを捉えているのです。

向かい合って楽器を演奏するマネスキン

奥平:さらに言うと、彼らは見せ方が上手。一緒に仕事をして、それを強く感じます。例えば雑誌の取材でも、お互いが着ていた衣装がしっくりこなかったら、メンバー同士で衣装をチェンジして、よりスタイリッシュに見えるように臨機応変にアレンジしていく。

それに、とても勉強熱心です。音楽そのものに真摯に向き合っているからこそ、自由度の高いパフォーマンスで魅了できる。そのうえで、プライベートは20代前半の若者らしくワイワイしているというギャップもまた、たまらない魅力だと思います。

マネスキンのライブ写真

©︎Fabio Germinario

マニアックなことをやりながら、それを感じさせない音楽性

――音楽面での魅力についてはいかがでしょうか。皆さんが特におすすめの楽曲を教えてください。

風岡:マネスキンの音楽的な魅力のひとつは、いろいろなジャンルの音楽を取り込んだり、新しい試みを行なったりしながらも、良い意味でそうは聞こえず、あたかも伝統的なロックのように聴かせてしまうところだと思います。そういった特徴が最も典型的に表われているのが「I WANNA BE YOUR SLAVE」という楽曲です。

とても変わった曲で、Aメロをはじめ、楽曲の大部分においてボーカル、ベース、ギターがまったく同じリフのメロディを重ねるユニゾンで通しているんです。ハーモニーを用いないパートが大半を占める展開は、ロックではとても珍しい気がします。強いて言えば、ビリー・アイリッシュやエド・シーランなど、ミニマル志向のポップスのアプローチに近いかもしれません。にも関わらず、最終的なアウトプットはオーソドックスなロックのように聞こえるのが面白い。フレッシュであると同時に懐かしい、マネスキンらしい1曲だと思います。

Måneskin - I WANNA BE YOUR SLAVE (Official Video)

佐藤:私が一番好きな曲は「THE LONELIEST」です。ダミアーノ・デイヴィッドのあの美しい声とグラマラスなビジュアルでバラードを歌われたら、もうたまらない! トーマス・ラッジのギターソロもとてもカッコ良く際立っています。強いロックだけでなく、バラードがすばらしいのは、バンドとしての魅力ですね。

Måneskin - THE LONELIEST (Official Video)

奥平:私は、やはり彼らが世界に出るきっかけになった2021年の「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」でも演奏した「ZITTI E BUONI」が一番好きです。風岡くんが言う音楽的な幅の広さ、多様なところに踏み込んだ楽曲でもあり、佐藤さんが言うギタープレイのすばらしさもあり、すべてが凝縮されている楽曲ではないでしょうか。

歌詞はイタリア語なので、日本人には理解しにくいところもありますが、それを凌駕する疾走感にやられます。初めてミュージックビデオ(以下、MV)を見たとき、このアーティストは絶対に自分が手がけたい! と思いました。あの楽曲に出会わなかったら、こうしてマネスキンのA&Rをやらせてもらうこともなかったんじゃないかと。

Måneskin - ZITTI E BUONI (Official Video – Sanremo & EUROVISION 2021 Winners)

――イタリアのロックバンドが世界的な人気を獲得し、イタリア語の曲をヒットさせるというのもレアケースではないかと思います。

奥平:そうですね。以前はイタリア語と英語の曲が半々ぐらいだったのですが、最新アルバム『ラッシュ!』ではイタリア語の楽曲は全17曲中、3曲に減っています。とは言え、イタリア語で歌いつづけているところも彼ららしいですね。

昨年12月のジャパンツアーは、有明アリーナ2DAYS、東京ガーデンシアター、神戸ワールド記念ホールの4会場すべてがソールドアウトしましたが、最初の有明アリーナ公演で「ZITTI E BUONI」を演奏したとき、日本のお客さんがイタリア語で大合唱してくれたのを見て、感慨深いものがありました。

大勢の観客の前で歌を披露するマネスキン

©︎Fabio Germinario

風岡:メンバーも日本のオーディエンスには特別な思い入れを持ってくれているようで、すごく喜んでいましたね。

――日本好きと言えば、2022年の初来日時のワンマンライブでは、ダミアーノ・デイヴィッドが、アニメ『進撃の巨人』のテーマ曲「心臓を捧げよ!」の一節を歌ったことも話題になりましたね。

奥平:はい、プライベートでもジャパニーズアニメのキャラクターのパーカーを着ています。

佐藤:去年の滞在中も、秋葉原にフィギュアを買いに行こうとか、あそこのラーメンを食べに行こうとか、あれこれ計画して日本文化を満喫していました。彼らのSNSにも、小さな焼き鳥屋さんのようなところでワイワイやっている光景がアップされたり、ハードなプロモーションの合間を縫って、日本のディープな文化や遊びも体験しました。

――根っから日本びいきで、ジャパニーズカルチャーに理解が深いところも、日本のファンにとってはうれしいところですよね。

奥平:それも日本の若者層の人気を後押しているのではないかと思います。特にダミアーノはジャパニーズアニメに対する愛情を公言していて、聞くところによるとコロナ禍の最中にNetflixをすごく見ていて、アニメにハマったそうなんです。

佐藤:それが『進撃の巨人』だったそうですね。

奥平:そこから『BEASTARS』や『DEATH NOTE』、『チェンソーマン』にハマり……といろいろなアニメを見ているようです。それがきっかけで、『BEASTARS』のコミックとのコラボレーションMVの制作につながりました。原作者の板垣巴留先生にマネスキンのメンバーを『BEASTARS』の世界観に落とし込んだイラストで描き下ろしていただき、とても喜んでいましたね。

後編につづく

文・取材:阿部美香
撮影:冨田 望

リリース情報

マネスキン『ラッシュ!』ジャケット画像

『ラッシュ!』
発売中
価格:2,640円
収録曲はこちら(新しいタブで開く)

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